21. グリーン・ホーネット
「惜しい」最終的にはその一言に尽きる。 ヒーローとしての資質がまるでないボンボン社長が主人公、運転手のくせに社長と殴り合いを始める東洋人の相棒、派遣社員のくせに雇い主を蔑んで足蹴にする参謀的美人秘書(年増)、時代遅れを気にする威厳のない悪党のボス。 すべてのキャラクターが、本来与えられるべきそれぞれの役割の「定石」から逸脱していて、そこから生まれる軽妙な掛け合いは、とても新鮮でユニークだった。 そのキャラクター設定が、ミシェル・ゴンドリーが奏でるポップでコミック調な映画世界にマッチしていて、オリジナリティーに溢れるエンターテイメントを感じられることが、この映画の最大の面白味だと思う。 もの凄く大好きな映画になりそうな要素は大いにあったのにそうならなかった要因は、ひとえにストーリーの雑さが目立ちすぎたことだと思う。 アメコミ調のヒーロー映画なのだから、多少の強引な展開は問題ないし、むしろ歓迎する。 でも、物事が転じていく要となるポイントがダイジェスト的に表現されたり、グダグダと無駄なシーンに時間を割いたり、ストーリーそのものに魅力が無さすぎた。 キャラクターのユニークさや、この映画において主人公よりも何よりもカッコいい愛車“ブラックビューティー”のビジュアルなどには大いにワクワクする反面、展開されるストーリーにはあまりにワクワク感がなかったと言える。 元々がテレビシリーズだっただけに、この作品の娯楽性は、ある程度の長いスパンの中でジワジワと愛着を持たれるものかもしれない。 P.S.序盤に悪党のボスに制裁されあっさり殺される薬の売人がいた。キャスト名はエドワード・ファーロング。マジで? [ブルーレイ(字幕)] 6点(2011-07-03 10:01:52)(良:1票) |
22. クライシス・オブ・アメリカ
前々からレンタルショップに行っては、パッケージを手に取り借りようか借りまいか迷った挙げ句、棚に戻すという行為を繰り返していた今作。 デンゼル・ワシントンとメリル・ストリープというある意味“間違いがない”キャスティングを見た時点で、それほど躊躇することはなかったろうと思うが、何か「不穏」なものを感じ取っていたのかもしれない。 「不穏」なんて言葉を使うと、なんだか物凄い駄作だと言わんばかりだが、決してそうではない。トータル的にはよく出来た映画だと思った。 ただし、終始とても“気持ちの悪い”感覚に覆われる作品だと思う。 アメリカの国家を揺るがす程の大陰謀に主人公のデンゼル・ワシントンが気付き、その黒幕がメリル・ストリープで、二転三転しながら巨悪に向かって対峙していくというような、「陰謀」を描いたサスペンス映画にとっては王道的なストーリー展開を想像していた。 しかし、実際に描かれた映画世界は、人間そのものの利害と精神の「闇」が広がり、端的に言ってしまうと、非常に悪趣味だった。 ただその悪趣味さが、そのまま映画に対する嫌悪感に繋がるということはなく、想像に対してアウトサイドな世界を見せつけられつつ、どんどんと引き込まれていく。 それは、「羊たちの沈黙」で禍々しいサイコサスペンスを“名作”として完成させてみせたジョナサン・デミ監督の成せる業だろうと思う。 演出の効果だろうが、多少編集のブツ切り感が目立ち、キャラクターの相関関係も粗いので、展開が伝わりづらいところもあり、完成度が高い映画だとは言い難いけれど、独特の見応えがある映画ではある。 メリル・ストリープの禍々しさが非常に怖い。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2010-03-13 12:46:53) |
23. クローバーフィールド/HAKAISHA
いやスゴイ。紛れもない凄い映画だと思う。実際その一言に尽きる。というか語り出したら、とても語り尽くせない気がする。 「突如,謎の大怪物に襲われる」 という有り得ない事象を、これほどまでに忠実に描いた映画を僕は他に知らない。 というよりも、そもそもこれまでそんな試みをした映画は無かったと思う。 その恐怖と絶望を描く際、これまでのモンスター映画のほとんどすべては、その怪物がどれだけ恐ろしいか、残虐か、という怪物そのものの“正体”に注力してきた。 しかし、よくよく考えてみれば、突然見たことも聞いたこともない巨大モンスターに襲われている当事者たちが、その正体を知り得ることなど不可能に違いない。 突然のパニックと絶望に対し、ただ闇雲に逃げ惑うことしか出来ず、その「目線」に立つことこそ、最も効果的な「恐怖」である。ということに気付き、圧倒的にシンプルで、尚かつ大胆な手法で描き出したこの「映像」の製作者たちは、スバラシイと思う。 決して大袈裟ではなく、この作品は、「ゴジラ」や「キングコング」、「エイリアン」、「ジョーズ」など多くの名作が存在する“モンスター映画”というジャンルにおいてその歴史を塗り替えるものであり、傑作と言って間違いはない。 この作品が、敢然たる傑作と言うにふさわしい理由は他にもある。 アイデア勝負と言えるような大胆な手法の中にあって、非常に繊細で切ない演出が含まれていることだ。 人間の何気ない生活の中の幸福や成功や諸々の感情が、途端に恐怖とパニックに浸食されていくという“有り得ない現実”。 そして、ある二人の幸福な一日の描写が、問答無用の「絶望」によって文字通り”塗りつぶされていく”という様を、一本のビデオテープの中で表現したこと。 それが、この衝撃的な「映像」を、絶対的に素晴らしい「映画」へと昇華させている最大の要因だろう。 「幸福な一日だった」 残された一言が、ただ染み入る。 [映画館(字幕)] 10点(2008-04-18 23:35:11)(良:4票) |
24. グッドナイト&グッドラック
正直、「赤狩り」というアメリカ史上に残る“事件”について明るくないので、いまひとつ詳細を理解しきれなかった部分はあるが、権力による紛れもない“弾圧”に対する力強い“ジャーナリスト魂”に奮える。 「言葉の強さ」なんて言いふらされたことかもしれないが、あらためて、人間にもたらされた最大の武器は、剣でも銃でも爆弾でもなく、“発言の勇気”なんだと思った。 世界に対し自由を謳うアメリカという大国の実情は、闇と愚かさに溢れている。だがそれでも、この国が世界中から愛される理由は、どんなに闇にまみれても、いつの時代もエド・マローのような人間が力強く存在するからだと思う。 [映画館(字幕)] 8点(2006-05-27 00:37:55)(良:2票) |
25. クイズ・ショウ
もはやテレビの世界では当たり前のような印象もあるノンフィクションを演出する欺瞞。テレビというもっとも影響力のある媒体に人生を左右される登場人物たちの生き様がリアルに描かれる。極めて微妙な問題であるテレビの「やらせ」、それが罪か否か。抑えた演出と安定した展開力によるロバート・レッドフォードの映画監督としての力量を目の当たりにする。 [DVD(字幕)] 7点(2004-02-06 18:29:10) |
26. クロッシング・ガード
思想的にかなり偏った描き方のようにも思うが、そこがショーン・ペンらしいといえばそうで、監督として彼の持ち味なのだと思う。ジャック・ニコルソンの存在感が高く、彼を尊敬してやまないペンだからこそ描き出せた悲哀に満ちたダンディズムがそこにある。 [ビデオ(字幕)] 6点(2004-01-30 22:02:24) |
27. グリーン・デスティニー
仰々しいワイヤーアクションが話題になった今作であるが、映像的にはそれよりも美しい自然の舞台に目を見張るものがあった。広大で秀麗な自然の美の中で文字通り舞い、闘う映画世界は娯楽の醍醐味満載で非常に楽しめる。物語的には若干軽薄なところはあるが、満足はできる。 [ビデオ(字幕)] 5点(2004-01-30 21:40:25) |
28. クッキー・フォーチュン
主人公リヴ・タイラーの伯母さん=グレン・クローズの愚かな虚偽から小さな町が大混乱に陥るという小気味良いブラックユーモアの効いた群像劇だった。破綻しそうなストーリー展開であるが、リヴ・タイラー、ジュリアン・ムーアをはじめとする魅力的なキャスト陣とロバート・アルトマン監督の卓越した演出によってユーモラスで爽快な作品に仕上がっている。 [ビデオ(字幕)] 7点(2004-01-26 18:53:26) |
29. 狂っちゃいないぜ!
航空管制官という題材は新しさがあり興味深かったが、物語の方向性にまとまりがなく、題材の持ち味を生かせずに終始してしまったように思う。もっと真摯に航空管制官という仕事を描けば、緊張感の高い秀作になったはずではと思う。 4点(2003-12-24 01:57:18) |
30. クローン
フィリップ・K・ディックの原作らしい秀逸なSFサスペンスが味わい深い映画だった。下手に大作ぶらずにB級的ではあるが、サスペンスフルに徹した雰囲気が非常に緊張感を高めたと思う。ラストにおける怒涛のどんでん返しには大満足だった。 [映画館(字幕)] 7点(2003-12-21 17:33:37) |
31. グランド・ホテル
タイトルがそのままその後の映画制作における手法の名前になっていることでも顕著なように、この手の映画の教科書的な完成度の高さが楽しめた。当時の世相を反映したそれぞれのキャラクターのドラマが秀逸。 7点(2003-12-21 13:39:10) |
32. グリーンマイル
触れ込み通りの感動的というよりも、ラストに集約される哲学的なストーリーが感慨深い。だから感動して泣く映画ではなく、ファンタジックなストーリーに裏づけされた人間の業を描いた映画と言える。 [映画館(字幕)] 8点(2003-12-13 20:41:26) |
33. グラディエーター
物語のスケール、映像的な怒涛の迫力は大作の名にふさわしく、壮大な映画であることは間違いないのだけれど、それほどの印象深さがない。面白かったし、もう一度観ても面白いという感想は変わらないだろうけど、あまり心に残ることはないだろうと思う。 7点(2003-12-03 13:19:33) |
34. グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち
おそらくツボにはまった人にとっては忘れられないほど感動的な映画なのだろうけど、私はいまひとつ入り込めなかった。人物のキャラクターやストーリー展開にどこかありきたり感が拭えなかった。主人公の親友役のベン・アフレックは好演をしていたが、彼の演技に好印象を受けたのは今作以外には無い。逆に、マット・デイモンは今作では拒否感があったけど、今作以降では良い存在感を見せている。今作で成功した2人であるが、その後の俳優としてのキャリアは、良い悪いは別にしてくっきりと異なっている。 5点(2003-11-08 02:10:58) |
35. グッドモーニング,ベトナム
題材は非常にドラマ性があり興味深いものであるが、好感を持つべきはずのロビン・ウィリアムスのキャラクターにどこか共感できず、終始客観的な視点から外れることがなかった。だから映画の性質のわりに、ほとんど感動がなかった。 5点(2003-10-31 03:20:13) |
36. 靴をなくした天使
観た後の印象は悪くはなかったけど、後に残るほどでもなかった。良い人を描いた良い話というのは、世間的にも印象に残らないものかもしれない。 [地上波(吹替)] 4点(2003-10-25 14:24:29) |
37. クール・ランニング
スポーツ観戦が大好きなので、この手の映画には基本的に甘くなるが、それを差っ引いてもこの映画の出来は良かった。何よりも実話をもとにした題材が魅力的である。風呂桶に入ってボブスレーの練習をするジャマイカ人の姿は、コメディとして、映画として、とても優れたシーンだった。この映画を観たことで、冬季オリンピックの度に、ボブスレーのジャマイカチームの成績が気になる人はとても多いはず。 [ビデオ(字幕)] 7点(2003-10-25 14:20:37) |
38. グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版
美しい映像というのは作品を語る上でよく出る言葉であるが、この映画の場合、素晴らしいものは、その美しい青である。海というものはその存在のみで美しく、素晴らしいものだが、その魅力を100%映像として引き出すのはとても難しいことだと思う。この映画の偉大なところは、海の青を、その魅力を全力をもって映しつけ、主人公の海に対する狂おしいほどの純粋な思いを描き出したことである。 8点(2003-10-16 01:36:26) |
39. クリムゾン・タイド
今作も原子力潜水艦映画を代表する作品で非常に良く出来ている。ストーリーや設定は娯楽性が強く強引な部分もあるが、それ抑えるデンゼル・ワシントン、ジーン・ハックマンの白熱の演技合戦がこの映画の最大の魅力であろう。 8点(2003-10-06 13:45:12) |
40. クレイマー、クレイマー
あまり集中して観ていなかったからか、主人公たちの感情が伝わってこなかったので感じるものがなかった。名作と言われ、ダスティン・ホフマン、メリル・ストリープという最高俳優の共演作だけにもう一度観る事があればまったく感じ方が違ってくると思う。 5点(2003-10-03 20:17:34) |