1.《ネタバレ》 シリーズもいよいよ佳境に入り、ウディ・アレンの伝説の初監督作『What's Up, Tiger Lily?』の元ネタがこの第4作目でございます。前作で大きくコメディ路線に舵をとったこのシリーズでしたが、本作では初期のハード・スタイルな撮り方も復活しており、コメディ調とのバランスがとれている感じがしました。監督が大ベテランの谷口千吉だと言うこともあるでしょうが、手堅くまとめたなと感じます。 初期二作に戻ったかの様に、オープニングはどうもブルネイをモデルにした様な東南アジアの某国から始まります。この国の大臣から横浜で船上カジノで稼いでいる反乱組織から1千万ドル強奪するのに協力して欲しいと頼まれます。つまり本作での北見次郎の活動は国際秘密警察本部からの指令が有ったわけじゃなくて、いわば彼のアルバイトみたいなものなんですよ。情報局長の浜美枝と金庫破りの達人である若林映子を引き連れ現地に乗り込むと、そこには反乱組織とはライバルの中国人組織が手ぐすねを引いていたと言うわけです。 本作では北見次郎は殴られて拉致されたり拷問されて顔傷だらけにされたり精彩があまりないのですが、その分敵役たちががんばってくれます。何と言っても“ハヤタ隊員”黒部進にご注目です。北見次郎と手を組んだり裏切ったりの中国人ボス、常に脇役に徹してきた彼としては珍しい目立ちっぷりです。そして「俺はコブラに噛まれて人が死んでゆくところを見るのが夢なんだ」なんて言ってのける、天本英世の拷問好きのド変態ぶりも強烈でした。このコブラ、アップはギニョールなんで良いですけど、ロングになると普通の青大将みたいなヘビになっちゃうのは失笑ものでした。中丸忠雄ももちろん出てますが、そういやどうも影が薄かったですね。 こうやって観ると意外と弾けるところは少なかった印象で、こうなるとますます『What's Up, Tiger Lily?』が観たくなると言うものです、出来れば日本語吹き替え版でね。個人的には、アレンのこの映画のおかげで浜美枝と若林映子がボンド・ガールに抜擢されたと睨んでいます。ということは、もし水野久美が本作にキャスティングされていたら彼女が『007は二度死ぬ』に出演していたわけで、惜しいことしました(笑)。