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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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661.  エネミー・ライン
アメリカさえ勝てばいいという「トップガン」や「ランボー」と同様の匂いのするミリタリーアクションであり、80年代であれば大ヒットしたであろう作品だったと思います。ただし本作が公開されたのは21世紀、この手の映画は時代錯誤となっていました。多くの悲劇を生み出したユーゴ内戦、セルビア人による民族浄化を背景として単純アクションを撮ってしまう無神経さは見透かされてしまい、米国内でこそ6,000万ドル稼いだものの、北米を除く全世界では興行成績が3,000万ドル程度に留まっています。。。ユーゴ内戦の難しさ、米軍が必ずしも正義ではないことを言及するセリフは一応挿入されているのですが、これが「文句言われないようにとりあえず付け加えておきますが」程度なので、かえって製作陣の不見識が際立つ形となっています。それは、NATO軍司令官が民族紛争の複雑さ、この戦争における正義とは何なのかについて語る場面なのですが、最終的に「5年間この戦争に関わってきたが、結局俺にも分からん」という結論で終わってしまうのです。なんじゃそりゃ。画面に向かってつっこみそうになりました。本作の脚本を書いたのは「プレデター」のジム&ジョン・トーマスと、軽めのアメコミ作品を多く手掛けるザック・ペン、厄介な国際情勢を丁寧に扱おうという気はないようです。その代わりに登場するのは、コカ・コーラを飲み、アイス・キューブのTシャツを着たクロアチア人青年。アメリカの文化は紛争地域でも通用するんだぜ!わかり合えるんだぜ!という実に短絡的な発想には恐れ入りました。。。そんな本作ですが、アクション映画としては悪くありません。監督デビュー作でありながらジョン・ムーアの手腕は卓越しており、なかなか見ごたえのあるアクションが連続します。ゴチャゴチャした編集がうるさすぎる場面もありましたが、描写にはこだわりがあって他のアクション監督とは一味違う才能があるように感じます。肉食獣の如く主人公を追い詰める悪役は脚本の狙い通りにキャラが立っているし、作品全体のテンポも良好。そして本作の特徴となっているのが兵器のメカニズムの描写なのですが、地雷の起爆ギミックやF-18へのミサイルの着弾等を異様なまでに詳細に見せる映像には驚かされました。戦車やヘリが山ほど登場し、街をバンバン破壊しまくる充実ぶりながら製作費を4,000万ドル程度に抑えたこの監督の腕前は、十分に評価されるべきでしょう。
[DVD(吹替)] 5点(2010-09-11 16:26:53)
662.  ブレイド2 《ネタバレ》 
前作のスティーブン・ノリントンはウェズリー・スナイプスと揉めて降板し、代わって登板したのは、念願の「ヘルボーイ」実写化のための実験がてら参加したギレルモ・デル・トロなのですが、彼の手腕によって前作を上回る出来となっています。この監督の美意識は相変わらず素晴らしく、激しくも美しいアクション、リーパーズ登場場面における恐怖演出、散りゆく者の儚さ等、本作に必要な演出は確実になされています。ただし脚本に難があって、作品全体としてはもう一歩と言えます。。。リーパーズという圧倒的な新種が登場し、これを倒さねばヴァンパイアも人類も存亡の危機に瀕する恐れがある。このため、因縁の関係にあったブレイドとヴァンパイアが一時休戦して手を組むというドラゴンボールみたいな話には燃えました。しかし、中盤より物語は迷走をはじめます。ブレイドとの協定の裏でヴァンパイア側にはある陰謀があって、最終的にはいつも通りブレイドvsヴァンパイアの戦いに終わるのですが、後半の捻りがどう考えても不要で、これが原因で映画にいくつかの穴が発生しています。第一に、物々しく登場したヴァンパイア側の特殊部隊ブラッドパックの活躍の場がなくなってしまい、インパクトあるメンバーが揃っているにも関わらず、彼らが一体何者であるかもよくわからないままやられ役に終わっています。ドニー・イェンまでを動員したにも関わらず、彼の見せ場がドロップキックを一発決めるだけではあまりに物足りません。ブレイドとヴァンパイアが組むことによってアクションのバリエーションを増やせただろうし、戦いの合間では、本来敵対する者同士ながら両者に友情が芽生えるという男子悶絶の展開を入れることもできたはず。ブレイドとヴァンパイア女子との恋愛なんか要らないんです。この映画はどうせ男子しか見てないんだから。第二に、ラストのバトルでは誰に感情移入して見るべきかがよく分からないため、壮絶なアクションの連続にも関わらず観客のエモーションが付いて来ない結果となっています。ヴァンパイア側の陰謀が明らかになり、それによりリーパーズ誕生の秘密が判明すると、ドラマは「リーパーズかわいそう」という方向にシフトします。それに伴って今度はブレイドとリーパーズが組むのかと思いきや、よく理由が分からないのですがブレイドはリーパーズとの戦いを続けるため、どっちを応援していいのかがよく分かりません。
[DVD(字幕)] 6点(2010-09-10 21:16:18)(良:1票)
663.  ザ・ビーチ(2000) 《ネタバレ》 
まったく面白くなかったのですが、かと言って駄作と切って捨てるほどの致命的な欠点も見つからず、相性の問題だったのかなぁという印象です。日常を捨ててどこか遠くへ行きたいという願望は私にはないためストーリーの根幹部分に共感できなかったのですが、そのような願望を持つ人ならばこの映画の感想も大きく変わるのかもしれません。。。主役であるビーチがそれほど魅力的ではなかったために、本作は楽園願望のない私のような人間を取り込むことができなかったようです。映画会社も作品の成功はビーチの出来にかかっていることは認識していたようで、巨費を投じてリゾート島を改造し、撮影監督にはダリウス・コンジを起用して盤石の態勢でのぞんでいます。その甲斐あって白い砂浜に透き通った海は確かに美しかったのですが、その海は周囲をグルっと岩で囲まれて広さがないため、南の島ならではの開放感がありません。ビーチでの生活は、共同体を維持するための簡単な作業を1日数時間程度こなし、残りの時間は仲間とスポーツをしたりゲームをしたりして過ごすのですが、1週間もすればこんな生活には飽きるでしょう。ビーチでの生活を魅力的に見せるためには、隔絶された楽園ならではの楽しみ、文明社会ではモラル的に許されない娯楽を謳歌するという毒々しい面が必要だったのですが、メインの娯楽がスポーツでは健全すぎました。ビーチの住民達は毎日毎日楽しそうにビーチバレーをやっているのですが、現実の若者がそんな生活で満足できるでしょうか?監督の中の若者像はあまりに幼いような気がします。。。ディカプリオ演じるリチャードは、後半になると命を危険に晒すという遊びに没頭しはじめます。そんな危険の味を覚えると、ビーチで遊んでいた日々には魅力を覚えなくなる。そうなると自分は強い人間に成長したような感覚を覚えるのですが、ラストは呆気ないものでした。島に住む大人達が「もう遊びは終わりにしろ!」と怒鳴り込んできて、生活を背負った大人の迫力には勝てずにすごすごと退散してしまうのです。遊んで暮らせる楽園なんてものはないし、ムリヤリ作ったとしてもそんなものの存在は許されるわけがない。どこかに理想郷があると思って旅をしている若者はさっさと日常に帰れと言っているような面白い結論だったのですが、残念なことに脚本や演出が必要以上にゴテゴテしていて言いたいことがあまり伝わってきませんでした。
[DVD(字幕)] 3点(2010-09-08 18:45:43)(良:1票)
664.  パブリック・エネミーズ
「ヒート」や「インサイダー」はもちろん、評価の割れる「コラテラル」や概ね不評の「マイアミ・バイス」まで気に入っている私ですが、この映画はダメでした。実話であるため仕方のない部分もあるのですが、物語に大きな山がないため141分が非常に長く感じられます。口数の少ない登場人物による淡々としたドラマという点では過去作品と同様なのですが、本作は対決という点が強調されていないため、物語に一本筋が通っていません。パーヴィス捜査官からは社会の敵ナンバー1を何としてでも捕まえてやるという執念が感じられないし、またカリスマ的な犯罪者の魅力に呑まれたり、ともに戦いを知る者としての共感を抱くということもなく、上司から預かった大事な仕事を誠実にこなしている程度の印象に留まっています。デリンジャーに至ってはパーヴィスの存在を気にもかけていない様子であり、これではドラマが淡白にならざるをえません。監督自身、パーヴィスという人物をあまり気に入っていないようです。パーヴィスは名家出身のエリートにして、若いうちから注目されていたFBIのホープ。経験に裏打ちされた職人的な戦士を好むマイケル・マンにとって、あまり得意とするタイプの人物ではありません。実際、劇中ではパーヴィスの存在感は薄く、後半になると老練のウィンステッド捜査官が実質的に物語の中心にやってきます。だったらウィンステッドをクローズアップすればいいのですが、スターであるクリスチャン・ベールが演じている手前か形式的にはパーヴィスを主役扱いし続けるため、映画が中途半端なものとなっています。中途半端と言えばデリンジャーの行動についてもで、彼の信念や美学というものがうまく表現できていません。「アウトローが義賊として称賛される時代は終わった。外国に逃げたところでアメリカ政府が自分の罪を忘れることはなく、愛するビリーと静かな余生を過ごすという夢が叶うことはないだろう。ならばここで命を絶ってしまえ」おおまかにまとめるとこんな心境だったのでしょう。それは分かるのですが、これをドラマに昇華できていないため映画が面白くなっていません。本来、マイケル・マンが得意とする題材だったのに、なぜここまで中途半端になってしまったのかと不思議で仕方ありません。。。なお、毎度のことビジュアルへのこだわりは完璧で唸らされます。銃撃戦の激しさや美しさは、もはや芸術の域に達しています。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2010-09-07 20:35:46)(良:4票)
665.  ファイナルファンタジー
90年代にはMTV出身のクリエイターが異業種である映画業界に進出し注目を浴びましたが、今度はゲーム業界のクリエイターが映画業界に打って出る番だとして製作されたのが本作です。製作主体が本業の映画プロデューサーであり、クリエイターとしてゲーム業界出身者を起用するのならこの試みも成功したのかもしれません。しかし本作が致命的だったのは、ゲーム会社が主体となってゲームと同じ論理で映画を製作してしまったこと。キャラクター造形が浅いし、世界観も穴だらけ。もしゲームであれば、この程度の設定やドラマでも問題ありませんでした(設定が細かすぎるとゲームなど楽しんでいられないので、むしろ粗っぽくて調度良いくらい)。しかし映画にすると、ここまで雑な話では観客を納得させることはできません。。。物語を振り返ってみましょう。地球はエイリアンからの攻撃を受け、人類は絶滅寸前にまで追い込まれていた。これに対して軍部はゼウス砲と呼ばれる新兵器でエイリアンの本拠地である隕石を叩き、戦争を終結させようと考えている。一方で主人公はエイリアンに関する別の可能性を示唆する。あれは生物ではなく、生命エネルギーの残骸のようなものではないか?生物という前提で戦っていたため我々は勝てなかった。敵に対する認識をあらため、対処法を見直すべきではないのか?…話だけ聞くと面白そうなのですが、本作には根本的な問題があります。エイリアンが冒頭から「ファントム」と呼ばれているし、実体を持たず壁をも通過するその姿は、生物ではなくエネルギー体であることは誰の目にも明らか。主人公に「あれは生物じゃないのよ」と言われても、「そりゃそうだろ」としか思わないのです。そんな明らかなことを長々と説明する主人公と、この話を聞いて納得している仲間達はバカにしか見えません。本作は万事がこの調子。未知のエイリアンであるにも関わらず彼らに対して有効な銃やバリアーはすでに存在しているのですが、その経緯や理由は説明されず当たり前のものとして登場しています。SF映画をやりたければ画面に登場するアイテムと世界観には整合性が必要であることが分かっていないのです。現在の戦況も説明されないため、軍部が新兵器の使用を急ぐ理由もよくわかりません。主人公の体内にファントムが宿った経緯も不明。主人公がしばしば口にする「ガイアがなんとか」という話は理解不能。これでは映画と言えません。
[DVD(吹替)] 0点(2010-09-06 17:45:13)
666.  ソードフィッシュ 《ネタバレ》 
映画について長々と講釈をたれるトラボルタ。カメラが引くと彼は警官隊に囲まれていることが分かり、さらに引くと何十台ものパトカー、マスコミが押しかける大事件の真っ只中であることが明らかになる。このイントロだけでやられました。意外性と遊びがあって、そして観客をいきなり映画のど真ん中に放り込むという素晴らしいイントロ。このイントロが終わると物語は4日前に戻るのですが、ヘタな構成だと観客を混乱させる場合もある回想形式の作品にしては、本作の脚本はよくまとまっています。頭空っぽにして見ていても混乱せずに話を追うことが可能で、アクション映画の脚本としてはなかなか理想的な仕上がりとなっているのです。物語を動かすのはトラボルタ扮するガブリエルという男なのですが、この男の目的も正体も不明。とりあえずわかるのは強烈なカリスマ性があって、恐ろしく頭が良いということ。性格はキレやすくしょっちゅう人を怒鳴っているのですが、感情的になっている最中であっても思考回路は冷静であり、常に的確な判断を下すというかっこいい悪役です。これはトラボルタが得意とするタイプの役柄であり(「ブロークン・アロー」「サブウェイ123」)、本作においても脚本の狙い通りの人物に仕上がっています。。。以上、悪役は良いし、物語の運びもうまいのでアクション映画としては比較的上質な部類に入る作品なのですが、時に脚本が論理的に破綻しているため水準作の範疇にとどまっています。スタンリーほどのハッカーを雇い、ガブリエルが備えているほどのシステムがあるのなら、わざわざ銀行を襲撃しなくても外部からのハッキングで金を奪えるように思えます。この点、ハッキングに加えて銀行を直接襲撃することの理由が劇中で説明されないため、物語が途中からバカバカしいものとなっています。またラストにおいて、ガブリエルはスタンリーを利用して自身の死を偽装するのですが、怒りに任せてスタンリーがロケット砲を撃ち込むことまでがガブリエルの計画だったとしたら、なんという遠回しで不確定要素の多い計画を実行していたのだと呆れてしまいます。製作陣はガブリエルの優秀さを示すオチのつもりだったのでしょうが、ここまで行き当たりばったりの計画を実行していたのでは、むしろバカだったんじゃないかという気がしてきます。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2010-09-06 00:03:16)(良:1票)
667.  ポストマン(1997) 《ネタバレ》 
物語の発想は良いし長尺の割には退屈しないので最低の評価は付けませんが、映画の出来は良くありません。流れ者がタダ飯を食いたくてついた嘘がひとり歩きするという物語と、ケビン・コスナーの英雄願望とが水と油だったため、主人公のキャラクターが不安定になったことが敗因だと思います。最初は情けなかった主人公が徐々に英雄らしくなっていくのなら話にも筋が通るのですが、例えばアビー救出のために勇気を見せたと思ったら、次の場面では「ケガして動けないよ~」とグータラしはじめるため、主人公の成長物語にもなっていません。後半になるとようやく英雄らしい行動をとりはじめるものの、主人公は最初のウソを取り消さないままリーダー面し、偉そうに説教までたれるので、見ている私達にとってはまったく説得力がありません。新政府を信じた若い郵便配達たちが次々と殺されはじめてもウソだと白状しない段階に至っては、英雄どころか大人としての責任感はないのかとイライラしてきます。「すまない、新政府の話は全部ウソだったんだ」「俺達はアメリカ中を旅してるんですよ。そんなことぐらいとっくに知ってますよ」ぐらいのやりとりを入れておけば物語の方向転換にはなったし、郵便配達たちの仕事への思いを強調することも出来たのではないでしょうか。。。以上は完全に脚本上の不備なのですが、エリック・ロス(フォレスト・ガンプ)とブライアン・ヘルゲランド(LAコンフィデンシャル)という当時気鋭の脚本家を二人も起用しながら、なぜここまで酷い話になったのかと不思議で仕方ありません。不思議なのは製作費についてもで、こんな地味な物語において8,000万ドルもの製作費はどこに使われたのでしょうか?本作は一応SFではあるものの物語は西部劇に近く、自然の山々でロケを行っているため壮大なセットが作られた形跡はありません。また派手な戦闘シーンも大規模なモブシーンもないため、撮影にお金がかかっている様子もありません。ラストなんて、いよいよ最終決戦かと思いきやおっさん二人が殴り合うだけですからね。しかも、スローモーションや編集で誤魔化すという何とも腰砕けなラスト。莫大な製作費がかかっていることは予備知識として知っていて、映画のどこかしらにはド派手なシーンがあるものと思って観ていたので、最後まで何も起こらない肩透かしには驚きました。
[DVD(吹替)] 4点(2010-09-05 18:14:40)(良:1票)
668.  フィラデルフィア 《ネタバレ》 
難病ものにして、差別と闘う法廷劇。監督は「羊たちの沈黙」で主演男優賞と主演女優賞をダブル受賞させた(この快挙を成し遂げた監督は歴史上たった3人)ジョナサン・デミ。いかにも賞の匂いのプンプンする映画だけあって、素晴らしい俳優陣が集まっています。演技ができて華もあるトム・ハンクスとデンゼル・ワシントンは文句なしの仕事ぶりだし、ゲイの恋人を演じたバンデラスのなよなよした演技も見ものです。またこの手の社会派ドラマはハリウッドのお家芸だけあって、本編のお膳立てをする前半部分の処理もお見事。上映時間を冗長にすることなく観客に必要な情報を伝えるため、時に視点を変え、時に時間軸をいじりながら、手際良く設定を裁いていきます。楽しんで見るような題材ではないのですが、映画としてきちんと面白く撮られていること、観客に伝えるべきことを伝わるように表現する姿勢には好感が持てました。。。と、面白いのは前半まで。あれほどてきぱきとした前半と比較すると後半はえらくゆっくりしているし、かといってじっくり描くべき大きな山を作れているわけでもないので、正直言って退屈します。裁判の最初に、デンゼルは陪審員に向かって「これからやるのは映画で見るような裁判ではありません。劇的な証拠や証言者が見つかるという展開もありません」と宣言しますが、これは観客である私達に対する監督からの宣言だったようです。弁護士による舌戦が繰り広げられることも、キーパーソンを巡る駆け引きもないため、法廷ものの醍醐味は味わえません。被告側弁護人によって論理を崩されてデンゼルは負けるのではないかという危機的局面を迎えることも、陪審員の心を動かせるかどうかという最後の緊張感もなく、こちらが勝つことが100%分かっている法廷劇がひたすら繰り広げられるのみです。好意的に捉えれば、エンターテイメントとしての装飾を排除した製作陣の真摯な姿勢の現れとも解釈できるのですが、ここまで何も起こらないのは映画としてちょっと寂しいかなと思います。ドラマ面についても、製作側が意図しているほど感動的には仕上がっていません。2時間感情移入して見てきたベケットが死ねば観客は悲しいと感じるに決まっているのですが、それ以上の感動につながっていません。ベケットと家族とのドラマがばっさり落とされているようでしたが、ここを克明にしておけば印象は変わったと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2010-09-05 00:42:06)
669.  スターシップ・トゥルーパーズ
本作の企画は83年頃から存在していたものの予算や技術面での問題から一度頓挫し、技術の進んだ97年になってようやく製作が実現したようです。VFXに注ぎ込まれた予算は「タイタニック」をも上回る史上最高額の7000万ドル、総製作費は1億ドルという凄まじい超大作なのですが、これがお馴染みバーホーベン節炸裂の神経逆撫でムービーに仕上がっているのですから二度驚きます。ハリウッドの偉い人たちは脚本に目を通してから意思決定しているのだろうかと実に不思議になりました。。。完成した作品には素晴らしい部分もあればそうでもない部分もあって、個人的には好きなタイプの映画なのですが、傑作の部類には入らないと思います。バーホーベンの狙いは、戦争というものの本質を描き出すことにありました。このテーマを扱うにあたって歴史上の戦争を題材としてしまうと、どうしても当事者である国や国民が存在してしまって満足な描写ができない可能性がある。観客の側でフィルターがかかってしまう場合もある。だったら誰も文句を言ってこないSFでやってしまえという発想は大胆で面白いし、的を射ていると思います。本作の4年後、映画で描かれたことをアメリカ合衆国が現実世界でまんま後追いしたことからも、その狙いは当たっていたと評価できます。ただし、本作には不十分な面もあります。舞台となる未来の地球連邦の作り込みが甘く、また敵となるエイリアンと人類が歴史上どのように関わってきたのかが明示されないため、軍事政権が大衆を煽動して戦争へと雪崩れ込んでいく様について、観客がその良し悪しを十分に判断できません。主人公達が軍事に携わる前の学園ドラマの出来も良くないのですが、戦争と対比させるためならここも面白く作っておく必要があったでしょう。軍事政権や薄っぺらな学園ドラマなどバーホーベンが不得意としたり嫌っていたりするものについては、とりあえずブラックジョークでバカにするというスタンスで作られているのですが、この姿勢のためにテーマが一部死んでしまっています。映画の前半部分が猛烈に退屈する原因ともなっています。ここはある程度マジメにやっておくべきでした。。。一転していよいよ戦争に突入するとこれがめっぽう面白く、バーホーベンはスペクタクルの巨匠であることを再認識させらます。「好きなことやれてうれしいなぁ」というフィル・ティペットの満足げな表情まで見えてきました。
[DVD(字幕)] 7点(2010-09-05 00:41:06)(良:1票)
670.  スペース・カウボーイ 《ネタバレ》 
前半部分はかなり面白く、マジメなドラマばかりのイーストウッドが軽いコメディを撮って、狙い通りに笑わせている器用さには感心しました。しかし、宇宙に飛び出して以降は話のテンションが一気に落ちてしまいます。これについては脚本と演出の両方に難があって、通信衛星アイコンが実は核ミサイルの発射ポッドだったとが判明し、当初計画していた修理が難しいということになるのですが、何がどう難しいのか、修理を失敗するとどんな危険があるのかの説明が不足しており、このために劇中の登場人物達は「大変だ、大変だ」と騒いでいるものの、観客にはその温度感がイマイチ伝わらないという現象が発生しています。後半は万事こんな調子、一体何が問題で、それはどう危険で、対策は何なのかという説明がすべてにおいて不足しています。このため、ラストの自己犠牲もまったく活きてきません。そもそも、事態を致命的に悪化させた原因が功を焦った若造による勝手な行動だったという設定が良くないのでは?地上では対立していたおじいちゃんチームと若者チームが一致団結してこそ、直面している事態の深刻さが観客にも伝わってくるというもの。若造のうちのひとりは事態を悪化させ、もうひとりは気絶して寝ているだけ、おじいちゃんチームのうちサザーランドとガーナーは事態を眺めて「こりゃ大変だ」とコメントしているだけ、危機と戦っているのが実質的にイーストウッドとジョーンズだけでは、せっかく揃えたチームがムダになっています。危機に対して各自が特技を発揮し、その中で若造チームがおじいちゃんチームの腕前を認める場面があり、それでも処理しきれない危機については「後先短い俺達が何とかする」とおじいちゃんチームが自己犠牲を買って出るという展開でよかったのではないかと思います。なお、ILMによるVFXは非常に秀逸で、宇宙映画においてここまで描写の充実した作品は、2010年現在に至るまで他に存在していません。NASA全面監修はダテじゃなく、トラブルの際に宇宙空間に散らばる塵や破片の表現や、宇宙から見た地球や月の描写の美しさや正確さには驚かされます。巨大ロボットの如くガシャンガシャンと変形する通信衛星アイコンもかっこよく、こちらでもイーストウッドの意外な器用さを楽しむことができます。
[映画館(字幕)] 6点(2010-09-05 00:39:03)(良:1票)
671.  スター・ウォーズ/ジェダイの復讐
「帝国の逆襲」はスピード感があってかっこいい、スター・ウォーズに求められるものがすべて詰まった傑作でした。中間作でこの出来なら最終作はどんな凄いことになるのか、EPⅥへの期待も俄然高まるというものです。しかし、これが見事にズッこける最終作となっています。もちろん全部がダメなわけではありません。VFXは前作から輪をかけて良くなっていて、大空中戦の物量・密度・スピード感には圧倒されました。スピーダーバイクによるチェイスでは、宇宙空間における空中戦がメインだった本シリーズにおいて新しい見せ場を作ることに成功しており、こちらの仕事にも感心させられます。また、ドラマも部分的には悪くありません。ダースベイダーがアナキン・スカイウォーカーに戻る場面は感動的であり、それが息子を救うためという理由が泣かせます。ようやくマスクが外されてベイダーの素顔が明かされるのですが、それがオビワンのような立派な男かと思いきやみすぼらしいハゲおやじだったという肩すかしにも、個人的にはぐっときました。理由はうまく説明できないのですが、たまに会う父親がどんどんみすぼらしくなっていって妙に寂しくなるような感覚を思い出したからでしょうか。この辺りの人選は効果的だったと思います。ただし本作には凄まじい地雷が。そう、あの訳の分からんクマ達です。圧倒的な力を誇っていた帝国軍がシルバニア・ファミリーみたいな連中に滅ぼされる様は、見ていて辛くなりました。帝国に虐殺されたジェダイ達、戦いで命を落とした同盟軍の戦士達も、帝国の最後がこれでは浮かばれないでしょう。。。脚本の方向性はわからんでもありません。同盟軍を罠にはめて勝利を目前にした皇帝が唯一見逃していたもの、それは一般の住民達の力だった。危機に瀕した同盟軍は住民達の協力を得て最後の逆転を掴むという物語にしたかったのでしょう。しかし、それがなぜクマなのか?帝国によって虐げられていたエンドアの住民達が、ルークやレイアの姿に感動して蜂起するという物語とすればよかったのではないか?そこがどうしても悔やまれます。本作からEPⅡまで、スター・ウォーズはかわいいキャラや面白キャラを投入したり、要りもしない恋愛要素を強調してコケ続けることとなります。そのままで十分おいしいラーメンに、「サービスです」と言ってプリンやらアイスクリームやらをのっけられるような感じでしょうか。
[DVD(吹替)] 5点(2010-09-05 00:37:37)(笑:2票) (良:1票)
672.  スター・ウォーズ/帝国の逆襲
EPⅣは映画史上において重要な作品だと思うのですが、製作から30年以上を経た現在の目で鑑賞するとビジュアル的にもストーリー的にも不十分な点がいくつかあって、時代性を差し引いて評価せねばならない作品だと言えます。一方続編である本作の面白さは圧倒的で、現在の娯楽作と比較しても遜色のない仕上がりとなっています。起承転結の「起」と「結」は前後作にお任せし、本作は頭からお尻までフルスロットル。当時の作品として、ここまでの密度とテンションを保った作品は他になかったと思います(翌年の「レイダース」も担当した脚本家のローレンス・カスダンの手腕でしょうか)。ビジュアルの進化も著しいものがあります。EPⅣのVFXは当時としては画期的だったとは言え、現在の目で見るとスピード感に欠けており、空中戦の場面であってもゆっくりとした動きが気になる部分がありました。しかし本作ではその欠点が解消されていて、新3部作と比較しても見劣りしないほどビジュアルが完成されています。また空中戦のイメージの強かった「スター・ウォーズ」において雪上での戦闘を映画の冒頭に持ってきたことは、サーガの世界観を広げるために効果的でした。迫りくる巨大歩行ロボットから走って逃げる歩兵の図というものは見たことがありませんが、戦争映画としての側面を突き詰めると当然行き着く結論であり、これをきっちり見せたことでスター・ウォーズという作品の深化を図ることに成功しています。この場面はメカデザインもVFXも演出もシリーズ中最高峰であり、本作製作時にはルーカスもスタッフも絶好調だったことが伺えます。。。ホスの戦いが象徴するように、単純明快な冒険活劇だったEPⅣから一転して物語は戦争の過酷な面が強調され、またガンコな師匠の登場や悲劇的な恋愛要素の追加でドラマもアダルトなものに。これは、ドキュメンタリー出身のアービン・カーシュナーを監督に、ハワード・ホークスのお抱えだったリイ・ブラケットを脚本家(初稿を書き上げた直後に死亡したため、仕上げたのは新人のローレンス・カスダン)に起用したことの成果ですが、スター・ウォーズの続編としてハード路線への転向を決定したルーカスはさすがの慧眼でした(ただし公開当時は不評で、EPⅥではソフトな面を強調するためイウォーク族が登場することに)。本作がEPⅣの延長に過ぎなければ、シリーズの熱狂的なファンなどは現れなかったはずですから。
[DVD(吹替)] 9点(2010-09-05 00:36:42)(良:2票)
673.  スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐
EPⅠⅡと実に惨い仕上がりでしたが、本作はそれらの続きとは思えないほど突出してよく出来ています。いよいよクローン戦争が本格化し、全宇宙が戦場に。全世界のファンが「ジェダイの復讐」以来待ち続けたのはこれでした。続々と登場するかっこいいメカの数々に、ジムの如く局地戦仕様に改造されたクローントルーパー、クローントルーパーの大群を率いてバトルドロイド軍団へ突進するジェダイ達。男子悶絶の映像が続きます。やればできるじゃないか、ルーカス!そして、このシリーズは毎回悪役が良いのですが、本作のグリーヴァス将軍も意表を突くデザイン、ユーモラスな性格付けで強烈な印象を残します。。。パルパティーンがついに本性を現し、アナキンがダークサイドに落ちると、物語はさらに加速。ジェダイや共和国の理念は破れ、アナキンはダースベイダーになるという結末はわかっているものの、それでも心をぐいぐい掴む強力な物語が展開されます。弟子を育て損ねたオビワンの苦悩、愛する旦那が宇宙一のワルとなり、おまけにその男の子供を妊娠しているパドメの苦悩が描かれるのですが、スター・ウォーズにおいてここまで深い人間ドラマが見られるとは思いませんでした。ラストのバトルにおいて、アナキンへの思いを叫ぶオビワンと、オビワンへの怒りを叫ぶアナキンの熱いやりとりは必見です。後半のドラマについては、期待を完全に超えるものとなっています。それに付随する描写も実に気合いが入ったもので、EPⅠⅡと残酷描写について腰が引けているのが気になったのですが、本作においては必要な場面をきっちり見せてきます。ジェダイが惨殺される場面や、両手両足を失い、さらには火だるまになるというアナキンの衝撃的な最後に至るまで躊躇がなく、ルーカスが腹を決めて本作を作っていることが分かります(EPⅠ公開の時点で、EPⅢは悲惨な内容になるため観客に拒絶されるかもしれないとルーカスは語っていました)。また、人類史において時折登場する悪の帝国とは一体何だったのかという考察も交えており、「今、自由は死んだ。万雷の拍手の中で」という名セリフは本シリーズがついにおとぎ話を超えたことを象徴しています。。。ファンの頭の中でパンパンに膨らんでいた以上のクライマックスを準備し、これまで水と油だった新シリーズと旧シリーズを見事につないでしまったのですから、本作の完成度は驚異的と評価するしかないでしょう。
[映画館(字幕)] 9点(2010-09-02 00:19:39)(良:1票)
674.  スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃 《ネタバレ》 
EPⅠがあまりにガッカリな出来だったので、ジャンゴ・フェットやクローントルーパーが登場していよいよスターウォーズらしくなり、派手な戦闘シーンも山盛りである本作には、初見時にかなり満足した記憶があります。しかし、あらためて見るとやっぱりダメな映画ですね。みなさんご指摘の通り、アナキンとパドメの恋愛関係がまったくダメ。初見時には戦闘シーンを見るために中盤のドラマはガマンしてやり過ごすものと割り切っていたのですが、サーガを通して見るとアナキンをダースベイダーに変える重要な要素が二人の関係であり、この部分の描写が未熟なのでは話になりません。ルーカスは女性層からの支持の薄いシリーズのテコ入れのため、イケメン俳優を使った恋愛要素を大幅に拡大したと思われるのですが、これが完全にマイナスでした。本来、二人は耐える恋愛をせねばならないのです。アナキンは耐えて耐えてひたすら自分の気持ちを押し殺していたが、ラストで死を覚悟した瞬間にパドメに自分の思いを伝える。しかし突然の援軍到着で思いがけず命拾いし、以後はパドメへの思いを切り離して生きることができなくなってしまう。恐らく最初はこんな展開にするつもりだったのでしょうが、中盤にイチャイチャ場面を入れたために、チンピラみたいな軽いお兄ちゃんと、男選びのヘタクソなお嬢様のどうしようもない恋愛にまで落ちてしまいました。アナキン関係でいえば、怒りに任せてタスケンレイダーを皆殺しにする場面もダメでした。タスケンは、理由はよくわからないのですがアナキンの母親を誘拐し、理由はよくわからないのですがもう少しで死ぬというギリギリの状態で母を生かしていて、そして母はちょうどアナキンが助けに現れたタイミングで死にます。これに怒ったアナキンがタスケンを皆殺しにし、自身の凶暴性を認識することとなるのですが、この場面ではアナキンの手が血で染まる様子を観客に見せねばならないでしょう。観客に不快感を抱かせないようこの描写をボヤかしたということは、サーガのターニングポイントをボヤかしてしまったということ。ルーカスは物語を観客に伝える意思があるのかと疑ってしまいます。。。本作でただひとつ評価できるのはクライマックスで、クローン軍団が戦艦に積み込まれ、銀河に向けて飛び立たんとする場面は、「共和国はついに一線を越えてしまった」という重々しさが見事に表現された名場面でした。
[映画館(吹替)] 4点(2010-09-02 00:18:51)(良:1票)
675.  スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス 《ネタバレ》 
全6作を通して鑑賞すると、このEPⅠだけがサーガから浮いていることが気になりました。宇宙戦争に巻き込まれた親子の物語において本作だけがサーガの本筋と直接関係のないことをやっており、EPⅠがなくても話が通じるのです。「ジェダイの復讐」から16年も待たされた挙句、ようやく出来たEPⅠがサーガと直接関係のない話ではファンもガッカリだったでしょう。中盤の山場であるポッドレースに至っては、サーガの本筋と直接関係のないEPⅠの本筋からもさらに外れており、観客を飽きさせないよう挿入した意味のない見せ場にしか思えません。いや、ルーカスにとってはアナキンのパイロットとしての才能を示す重要な場面のつもりだったのかもしれません。しかし、ラストにおいてアナキンは手違いから空中戦に参加し、訳も分からず飛び回っているうちにまぐれで勝利するという展開となっていて、彼が天性のパイロットであるようにはとても見えないのです。ポッドレースの際に見せた勘の良さや機転が空中戦においても活かされるという展開がなければ両者は結び付かないのですが、ポッドレースではアナキンの非凡さがそれほど伝わってこないし、空中戦ではポッドレースでの経験が活かされるような局面がないし、ポッドレースがなくてもラストの空中戦は成立してしまいます。本作は万事この調子で、映画全体が必要のない物語、必要のない見せ場で構成されており、仮にルーカスの頭の中では必然性ある場面のつもりだったとしても、完成した映画からはその意図が伝わってこないという有様。完全に失敗作だと思います。VFXは当時としては最高のものが用いられています。ルーカスが「スターウォーズ」を作るために設立したILMにとって、本作は会社のアイデンティティの根幹をなす重要な作品。世界最高のVFXスタジオが最高のスタッフを惜しげもなく動員して製作したのですから(本作から漏れたスタッフは「ハムナプトラ」に回されたとか)、VFXは凄くて当然。公開前、本作はVFXの新たな可能性を示す作品になるだろうと期待されていました。しかし、フタを開けるとVFXの限界を露呈した作品となったのが皮肉でした。CGで描かれたエイリアンとドロイドが戦争をしても何とも感じないし、いくらVFXにお金をかけても、レイ・パークというひとりのスタントマンによるダース・モールのアクションには勝てなかったのです。
[レーザーディスク(字幕)] 2点(2010-09-02 00:18:00)(良:2票)
676.  パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト 《ネタバレ》 
ファミリー映画として徹底的に毒を抜いた結果として敵に恐怖感や威圧感がなくなり、アクションから緊迫感が失われたという点が前作の問題点でしたが、続編ではこの点がクリアーされています。グチャグチャベチョベチョの気持ち悪いデイビー・ジョーンズ軍団は悪役としてきちんと機能しているし、フライングダッチマン号が海から登場する場面の威圧感もお見事。大ヒットに浮かれず前作の問題点をきちんと洗い出していたようで、ブラッカイマーはなかなかやる男だなと感心しました。。。と、本作を評価できるのはここまで。苦手だった前作よりはマシになっているものの、それでも本作は満足とは程遠い仕上がりとなっています。プロデューサーがシリーズの方向性を正したことで明らかになったのは、監督の演出力があまりに低すぎるということ。海賊と言えど所詮は犯罪者、味方同士であっても騙し合いが頻繁になされる物語となっているのですが、監督が人間ドラマを描けず、また各キャラクターの腹の内をきちんと整理できていないため、この騙し合いがまったく面白くありません。ラストバトルにおけるジャックとエリザベスのキスなどは最たるもので、自らの命が大事で一度は逃げたものの、エリザベスへの思いから船へ戻ったジャック、ジャックの思いを知りつつ、みんなを守るため彼を船に縛り付けて生贄にしたエリザベス、そして二人のキスを目撃してしまったウィル、この3者の思いが交錯する重要な場面なのですが、各キャラクターの心情や背景がまったく整理できていないため、見ている側は特に何も感じさせられません。場面の取捨選択もマズく、例えばジャック、ウィル、ノリントンの3人がチャンバラをする場面などは、どうせ誰かが誰かを殺すということはありえないシチュエーションなのですから、さっさと終わらせてしまえばいいのです。しかし本作ではこの緊張感のないチャンバラが延々と続き、おまけに妙に凝ったスタントまでが繰り広げられ、労力と上映時間を費やすべきところを完全に間違えています。本作はすべてがこの状態で、物語が濃密である結果としての長い上映時間ならともかく、薄いドラマや意味のないアクションを2時間半もダラダラと見せられるのですから困ったものです。面白かったのはバルボッサが再登場するラストだけなのですが、なんだかんだで続きが気になるラストを持ってくる商売のうまさには感心しました。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2010-08-29 18:21:36)(良:1票)
677.  サブウェイ123 激突
トニー・スコット+ブライアン・ヘルゲランド+デンゼル・ワシントンといえば燃えるバイオレンス大作「マイ・ボディガード」のトリオですが、今回は一転してアクション控え目で会話によるやりとりが中心となっています。にも関わらず宣伝において「クライム・アクション超大作!」と煽られたため、ガッカリされた方も多いようです。しかし、犯人との息詰るやりとりは悪くありません。さすがはヘルゲランドだけあってセリフにはキレがあるし、ビジュアルの巨匠スコットは単調になりがちなこの手の作品に視覚的なアクセントを入れています。ワシントン、ガンダルフィーニ、タトゥーロは相変わらずお上手。オリジナルはコミカルな要素を多分に含んだ作品でしたが、今回は芸達者なガンダルフィーニがコメディパートを引き受け、その役割を見事に果たしています。そして意外にも良かったのがトラボルタで、前述の3人のように器用なタイプの俳優ではないものの、この人は善人役にも悪人役にもハマるスターであり、かつ彼の演じる役柄には適度な大物感が漂います。彼が演じるライダーの素性や犯行の動機は謎となっており、ワシントン演じるガーバーと私たち観客はライダーの言葉や行動から彼が何者であるかを推測することとなるのですが、ここでトラボルタの個性が活きてきます。社会に対する正当な憤りから大それた犯罪を計画した「ザ・ロック」のハメル准将タイプの同情すべき悪役なのか、純粋に金のためにハイジャックを起こした知能犯にして、計画遂行のために錯乱状態を装っているだけの「ダイハード」のハンスタイプの冷徹な悪役なのか、社会を逆恨みして暴れているだけの単純バカなのかの判断がつかず、彼が次に何をしでかすかが読めないのです。このキナ臭さが作品前半の面白さに大きく貢献しているのですが、この味はトラボルタでなければ出せませんでした。善人と悪人を演じ分けられる俳優は多くいるものの、基本的に役柄を演じ分けていないトラボルタの個性がなければ、ライダーをここまでミステリアスには出来なかったのです。。。というわけで本作の脚本は謎の悪人ライダーによってNY市と観客が振り回されることが核となっているため、彼の素性が明かされる後半以降は話が急激につまらなくなってしまいます。彼についての謎解きをもっと引っ張り、素性が明らかになったところで映画を終わらせた方がよかったのではないでしょうか。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2010-08-25 00:56:21)(良:1票)
678.  インサイド・マン
冒頭、クライブ・オーウェン演じるラッセルは「自分達は完全犯罪の方法を思いついたから、それを実行したのだ」と自信満々に語りますが、これは本作のアイデアを思いついた脚本家からの言葉と考えてもいいでしょう。その自信の通り、本作に描かれる銀行強盗の手口は完璧です。人質に犯人グループと同じ服を着せることで警察による突入を回避し、犯行現場からの脱出までを可能とする。この大胆な発想だけでもアクション映画が一本撮れてしまうほど魅力的なのですが、本作にはさらにアイデアが満載されています。強盗の被害者たる銀行が「ある事情」から決して被害を訴えないであろう品物のみを奪うことにより、被害者のない犯罪を成立させてしまう。犯人グループと警察の騙し合いは非常に高度で、こちらが激昂したと見せかけて相手の反応を確かめ、次の一手を考えるというやりとりが積み重ねられます。このゲームのプレイヤーとなるラッセルとフレイジャーのキャラクターもよく出来ていて、おまけにこのキャラクターを一流の俳優に演じさせることができたとあっては、本作の面白さは保証されたようなもの。最高に楽しめました。この手の映画を経験したことのないスパイク・リーの演出については不安があったのですが、彼はこの脚本を自分のものとしています。冒頭、わずか15分で主要な登場人物の紹介を終え、占拠された銀行という舞台を作り上げてしまう手際の良さには圧倒されました。並みの監督であれば本作をごりごりのクライムサスペンスとするところですが、リーはあえて気の抜けたコメディ演出を施しています。この演出が合わない、まじめなサスペンス大作とした方がよかったと思う方も多いと思いますが、一見気の抜けたような演出が知的なやりとりを際立たせる役割を果たしていて、私は有効だったと思います。デンゼル演じるフレイジャーなどは、下らない冗談を言ってヘラヘラしているように見えて、腹の中では相手を出し抜くための策を練っている最高にかっこいいキャラに仕上がっているではないですか。対するラッセルは終始クールですが、アルメニア語放送やなぞなぞでは完全に警察で遊んでおり、こちらもコメディ演出による援護がなければ、物語上意味をなさないトラップになる恐れがありました。当初はロン・ハワードが監督する予定だったようですが、生真面目なハワードではこの遊びをうまく処理できなかったでしょう。
[DVD(吹替)] 8点(2010-08-25 00:55:28)(良:1票)
679.  特攻野郎Aチーム THE MOVIE
テレビ版は小学生の頃に日曜洋画劇場でよく見ていましたが、こちらは小市民をいじめる悪党をAチームが懲らしめる一話完結の水戸黄門のような物語。一方、今回の映画版はテレビシリーズでも描かれなかったAチーム結成からはじまり、彼らが地に潜るまでを描くエピソードゼロ的内容となっています。90年代から何度もリメイクが検討されてきた企画だけあってキャラクターはよく作り込まれていて、コング(映画版ではオリジナルに合わせてBAと呼ばれていますが、こちらの呼び名の方がしっくりきます)の飛行機嫌いの原因にまで触れた細かさには感心しました。 しかし、監督による演出がAチームの空気とズレており、なんだか中途半端な仕上がりとなっています。「スモーキンエース」に続いて本作を引き受けたカーナハンはアクションコメディが好きなのでしょうが、この人は根本的にこのジャンルには向いていないように思います。荒唐無稽な場面は多くあるもののどうにも弾けきれず、途中から生真面目な面が出て来てしまうのです。本作における冒頭のアクションはまさに痛快さで、このまま行けば最高のリメイクになるものと期待しました。しかし以後の物語はどんどん真面目になっていき、トム・クルーズやマット・デイモンが出ていても不思議ではない普通のアクション映画に。その一方で荒唐無稽な見せ場が要所要所で挿入されるため映画全体の温度感が掴みづらく、感情がうまく作品に乗っからないまま映画は終わってしまいました。これは、コメディとしての側面をうまくコントロールできなかった監督のセンスに問題があったと思います。 同時に、脚本上もいくつかの欠点が指摘できます。何年も寝かされてきた企画は、多くの監督・脚本家によって練り上げられていくうちに物語が複雑になりすぎる傾向があるのですが、「ミッション・インポッシブル」のような陰謀や裏切り渦巻く本作の物語も、単純明快だった「特攻野郎Aチーム」のリメイクとしては作り込み過ぎです。また、キャラクターものとしての欠点もあります。ハンニバルが作戦を企画・立案し、メンバー達が各自の特技を活かしてそれを実現するのがAチームなのですが、この映画版においては何故かフェイスが作戦を考えています。集団アクションはメンバーの役割分担を明確にすればするほど面白いのに、なぜハンニバルとフェイスのポジションを被らせてしまったのか。これは理解に苦しみました。 
[映画館(吹替)] 6点(2010-08-23 00:49:17)(良:3票)
680.  グリーン・デスティニー
登場人物や舞台設定の紹介が一通り終わると、「待ってました!」とばかりに登場するワイヤーアクション。前年に公開された「マトリックス」などは比較にもならない程の本家の素晴らしい技には度肝を抜かれます。演じる俳優及びスタントマンの身体能力の高さ、ワイヤーを扱うスタッフの熟練ぶり、カメラワークの的確さ、どれをとっても超一流です。アン・リー監督のフィルモグラフィーを振り返ると、英国貴族の恋愛物語に、郊外の家庭が崩壊するドラマに、南北戦争ものに、アメコミに、エロティックサスペンスにと、東洋のキューブリックと言えるほど幅広いものです。この恐るべき守備範囲の広さは、未知の題材を徹底的に研究して自分のものとする監督の勤勉さ、主題を丁寧に扱う生真面目さがあってこそのものだと思うのですが、本作についてもその資質は大きく貢献しています。監督にとってカンフーを扱うのは初めての経験でありながら、本作の最初の格闘シーンは香港映画が積み上げてきた実績が見事に吐き出された名場面となっているのです。公開当時本作は極めて高く評価されましたが、最初の格闘シーンを見れば、この映画には何か賞をやらねばと思わされてしまいます。それほどの名場面なのです。一方でこの監督は娯楽には不向きな傾向があり、残念ながら本作も娯楽アクションとしてもう一歩踏み込み切れていない部分があります。クレジット上はチョウ・ユンファがトップではあるものの、本作はチャン・ツィイー演じるイェンの成長物語であることは間違いありません。だとすると主人公イェンの心情を観客は理解する必要があるのですが、彼女が現状から逃げ出したいと思う物語の発端部分が描かれていないため、わがままなお嬢様が好き放題暴れているだけにしか見えません(幸い、チャン・ツィイーの魅力によってイェンは救われましたが)。このため、観客は感情的な部分で物語とシンクロすることができなくなっています。またカンフー映画のラスボスは強敵であるべきなのですが、本作の敵はリー・ムーバイどころかイェンにすら実力で負けてしまっているという設定。残念ながら、これでは盛り上がりません。本作の悪役はチョウ・ユンファ、ミシェル・ヨーというカリスマ俳優を二人も相手にせねばならないのですから、相応の設定を練り上げるべきでした。
[DVD(吹替)] 6点(2010-08-21 00:22:27)(良:3票)
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