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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1893
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  FALL/フォール 《ネタバレ》 
人気ユーチューバーである女性2人が再生数を稼ぐために、今にも壊れそうな地上600mの古い鉄塔に登って行ったら、あら大変、頂上でおどけて動画を撮っていた時に地上に帰るための梯子が落ちちゃった!見渡す限り何もない地上600m、電波も届かないし、水も落としちゃったし、ハゲワシもそこら辺に飛んでるし、あたしたち、これからどーなっちゃうの?!というお話。それ以上でもそれ以下でもありません。シンプルイズベストにも程があるほどシンプルな内容なのに、いやー、これがめちゃくちゃ面白かった!!正直、観る前は「どうせオープンウォーターや海底47mを地上にしただけなんでしょ」と舐めて掛かってたんだけど、そんな自分の先入観をいい意味で裏切ってくれましたわ。何がいいかってまず、この主人公2人が思いっ切りおバカで自業自得なせいで一切同情する必要がないところ。死んだ恋人を弔うというよく分からん理由もあったけど、基本はただ目立ちたいってだけでこの危険な鉄塔に登ってますもん。だから2人がとにかく危険なことをやらかしても「ひえぇぇ!もうええて!お前ら、アホや!落ちても知らんで!」ととにかくスリル満点な映像を楽しむことが出来るんです。んで、この危険極まりない超高所という設定の見せ方も抜群に巧い!梯子を登るたびにボルトが外れたり風がびゅうびゅう吹きまくってたり頂上が2人ようやく乗れるだけのちっさな足場しかなかったりと、もー高所恐怖症の自分としては何度かおしっこちびりそうになっちゃいました。こんな、良い意味で早く終わってくれと思えた映画は久しぶりですわ。まぁ完全なる出オチ映画なのできっと中盤から先行作品と同じく中弛みするんだろうなと思ってたんですけど、意外や意外、脚本もけっこう良く出来てましたよ、これ。アンテナに引っかかったリュックを取りに行くときのハラハラ感や、偶然通りかかった男どもが超クソ野郎だと分かった時の絶望感だとか、けっこう見応えあったしね。特に自分、後半のあの相棒の真相が分かった瞬間は思わずゾクッとしちゃいました。いや、、、普通に怖いって、あれ。んでラストは普通に感動している自分が居ました。自業自得のバカ2人だったけど、最後はなんか生きることの大切さ、友情の素晴らしさを教えてくれたような気がします(マジで!笑)。ここまでハラハラドキドキした映画は久しぶりでした。うん、8点!
[インターネット(字幕)] 8点(2024-06-08 10:36:07)《更新》
2.  ブラックアダム 《ネタバレ》 
こーゆーヒーローごった煮映画ってマーベルで懲りたはずなのに、監督がわりかし好きなジャウマ・コレット=セラだったので今回鑑賞。やっぱりヒーローがごった煮で、なんか牛肉と豚肉と鶏肉しか入ってない水炊きを延々食べさせられた気分。白菜やえのきやマロニーみたいな心温まるエピソードやハラハラドキドキするサスペンスフルな展開も入れてほしいよー!まぁ映像はけっこうスタイリッシュで見応えあったんですけどねー。
[DVD(字幕)] 5点(2024-04-20 10:11:38)
3.  フェイブルマンズ 《ネタバレ》 
長年ハリウッドのエンタメ映画界を牽引してきた巨匠スティーブン・スピルバーグが、映画との初の出会いを果たした幼少期から大学を中退し映画業界へと足を踏み入れるまでの鬱屈した日々をノスタルジックに描いた青春物語。僕が子供の頃、何度も何度も夢中になって観た『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』という大傑作を撮った巨匠が自身の半生をモデルにした自伝的作品ということで今回鑑賞。というとやはりあの『激突』や『ジョーズ』、そして何よりインディ・ジョーンズシリーズといった初期の傑作群がいかにして誕生したのかというその制作秘話なんかが描かれるのかと思いきや、まさかの映画業界に入るまでで終わってしまいました。うーん、さすが巨匠の作品だけあって悪くはないんですけど、観ながら「これじゃない」感が……。映画製作の舞台裏がどんな感じだったのかとか、ハリウッド・スターたちとの交流とか、偉大なる先輩監督たちとの出会いとか、そっち方面がもっと見たかったよーー。とはいえ、ある家庭のあくまで個人的なお話なのにここまで面白く見せる、もはや匠の技とも呼べるその演出力の高さはやっぱ抜群の安定感。冒頭、映画のクライマックスシーンを再現しようとおもちゃの電車で遊んでいたらそれがいつの間にか映画そのもののようなドラマティックなシーンに変わっていたり、自身が撮ったホームビデオの映像から母親の裏切りを知ってしまうところとか印象的なシーンも多く、長い映画なのに最後まで退屈せずに観ることが出来ました。主人公が映画業界に入ってからを描いたこの続編が創られたら、そちらの方も観てみたいですね。って、もはやそれって『スピルバーグのえいが道(上京編)』みたいになっちゃいそうですけど(笑)。
[DVD(字幕)] 6点(2023-12-13 08:05:00)
4.  ブラック・フォン 《ネタバレ》 
1978年、デンバーの町は不穏な空気に満ちていた。何故なら〝グラバー〟と呼ばれる、少年ばかりを狙った連続殺人鬼が今もまだ捕まっていなかったからだ。残虐な犯人は、さらってきた少年をしばらく監禁すると酷い拷問を行った末に殺害し、遺体はまるでゴミのように捨てられる。グラバーは今日も町のどこかで獲物を求めて蠢いているだろう――。貧しい父子家庭に暮らす少年フィニーもまた言い知れぬ不安を抱えて生きていた。酒浸りの父は気に入らないことがあるとすぐ暴力を振るい、まだ幼い妹は精神的に不安定で常に目が離せない。そんなある日、恐れていた事態が起こる。ちょっと気を許した隙を突かれ、彼もまたグラバーに誘拐されてしまったのだ。薄汚れた地下室で目を覚ましたフィニー。そこにあったのは使い古されたベッドと年代物の黒電話のみ。「あいにくその電話は随分昔に壊れてしまって何処にも繋がらない」。不気味な仮面を被ったグラバーは、恐怖に怯えるフィニーにそう言い残し、地下室を出ていくのだった。このままじゃ僕も殺される!極限状況に追い込まれた彼に、さらなる不穏な出来事が起こる。電話線が切られたはずの黒電話が突如鳴りだしたのだ。恐る恐る受話器を取ると、受話器の向こうからありえない声が。なんとグラバーに殺された少年たちが彼に話しかけてきたのだ……。けっこう既視感満載のそんなオカルティックなスリラーなのですが、この全編を覆う重苦しい空気はなかなか良かったですね。小さな窓しかない完全防音の地下室に閉じ込められるというこの設定がとにかく最悪過ぎる!しかもそこに何故か置かれてある壊れた黒電話。誘拐された子供がもしかしたら助けを呼べるかもと期待を持たせるために敢えて置いてあると思うと胸糞さマックス。犯人が被る上下分割マスクは余りにも不気味でこの犯人の異常性を見事に視覚化しており、なかなかにセンスがいい。そして黒電話を通して話しかけてくる事件の被害少年たち……。ここら辺のホラー描写もベタながらけっこう怖かった。彼らが主人公に与えてくれるヒントが一見的外れかと思いきや、最後に全て回収される脚本も良く出来ている。ただ、惜しいのは物語の芯となる部分が弱いところ。特にグラバーの目的がいまいち分からないところが残念。何のために少年たちを何人もさらって殺すのか、その動機をもう少し踏み込んで描いていればもっとサスペンスが盛り上がったと思うのに。また全体的にスティーブン・キングの『IT』と設定が被ってしまっているのも残念。とまぁそこら辺に目をつむれば、この鬱屈とした雰囲気や禍々しいホラー描写などは普通に楽しめると思います。6点!
[DVD(字幕)] 6点(2023-07-19 07:47:11)
5.  プリズナーズ・オブ・ゴーストランド 《ネタバレ》 
最近見た、ニコラス・ケイジ主演のB級ホラーコメディ「ウィリーズ・ワンダーランド」がすこぶる面白かったので、同じニコジーの何とかランド繋がりで今回鑑賞。監督は、僕とは昔からあまり相性の良くない園子温。率直に言ってさっぱり面白くなかったです、これ。このオリエンタルとアメリカの西部劇っぽい感じを強引に同居させたような、いかにも無国籍でいかがわしい世界観もさっぱり嵌まらず。「ウィリーズ~」が、あの超絶バカバカしい内容にもかかわらずあれだけ面白かったのは監督のセンスと勢いとテクニックがあったからこそ。でも、本作にあるのは勢いのみ。センスはちょこっとだけ感じましたが、テクニックは欠片もありません。タマタマ爆弾やママチャリで荒野を行くニコジーとか、ところどころのネタが完全にすべってましたし。最後のグダグダ感なんて観ていて痛々しいほどでした。「ウィリーズ~」が余りにも面白かっただけに、残念!!
[DVD(字幕)] 4点(2022-10-01 04:06:34)
6.  フォールアウト(2021) 《ネタバレ》 
もはやアメリカでは日常茶飯事と化してしまった学校での銃乱射事件。ある日突然引き起こされるそんな凶行に巻き込まれたものの、何とか生き延びたとある女子高生のその後をリリカルに綴った青春ドラマ。冒頭の突発的に起こる犯行シーンはかなり凄惨で、妹からの電話に出たことでたまたま生き残ってしまったという主人公の苦悩は確かに分かります。同級生が無慈悲にも殺されてしまった教室でこれまで通りの生活を送るなんて到底できないと、次第に引きこもりがちになるのも理解できる。そんな彼女を見守る家族の葛藤もリアル。ただ、そこから物語として全く深化していかないのが本作の弱いところ。冒頭の衝撃から一転、その後は特に何事も起こらない淡い恋と友情のお話がただ淡々と続いてゆきます。恐らく監督は自分のセンスにかなり自信があるんでしょうね。だから、そんな平凡な日常を描いても自分の映像&音楽センスで充分観客を惹き付けられると過信したんじゃないでしょうか。確かにそこそこセンスは感じました。でも、あくまでそこそこレベルです。途中までは題材の現代性もあってそれなりに興味深く観ていられたんですけど、ずっと何処かで見たようなシーンがひたすら続くので自分は正直退屈に感じてしまいました。トラウマに苦しむのも分かるけど、だからと言ってここまで家族や社会に甘えてひたすら友達とダラダラされた日にゃ、「そろそろシャキッとせい!!」と説教しそうになりましたし。最後のオチも取ってつけたようで、銃社会という現代アメリカが抱える病巣に鋭く迫ったとは到底思えません。監督のそんな自己満足感が終始ハナにつくなんとも残念な作品でありました。
[DVD(字幕)] 4点(2022-09-12 08:04:31)
7.  プロミシング・ヤング・ウーマン 《ネタバレ》 
彼女の名は、キャシー・カサンドラ。何処にでもいるような平凡なフリーターだ。町の小さなコーヒーショップで働く彼女は、もうすぐ30になろうとしている。実家で両親と暮らし、特に夢や理想があるわけでもなく、長い間彼氏もいない。そんなキャシーだったが、彼女には誰も知らないとある秘密があった。それは、夜な夜な濃い化粧をして酒場へと出向き、そこで泥酔したふりをして寄って来たスケベな男どもに制裁を加えること。下心満々で近づいてきた男どもは、必ず彼女の仕掛けた罠にかかり恐怖の一夜を過ごすことになるのだ。だが、それは当然危険と隣り合わせの行為でもあった。なぜ、キャシーはそんな危険を犯してまで男どもを憎むのか?それは彼女がまだ医大生だった時に、親友だったクラスメイトがとある事件がきっかけで人生を台無しにされてしまったことが原因だった…。心に闇を抱えたある一人の女性の孤独な復讐を描いたサスペンス・ドラマ。若い女はとにかくヤる対象としか考えていない男どもへと、そんな執念ともいえる憎しみを抱く主人公を演じるのはキャリー・マリガン。確かに凄く良く出来たお話で彼女の鬼気迫るような演技もあって最後まで目が離せかったんですけど、やはり男としては何とも居心地の悪い映画でした。自分は男ですが、長い間世間で生きていると「女は頑張った自分へのご褒美だ」と真剣に考えているような男どもが圧倒的に多いなとは感じます。そんな横柄で醜い男に自分は絶対ならないでいようと思う反面、自分も欲求不満を感じたら普通にAVも見ますし、日常生活で女性を図らずも性的な目で見てしまうこともあります。この映画はそういう男性の習性を全否定してるんですよね。恋愛小説の名手と言われ自分も大好きだった女性作家、島本理生さんが代表作『ナラタージュ』の中で、「男のお〇んちんなんて全部ちょん切ってしまえばいい」と書いていたのを読んで正直引いてしまったことを思い出してしまいました。でも、そんな居心地の悪さを終始感じながらも、それでもこの映画を面白いと思えてしまうのは、この感覚がとにかく振り切れているから。「男ども、あんまり調子に乗ってるとそのうち大事なものをちょん切ってしまうぞ!それこそ命懸けでね」という痛快さがとにかく最高なんです。その矛先は、男社会にうまいこと順応して生きている女どもへも向けられているのもフェアで良い。主人公が心惹かれる優しい彼氏もまた同じような過去を持っていたなんて、この男への不信感はもはや徹底している。未だ根強く残る男社会への笑えない寓話として、僕は最後まで面白く観ることが出来ました。自分を含めた男たち、あんまり調子に乗りすぎないように気をつけよう!ちなみに自分、島本理生さんは今も大好きです。
[DVD(字幕)] 9点(2022-04-04 05:39:39)
8.  フェアウェル 《ネタバレ》 
アメリカで鬱屈した日々を送る中国系移民の学生ビリー。ある日、彼女の元に本国の親戚から哀しい知らせが届く。子供のころから優しくしてくれたお祖母ちゃんが、癌で余命幾ばくもないというのだ。両親とともにすぐさま中国へ帰ろうとするビリーだったが、何故か両親はお前は残れと言ってきかない。何故なら、中国では末期の癌と診断された者は告知せずに逝かせてあげようという伝統があり、すぐに感情を表に出してしまう彼女が来たらすぐお祖母ちゃんに悟られてしまうと親戚たちに判断されたらしい。到底納得いかないビリーは、両親とは別の便で密かに中国へと向かうのだった――。そうして帰って来た実家では、お祖母ちゃんに悟られないよう孫息子の結婚式という名目で親戚一同が会していた。戸惑いながらも彼女を迎え入れてくれる親戚とビリーの両親。そして、久しぶりに会ったお祖母ちゃんも心の底からの笑顔でビリーを出迎えてくれるのだった。孫息子の結婚式という建前で、形だけは和気藹々と進む一家団欒。そんな親戚一同の優しい〝嘘〟の行方は?末期癌を患う祖母とその家族の悲喜こもごもを終始淡々と綴ったファミリー・ドラマ。確かに、この大してドラマティックでもない平凡なお話を最後まで見せ切った監督の演出力の高さは素直に認めます。美しい映像に気品あふれる音楽、最後まで流れるように続くセンスのいい編集の仕方、そしてお祖母ちゃんをはじめとする役者陣のナチュラルな演技……、完成度の高さとしてはかなりの水準に達していると言って間違いはないでしょう。ただ、自分としては全く嵌まれませんでした、これ。正直、さして仲良くない知り合いの結婚式のビデオを延々見させられたような感じで、後半からは退屈で退屈で仕方なかったです。末期癌を患うお祖母ちゃんのために内緒で家族が集まるという肝心の設定も、物語として活かされていたかというと特にそんなこともなく、最後までひたすら普通。おじさんおばさんがただ飲んで喋って笑って泣くだけです。そして、最後に明かされる衝撃のオチ。いやいや、ここまで引っ張っといてそれかい!!と、僕は不謹慎を承知の上で突っ込んじゃいました。こういう『100日後に〇ぬワニ』みたいな手法は勘弁してもらいたい。というわけで、自分には全く合わない作品でありました。
[DVD(字幕)] 5点(2022-02-25 03:30:20)
9.  ブラックバード 家族が家族であるうちに 《ネタバレ》 
アメリカ郊外ののどかな田舎町に建てられた一軒の豪華な邸宅。そこで暮らすのは、医者である夫と二人で暮らす初老の女性リリーだ。ある日、そこに彼女の二人の娘、ジェニファーとアンナがそれぞれ夫とパートナーを伴って帰ってくる。目的は、週末のディナーをともに過ごすため。孫にあたるジェニファーの息子やリリー夫妻とずっと親友関係にあるリズという女性も加わり、楽しい夜になるはずだった。だが、彼らの表情は何処か不安げで隠し切れない哀しみに満ちている。何故なら、夜が明けるとリリーはもうこの世に居なくなってしまうから――。彼女は徐々に全身の身体機能が失われ、半年後には完全なる植物状態になることが分かっており、身体の自由が利くうちに自ら人生を終わらせることにしたのだ。そう、これはリリーが最後に過ごす家族水入らずのディナー。夫も二人の娘たちも母親の決断を容認し、最後は穏やかに逝かせてあげようと決意したはずだった。だが、夜も更けてゆくとそれぞれに抱え込んだ思惑が抑えきれなくなり、とうとう爆発してしまう……。尊厳死を決断した女性とその家族の最後の夜を淡々と見つめたヒューマン・ドラマ。アカデミー賞の栄誉に輝くベテラン女優スーザン・サランドンとケイト・ウィンスレットがそんな確執を抱えた母子を熱演しております。難病に侵された女性の尊厳死という大変重いテーマを扱っていながら、全体に漂う空気はほのぼのとしていてこのギャップが何とも言えない気持ちにさせられますね。死を決意した祖母を演じるスーザン・サランドンの、悲愴感を漂わせながらも微塵も同情を求めていないその凛とした佇まいがとても魅力的。彼女とケイト・ウィンスレットとのそれぞれの思いがぶつかりあう濃密な演技合戦はとても見応えありました。そして今回意外だったのは、次女役のミア・ワシコウスカ。精神的に不安定で自殺未遂を繰り返す問題児をリアルに演じていて、この二人に負けず劣らずの熱演を見せてくれます。この人、いつの間にここまでの実力をつけたんでしょうね。内容の方は、もちろん非常にデリケートな問題を扱っているので当然賛否が分かれるところ。でも僕は、善悪の彼岸を越えた、「永遠に分かり合えない家族の切なさ」を感じてとても心に染みました。最後、それでもそんな分かり合えない家族の元へと帰ってゆく登場人物たちの後ろ姿が何とも切ない。シリアス版『8月の家族たち』とも呼ぶべき、深い慈愛に満ちた良品と言っていいでしょう。
[DVD(字幕)] 8点(2022-01-07 02:00:50)
10.  FREAKS フリークス 能力者たち 《ネタバレ》 
彼女の名は、クロエ・リード。今年で7歳になるちょっと変わった女の子だ。なんと彼女は、唯一の肉親である父親から家に閉じ込められ、生まれてから一度も外の世界に出たことがないのだ。父が言う、「外の世界には恐ろしい者どもがたくさんいて、見つかろうものならすぐに食べられてしまうぞ」という言葉を素直に信じ、完全に外界から遮断された一軒家の中でずっと生きてきたクロエ。友達もおらず、ただ目張りされた窓から路上でアイスクリームを売るワゴン車を覗き見ることだけを楽しみに生きる毎日。「でも、やっぱり外の世界をこの目で見てみたい」――。いつしかそんな欲求を抑えられなくなった彼女は、ある日我慢できずに家のドアを開け、外の世界へと飛び出すのだった。果たしてそこには何があったのか?世界は本当に恐ろしいものへと変貌してしまったのか?そして、彼女に秘められた恐るべき〝能力〟とは?父親によって生まれた時から家に閉じ込められてきた少女の驚愕の真実を独自の手法で描いたSFドラマ。何の予備知識もなく、ただスピルバーグに見いだされた新たな才能といううたい文句に惹かれ、今回鑑賞してみました。最初こそ低予算感が漂っているし、奇を衒ったような演出が散見されるしで、ちょっとこれはどうなんだろうって思わせるものの、後半からの怒涛の展開には完全にやられちゃいましたね。いや、なかなかの掘り出し物ですよ、これ。とにかくこの考え抜かれた脚本の構成力!前半に散りばめられた数々の謎が全て、後半への伏線になっていたとは!いやー、これは是非ともネタバレせずに観て欲しい一本。それに映像的にもけっこうセンスを感じました。人の感情を操ったり時間を止めたりといった特殊能力を使うシーンやクライマックスでの軍人を遠隔操作するシーン(屈強なおっさんがママって言うとこなんて思わず笑っちゃいました)など、どれもすんごくカッコよかったです。特に、姿を消したお爺ちゃんが銃で撃たれ、その血が空中に滲み始めるシーンなんて、センス抜群で最高でした!スピルバーグに見いだされた才能というのも納得。この監督、すぐにマーブルあたりの大作映画に大抜擢されるんじゃないですかね。前半、状況説明をほとんどしてくれないところや父親があまりに横柄なところにちょっぴりイライラしちゃいましたが、僕は充分満足。将来が楽しみな新たな才能との出会いを素直に喜びたいと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2021-05-08 00:32:59)
11.  ブック・オブ・ライフ 〜マノロの数奇な冒険〜 《ネタバレ》 
メキシコでもっとも重要な祝祭、その名も死者の日。国中が先祖の霊を思い、家族の安寧を願うこの厳かな日を背景に、神々の賭けの対象となったある三人の男女の恋の行方をファンタジックに描いたCGアニメーション。ギレルモ・デル・トロが制作を務めているということで今回鑑賞してみたんですけど、なんか自分が思ってたのとだいぶ違ってました。彼お得意のダークでグロテスクな世界観は何処へやら、全編に渡ってもうやり過ぎなくらいポップ&ゴージャス&ドタバタ。印象としては、レゴムービーのメキシコ版って感じですかね。お話の方もとにかく色んなキャラがたくさん出てきてひたすら小ネタを繰り出してくるので、その度に集中力が途切れ、自分はいまいち入り込めませんでした。うーん、こればっかりは個人的な好みの問題なので如何ともしがたいですね。ただ、映像は終始キレイでクオリティが高く、そこは充分楽しめました。のちのピクサーの名作『リメンバー・ミー』に少なからぬ影響を与えたのかな。まあそんな感じです、はい。
[DVD(字幕)] 5点(2021-04-30 00:34:31)
12.  ふたりの映画ができるまで 《ネタバレ》 
映画監督志望の内向的な青年と自由奔放な美しい女優の卵。そんな対照的な二人の愛と情欲のぶつかり合いを描いたヒューマン・ドラマ。メガホンをとったのが、最近監督業にも熱心なベテラン俳優ジェームズ・フランコということで今回鑑賞してみました。率直な感想を述べさせてもらうと、クソつまんなかったですね、これ。全く魅力に欠ける登場人物たちが繰り広げる、くっついたり離れたりヤったりヤらなかったりというどうでもいいお話がひたすらダラダラダラダラ……。ヤマもなければ意味もない、オチも酷いというゴミみたいな脚本でした。J・フランコの監督作は何本か観てきましたが、どれも無駄におっぱいがたくさん出てくるのはこの人の個人的な趣味なんじゃないの?なんて思ったり。ま、観るだけ時間の無駄の完全なる駄作でした、はい。
[DVD(字幕)] 2点(2021-02-09 03:28:25)
13.  ブライトバーン/恐怖の拡散者 《ネタバレ》 
ある日突然、超絶的な悪の力を手に入れた12歳の男の子によって引き起こされた一地方都市の大混乱を、彼の両親の葛藤を絡めて描いたSFホラー。正直、さっぱり面白くありませんでした、これ。とにかく脚本が薄っぺらすぎて、中盤からのグダグダ感が半端ないです。それに登場人物誰もが最後までおかしな行動を取り続けるのも苦笑するしかありませんでした。特に、両親!明らかに息子がヤバいことなってるのに、今更殺人の証拠を捜すって遅すぎだっちゅーの!それに無駄にグロ描写が多いのもどうかと思います。おばさんの目にガラス片が突き刺さってるシーンなんてあまりに痛々し過ぎて、見ていてウゲッてなっちゃいましたわ。観るだけ時間の無駄の凡作というほかありません。
[DVD(字幕)] 3点(2021-02-01 20:05:52)
14.  プロジェクト・パワー 《ネタバレ》 
街に蔓延する謎のドラッグ、その名も「パワー」。その薬を呑んだものは、遺伝子レベルの体内覚醒により、様々な生物の特殊能力を手に入れることが出来るのだ。ある者はカメレオンのように体表の色を自在に変え、ある者はアルマジロのように銃弾を跳ね返すほど全身を硬くさせ、またある者はタコのように身体中の関節をぐにゃぐにゃにさせる……。超絶的な力を手に入れた〝超人〟たちが街に溢れ、社会を大混乱へと陥れる中、薬の供給元である謎の組織を追って、売人の少女、市警の私服刑事、元軍人がそれぞれの方法で謎に迫ってゆく――。という、まぁいわゆるマーブルの『X‐メン』なんかでもお馴染みのミュータントものなのですが、見せ方が巧いのでけっこう惹き込まれて観ることが出来ました。肝心の薬の正体をなかなか明らかにせず、最後までちょっとずつ小出しにしてゆく脚本もけっこうよく出来ている(若干イライラするけど!笑)。それぞれの方法で謎の組織へと迫ってゆく主人公を演じた、ジェイミー・フォックスやジョセフ・ゴードン・レヴィットといった人気俳優も華があって大変グッド。特に、敵味方双方のバラエティ豊かな特殊能力をCGで再現した映像は観ているだけでわくわくしちゃいますね。後半息切れしたのか、クライマックスに近づくにつれどんどんと脚本がグダグダになっちゃったのが残念でしたけど、まあエンタメ映画としては充分及第点。気軽に観る分にはそこそこ楽しめるんじゃないでしょうか。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-01-31 00:08:12)
15.  フェイフェイと月の冒険 《ネタバレ》 
最愛のママを病で亡くし、以来父一人子一人の家庭で育ってきた女の子フェイフェイ。それでも彼女は、大好きなお父さんとママが遺してくれたウサギのバンジーとともに哀しみを乗り越え、充実した毎日を過ごしてきた。そんな折、大事件が発生!なんとお父さんが見知らぬ女の人を連れてきて、彼女がこれからフェイフェイの新しいママになると言い始めたのだ。「そんなの絶対認められない!」――。まだママのことを忘れられないフェイフェイは、なんとしても父の再婚話を阻止するため、とっておきの方法を思いつく。それは幼いころにママから聴いた、月の裏側で今はなき恋人のことを想い続けている女神チャンウーが実在し、今でも最愛の人のことを忘れずにいると証明することだった。もともと科学の成績がトップクラスだったフェイフェイは、その日から月へと向かうロケットの発明に没頭するように。様々な苦難を乗り越え、ようやく月へと辿り着いたフェイフェイは、そこで女神チャンウーの本当の姿を知ってしまう……。月の裏側に住むという女神を追って月へとやって来た女の子フェイフェイの奇想天外な冒険を描いたファンタジック・アニメーション。あくまでファミリー向けの作品だと分かったうえで鑑賞してみたのですが、これがまあディズニーアニメの良いところを繋ぎ合わせただけの既視感バリバリの内容でした。どっかで見たようなキャラクターにどっかで何度も目にしたようなファンタジー・シーン、そしてどっかで何度も見たようなストーリーのてんこ盛り。だってストーリーや世界観はピクサーの『リメンバー・ミー』を中国に置き換えただけだし(あの光り輝く獅子の存在なんてまんまですやん!!)、主人公の飼ってるウサギもサンリオにそっくりな奴いてませんでしたっけ?あと脚本も詰めが甘い。フェイフェイが月に向かう理由がそもそも弱いんですよね~、これ。お父さんの再婚を阻止するためにわざわざロケットを開発して月に旅立つって、それよりも簡単で手っ取り早い方法がいくらでもあるでしょーが(笑)。わざわざ月の裏側に行くのなら、お母さんを生き返らせることが出来るくらいの理由がないと説得力がありませんって。とは言え、蛍光色を基調とした映像はすこぶるキレイで全編に流れる楽曲もぼちぼち良かったんで5点!
[インターネット(字幕)] 5点(2020-12-18 22:00:18)
16.  フッド ザ・ビギニング(2018) 《ネタバレ》 
中世イギリスの伝説的義賊、ロビンフッドの誕生秘話を現代的な解釈で描いたエンタメ・アクション。これまで何度も映画化されてきたこの有名なヒーローを今回演じるのは、『キングスメン』でのぶっ飛んだアクションが記憶に新しいタロン・エガートン。このベタな題材をあくまでスタイリッシュかつスピード感溢れる展開で魅せようという本作の意図は分かりやすくて大変グッド。一つ一つのアクションシーンは普通にキレが良くってなかなか楽しめました。まあちょっとやり過ぎな感じがするのはご愛敬ですけど。だって、冒頭の十字軍遠征のシーンなんて現代的に撮ろうとするあまり、銃が弓矢になっただけでもはや『プライベート・ライアン』の冒頭シーンにしか見えないんですもん(笑)。それに肝心のストーリーの方が大味過ぎなとこもちょっと残念。あとヒロインの女性の方が明らかにブ…失礼、個性的なルックスをしてらっしゃったのも好みが分かれるところ。でもまあエンタメ映画としては、最後までストレスなく見られるし、アクションシーンも迫力満点だしで、普通に楽しめると思いまーす!
[DVD(字幕)] 6点(2020-10-14 01:55:00)
17.  プライベート・ウォー 《ネタバレ》 
2012年、内戦が激化していた当時のシリアに潜入し、戦場のリアルな実態を報道し続けた記者メリー・コルヴィンが亡くなった。近くで爆発した砲弾に巻き込まれ、彼女はその決して長くはない人生を終えることになった。若き日に報道記者となり、スリランカの内戦取材中には銃撃を受け片目を失うという悲劇に見舞われながらも何故、彼女は戦場に行くことを止めなかったのか――。本作は、そんな彼女の波乱に満ちた生涯を冷徹に見つめた伝記映画だ。戦場の生々しい実態に心を蝕まれ、後にアルコール依存症とまでなった彼女を演じるのは、『ゴーン・ガール』での悪女役が記憶に新しいロザムンド・パイク。このメリー・コルヴィンという人をほとんど知らないまま今回鑑賞してみたのだが、これがなかなか丁寧な演出の力が光る秀作に仕上がっていた。世界の紛争地へと突撃取材を続ける彼女とその合間に都会へと帰ってきて束の間の休息をとる彼女の姿を交互に描くという本作の構成、これが巧く効いている。戦場で明日の命もままならないような生活を余儀なくされている子供たちと向き合っていた自分が、自宅へ帰ってくると裕福な友達に囲まれ何不自由ないセレブ生活を送る。いったいこの不条理の原因とは何なのか。そして自分はそんな子供たちを金儲けの道具にしているだけなのではないのか。そんな残酷な問いを突き付けられた彼女が、徐々にアルコールへと溺れてゆくのも当然だろう。彼女の人生を迫真の演技で再現したロザムンド・パイクもいい仕事をしている。この人、こういった何処か偏屈な人間を演じるのが相当巧い。最後、彼女は自らの身を顧みずに戦場へと残り、そしてその短い生涯を閉じる。何故なら、この現実から決して目を背けてはならないという確固とした信念があったから。観終わって、僕は同じくシリアで命を落とした日本人ジャーナリスト、山本美香さんのドキュメンタリーを見て非常に感銘を受けたことを思い出してしまった。時に批判されることもあるだろうが、それでも彼女たちのような職業も社会にとって絶対に必要なのだ。何故ならその地に行かなければ決して分からない真実がそこにあるのだから。メリー・コルヴィンという人の生涯を再現することに注力するあまり、若干テーマに対する踏み込みが甘くなったような気もするが、それでも充分見応えのある伝記ドラマの秀作であった。
[DVD(字幕)] 7点(2020-10-09 05:39:42)
18.  フォードvsフェラーリ 《ネタバレ》 
1960年代、ル・マン24時間耐久レースに挑んだフォード・モーターのレーサーやエンジニアたちの悪戦苦闘を実話を基に描いたヒューマン・ドラマ。主演を務めるのは、実力派のマッド・デイモンやクリスチャン・ベール。監督はエンタメ映画職人、ジェームズ・マンゴールド。いやー、もう車好きの車好きによる車好きのための映画でしたね、これ。車好き――特にアメ車好きには堪らないであろう描写のてんこ盛り。んでも演出的には手堅く纏められており、車にそんなに興味のない自分でもそこそこ楽しんで観ることが出来ました。子供のために危険を顧みずに頑張る父親というのはベタですけどやぱ燃えますね~。あくまで裏方に徹したマッド・デイモンもいい味出してました。ただ、明らかに長ーい!もう少し短くスリムに纏めてくれても良かったのでは。そこまで車好きではない自分は中盤から延々と続くレースシーンにちょっとダレちゃいました。
[DVD(字幕)] 6点(2020-09-28 14:02:09)
19.  ふたりの女王 メアリーとエリザベス 《ネタバレ》 
中世イギリスを舞台に、若くして君主となったイングランドとスコットランドの「ふたりの女王」の愛憎渦巻く確執を濃厚に描いた宮廷劇。今最も勢いのある若手女優、シアーシャ・ローナンとマーゴット・ロビー共演ということで今回鑑賞してみたのですが、この時代のイギリスの歴史に疎いせいか、正直に言って僕はさっぱり嵌まれませんでした。なんかストーリーの見せ方が稚拙過ぎやしませんか、これ。実際にあった史実を再現することに重きを置き過ぎたせいか、肝心のストーリーがものすごく分かりづらい!おまけにたくさん出てくる登場人物も誰が誰やら判別しにくく、しかも相関関係も複雑すぎてよく分かりません。おかげで最後までいまいち盛り上がりに欠けたまま、だらだらと終わっちゃいました。僕のようにこの時代の歴史に疎い人間にもちゃんと最低限分かるような演出を心掛けて欲しかったです。ただ、それぞれの女王を演じた若手女優二人は、さすがに華があってそこは大変見応えありました。特にイングランド女王エリザベス役を熱演したマーゴット・ロビー。内側に鉄の塊を隠し持っていそうな冷酷な女王を堂々と演じ切っていて、すこぶる良かったです!ハーレクインと言う尻軽女を怪演したかと思えば、この見事なまでの豹変ぶり。この人って実は凄い人なんじゃないかしら。彼女と、シアーシャ・ローナン演じる今やすっかり落ちぶれたスコットランド女王メアリーが初めての対面を果たすラストはなかなかの迫力。ただ、いかんせんそこまでの展開が悪すぎます。編集もところどころぶつ切りで繋がりが悪く感じることもしばしば。素材は良かっただけに、なんとも残念な作品でありました。
[DVD(字幕)] 5点(2020-07-16 01:51:03)(良:1票)
20.  フラクチャード 《ネタバレ》 
寂れた田舎町に佇む、とある総合病院。ある日、そこに幼い一人娘を抱えた父親レイが駆け込んでくる。「娘のペリが工事現場の穴に落ちた!どうやら骨が折れてるみたいだ。すぐに医者を呼んでくれ」――。一緒にやって来た妻とともに、受付の女性に必死の形相でそう訴えかけるレイ。だが、受付の女性は事務的な説明を繰り返すばかりでなかなか診察してくれない。仕方なく家族とともに患者でひしめく待合室に向かったレイは、不安に駆られつつもただひたすら待つことに。ようやく診察が開始され、ホッと胸をなでおろすレイ。娘の病状は大したものではなかったが、一応精密検査をしようと言う医者の言葉にレイは素直にうなずくのだった。看護師に連れられ地下へと向かった妻と娘を、レイは一抹の不安を感じながらも待ち続ける。だが、何故かいつまで経っても家族は戻ってこない。業を煮やしたレイが文句を言いに行くと、受付の女は信じられない言葉を吐くのだった。「そんな患者はこの病院にはいません」。当然のように声を荒げ、強引に病棟内へと乗り込んだ彼は、愛する家族を求めて院内を駆けずり回るのだった。ところが、何処をどう捜しても家族の姿は見つからない。あろうことか、病院側はそんなレイをまるで精神病患者のように扱い始めるのだった…。サム・ワーシントン主演で送る、世にも奇妙な世界へと迷い込んだ男の恐怖を描いた不条理系スリラー。監督は『マシニスト』のブラッド・アンダーソン。彼の観客の生理に直接訴えかけてくるような不穏な世界観は相変わらず健在で、散りばめられた細かなエピソードの数々も実に不快指数マックスなものばかりで大変グッド。娘の腕が折れてるかも知れないのに、万が一の場合臓器提供を希望するかしないかをしつこく聞いてくる受付嬢など、すんごく気持ち悪いんですけどなんか癖になる魅力があります。ただ、肝心のお話の方は正直微妙というほかありません。特にミスリードありきのこのオチは賛否が分かれるところ。ここでネタバレすると、ことの真相は途中で、①病院が悪者で男の家族はちゃんと拉致監禁されていた②本当はこの男が家族を殺していて自らの記憶を改竄していた③男はやはり精神病でそもそも家族は最初からいなかった、と言うだいたい三つに絞られるのですが、最後に明かされる正解はその中でも最もムリ筋なものでした。到底納得できないうえに、後味も最悪という、ね。正直、もうちょっとすっきり終わって欲しかったなあ。全編に漂うこの不穏な世界観はすこぶる魅力的だったのに、なんとも勿体ない。
[インターネット(字幕)] 5点(2020-05-23 00:30:03)
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