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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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1.  IT イット “それ”が見えたら、終わり。
原作未読。1990年のTVM未見です。 少年少女のドラマはよく作り込まれているし、恐怖場面での脅かし方もよく、特に前半部分は楽しめたのですが、終始テンポが一定であることや、脅かし方が基本的にワンパターンであることから長めの上映時間には耐えられておらず、同じことの繰り返しで途中からは飽きてしまいました。また、高校生の不良グループが小学生を全力でイジメにかかるという展開にも説得力がなく、さすがにあんなにダサいことをする不良はおらんだろと冷めた目で見てしまいました。テレビドラマ『True Detective/二人の刑事』で雑多な構成要素をまとめあげる見事な手腕を披露したキャリー・ジョージ・フクナガが脚本家として雇われているものの、原作に起因すると思われる弱点までは克服できなかったようです。 大絶賛されているNetflixの『ストレンジャーシングス』(スティーヴン・キング原作ではないものの、キングの要素を見事に再現していると評価された連続ドラマ)も私にはそれほどハマらなかったし、そもそもキングのジュヴナイルものが私には合っていないという気がします。
[インターネット(吹替)] 5点(2018-07-30 18:34:57)
2.  イエスマン "YES"は人生のパスワード
ダメな奴が人生を変える話かと思いきや、変化前の時点から主人公がそんなにダメな奴ではないんですよね。確かにひねくれてはいるものの、それについては離婚やら職場での冷遇やらで陰に入った時期にあるだけで、本来の彼は普通に楽しい奴だという前提が存在しているわけです。その証拠として、彼にはちゃんと友達がいるし、ご近所付合いもあり、飲みの席にしつこく誘われたりもします。本当に性根の部分からダメな奴なら友達なんていないし、周囲からも期待されていないから何かに誘われたりもしません。 上記の結果、振れ幅の小さな内容となってしまったためにドラマとしてもコメディとしても劇的な部分がほとんどなく、ハリウッドが得意とする「笑い込みのちょっといい話」というジャンルの中で埋没する仕上がりとなっています。豪華なメンバーが顔を揃えながらもこの程度の出来かと、少なからずガッカリさせられました。 とはいえ、良い部分もあります。物事に善悪をつけないニュートラルな作風が時に心地良いのです。ハリウッドではネガティブに扱われる傾向の強い自己啓発セミナーについて(『ゲーム』『マグノリア』『リトル・ミス・サンシャイン』etc…)、その功罪両面を描いているという点には特に興味を引かれました。妄信的にその方法論に頼ると失敗するものの、人生のある一局面を打開する劇薬にはなりうるという描写になっているのです。 また、恋人役のズーイー・デシャネルがこの役に完璧にハマっている点も評価できます。観客の誰もが美人と認識できる顔や雰囲気でなければラブコメとして成立しないが、かといって突出した美人だと作品に馴染まない。この点において、ズーイー・デシャネルは街で偶然出会ってもおかしくないレベルの美人さんであり(褒めてます)、かつ、このサイトのレビューにおいても顕著な通り、ほぼ満場一致で「かわいい」と認識されています。観客の側における顔の好みには結構なバラつきがある中で、ここまで全員からの支持を得ることって、実は大変なことだと思います。 そういえば、ジム・キャリーの才能のひとつとして、共演女優を魅力的に見せるという点が挙げられます。『マスク』のキャメロン・ディアスから『エターナル・サンシャイン』のケイト・ウィンスレットまで、それぞれからのキャリア史上最高の魅力を引き出している点は、もっと評価されていいと思います。
[インターネット(吹替)] 6点(2017-08-05 02:06:26)(良:1票)
3.  硫黄島からの手紙
上品なんだけどどこか残念だった『父親たちの星条旗』からは一転して、姉妹編のこちらは目が覚めるような傑作として仕上がっています。憲兵の振る舞いなど多少の事実誤認はあるものの、そうした欠点以上に見どころの多い作品ではないでしょうか。 日本人が戦争映画を撮ると「戦争とは忌むべきものです」という紋切型の主張がまずあって、戦後視点の後付けの理屈であの時代を描こうとすることから決まってつまらない作品が出来上がってしまうのですが、外国人監督が撮りあげた本作にはそうしたノイズが入っていないことから非常に見やすい作品となっています。あの時代の日本兵たちがどんな状況にあったのかを切り取ることのみに専念しているため、歴史映画として極めて優秀なのです。「天皇陛下万歳!」という日本映画界では決して不可能な一言をすんなりと言わせてみせた辺りに、その真価が表れています。 また、本作を見ているとなぜ日本が敗戦したのかがよく分かります。アメリカとの間の圧倒的な物量差のみならず、現場のリーダーを育ててこなかったという組織論的な問題も大きく影響しているのです。臨機応変な意思決定を下すための訓練を受けてきていない管理職達は厳しい戦況に対応できず、精神論のみに解決策を見出してどんどん内向きな思考となり、いよいよ事態が自身の対応能力を超えると「玉砕させてくれ」と言い出す始末。こちらの計画通りに物事を進められる勝ち戦ならば強みを発揮するが、負け戦で相手に主導権をとられた途端にテンパっておかしな行動を連発し始めます。この辺りは現在の日本の組織にも引き継がれている弱みであり、日本人論としても興味深く鑑賞することができました。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2016-11-18 15:46:36)
4.  インデペンデンス・デイ: リサージェンス 《ネタバレ》 
IMAX3Dにて鑑賞。 一足先に公開されたアメリカでは評価、売上ともに振るわなかったため、さほど期待せずに見たのですが、それでも落胆させられるほど酷い出来でした。ウィル・スミスは「5,000万ドルくれれば出るよ」なんて言って、まぁFOXが飲みようのない条件を出して本作への出演を辞退したわけですが、これは断られて当然の内容だったと思います。 舞台は前作から20年後。すなわち、映画の世界でも現実世界と同じ時間が経過しており、「もし1996年に宇宙人に襲われていたら、2016年はどのような世界になっていたか」というパラレルワールド的な楽しみのある設定なのですが、エメリッヒはそうした遊びを追求していません。前作で倒した宇宙人のテクノロジーを拝借して大気圏を飛び出す技術が進んだことと、武器が火薬からビームに変わったこと以外には特段の変化がないのです。あれだけショッキングな事件を経験したにも関わらず人々の意識はさほど変化していないし、がれきの山からの復興に人類は大変な苦労をしたはずなのに、そうした歴史をまるで感じさせられません。これではSF映画として失格でしょう。だいたい、大都市を狙い撃ちされて多くの人命を失ったにも関わらず、依然として大都市密集型の文明を継続しているとか、もうバカかと。 二度目の侵略が始まるかもしれないという前兆が見られ始めても人類のリアクションは少なく、パニック映画としても失格です。月に球体UFOが現れてもさほど驚くことなく、「撃ち落としたからよかったよかった。それよりも式典が大事」という素っ頓狂な反応を見せます。1996年に滅ぼされかけた経験は全人類にとってのトラウマになっているはずであり、20年ぶりのUFO再来は、人類は依然として宇宙戦争という宿命から逃れられていないことを想起させる重大事件だったはず。にも関わらず、それがアッサリと流されたことには大変な違和感を覚えました。 襲来してくるUFOは前作以上に巨大化しており、今回は大陸サイズのマザーシップが北半球をスッポリと覆ってしまいます。大きいことは良いことだというエメリッヒイズムもここに極まれりという感じですが、さすがにこれはやりすぎデカすぎ。そもそも資源の採取がこのエイリアン達の目的だったのに、これだけデカイUFOを作れるなら資源に全然困ってないだろと、根本的な部分でツッコミを入れたくなってしまいます。 第一波の攻撃を受けた後、敵の戦力をまともに分析せずすぐに大規模な反撃を仕掛けて貴重な残存兵力の大半を失うという、1996年と同じ失敗を今回も繰り返すアメリカ政府の大バカぶりには参ってしまいました。ま、エイリアン側も良い勝負のバカさ加減で、戦略的にまったく無価値なスクールバスを全力で追いかけるクィーンエイリアンの間抜けっぷりには呆れてしまいました。マザーシップを潰されるとシステム全体が停止するというバカ丸出しなエイリアンのシステムは今回も健在であり、だったらクィーンは絶対安全な場所に温存しておき、前線に行かせるのは兵隊アリだけにしておけよとか、アタッカーにコクピットがついている以上はパイロットが操縦しているはずなのに、クィーンを倒された瞬間にノーマットを焚かれた蚊の如くボトボトと墜落するのはおかしいだろとか、ツッコミどころ満載で見せ場にまるで集中できませんでした。 登場人物は増えているのですが、新規に追加されたキャラクターはことごとく魅力を欠いており、存在意義が不明なキャラクターまでいる始末。特に問題に感じたのは、クレジット上はトップに来るリアム・ヘムズワース演じるジェイクで、無鉄砲なエースパイロットという立ち位置は前作のヒラー大尉のポジションを引き継ぐものですが、本作にはもう一人の主人公としてヒラーの息子・ディランが登場する以上、ディランこそがその役割を担うべきでした。にも関わらずエースパイロットとしてジェイクが登場したことから、ディランとジェイクがお互いのポジションを食い合うという事態が生じているのです。立場の重複は他にも見られ、ホイットモア元大統領とオークン博士がエイリアンとの交信者役を同時にやっていたり、レヴィンソン博士とマルソー博士が共にエイリアンの計画を解き明かすブレーンのポジションにいたりと、無駄なキャラクターがやたらと目につきます。 本作を見ると、過不足なく揃えられたキャラクター達を通して地球侵略という大きな題材を破綻なくまとめてみせた前作が、いかによく出来た映画であったかがよく解ります。本作はさらなる続編を匂わせて終わりますが、さすがにもういいです。また、不自然な形で中国人キャストをねじ込んできたり、何の前触れもなく突然舞台が中国に移ったりといった、最近のハリウッド大作で頻繁に見られる中国ヨイショもいい加減にして欲しいと感じました。
[映画館(字幕)] 2点(2016-07-09 01:07:40)(良:3票)
5.  インベージョン 《ネタバレ》 
原作未読、1956年版未見、1978年版・1993年版は鑑賞済です。 おおよそ15~20年毎に映画化され、それぞれの製作年代の社会背景を色濃く反映するこの企画ですが、私が過去に鑑賞した1978年版・1993年版と比較して世相がもっともストレートに反映されたのがこの2007年版だという印象です。 「自我を捨てれば暴力も混乱もない平和な世界が待ってるよ」と言う侵略者に対して、「自我を失えば私は私じゃなくなる。そんな平和に価値は見いだせない」として断固抵抗するのが主人公なのですが、ここで興味深いのが、侵略者側の理屈ってアメリカ合衆国がイラクやアフガンでイスラム教徒に対して言ってることで、「民主主義は良いよ。男女平等は良いよ。欧米の価値観でみんな幸せになれるよ」と宣伝して回り、一見不合理であるイスラム教徒の価値観を頭ごなしに否定して紛争国を無理矢理にでもハッピーにしてやろうとする姿そのものだということです。一方、それに断固対抗する主人公は、「私たちには私たちの価値観があるのだ。それは何ものにも代えがたい」と言って一歩も引かないイスラム教原理主義者の姿と重なります。 思想による侵略の恐怖を描いた1956年版に始まって、この企画はアメリカ社会を被害者の位置に据えることが暗黙の了解となっているのですが、本作は初めてそこを逆転させ、アメリカ合衆国が他国に対して行っている侵略行為をSFというフィルターを通して描く企画となっています。SFを現実社会の合わせ鏡として考えると、これは最高のSF映画ではないでしょうか。さらには、過去の映画化作品を利用して観客の側に先入観を抱かせ、それとは正反対のものを見せてくるという裏切り方もよく、観客の知的好奇心を刺激するという点で、きわめて優れた作品だと思います。この驚天動地の発想の転換は、第二次世界大戦後にアメリカによる占領政策を受け、前世代のやってきたことを全否定する代わりに平和と繁栄を得たドイツ人監督ならではのものではないでしょうか。 ただし、上記の趣旨が上層部の逆鱗に触れたのかどうか分かりませんが、本作は完成後にワーナーから大幅な撮り直しを命じられ、それを拒否した監督は解雇。当時『Vフォー・ヴェンデッタ』でワーナーと仕事をしていたチームがピンチヒッターとして雇われ、ウォシャウスキー兄弟が脚本を、ジェームズ・マクティーグが監督を担当して後半部分をまるまる撮り直すという措置がとられました。その結果、スケールの大きな見せ場は追加されたものの、社会的な考察は薄められたように感じます。前半と後半で作風がまるで変わってしまうことの違和感は相当なもので、これだけ不自然な映画はブライアン・ヘルゲランド監督が解雇された『ペイバック』以来です。オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督が最初に完成させたディレクターズ・カット版を見てみたいのですが、興行的にも批評的にも大敗した本作では、それも難しいのでしょうか。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2016-01-19 15:01:08)(良:1票)
6.  イングリッシュ・ペイシェント 《ネタバレ》 
文芸作品としての上品な風格とハリウッド映画らしい大作感を両立した作品であり、そのルックスはほぼ完璧。「これは何か賞をやらなければ」と思わせるだけの仕上がりだし、一方で同年には他に突出した作品がなかったこともあって、作品賞を始めとするオスカー大量受賞には納得がいきます。アカデミー会員が求めるものを、ほぼパーフェクトに充たした作品なのですから。ただし「面白いか?」と聞かれると、これはちょっと微妙と言わざるをえません。 ざっくり言うと不倫で身を持ち崩した男の話なのですが、その舞台が第二次大戦前夜というキナ臭い時代だった上に、登場人物達の背景に国際的な諜報戦も絡んできたことから悲劇は雪だるま式に折り重なっていき、最終的には大勢の人の死に繋がっていくという劇的な展開を迎えます。そのまま映画化すればさぞや面白かろうという内容なのですが、厄介なことに、監督とプロデューサーは恐らく意図的に娯楽性の高くなりそうなポイントを外してきています。本作の評価はこの点をどう受け止めるかにかかっており、この手の文芸作品が好きな人にとってはストーリーテリングにおけるこの独特な取捨選択がハマったのかもしれませんが、それ以外の観客にとっては、盛り上がりそうで盛り上がらない中途半端な展開にフラストレーションが溜まる結果となっています。 具体的には、足を負傷したキャサリンを砂漠の洞窟に残して救助を求めに出て行ったアルマシーが、その国籍ゆえにスパイ容疑をかけられてキャサリンを助けに戻れなくなるというくだり。タイムリミットサスペンスの要素とも相まって、詳細に描けばかなり面白くなったであろう展開なのですが、監督は驚くほどアッサリとこのパートを流してしまいます。その過程において売国行為にまで手を染めるという、アルマシーにとって分岐点となったイベントも簡単なナレーションのみで片付けられており、その意思決定の時点でアルマシーが抱えていたジレンマはほとんど描かれません。監督によるこの取捨選択には大きな疑問を持ちました。 他方、無駄に感じたのが看護師ハナの物語全般です。映画は現在パート(1944年)と回想パート(1938年)を行き来しながら進行するのですが、現在パートにおけるハナと爆弾処理兵キップとの恋愛が本筋にうまく絡んでいない上に、この物語がさして面白くもありません。ハナとキップは登場させず、間接的に加害者となってしまったアルマシーと、アルマシーの売国行為によって重大な損害を受けたカラヴァッジョの対話を現在パートの基礎とした方が全体的な話の通りは良くなったような気がします。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2016-01-18 19:18:00)
7.  イン・ザ・カット 《ネタバレ》 
これは女性の性の開放を描いたフェミニズム映画ですよね。主人公姉妹が対になっていて、妹は結婚願望・愛されたい願望の塊で、既婚男性に騙されたのに相手への思いを断ち切れず、ストーカーになってしまいます。女性から見たバカ女ですね。一方、姉は異性との付き合いなんて厄介事が増えるだけだし、基本オナニー、時々セックスで欲求が満たされれば充分と考えています。そのため、愛を求めてくるケビン・ベーコンは捨てられ、セックスだけのマーク・ラファロは残されました。また、女性に対する暴力に対して、男への精神依存度の強い妹は負けましたが、自立した女性である姉は勝った。本作では随所に対立構造があり、それらによってテーマがわかりやすくなっています。そういえば、本来はJJリーが姉役でメグが妹役だと思うのですが、あえてその逆をいった配役も面白いですね。 この映画になぜメグ・ライアンという意見もあるようですが、私はメグの出演は必然だったと思います。 90年代のメグはロマコメ(死語)の女王だったし、落ち目だった頃のデニス・クエイドに寄り添い、彼をヤク中から立ち直らせた良妻としても評判でした。しかし、『プルーフ・オブ・ライフ』の現場でラッセル・クロウと不倫したことで、そのパブリックイメージは崩壊。それまでの陽のイメージが強かった分だけ不倫の反動は強く、ビジネス的にはもうロマコメをやれなくなったのですが、一方で個人的には「10年も良妻をやってきたのに、たった一度の不倫でここまで叩かれるの」という思いもあったことでしょう。そこに、女性の性の開放を訴える本作がやってきたわけです。これはニコール・キッドマンが95年から温めてきた企画であり、彼女の初プロデュース作でもあります。そんな大事な企画でありながらも、今のメグが演じるべきとして気前良く譲ったニコールの男前っぷりには感心します。 問題は、映画として全然面白くなかったこと。猟奇殺人事件とそれに絡む犯人探しがどうでもいい上に、主題にもうまく馴染んでおらず、さらにはドンデン返しにも大したサプライズがなくて、メグが脱ぐシーン以外では眠くて仕方ありませんでした。隠語を吐き、全世界に裸をさらした挙句に「痛々しい」だの「乳が垂れてる」だの言われたメグはお気の毒でしたが、人生、ダメな時はそんなもの。一方、7年も企画に携わりながらギリギリでイグジットした当時のニコールの強運には驚かされます。
[DVD(吹替)] 4点(2015-08-30 01:58:16)
8.  インターステラー 《ネタバレ》 
IMAXにて鑑賞。近所のIMAX上映館では吹替上映がなかったので、やむなく字幕版での鑑賞となったのですが、これが大失敗でした。本作は物理学者が原案を担当した作品だけあって、そもそもが難しいお話なのですが、ノーランはこれを説明する際にビジュアルイメージとセリフを同時に用い、観客に目と耳をフル稼働させて話を理解してもらうという方法をとるため、視覚のみですべての情報を入手する字幕版では無理が出てしまうのです。この映画のセリフには耳慣れない用語が多く含まれるため、字幕を流して読むということができません。セリフを理解するためには字幕に集中する必要があるのですが、そうすると画面で起こっていることを見逃してしまう。ならばと画面に集中するとセリフが頭に入ってこない。私の脳の限界が試されているかのような鑑賞体験でした。。。 以上の事情から、お話は7割ほどしか理解できなかったのですが、それでも映画は十分に楽しむことができました。ひとつひとつのイベントの盛り上げ方がうまく、手に汗握るような場面が多くあるので、話が分かっていなくてもほぼ問題なく楽しめてしまうのです。さらにはドラマパートにおける情緒的な演出も素晴らしく、クリストファー・ノーランの演出の豪腕ぶりには恐れ入りました。さらには、ノーランのネームバリューを駆使して集められた豪華俳優陣の使い方も見事なもので、父性の塊のようなマイケル・ケインをマッドサイエンティストに、使命感溢れる探検家にしか見えないマット・デーモンをキ○ガイ役にするというドンデンにも大変な意外性がありました。。。 脚本もよくできています。序盤にてボロボロになった地球での暮らしを見せ、そして宇宙へと飛び出していく。ディストピアSFと宇宙探険ものというSF映画における2大ジャンルを組み合わせて一つの作品にしてしまうという欲張りな内容には満足感があったし、これらを違和感なく折衷してみせたジョナサン・ノーランの構成力の高さには目を見張るものがありました。さらには、親子のすれ違いという普遍的なテーマを作品の柱とし、宇宙規模の物語をひと組の親子の物語にまで収斂させて感動を呼ぶドラマを作り上げているのですから、これは驚異的な仕事だと思います。伏線を丁寧に回収し、序盤と結末が綺麗につながるという全体のレイアウトも好印象でした。
[映画館(字幕)] 8点(2014-11-24 02:25:46)(良:1票)
9.  イコライザー 《ネタバレ》 
元CIAの殺し屋が街に蔓延る外国籍マフィアを一掃する話と聞くと、私はスティーブン・セガールの『死の標的』を思い出すのですが、一方で本作の主演はデンゼル・ワシントン。どうやってもタダの人間には見えなかったセガールとは違い、演技力のあるデンゼルが主人公役を演じることで一般社会に紛れ込む偽装パートの説得力が増しており、さらにはそのことが成敗パートのカタルシスにも繋がっていることから、B級素材のアクションと演技派俳優の食い合わせの良さをあらためて実感させられました。デンゼルとリーアム・ニーソンには、これからもB級アクションの世界で頑張っていただきたいと思います。。。 内容は、あらすじを聞いて期待する以上のものとなっています。主人公が街のマフィアを成敗して終わりかと思いきや、成敗はたったの19秒で終了。その後、敵対組織による襲撃と勘違いしたロシアン・マフィアがスペツナズ出身の殺し屋を送り込んできたことから、東西殺人マシーン対決というアクション映画ファンにとっては夢のような展開を迎えます。もう最高でした。主人公が時計のような正確さで人を殺すのとは対照的に、ロシア側の殺し屋は狂犬のようなしつこさで恐怖を撒き散らします。両者とも素晴らしいキャラ立ちをしていました。。。 B級アクションながら、脚本のレベルもかなり高いものとなっています。元はラッセル・クロウ主演作として企画されており、その頃にはポール・ハギスも脚本に参加していただけに、脚本はかなり練り込まれているのです。お互いの素性が分からない段階での情報の取り合い、相手がタダモノではないと分かった後での腹の探り合い等、バイオレンス以外の部分が非常によく機能しているため、ここぞという時の見せ場にも勢いが生まれています。見せ場についても、主人公による職人技のような殺人スキルの連続には興奮しまくりでした。頑なに銃を使わず、有刺鉄線で敵の首を吊ったり、高枝切りバサミで頚動脈を切断したり、ハンドドリルで頭蓋骨に穴をあけたりと、あくまで勤務先のホームセンターにあるもので敵を血祭りにあげるというDIY精神には頭が下がる思いがしました。。。 映画は続編を匂わせて終了しますが、このクォリティを維持できるのであれば、バイオレンス映画の新たな名物シリーズになるのではないでしょうか。
[映画館(字幕)] 8点(2014-10-25 20:56:06)(良:2票)
10.  インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
アン・ライスは5歳の娘を病気で亡くしたことの絶望から『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の執筆を開始しましたが、その際には、生きる目的を失い、死人同然となった当時の自分の姿をルイに、厳しい運命を受け入れた上で自由奔放な生き方を選択するという、自分にとっての憧れの姿をレスタトに反映させたと言います。この点に注目して本作のキャスティングを見ると、なかなか意義深いものを感じます。ルイを演じるブラッド・ピットはレスタト役のトム・クルーズとたった1歳差であるにも関わらず、キャリア的には10年の遅れをとっていました。仕事がない時期にはストリッパーの運転手までして食い扶持を得ていた苦労人であり、厳しい下積みを経てようやくキャリアに日の目を見はじめたのが本作製作当時のピットの状況だったのです。対するクルーズはデビュー直後からヒット作に恵まれ、さらにはオスカー受賞作への出演も多いという正真正銘のスターでした。当時の状況を比較すると、両者はまさに陰と陽。ルイとレスタトを演じさせるには最高の組み合わせだったと言えます。クルーズが企画に参加する以前にはダニエル・デイ・ルイスやルトガー・ハウアーがレスタト役の候補として上がっていましたが、彼らではクルーズとピットのような微妙な関係性を見せることは出来なかったはずです。。。 以上、本作はキャスティング面では成功を納めているのですが、残念ながら肝心の内容はイマイチでした。美青年ヴァンパイア達の美しいお姿と、彼らのホモっぽい日常を見せることに全力を投入しているために、ホラーとしてもドラマとしても突っ込みが甘いのです。前半においてルイは、自分が生きるためには他人を殺さねばならないという宿命に心を痛めていましたが、後半部分ではその話題は映画から完全に姿を消します。数百年間、彼は人を殺しながら生き続けてきたわけですが、そのことに対する後悔や反省というものがまったく描かれないのでは、前半と後半でドラマが断絶していると言わざるを得ません。また、数百年を生きるヴァンパイアのドラマでありながら、時代の変化を目で見せる工夫がなされていないために、設定の美味しい部分が死んでしまっています。基本的な演技も演出もしっかりしていただけに、設定を煮詰めきれなかった脚本の不出来が悔やまれます。
[DVD(吹替)] 6点(2013-04-19 22:30:48)
11.  インシディアス 《ネタバレ》 
『ソウ』のチームが手掛けた作品なのですが、露骨な暴力や残酷描写は皆無に等しく(バイオレンスに厳しいアメリカ国内においてもR指定を免れている)、「見えてはならないものが見えてしまった」という雰囲気もののホラー映画です。『ソウ』とは正反対の方向性に挑んだ作品だったわけですが、これが実によく出来ており、この監督は意外と引き出しの多い人なんだなぁと感心しました。ショックシーンのタイミングや見せ方はほぼ完璧だし、ドラマパートの演出も実に丁寧で好感が持てます。謎の引っ張り方や伏線の織り込み方は『ソウ』で披露した通りの手腕であり、全編に渡ってほぼ欠点が見当たりません。本作はアメリカにおいてかなりのヒットとなり、最終的には製作費の60倍を超える興行成績をあげるに至った作品なのですが、確かに客を引っ張ることのできるクォリティに達していると思いました。。。 ただし、日本人にとってはわかりづらい恐怖であったこともまた事実。『エンゼルハート』を観た時にも感じたのですが、「敵が悪魔でした」というオチは、日本人にはなかなかピンときません。霊能者のおばさんが謎の核心に触れ始めた辺りから、急激に冷めてしまいました。映画としての完成度は評価しつつも、感覚的に理解できない部分が多かったので6点が妥当かなと思います。
[DVD(吹替)] 6点(2013-03-04 01:09:04)(良:1票)
12.  インモータルズ/神々の戦い
脚本が平凡な上に監督がストーリーテリングに無関心なようで、お話しはまったく面白くありません。前半は「つまらん映画だなぁ」と思いながら観ていたのですが、ギリシャ軍vsハイペリオン軍の合戦がはじまると突如として面白くなりました。圧倒的兵力を見せつける敵にひよった自軍を鼓舞する演説はこの手の映画にありがちなのですが、本作はこれを意外なほどかっこよく演出してみせています。多くの兵が入り乱れる合戦は大迫力だし、満を持しての神様戦隊登場は笑ってしまうくらいかっこよく決まっていました。ここまでやってくれれば大満足、前半のつまらなさはクライマックスですべて帳消しになりました。。。 美しさを伴う残酷描写にスーパースローの多様と、ターセム・シンの画作りはザック・スナイダーとよく比較されますが、コミックのカットの忠実な再現を目指すザック・スナイダーに対して、動く絵画を目指すターセム・シンの画作りはより高度。『ザ・セル』を観た時には”小さなリドリー・スコット”という印象を受けたのですが、本作を観るにターセム・シンは映像派と呼ばれる監督群の中でも独自のポジションを確立しつつあるようです。そろそろまともな脚本を受け取って、ラッセル・マルケイ化する前に代表作を作って欲しいものです。 
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2012-07-16 16:49:03)(良:1票)
13.  イーグル・アイ
冒頭から、まんま「ウォーゲーム」。ジョン・バダム作品を多くプロデュースし、監督としてもジョン・バダムをリスペクトしてやまないDJカルーソ監督作品は、超古臭い80年代SFアクションでした。「人類は頭悪いし、これからは俺が管理してやるよ」という伝統的なお節介AI大暴れムービーなのですが、なんの捻りも工夫もなく、80年代そのままの脚本で勝負するという大胆さには驚かされました。何から何まで予定調和、最後まで予想を裏切りません。役者は悪くないし、見せ場もよく作りこまれているだけに(前半と後半の両方にド派手な見せ場を仕込んでおく卒のなさには感心)、お話しの方がもう少し何とかならんかったかなという印象です。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2012-05-01 00:17:03)(良:2票)
14.  インデペンデンス・デイ 《ネタバレ》 
【2011.12.9 レビューを変更しました】 これまでさんざんバカ映画だとこき下ろしてきた本作ですが、今回の鑑賞で考えを改めました。これは決してバカ映画ではなく、練り上げられた傑作シナリオを一般受けする形に味付けし直した作品のようです。エスねこさんが詳しく書いておられますが、この映画はキャラクター造型が抜群に優れています。私が特に注目したのがホイットモア大統領で、支持率が地に落ち、指導者としてのプライドも目標も失ってしまったダメ大統領として彼は登場します。決断力がなく、部下が言い争いをはじめても言葉ひとつ発することができない、記者発表も当然原稿を読み上げるだけ。デストロイヤー飛来から攻撃までには丸一日あったにも関わらず彼は初動を完全にミスり、数千万の国民と自身の妻の命を失ってしまいます。挙句の果てに反撃作戦も大失敗に終わり、貴重な兵力をも大幅に失ってしまう始末。そんな彼でしたが、妻の臨終を看取り、残された幼いわが子を見て「この子と、この子が生きる世界は自分が守らなければならない」と腹を括ったことから、リーダーの本分を取り戻します。リスキーな奇襲作戦に独断でGOサインを出し、世界中の残存兵力をテキパキとまとめはじめるのです。人類の存亡を賭けた一大作戦を前に、原稿ではなく自分の熱い思いをぶつけた演説のかっこよさは、映画史に残ると言っても良いでしょう。この役柄を、印象の薄い二枚目だったビル・プルマンに演じさせたキャスティングも絶妙で、彼がどんどんたくましくなっていく様は、この映画が優良なドラマ作品であることを証明しています。キャスティングで言えば、当時まだスターではなかったウィル・スミスを主演に据えた判断も神がかっています。彼の演じるヒラー大尉は、エリート軍人ではあるものの婚約者がストリッパーであるために出世の道が閉ざされつつあるという設定。しかし彼は婚約者とその連れ子を心から愛し、軍人としての夢よりも彼らとの生活を優先するという根っからの善人なのです。そんな彼の性格の良さ、常に前向きで一直線なところがエリア51に集まった負け犬達の心に変化を与え、やがて一大作戦を成功に導くこととなるのですが、これを演じるにはウィル・スミスは最適な俳優でした。今でこそ彼はスターですが、96年当時、大作経験のなかったウィル・スミスによくぞこの大役を任せたものだと感心します。
[映画館(字幕)] 7点(2011-12-16 10:44:23)(笑:2票) (良:2票)
15.  陰謀のセオリー 《ネタバレ》 
【2011/10/24レビュー変更しました】 「リーサル・ウェポン」トリオによる作品ですが、撮影監督にジョン・シュワルツマン(マイケル・ベイとよく仕事をする人)、音楽にカーター・バーウェル(コーエン兄弟のすべての作品に関わっている人)、編集にフランク・J・ユリオステ(ポール・バーホーベンと組むことが多い人)と芸術面を支えるスタッフを大幅に一新しており、「リーサル・ウェポン」とは違った映画を作り出そうとする意欲的な姿勢が伺えます。当時気鋭の新人だったブライアン・ヘルゲランドによる脚本はなかなか秀逸で、大胆ではあるが細部まで丁寧に作り込まれています。 東スポレベルの陰謀論を一日中しゃべりまくり、我が家に帰るにもマトモな入口からではなく非常口から出入りし、冷蔵庫の中の食品にまで鍵をかけるジェリー・フレッチャーは完全にキ○ガイなのですが(自分が監視されていると思い込むのはパラノイアの典型的な症状)、ある日彼が拉致されて重傷を負い、そしてその言葉通りに鼻をケガした男が現れたことから、彼の背後には何かがあるということが明らかになります。ジェリーは”Can't Take My Eyes off of You”というアメリカ人なら誰もが知っている有名な曲を知らず、また教科書に載っているためアメリカ人なら誰もがその内容を知っている「ライ麦畑でつかまえて」を読んだことがないと言います。彼の過去には一体何があったのか?この魅力的な序盤で完全にやられました。中でも「ライ麦畑~」の使い方はトンチが利いています。「ライ麦畑~」は古典であるが故にどの書店にでも置いてあるが、古典であるが故に今更買ってまで読む人はいない。ジェリーはこの「ライ麦畑~」を見ると必ず購入するよう擦り込まれており、その購入記録が彼の追跡装置の役割を果たしているというわけです。どうです、このアイデア。本作はこのような素晴らしいアイデアに溢れていて、映画の前半は出色の面白さです。残念なのは後半急速に息切れをすることで、起承転結の「転」の部分で映画がコケてしまいます。ジェリーこそが危険な暗殺者であるとしてアリスは一時的にDr.ジョナスの側に回るのですが、ここで映画は観客の価値観までを振り回すことに失敗しています。さらには、いとも簡単に過去の記憶を取り戻すジェリー、プロの工作員による追撃から全力疾走だけで逃げ切ってしまうアリスなど、後半になるとご都合主義もかなり目立ちます。
[DVD(字幕)] 7点(2011-10-25 00:00:38)
16.  イナフ 《ネタバレ》 
午後のロードショーでやってたのを録画して鑑賞しました。往年の名作からD級アクションまでを幅広く扱う午後ローでは必然的に視聴者の懐も広くなるものですが、そんなオープンな気持ちで鑑賞してもこの映画はよく理解できませんでした。DVに苦しむジェニロペが子供を連れて旦那から逃げるという話なのですが、その行動がいちいち頭悪すぎ。警察に届ければ根本的な解決に至らなくとも一応の歯止めにはなるし、届け出の事実によって後の親権裁判も圧倒的有利に進むはず。なのに彼女は「子供を連れて姿を消す」という最悪の方法をとってしまいます。逃げるなら逃げるで旦那が仕事に出ている昼間に姿を消せばいいものを、深夜にこっそり夜逃げしようとして案の定旦那に気付かれてしまうという大馬鹿ぶりを披露。以降は旦那による常軌を逸した追跡が開始されるのですが、これについても「警察に駆け込めば解決するだろ」の連続で呆れてしまいます。バカとバカの追いかけっこの末いよいよ追い詰められたジェニロペはようやく弁護士の元に駆け込むのですが、すると「あんたの行動がメチャクチャすぎたんで、今さら裁判やっても勝てませんよ」と至極当然のことを言われます。ひどく落ち込むジェニロペ。しかし、DV男にかわいい娘を渡すわけにはいかない。そこで思いついたのが「格闘技を習得し、旦那とサシの勝負でケリをつける!」。もう理解不能でした。つっこみすら入れられない驚愕の展開。訓練に励むジェニロペの表情が真剣そのものなのが、さらにトホホ感を高めます。旦那の殺害に無事成功し、駆けつけた警察もうまく誤魔化し、笑顔を失っていた娘も元の良い子に戻り、次の旦那候補は良い人そうだし、すべてめでたしめでたしで映画は終わるのですが、格闘技の特訓をしていたことが分かれば故殺は成立しますよ。。。この映画、DVという重いテーマを扱っているのにその理解があまりに不足しています。DVは「逃げれば済む」という単純な話ではなく、被害者である女性と加害者である男性が精神的に依存し合っているために、逃げればいいのに逃げないという点が問題だったりします。「やられたらやり返せ!」と斬り返せる女性は一般的なDV被害者の人物像からはかけ離れています。そもそもジェニロペはたくましすぎて「耐え忍ぶ妻」には全然見えないし。テーマがテーマなので、もっとマジメに作るべきでした。
[地上波(吹替)] 3点(2011-01-19 22:21:48)(良:1票)
17.  インサイド・マン
冒頭、クライブ・オーウェン演じるラッセルは「自分達は完全犯罪の方法を思いついたから、それを実行したのだ」と自信満々に語りますが、これは本作のアイデアを思いついた脚本家からの言葉と考えてもいいでしょう。その自信の通り、本作に描かれる銀行強盗の手口は完璧です。人質に犯人グループと同じ服を着せることで警察による突入を回避し、犯行現場からの脱出までを可能とする。この大胆な発想だけでもアクション映画が一本撮れてしまうほど魅力的なのですが、本作にはさらにアイデアが満載されています。強盗の被害者たる銀行が「ある事情」から決して被害を訴えないであろう品物のみを奪うことにより、被害者のない犯罪を成立させてしまう。犯人グループと警察の騙し合いは非常に高度で、こちらが激昂したと見せかけて相手の反応を確かめ、次の一手を考えるというやりとりが積み重ねられます。このゲームのプレイヤーとなるラッセルとフレイジャーのキャラクターもよく出来ていて、おまけにこのキャラクターを一流の俳優に演じさせることができたとあっては、本作の面白さは保証されたようなもの。最高に楽しめました。この手の映画を経験したことのないスパイク・リーの演出については不安があったのですが、彼はこの脚本を自分のものとしています。冒頭、わずか15分で主要な登場人物の紹介を終え、占拠された銀行という舞台を作り上げてしまう手際の良さには圧倒されました。並みの監督であれば本作をごりごりのクライムサスペンスとするところですが、リーはあえて気の抜けたコメディ演出を施しています。この演出が合わない、まじめなサスペンス大作とした方がよかったと思う方も多いと思いますが、一見気の抜けたような演出が知的なやりとりを際立たせる役割を果たしていて、私は有効だったと思います。デンゼル演じるフレイジャーなどは、下らない冗談を言ってヘラヘラしているように見えて、腹の中では相手を出し抜くための策を練っている最高にかっこいいキャラに仕上がっているではないですか。対するラッセルは終始クールですが、アルメニア語放送やなぞなぞでは完全に警察で遊んでおり、こちらもコメディ演出による援護がなければ、物語上意味をなさないトラップになる恐れがありました。当初はロン・ハワードが監督する予定だったようですが、生真面目なハワードではこの遊びをうまく処理できなかったでしょう。
[DVD(吹替)] 8点(2010-08-25 00:55:28)(良:1票)
18.  イベント・ホライゾン
製作側が意図しているほど高尚な作品に仕上がっているわけではありませんが、かといってB級と切って捨てられない魅力も放っており、ポール・W・S・アンダーソン監督作品においては、現時点における最高傑作だと思います。宇宙に行って気が狂うという物語は現在からするとありふれた題材ですが、本作の公開当時、エイリアンではなく精神世界を敵とするというアイデアは斬新であると評価されていました(本作の最初の脚本では、エイリアンが登場するはずだった)。また、それを表現するビジュアルは非常に秀逸で、船内の日用品がプカプカと浮く無重力の表現や、宗教的イメージと科学的合理性を両立したイベント・ホライゾン号のデザイン、死を連想させる炎の表現等はかなり目を引きます。生身で宇宙空間に放り出された人体の描写や、超高速での航行からクルーを保護するための水槽の存在等は、文系の私にはどれほどリアルなものかの判断はつかないものの、ともかく「リアルっぽい」雰囲気を出すことには成功しています。SF映画において「リアルっぽい」と感じさせることは重要であり、これに成功している時点で、本作は一定の完成度に達していると言えるでしょう。「ミッション・トゥ・マーズ」「レッド・プラネット」「サンシャイン2057」等、後に製作される宇宙映画には本作との類似点が多く指摘できる点でも、本作がSF映画史に残した功績は大きいものと評価できます。また、SFホラーであるにも関わらず地味な演技派を配置したキャスティングも当時としては異例でしたが、彼らの演技力がムダになっていない点も評価できます。製作当時若干31歳であり、代表作が「モータル・コンバット」だったアンダーソン監督が、よくぞ大人の俳優陣を使いこなしたものだと感心します。。。と、部分評価はできるものの(明確な欠点を指摘することの方が難しいほど)、全体としてそれほど面白い映画になっているわけでもないのが本作の問題点。物語は終始単調で、「いざクライマックス!」という煽りに欠けるために、不完全燃焼な印象を受けます。SFホラーなのですから、もっと爆発的な盛り上げが必要でした。
[DVD(吹替)] 7点(2010-08-03 20:34:19)(良:1票)
19.  イングロリアス・バスターズ
「ジャッキー・ブラウン」までの抜群の構成力は大きく買っていたものの、大金をかけてB級映画を作り直しはじめた「キル・ビル」以降のタラとは相性の悪い私ですが、残念ながら本作もイマイチでした。初期3作では、クセの強いキャラクターと、一筋縄ではいかない複雑なストーリーと、それらを効果的に見せるテクニックと、そして映画マニアならではの遊び心とが絶妙に絡み合った見事な手腕を披露していたものの、それ以降のタラは印象的なキャラクターで遊ぶことのみに特化し、映画を構成するその他の要素への関心を失ったかのようです。本作においてもその傾向は続いており、ランダ大佐を筆頭としたキャラクターの作り込みは良いものの、物語は恐ろしく単純で何の捻りもありません。この単純な内容で150分を超える上映時間は長すぎるように感じます。個性的なキャラクター達による長い長い会話も面白いことは面白いのですが、これは物語における効果的なタイミングで挿入されてこそ活きるもの。すべての場面でこれをやられ、会話が映画の中心となってしまうとさすがに飽きます。基本は物語で魅せて欲しかったです。映画館主によるミッションとバスターズによるミッションとが同時に進んでいるのですから、両者を巧く絡ませるということくらいは考えられなかったのでしょうか。片方のミッションが失敗しようとした時、もう一方のミッションの存在によって当事者達も気付かないうちに危機から救われていたとか、そのような展開がいくつかあれば映画は引き締まったはずです(「パルプ・フィクション」の頃であれば、こういう工夫も当然やってたんですけどね)。私が不満に感じるのは、才能が枯れてしまった監督が全盛期よりも劣る作品を発表するのなら納得できるのですが、緊張感に満ちた本作の冒頭などを見る限りタラの才能はまだまだ衰えておらず、その気になれば「パルプ・フィクション」クラスの映画をあと数本は撮れそうな状態であるにも関わらず、その才能の一部しか使わない映画しか撮っていないということ。次回作も恐らくは好きなジャンルで遊ぶだけの映画を撮るのでしょうけど、いつかはまた商品になる映画に戻って来て欲しいものです。。。最後に、本作に快く出演し、素晴らしい演技を気前よく提供したドイツ人俳優のみなさんの姿勢には感服しました。われわれも「パールハーバー」ごときで目くじらを立ててる場合じゃありませんな。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2010-08-01 20:06:36)(良:1票)
20.  インセプション 《ネタバレ》 
パンパンの期待で観に行ったのですが、その期待を完全に超えていました。知的で、そして燃える映画。私は完璧に満足しました。難解な映画と言われていますが、物語の骨子は大して難しくありません。ただし映画の雰囲気作りのため、小難しいセリフ回しや情報を提示するタイミングの操作によって観客をわざと混乱させる仕組みになっています。なかなかイヤらしい作りではあるのですが、これはキューブリックやリンチも用いている立派なストーリーテリングの技術だし、積極的に物語を読み解くことを要求された観客は、映画を理解する喜びを得ることができます。これは単純明快な娯楽作では得られない感覚であり、アート作品ならともかくSFアクションでこの感覚を得られたことは貴重な体験でした。また、監督は遊び心も失っていません。哲学的な作品ではありますが、007の大ファンだという監督は本作を燃えるアクション大作として撮っています。産業スパイが困難なミッションに挑む、そしてミッションはどんどん悪い方へと進んでいく、このミッションは成功するのか?高級なスーツを着込んだディカプリオが様になった構えで銃を撃つ姿はまんまジェームズ・ボンドであり(子供の名前もご丁寧に「ジェームズ」)、アフリカからNY(と思われる都市)、そして雪山へという舞台のバリエーションも007を思わせます。この監督のアクション演出は冴えに冴えていて、銃撃戦やカーチェイスは本家007を超えるほどの迫力とかっこよさ。そんな見ごたえ十分のアクションにSF的設定が突如割り込み、空間がビニョーンと歪む中での見たこともない格闘には大興奮なのでした。夢と現実では時間の流れが異なるという設定を活かしてタイムリミットサスペンスにしたこともアクションのスパイスになっており、制限時間が迫る中での戦いには本当にハラハラさせられました。そして素晴らしいのがラスト。詳しくは書きませんが、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかの判断を観客に委ねた素晴らしいラストには鳥肌が立ちました。本作にはその他にも解釈の分かれる点があり、そもそも現実として描かれているパートが現実である保証もないわけで、ビルから飛び降りた奥さんの判断が正しい可能性だってある。観客に多様な判断を楽しせる余裕まで与えた本作は、後々にまで語り継がれる映画になるはずです。
[映画館(字幕)] 10点(2010-07-23 17:21:34)(良:2票)
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