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鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2598
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

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41.  ある戦慄
日曜深夜の都会の地下鉄、自身の人生に対して様々な不満や不安や葛藤を抱えた人々が偶然に乗り合わせる。それはどこにでもある日常の風景だろう。 そこに、単純な「粗暴」という言葉ではおさまらない、気が違っているとしか言いようがないチンピラ二人組が乗り込んできて、乗客たちそれぞれに傍若無人な行為を繰り返していく。 その行為は、「暴力」という範疇までには及ばないけれど、あまりに悪辣で乗客たちを精神的に追い込む。  最初のうちはチンピラたちの蛮行そのものに対して憤りを感じ、気分が悪くなる。しかし、次第に気分の悪さの対象が遷移し始める。 チンピラたちの行為に被害を被る乗客たちの生々しい人間性が露になってきて、気を滅入らせてくる。  この映画は1960年代のニューヨークを舞台にしているが、この地下鉄の一車両で描かれているものは、どの時代のどの国のどの街でも存在し得るであろう人間同士の歪みである。 その場に居合わせているのがごく普通の人間だからこそ、少しずつ表面化していく“戦慄”があまりにおぞましい。  「どこにいたんだ?」 退役後の大層な野心を述べていたにも関わらず、地下鉄車内に突如発生した「出来事(incident)」に対して結局何もしなかった同僚に対して、チンピラに唯一立ち向かった田舎者の軍人が、虫の息でぽつりと言う。  他の乗客たちは、すべてが解決した後も死人のように呆然と押し黙ったまま、とぼとぼと地下鉄を降りていく。 “戦慄”とは、突然現れた悪魔のようなチンピラたちなどではなく、彼らによって浮かび上がらされたすべての人間に巣食う屈折した心理そのものであること知らしめ、彼らと同様に自分自身があの車両に同席していたならと考えると、絶妙な後味の悪さに襲われる。  とても胸糞が悪くなる映画だった。その胸糞の悪さは、そのまま自分を含めこの映画を観ているすべての人間たちが内包している要素であり、そのことが殊更に胸糞悪さを助長する。 観ているままに居心地の悪さを終始感じ続けなければならない映画だが、それは人間の“澱み”や“歪み”を如実に表している証明であろう。故に傑作であることは間違いない。
[DVD(字幕)] 8点(2012-05-13 01:05:01)(良:1票)
42.  アイアン・ジャイアント
謎の巨大ロボットと少年との心の交流を描いたどストレートなアニメ映画だった。 新鮮味はなく、ありきたりと言ってしまえばその通りだけれど、王道的な映画世界を堂々と描き切った“巧い”映画だと思った。  ありふれたお話だが、まずストーリーの転じさせ方が巧い。序盤の何気ない描写がしっかりとクライマックスやラストの伏線となり、ちゃんと惹き付けてくれる。 時代背景が冷戦構造のまっただ中だったり、主人公の少年の父親はおそらく戦死していたりと、テーマである「暴力反対」が決して押し付けがましくなく、心温まるストーリーの中ですんなりと入ってくる。  監督は現在公開中の「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」のブラッド・バード。 他にも「Mr.インクレディブル」も監督しており、とても「娯楽」を描くことに秀でた人だと思う。 娯楽映画こそ、作り手の才能が大いに影響されるジャンルだということを改めて感じた。  映画は、アニメ映画らしく心地よいラストで締められる。素直に「ああ、良かった」と思った。
[DVD(字幕)] 8点(2011-12-30 14:26:20)(良:1票)
43.  愛を読むひと 《ネタバレ》 
戦後の西ドイツ、ふとしたきっかけで出会った15歳の少年と36歳の女。欲望のままに惹かれ合い、たった一夏の関係を過ごした二人。彼らの中ではじまった「朗読」という儀式は、一体何だったのだろう。  その意味は、決して単純に美しいものではないように思う。  過去の“業”を秘め無学をひたすらに隠そうとするアラウンド40の女と、目覚めた”性”を抑えきれず彼女に対する無意識下の蔑みを「愛」と盲目する少年、それぞれの脆さと愚かさを、「朗読」という行為で正当化しているような、そんな屈折した心証が見え隠れする。 キャッチコピーにもある通り、そこには、「愛」と呼ぶにはあまりに切ない二人の男女の関係性があったと思う。  時を経て、再び「朗読」という行為で繋がる二人の関係性は、20年前のそれとはまったく異なる。かつての感情の高ぶりを思い起こすと同時に、決して取り戻すことは出来ない過ぎ去った時間を感じ、二人の関係の本当の意味での“終幕”を迎える。  結局、この男と女は、一度たりとも心が通じ合ったことは無かったのではないかと思える。お互いが、無知と無学の狭間で盲目的に惹かれてはすれ違うということを繰り返し続けたのではないか。  それはやはり「愛」ではなかった。ただ、その関係性がイコール「悲劇」かというとそうではない。それぞれの人生において、「朗読」という行為は、“始める”意味でも、“終わらせる”意味でも不可欠なことだった。 それはおそらく当人たちでさえ説明がつかない心と心の“交じり合い”だったのだろう。  この物語の真意を100%理解出来たとは思えないし、完全に理解することなどは不可能だと思う。 なぜなら、主人公の女が死を覚悟してまで文盲であることを隠し続けたことが如実にあわらすように、人間の心理は千差万別であり、一つとして完璧に重なり合うものはないからだ。 そういう人間の複雑さを映画として情感たっぷりに描き出した優れた作品だと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2010-03-22 09:26:35)(良:1票)
44.  アイランド(2005) 《ネタバレ》 
この映画は、“超大作”というオブラートに包まれたとても“特異”な映画だ。 まさに問答無用の“エキサイティング”という言葉の怒涛のような映画であり、文句なしの超大作という肩書きに異論は無い。ただ、それと同時に、ものすごく“おぞましい”映画でもあると思う。“クローン人間の養殖”を公然と行う営利施設とその職員の存在自体に始まり、その過程での培養と洗脳、“アイランドへの招待”と称したクローンの処理……と美しい映像世界にくっきりと描き出されるあまりに強烈な“闇”。それはまさに人間自体の“闇”ではないか。逃げ出したクローン人間は、ついには、生き延びるために自分自身のオリジナルをも淘汰する。主人公のクローンらの必死の行為は“正義”として描かれるように見えて、実は違う。彼らの行為は“善”でも“悪”でもない。ただひたすらに存在しようとする“生命としての本能”だ。 そういう、人間という一生物としての、ある意味当然とも言える、美しさと表裏一体の“本性”を感じたとき、この映画の“おぞましさ”はピークに達する。 ラストの、奴隷解放になぞられたクローンたちの“解放”は、その壮大な解放感と共に、人間という生物の闇の深淵を感じさせる。  
[映画館(字幕)] 8点(2005-07-27 01:18:02)
45.  アイ,ロボット
「ロボットの叛乱」、それはもはや使い古されたプロットかもしれない。しかし、この映画は明らかに新しく、映画としてのひとつの進化さえ垣間見せることに成功している。特筆すべきは何と言っても“生々しく”襲い掛かるロボットの驚異的なインパクトだ。ロボットに対する“人間らしさ”をテーマとするこの物語において、革新的であるこのロボット像は、不可欠であり最大の功労であると思う。研ぎ澄まされた機能美に溢れた世界、破滅的な危惧を備えた新たな未来像が、人間の五感と精神を刺激する。
[映画館(字幕)] 8点(2004-09-22 02:29:12)
46.  アンダーワールド(2003)
「マトリックス」の誕生以後、同作を真似たスタイリッシュな映像を売りにするアクション映画は量産され続けいる。今作においてもその例の範疇であり、「ヴァンパイアが暗躍する世界」というもはや若干新鮮味に欠けるジャンルも手伝って、“オリジナル性”という部分においては難があることは否めない。しかしながら、「パクリだろうが二番煎じだろうがお構いなし!」と開き直れるほどのクオリティをこの映画は備えている。何と言ってもその映像美が素晴らしい。タイトル通りに全編通して光の当たらない世界を描きながらも、闇に紛れることなく徹底的にスタイリッシュに展開される美しい映像世界に舌を巻く。その闇の美の中に、クールでドライな美貌を湛えたケイト・ベッキンセールの存在が映え、非常に質の高い映画世界へと昇華されている。クライマックスにかけてますます重要になってくる“人間の男”のキャラクター性が全編通すと弱すぎるという感は残るが、単純な勧善懲悪の構図では終わらないストーリーにも満足感は高い。続編も充分に期待が持てる。
8点(2004-09-10 00:46:54)
47.  I am Sam アイ・アム・サム
冷静に考えると、それほど深みのある物語ではないのだけれど、私は今だかつてないほど劇場で泣き伏せてしまった。この涙腺ヒットの理由はやはり素晴らしいチャーミングさを見せた天才子役ダコタ・ファニングの演技に他ならないと思う。爽快で魅力的な彼女が演じた少女の快活さは、それだけで胸に迫るものがあった。ハリウッドきっての悪童ショーン・ペンもイメージを払拭する熱演を見せたが、明らかにダコタ・ファニングに食われてしまったことは言うまでもない。
8点(2004-01-17 03:59:34)
48.  ALI アリ
モハメド・アリを知らない世代の者にとっては、伝説的なボクサーの人物像は純粋に衝撃的で、一人の人間の生き様としてとても迫力を感じることができた。実際どれほどその描き方が忠実かは分からないけど、何も知らない者としては多大な説得力があった。全体的に見ると若干間延びする感はあったが、リング上の迫力がそれを打ち消してくれた。
8点(2004-01-17 03:47:21)
49.  雨に唄えば
有名すぎるほどの土砂降りの中でのダンスシーンは流石に素晴らしく、圧倒的な迫力があった。ストーリーに説得力やリアリティなんて皆無だが、それでもその映画世界に引き込まれる。これこそ映画の最大の魅力であり、娯楽映画のエネルギーであろう。
8点(2003-12-03 13:05:36)
50.  アンタッチャブル
若きケビン・コスナーのスター性が光る秀作。脇を固めるショーン・コネリー、ロバート・デ・ニーロ、そして新人アンディ・ガルシアの豪華競演が味わい深さを助長している。ストーリー自体に深みはないのだけれど、名匠ブライアン・デ・パルマ監督の手腕が一級作に仕上げている。
8点(2003-09-27 20:23:17)
51.  アラジン(2019)
若干舐めていたところもあったが、思ったよりも真っ当でシンプルに面白いエンターテイメントだった。
[インターネット(吹替)] 7点(2024-03-02 23:39:53)
52.  アントマン&ワスプ:クアントマニア
“フェーズ4”の作品群は、良い意味では極めて多様性に溢れ、悪い意味ではあまりにも世界観を広げようとしすぎるあまりこれまでの各フェーズと比較するとまとまりが無かった。 MCUという大河のシリーズとはいえ、元来は各作品とも独立した映画であることが前提なので、“まとまり”を求める必要は本来ないのかもしれないが、“ビッグ3”が牽引して「エンドゲーム」で大団円を迎えた“フェーズ3”までの流れがあまりにも奇跡的だったので、どうしてもそういうことを感じてしまう。  昨年(2022年)も「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」を皮切りに「ドクター・ストレンジ/MOM」と「ソー:ラブ&サンダー」を勇んで劇場に足を運び、それぞれ楽しんだけれど、前述の世界観の肥大とそれに伴う情報量の“拡散”に対して、やや疲弊感を感じてしまったことも事実。 結局今の所まだ手を出し切れていないが、「Disny+」で立て続けに配信されたスピンオフの各ドラマシリーズを全く追いきれていないことも、それに拍車をかけている。 ついには「ブラックパンサー」の続編を劇場鑑賞スルーしてしまうなど、自分の中で確実に“MCU離れ”が生じ始めていた。  “フェーズ5”の第一弾となるこの「アントマン&ワスプ」の続編に対しても、二の足を踏んでいたが、結果的には劇場鑑賞しておいてよかったなとは思う。 正直なところ「大満足」というレベルの作品ではないけれど、“フェーズ5”の入り口として重要な情報が多い作品であったし、何よりもやっぱり“アントマン&ワスプ”というヒーローカップルの活躍は痛快だった。  「アントマン」の過去作が公開された時と同様に、この小さき者はいつだってMCUという大河における停滞と混濁に痛快な風穴を開けてくれる。 「量子世界」というミクロの先のもう一つの果てしない宇宙を舞台にした映画世界は、イマジネーションに溢れ、そこにアントマンというキャラクター性が表す個性がユニークに発揮されていたと思う。  ただし、量子世界の造形美そのものは、美しく神秘的であった反面、明らかに“スターウォーズ”オマージュの要素が強く、また「アバター」等にも類似していて、必然的に既視感があったことは否めない。 現代のエンターテイメント全体のトップランナーであるMCUの一作だからこそ、そこは“見たことがない”映画世界と価値観を創出してほしかったとは思う。  物足りなさについて加えると、今後の“ラスボス”として初登場した“カーン”という強大なヴィランが、結局何者なのかが分かりづらかった。 節々の台詞で“におわせ”はしているものの、つまるところ彼は何を成し遂げたいのか、そして時間の終末に何を見たのかが、今後の展開を踏まえた意図的なものであることを理解しつつも、あまりにぼやけ過ぎていたように思える。  もう少し、このヴィランが時間そのものを支配している存在であることを映像表現として伝えるべきだった。カットになった未公開シーンでは、ホープやその他キャラクターのあり得たかもしれない“未来の姿”を見せるような展開もあったという。 時間軸が入り混じった新たな価値観を含めたこのヴィランの恐怖を表現できていたら、それこそ近年のSF映画の傑作「メッセージ」のような既存の概念を覆す深淵のドラマが表現できたのではないか。  また、演じるジョナサン・メジャースの演技は称賛されているようだが、個人的な所感ではキャラクターとしての厚みを感じられなかったのが正直なところだ。(少々わざとらしい演技プランも興を削いだ) 彼が今後の展開のキモとなるのは間違いないし、文字通り様々な「顔」を見せてくるのだろうから、その変貌ぶりも含めて期待していきたい。  そして、本作における最大の“欠落”は、マイケル・ペーニャが演じていた“ルイス”の不在だろう。 彼の存在と軽妙な言い回しが、過去作における代え難い娯楽性であったことは明らかだったので、冒頭かラストの1シーンでも登場させて欲しかったというのは、ファンの共通した思いに違いない。   とまあ、クドクドと不満要素多めになってしまったが、ヒーロー映画として面白くないなんてことは決してなく、充分に楽しめた。 エヴァンジェリン・リリーとミシェル・ファイファーの熟女母娘が、めちゃくちゃ美しく、格好いいだけでも、個人的な満足度は担保されている。  エンドロール後のクレジットをワクワクしながら待ち、登場したキャラクターを見て、「ああ、やっぱりDisny+に引きずり込まれるのか?」と神妙な面持ちになったことは否めないけれど。
[映画館(字幕)] 7点(2023-03-03 23:56:03)(良:1票)
53.  アダムス・ファミリー(1991)
まさかこの映画を観ていなかったとはな。 Netflixのオリジナルシリーズ「ウェンズデー」が面白そうだったので、元ネタである本作を復習しようと思ったら、なんと続編の「アダムス・ファミリー2」だけ観ていて、本作は未鑑賞だったという事実が発覚。 ちょうどクリスマス時期にも相応しいと思い、まさかの初鑑賞。 キャラクター造形も、テーマ曲も、その世界観も、初鑑賞でありながらももはや「懐かしい」映画世界だった。  もっとチープで子供向けのファミリームービーの印象だったが、冒頭からしっかりと作り込まれた美術やカメラワークが秀逸で、想像よりもずっとレベルの高いクオリティを誇る娯楽映画の世界観に引き込まれた。  本作が娯楽映画として世界的人気を得た最大の要因は、何と言ってもファミリーを演じる個性的な俳優陣によるキャラクターにマッチした表現力だろう。 主演のラウル・ジュリアを筆頭に、個性派俳優たちが嬉々として奇妙なキャラクターを演じきっている。  個人的に最も印象的だったのは、やはり“フェスター伯父さん”に扮するクリストファー・ロイド。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズで“ドク”を演じ終えた直後の出演作だけあって、その表情をはじめとするアクトパフォーマンスのそこかしこに“ドク”が垣間見えて、楽しい。  そして何と言っても、クリスティーナ・リッチ演じる“ウェンズデー”の特異なキュートさがたまらない。弟を処刑ごっこの実験台にし続けたり、首がちょん切れた人形を大切にしていたり、学芸会の舞台では大量の血しぶきをぶちまけながら熱演を繰り広げたりと、その言動のすべてが常軌を逸しつつも、ひたすらにブキミでカワイイ。  本作のストーリーそのものは、ベタなコント的なものであり、あってないようなものだけれど、そんなマイナス要因を補って余りある奇怪で愉快な映画世界は、やはり魅力的だ。 30年の時を経て蘇る「ウェンズデー」には、クリスティーナ・リッチも出演するらしい。益々楽しみだ。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-12-16 23:54:41)
54.  愛してるって言っておくね
自分自身が、「親」という存在になって9年半。 この12分の短編アニメに登場する「娘」は、愛娘とほぼ同じ年頃だ。  無論、悲しくてやりきれないし、理不尽さに対する憤りに心が張り裂けそうになる。 映し出される両親の虚無感は、極めてシンプルだけれど情感的なアニメーションによって、静かに、ゆっくりと、鑑賞者の心をも覆い尽くした。  この20年あまり、同様の悲劇のニュースが、かの国から絶えることはない。 自分の子が生まれてからも、幾度となく、無差別な銃乱射によって理不尽に奪われた子供たちの命を知る度に、とても他人事とは思えず身につまされてきた。  この短いアニメーションの中では、「惨劇」そのものが映し出されることはない。 ただ、大きな“星条旗”の下で、凶弾と子供たちの叫び声が響き渡る。その「意図」は明らかだろう。  「If Anything Happens I Love You(愛してるって言っておくね)」  この短いメッセージを、誰が、誰に対して、どのような状況で伝えたのか。 それが明らかになったとき、堪えてきた涙腺は一気に決壊した。   12分という短い時間は、必然的に“悲しみ”の感情でほぼ埋め尽くされている。 でもこのアニメは、ただ悲しいだけ、ただ辛いだけの作品では決して無い。  彼らにとって何よりも大切な娘を失ってしまった喪失感は、絶望と共に深まると同時に、彼女が確かに存在したことも確実に浮き彫りにしていく。  転がったミートボール、おかしな壁の修繕跡、Tシャツの残り香、思い出の写真や音楽、そして、彼女と過ごした記憶そのもの。  彼女の短い人生の中の無数の思い出は決して無くならず、思い出すことがまた思い出となっていく。 悲しみが消えて無くなることはないけれど、それでも生きていく。 人間は、そういうふうにできている。
[インターネット(字幕)] 7点(2020-12-19 22:10:49)(良:1票)
55.  アントマン&ワスプ
前作「アントマン」は、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」と「シビル・ウォー」の狭間で公開され、両作の色々な意味で“重い”作風に対して、一服の清涼剤となるような良い意味でライトで痛快無比な最高のヒーロー映画だった。 続編となる今作もその立ち位置は変わっていない。あの「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」の重苦しい“悲劇”の直後のMCU作品として、“清涼剤”としての役割は前作以上に大きかったことだろう。  キャストとスタッフが概ね続投されていることもあり、映画のクオリティやテイストに大きな変化はなく、前作同様ヒーロー映画として十二分に楽しい作品に仕上がっていると思う。  ただし、前作ほどのフレッシュさは流石に薄れている。 美しく強い“ワスプ”は魅力的で、表題に割って入ってくるのも納得だけれど、アントマンとのパートナーとしての関係性自体は、前作時点で既に築かれていたものなので、安心感はあるものの特段目新しさは無かった。 アントマンの“巨大化”のくだりも、「シビル・ウォー」で“ネタ見せ”してしまっているのでインパクトに欠けていた。 ストーリーの肝である量子世界への突入についても、既に前作で帰還に成功しているわけだから、新たな緊迫感を生むには至っていないと思う。  それでも前作同様の娯楽性を担保できているのは、やはり登場するキャラクターとそれを演じるキャスト陣が魅力的だからだろう。 アントマンことスコット・ラングを演じるポール・ラッドをはじめ、ワスプ役のエヴァンジェリン・リリー、ハンク・ピム博士役のマイケル・ダグラス、そしてなんと言っても悪友ルイス役のマイケル・ペーニャらのパフォーマンスが安定している。そんなレギュラーメンバーたちの掛け合いを見ているだけで楽しい。 またスコットの娘ちゃんは健気で可愛いし、普通の映画だったら憎まれ役になりがちの娘の“継父”すらも端役ながら最高なキャラクター性を見せてくており、ほっこりさせてくれる。  というわけで結果的には、前回と同じく“清涼剤”の役割をしっかりと果たしてくれていることは間違いない。 が、「覚悟」はしていたけれど、MCUにおいて痛快無比なこの作品においても、あの無慈悲な“チリ”を舞わせるとは……何とも容赦ない。 でもね、アベンジャーズの超人オールスター勢の中で、スパイダーマンでも、ブラックパンサーでも、ドクター・ストレンジでもなく、スコット・ラングという「小物」が生残されたことは、きっと“大きな”意味を持つと期待せずにはいられないよね。
[インターネット(字幕)] 7点(2019-03-21 18:27:49)(良:2票)
56.  アナと雪の女王
ついに“本性”を他者に知られてしまった女王が、失意の中走り出す。 港湾の海面を一歩ずつ凍らせて、雪の中にに消えていく。 とても悲しく、でもあまりに美しいこの序盤のシーンを観て、この映画は“アメージング!”その一言に尽きると思った。  物凄い興行成績を叩き出している大ヒットぶり自体は、明らかに大衆の過剰反応だと思えたので、必然的に超ロングラン公開を横目に結局劇場鑑賞は敬遠してしまった。 ただその流行ぶりはやはり物凄く、どれくらい凄いかというと、当然映画なんて観てもいない3歳の愛娘が、「ありの~ままで~♪」と歌い出すほど。 そんなわけで、愛娘に見せてあげたい気持ちも先行し、レンタルショップに走った次第。  大ヒットの要因は誰が観ても明らかで、一にも二にも音楽とビジュアルのクオリティーの高さだろう。 主題歌「Let it Go」は、その音楽性も、綴られるメッセージ性も含めて、名曲が溢れるディズニー映画史上においても屈指の名曲だと思える。 音楽とビジュアルでこれほどの満足感を世界中に与えられた時点で、その映画的な価値は揺るがないだろう。  一方で、描き出されるストーリー性も、クラシックストーリーの中に常に「時代」を映し出してきたディズニー映画らしく、新たな価値観が導き出されている。  個々人の「特性」をオープンにすることの難しさと、正しさ。 ディズニーの新たなマスターピースが描き出したストーリーのテーマは、恋物語でも姉妹愛でもなく、“固定観念からの脱却”そのものだったと思う。  お姫様が幸せになるために“王子のキス”なんて必要ではない。 この時代において必要なことは、自分と異なる他者を寛容することと、自分の運命は自分で決めるという意志だということを高らかに宣言しているように思えた。  個人的には、もっと女王が悪役に陥る淵まで描いても良かったとは思うし、ラストの顛末などはあまりに御都合主義だと思う。 「少しも寒くないわ」と氷の中に閉じこもろうとする女王の様は冷ややかではあるが、とても魅力的だった。 彼女が彼女らしく盲進する様をもうしばらく描いて、そこから彼女自身が妹を含めた他者を寛容する様を描き出してくれたなら、この映画はもっと感動的になったと思えなくもない。   ただし、そんなことは、ようやく作品自体も観た上で「ありの~ままで~♪」と得意気に歌う愛娘にはどうでもいいことだ。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2014-08-24 01:04:50)(良:1票)
57.  アウトロー(2012)
ライフルの乾いた銃声。カマロの唸るようなエンジン音。観ている者の骨にも響く殴打音。 BGMを極力廃し、数々の無骨な音が、“アウトロー”が行き着いた映画世界に響き渡る。  派手なアクションシーンがひたすらに羅列されがちな昨今のアクション映画に対して、この映画の骨格は、とてもオーソドックスで一見地味なシーンが連なる。 それに対して古臭さと退屈を感じる人もいるだろうけれど、じっくりと見れば見る程、深い味わいが染み渡ってくる現代においては少々異質なアクション映画に仕上がっている。  このところのトム・クルーズの最新作を観て、毎度感じていることだが、このハリウッドスターの日々の「鍛錬」と俳優として、映画人としての飽くなき「意欲」は尊敬に値する。 50歳を越えて、また自ら新しいヒーロー像に挑戦し、シリーズ化を目論むなんてことは、並の神経では出来ない。 長年彼の映画を観てきた映画ファンとしては、当然「老けたな」という印象は拭えないけれど、それはそれとして主人公としてしっかりと“様”になっているのだから、文句は無い。  ヒロインがやけに熟女だなと思ったけれど、冷静に考えれば50歳のトム・クルーズの相手役としては相応しいバランスだよな……と思いきや、ヒロイン役のロザムンド・パイクはなんと34歳……。 彼女も含め、過去にトム・クルーズと共演してきた女優たちは時間の流れの“不平等さ”を恨んでいることだろうと関係ないことを思ったり。  一方で、脚本家出身の監督の作品のわりには、ストーリーそのものの面白味は薄かった。 話自体は、思ったよりもミステリー仕立てだったので、もっと二転三転のストーリーテリングがあっても良かったと思う。 が、“ニューヒーロー”のシリーズ第一作目だとするならば、新たなキャラクター性を際立たせることを優先したことも納得はできる。  ともかく、衰え知らずのハリウッドスターが新たに生み出した“ジャック・リーチャー”というヒーロー像は、充分に魅力的で、今後のシリーズ化も彼の目論見通りに期待したくなる。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2013-11-03 01:26:33)(良:1票)
58.  アンストッパブル(2010)
鉄道職員の怠慢によって発生した暴走列車を同じく鉄道職員の機関士二人が決死の覚悟で止めるというお話。 実話を元にしているとはいえ、娯楽大作としてはいささか地味過ぎるのではないかと思ったが、それが存分に堪能出来るエンターテイメントへと昇華されている。 さすが米娯楽映画界の職人トニー・スコット、ちょっと見くびれない。  実際、イントロダクションのままのお話であり、想定外の驚きは何もないと言っていい。 しかし、やはり一つ一つのシーンの見せ方が巧く、展開のテンポも非常に良いので、観ていて決してダレないしどんどんと映画が醸し出す緊張感の中にのめり込ませてくれる。  主演のデンゼル・ワシントンは、何と同監督作品の主演が今作で5作目ということで、ある意味余裕の存在感を見せてくれており、気難しくも人徳のあるベテラン機関士を好演している。  誰しもが充分分かりきっていることだろうとは思うが、この映画は観賞後にとくとくと考え込むような映画ではない。そんな余地は無い。 作品の尺の長さの時間分だけ、主人公の機関士らを見守る脇役同様に、彼らの活躍をドキドキハラハラしながら見守り、最後に「イエーイ!」となればそれだけで充分な映画である。 
[DVD(字幕)] 7点(2012-02-23 23:44:18)
59.  アガサ・クリスティー ミス・マープル3 復讐の女神<TVM> 《ネタバレ》 
ミステリーにおける“探偵”は、物語の真相を解き明かす先導者であり、同時に犯人を奈落の底に突き落とす”死神”でもあると思う。 謎の解明は即ち、殺人者に対する処刑宣告であり、その様は時に無慈悲で恐ろしい。  そういったミステリーの主人公の“正義漢”と表裏一体の“恐ろしさ”を、今作のミス・マープルからは如実に感じられた。まさに「復讐の女神」という主題にふさわしい。  古き友人の遺言に導かれるようにミステリーツアーに参加するミス・マープル。そこに集まるわけありの人物たち。 アガサ・クリスティー作品の大定番と言える舞台設定の中で、殺人が起こり、過ぎ去った殺人事件の真相が導き出される。 展開は極めて王道的だが、冒頭から感じられる禍々しさがストーリーの全編に溢れ、緊張感を増幅させる。  多くのミステリー作品で見られる顛末と同じく、真相を暴かれた殺人者は自ら命を絶つ。 その定番の展開を見る度に、みすみす死なすなよと思ってきたけれど、もはやそれはミステリーそのものの定石であり、避けられるものではないのだと感じてきた。  ミステリーにおいて、真相を解明する者は、同時に死刑宣告者であり、すべての主人公はその宿命を負っているのだ。
[CS・衛星(吹替)] 7点(2010-10-20 14:38:27)
60.  アンドロメダ・・・
2010年、日本国内を席巻したトピックスの一つとして挙げられるのは、小惑星探査機「はやぶさ」の帰還だろう。 それまで見向きもしなかったものに対して、突如として熱狂することは、善し悪しは別として昨今の日本人の特色だ。 このトピックスで日本中が沸いた際、何かのメディアで評論家が興味深い“不安”を口にしていた。  それは、無人探査機が地球から遠く離れた小惑星から採取したその「物質」が、地球の生態系において全く無害で、人類の科学技術で管理できるものだと、誰が断言できるのかということだった。  大多数の賞賛の中で、その空気の読めないコメントは、特に取り上げられることもなくスルーされた。 だが、その“不安”は、充分に考えるべき要素だと思った。  そして、それに極めて類似する不安要素を、このマイケル・クライトン原作の映画作品に感じた。  映画として優れた娯楽性を見せる作品とは言い難い。  宇宙から飛来した謎の病原体を、4人の科学者たちが深い深い地下の秘密施設で研究し続ける映画で、作中の科学者たちと同様、延々と繰り返される終わりの見えない研究室の風景には、退屈感が蔓延する。 主要キャストの4人も、オジンとオバンばかりで格好良さがまるで無い。  謎の物体が、突如として真の姿を現し始める瞬間など、スリリングな場面は幾つかあるのだが、もっと娯楽性高く映画全体を魅せる方法はいくらでもあるように思う。  ただ、今年「はやぶさ」に対する安直な熱狂があったからこそ、この映画が描き出す「恐怖」は、実はすぐそこに迫っているのではないかという緊張感を増幅させる。  そう考えていくと、分かりやすい娯楽性なんてこの映画には必要なく、延々と続く研究シーンと同じく、「未知なるもの」に対する実態の見えない分かりにくさこそが、「本質」なのだとも思える。
[DVD(字幕)] 7点(2010-10-18 22:32:41)(良:2票)
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