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鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2594
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

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921.  ザ・バンク -堕ちた巨像- 《ネタバレ》 
ファーストカットのアップから始まり、終始、主演俳優クライヴ・オーエンの濃ゆい顔面が印象強い映画だった。 特に好きでも嫌いでもない俳優だけれど、改めて振り返ってみると、結構印象強い映画に多数出演しており、決して派手さはないけれど存在感のある俳優だと思う。  そのクライヴ・オーエン主演で、相手役は、これまた地味だけれど確固たる存在感を放ち続けるスター女優のナオミ・ワッツ。 この二人が組むに相応しく、映画は地味で堅実で骨太な世界観を構築している。  世界的な大銀行における巨悪と陰謀を、主人公らが単身対峙し、暴こうとするストーリー展開は、この手の映画ではよくあるプロットではある。 しかし、前述の主演俳優らの堅実な存在感と、ドイツ人監督のトム・ティクヴァの構成力が冴え、独特の緊迫感と映画的な美しさに溢れた見応えのある作品に仕上がっていると思う。 観る者を引き込む多彩なカメラワークは流石で、息を殺しての尾行シーンから突如として激しい銃撃戦に展開させる流れなどは白眉の出来映えだった。  映画のラストは、再び主演俳優の表情を画面いっぱいに映し出して終わる。 ファーストカットのそれと異なり、巨悪を追い詰めはしたが、結局何も変えられなかった主人公の表情は虚無感に溢れている。 カタルシスには程遠いラストだったが、この映画の顛末としてはとても相応しい幕引きだったと思う。  概ね良い仕上がりの映画なのだが、各キャラクターの造形には一抹の消化不良感が残る。 主人公をはじめとして、それぞれのキャラクターへの踏み込みが弱いので、今ひとつ感情移入できない部分もあった。 敵役関連のキャラクターも良い風味は出していたのだが、味わい深いところまで造形が及んでいたとは言い難く、そういう部分がラストの呆気なさに繋がってしまったとも言える。
[インターネット(字幕)] 6点(2013-09-07 16:06:54)
922.  紙ひこうき
ディズニー映画「シュガー・ラッシュ」の同時上映短編アニメーション。 たった7分という時間の中で、無限のドラマ性と、エモーションを生むのは、アニメーションならではの「チカラ」だと思う。  「街中で紙ゴミを撒き散らかし過ぎだろ!」とか、「そんな嫌々仕事したらそりゃ上司から嫌な顔もされるよ!」とか、もちろんそんな無粋なことを言うべきではなく、ファンタジックな小さなロマンスを堪能すべき。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2013-07-31 15:20:08)
923.  レディ・イン・ザ・ウォーター
ハリウッドきっての人気親子主演の最新作「アフター・アース」の日本版トレーラーにおいて、かつて一世を風靡したはずの「監督」の名前が一切表示されないことをあまりに不憫に思い、改めて“彼”の未見作品を見直してみることにした。  “彼”とは勿論、M・ナイト・シャマランのことである。  1999年の「シックス・センス」があまりに大ヒットしてしまったため、大衆向けの娯楽映画監督という印象が強く付き過ぎてしまい、その後の「特異」な映画世界に対する大衆の拒否感が必要以上に高まってしまった感のあるシャマラン監督。  個人的に最も好きな作品は、世間的には酷評が目立つ「アンブレイカブル」なので、一概に大衆向けの映画監督だとは思っていなかったけれど、その後の「サイン」「ヴィレッジ」にまったく面白さを感じられなかったので、以降彼の作品からは疎遠になっていた。  気がつけば実に9年の空白を経て、彼の映画を観ることになった。 率直な感想だが、とりあえず善し悪しは別にして、たぶん、この作品の映画世界こそM・ナイト・シャマランという映画人が本当に描きたい世界観なのだろうと思える。  正直、映画の世界観に少しでも没頭できなければ、「結局なんなんだ!?」と噴飯もやむを得ない作品であることは間違いない。 僕自身、「面白かったか?」と問われれば、実際「微妙」と答えざるを得ないというのが正直なところだ。  ただし、この特異な映画において、この特異な映画監督が描こうとしていることは、一貫している。 自分たちが存在し生きているこの世界を、「物語」そのものに見立て、世界そのものの閉塞感や神秘性、そこに生きる人間たちの宿命や運命を、ある部分では間接的に、ある部分では極めて直接的に表現しているのだろう。  それはシャマラン監督自身が、「表現者」として常にこの世界に感じている“ジレンマ”に他ならない。 「物語」がつまびらかにされるストーリーにおいて、シャマラン監督自身が「作家」を演じ、「悪役」が映画評論家なんてのは、どうしても伝えずにはいられない彼の思いがほとばしっているように見えた。  というわけで、この監督の本質が極めて大衆的ではないということは明らかだ。 あまりハリウッドの潮流に流され過ぎずに、映画作家として我を張って、自分の描きたいことだけに集中していってほしいなあ。と、映画ファンとしては思わずにいられない。
[DVD(字幕)] 6点(2013-07-08 23:47:48)
924.  ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記
ニコラス・ケイジ扮する歴史学者兼冒険家の主人公が、米国史に隠された陰謀と宝を追い求めるシリーズ第2作。 “当たり屋”覚悟で暇つぶしに観た一作目が意外に面白かったので、立て続けに鑑賞に至った。 もうこうなると、主人公をはじめとする主要キャラクター達に愛着が生まれてしまっていると言ってもいいかもしれない。  一作目では、ニコラス・ケイジ自体が主人公のキャラクターを探っている節が中盤まで見受けられたが、二作目になり“ベン・ゲイツ”というキャラクターをノリノリで演じていることが見受けられる。善し悪しは別にして……(ゴールデンラズベリー賞ノミネート)。 冒頭、バッキンガム宮殿で、ヒロインと罵り合うシーン等では、ニコラス・ケイジらしい過剰な演技プランが個人的にはウケた。  ストーリーは、リンカーン大統領暗殺事件に祖先が関わっていたという汚名を着せられた主人公(一家)が、先住民族の隠された黄金を探し、一族の汚名を晴らそう!というちょっとよく分からない展開が繰り広げられる。 現職大統領にもちょっかいを出しつつ、例によって謎が謎を呼び、主人公チームがことごとくそれを解いていくというくだりの連続。 王道というよりはベタな展開の連続なのだが、そこそこのアクション性と軽妙な台詞回しによって、飽きないつくりにはなっていると思う。  リンカーン暗殺者の日記の切れ端だとか、歴代の大統領に受け継がれた秘密の本だとか、よくありそうな題材ではあるけれど、やっぱり男心がくすぐられてしまう。  続編において主人公の「母親」登場!なんてくだりもベタの範疇だろうけど、必然的に大物女優の登場を期待して、「ヘレン・ミレン キター!」となると、映画ファンのテンションは上がってしまうもの。 前作に引き続き出演のジョン・ヴォイトとヘレン・ミレンによる“老夫婦アドベンチャー”にも、本筋ではない味わい深さがあった。  突っ込みどころはそりゃ満載だが、そんなこと気にしていたら“ニコラス・ケイジ映画”は楽しめないよということをある意味雄弁に語る娯楽大作と言える。
[インターネット(字幕)] 6点(2013-05-07 16:13:55)(良:1票)
925.  シャンハイ・ヌーン
相当久しぶりにジャッキー・チェンの主演アクション映画を観た。 2001年に「アクシデンタル・スパイ」を映画館に観に行って以来、新作旧作関わらず彼の映画を観ていなかったことに気づく。 実に10年以上も“ジャッキー離れ”してしまっていたことになる。  言わずもがな、ジャッキー・チェンはカンフースターの代名詞で、自分の世代的にはその存在性はブルース・リーを凌ぐ。 スター俳優としての絶頂期だった90年代は、自分が映画をコンスタントに見始めた時期とも重なり、そのほとんどを観て、幸福な映画体験のアイコンとして刻み込まれた。  時は流れ2000年代に入り、至極当然なこととして、希代のアクションスターにも確かな“衰え”が見え始めると共に、距離を置くようになってしまった。 それは、愛すべきスーパースターが「劣化」していく様を見たくないという、独善的なファン心理故のことだったのかもしれない。  そのスーパースターが最新作でついにアクション映画の第一線から身を引くという。 そこで、“離れ”ていた期間の作品の幾つかをちゃんと観ておこうと思い、今作の鑑賞に至った。  当然ながら、繰り広げられるアクションに往年のキレと勢いは無くなってきていた。 ハリウッドに活動の拠点を移したことにより、香港映画特有の味わいが無くなってしまったことも否めない。 しかし、活躍のフィールドを広げ、それまでに成し得なかったパフォーマンスの可能性を広げようという心意気はひしひしと感じる。  トップランナーであればあるほど、常に新しい挑戦をし続けなければならないというのは、どの世界においても共通する。 ジャッキー・チェンの俳優人生は、まさにそのことを証明し続けた結果と言って間違いない。  と、感傷的で理屈っぽいことを延々と綴る以前に、「やっぱりジャッキー・チェンの映画は楽しい」ということを再確認できたという事実、それが最も重要なことだと思う。
[インターネット(字幕)] 6点(2013-04-21 21:05:19)
926.  ホビット/思いがけない冒険
 「壮大」というよりは「膨大」な映像の“物量”に気圧された。 それがそのままエンターテイメント大作の質としてのパワーに直結して感じられたなら良かったのだけれど、鑑賞日は三が日の最終日、年末年始の疲労の蓄積がピークに達した状況では、正直呆然と眺めるしかなかった。 コンディションを整えられていなかったことに対しての自責を感じつつも、"見慣れた”映画世界に「退屈」を感じてしまったことは否めない。    「ロード・オブ・ザ・リング」(以下「LOTR」)三部作が映画史に燦然と残るファンタジー映画の傑作であることは間違いないと思っている。  その“前日譚”を同じピーター・ジャクソンが描き出すということに対しては、大いなる期待と同時に、「二番煎じにならないのか?」という危惧はどうしたって拭いされなかった。  結果として言えることは、やはり危惧した通り、何だか見慣れた映画世界がまた一からスタートしたのだなという印象に帰結してしまったということだ。  世界観の作り込みは当然ながらもの凄い。ただし、そこに前三部作を超越した何か“新しいスゴさ”があるかというと、そういうものは感じられなかった。 ガンダルフをはじめとしてお馴染みのキャラクターが登場するシーンは、かつての高揚感が彷彿とされ確かにアガる。ただそのアガり方も、あくまでスピンオフ的な盛り上がりに過ぎず、「前日譚」である以上「LOTR」を越える程の物語性は望めまいという固定概念が先行するため、今ひとつ高揚感に浸ることが出来ない。  またキャスティングの地味さも厳しい。俳優の名前で客を呼ぶタイプのエンターテイメント作品ではないということは分かっているが、新キャラクターの殆どが無名俳優ばかりで印象が薄いので、登場人物の多さがただの雑多さに繋がってしまっている。 たとえ現時点での知名度は低くとも、たとえばヴィゴ・モーテンセンやオーランド・ブルームクラスの実力やスター性を備えた俳優を起用してほしかったところだろう。  とはいえ新たな“三部作”は始まったばかり。顧みてみれば、「LOTR」の一作目を初めて観た時の印象もそれほど良くはなく、二作目、三作目の盛り上がり方で一気にシリーズ全体が昇華していった。 とりあえず前三部作を観直しつつ、次作「スマウグの荒らし場」の公開をじっくり待つことにしよう。
[映画館(字幕)] 6点(2013-01-03 22:24:53)(良:1票)
927.  ザ・レッジ -12時の死刑台-
何よりもまず言いたいのは、「リヴ・タイラーがいい」ということ。彼女のファンならば、そりゃあ必ず観るべきだろうし、必ずしも彼女のファンでなくても気になる存在感を見せてくれるだろうし、三十代半ばにさしかかったこの女優の雰囲気に対して、思わず「エロい!」と言わずにはいられなくなることは間違いない。 はっきり言って、そういう要素だけでこの映画に“価値”はある。 そのリヴ・タイラー演じる人妻の滲み出る“エロさ”こそが、ある意味この映画の裏テーマでもあるのだ  決して完成度の高い映画ではないということは否めないが、どういうスタンスでこの映画を見始めるかによって、観賞後の満足度は大いに変動するだろうと思う。 不幸にも日本版のトレーラーやイントロダクションを鵜呑みにしてしまって、今風のソリッドシチュエーション的なサスペンスだと思っていると、大いに肩透かしを食うだろう。 僕は幸運にも観賞後にトレーラーを観たので良かったが、明らかに映画の内容を無視し、部分的には改ざんすら見られるトレーラーの内容は噴飯ものだった。 日本版のイントロダクションには、「この4人のうち死ぬのは1人」などと阿呆かと思わせるキャッチコピーを掲げたりしてしまっているが、そもそもこの映画はそういうタイプのものではない。  この映画がテーマとするものは個々人における「信条」との関係性であり、登場自分のそれぞれが「信じるもの」に対して、ある者は積極的に、ある者は強制的に対峙させられる様を描いた物語であると思う。 それを少々サスペンスじみたストーリー展開で彩っているに過ぎない。 登場人物たちが、それぞれ経てきた人生を礎にして、進むべき道を決断させられる様は興味深く、部分的には胸に迫るものもあった。  ただし、先述の通りだからと言ってこの映画の完成度が高いというわけではない。 最終的に振り返ってみれば、結局何だったんだという程度のお話で、設定や展開があまりに腑に落ちない部分も多い。 4人の主要人物が登場するが、それぞれが結構苦いトラウマを抱えているわりには、どうも人間が薄っぺらく見える。ドラマ性を深める要素は多分にあるのに、今ひとつ感情移入が伴わないのは勿体ない。  ともあれ、リヴ・タイラーの貞淑さの奥から徐々に滲み出てくる“淫靡さ”を受け、主人公たち同様に恋狂うことを楽しむべき映画だと思う。
[DVD(字幕)] 6点(2012-12-01 21:50:56)(良:1票)
928.  フレンチ・コネクション
こういう映画を観ると、自分は映画という娯楽に根本的な部分では「精巧な虚構」を求めているのだなと思う。 ザラつく画面に映し出されるリアルな息づかい、決してトントン拍子には運ばない物事の顛末、そして正義を司る者が常に「完勝」するなんてことはあり得ないという現実感。 その唐突な映画の終焉に対して「え、終わり?」と不満を禁じ得なかった自分は、この作品の持つ価値を感じつつも、どうしても最終的に「面白かった」とは思えなかった。  非常にどっちつかずな言い方になるが、それはイコールこの映画が「面白くなかった」ということではない。 ブルックリンの刑事たちの生々しい姿が延々と描き出される映画世界に対して、終始惹き付けられたことは間違いない。 怒濤のカーチェイスシーンから、映画史に残る有名な“背後からの射殺”シーンと、見所と見応えは枚挙に暇がない映画であった。  では何が自分自身の好みに沿わなかったのか。それは即ち、この映画の最大の売りである“リアリズム”に他ならないように思える。 この映画のモデルは実在の刑事であり、その元刑事の生き様を描き出したノンフィクションが原作である。 そして監督は、リアリティを徹底しドキュメンタリー的手法でこの映画を構築していったという。 その徹底したリアリズムが、個人的にキツかったのかもしれない。  それは、あまりに生々しい描写の連続で観るに耐えないというような分かりやすいキツさではない。 ありとあらゆる情報網が張り巡らされ、別に知りたくもない現実が次々に明るみになる現代社会に生きる者として、映画の世界にまで"現実感”を求めることに疲れたという表現が正しいように思う。 このハードボイルドな刑事映画に描かれていることとその方法は、圧倒的に正しいのだろう。 ただ、楽しくはない。とどのつまりそういうことだ。  奇しくもこの映画の公開と同じ年、もう一つのハードボイルド映画の中でもう一人の刑事が登場した。 今作のポパイ刑事と同様に、正義の名の下に問答無用に悪を葬るその刑事の通称は“ダーティ・ハリー”。 この二人のアウトロー刑事のスタンスは極めて似通ってはいる。 しかし、同じ丸腰の悪党に対してでも、背後から撃ち殺すポパイよりも、正面から堂々と撃ち殺すハリーの方が、やっぱり格好良い。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-11-11 20:32:16)(良:1票)
929.  アポロ18
17号を最後に計画終了となった筈のアポロ計画には、隠された「18号」の存在があったという導入から始まるフェイクドキュメンタリー。 そのイントロダクションは非常に興味深く、どのような映像世界が繰り広げられるのか、好奇心を駆り立てられた。  映像の精度はとても素晴らしかったと思う。 終始一貫、残された記録映像を繋ぎ合わせた風のフェイクドキュメンタリーの映像の完成度は高く、何故ここまで克明な記録映像が残されたのかという“理由付け”も含めて充分な説得力を備えていたと思う。  念願のアポロ計画に選抜され意気揚々と月面に向かう3人の宇宙飛行士が、目の当たりにする「真実」とは何なのか? その核心に向けて映画は適度な緊張感と不穏さを伴って、比較的テンポよく展開される。  と、いい塩梅のサスペンスフルな展開を楽しめてはいた。 が、結果的には得られた顛末に対して「満足」とはまでは遠く及ばなかったと言える。 端的に言ってしまえば、物語の核心におけるアイデアが少々ありきたり過ぎた。 アイデア自体がありきたりなので、そこから導き出される映像的な表現も、どこかで観たという印象の範囲を出ず、驚きが無かった。  フェイクドキュメンタリーという手法に固執するあまり、現実感と非現実感の狭間で縮こまってしまっているような印象を覚えた。 この手の展開であれば、どう転んでも最終的に「これが真実かもしれない」と思う人はいないだろうから、もっと思い切った展開に踏み込んでも良かったろうにと思う。  結果的に、特筆する程の娯楽性は得られず、追求したはずのリアリティ感も薄れてしまったことは残念。 ただしかし、試み自体はとても面白かったと思うし、低予算であろう製作費の中で映像的なクオリティーは極めて高かった。 終盤までの緊迫感はなかなかのものだったと感じるだけに、ただただ惜しかったという印象。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2012-11-05 17:37:48)
930.  モンスターVSエイリアン
往年の東宝特撮映画、もしくは往年のアメリカモンスター映画を沢山観てきた人たちにとっては、楽しい映画であることは間違いないだろう。 主人公自体のキャラクターや、味方となるモンスターたち、悪役エイリアン、そして司令基地のデザインに至るまで、過去の特撮映画のありとあらゆる要素が詰め込まれている。 特に、日本の怪獣映画ファンにとっては、クライマックスのあるシーンはいやがおうにも“アガる↑”ことだろう。  特撮映画マニアのスタッフが、子供と一部の特撮映画マニアの大人たちのために作った映画であり、その部分が楽しければ問題ない映画だとは思う。 ただし、正直“それだけ”の映画であることも間違いない。 過去作に対してのリスペクトを込めたオマージュ作品であることは明らかだが、悪く言えば既存のアイデアを組み合わせただけで、目新しい“工夫”の無い映画だとも言える。  個人的には特撮映画ファンではあるけれど、オマージュ的要素を生かした上でのストーリー的な“新しさ”が無かったことは、最後の最後まで今ひとつ乗り切れなかった要因となってしまった。  主人公も含め、あらゆる“モンスター”たちが、徒党を組んで地球防衛に献身するという構図は楽しいものだったけれど、それぞれのキャラクターの中身が乏しく、行動の理由があまりに軽薄だったと思う。 “アメリカ人”に一方的に捕らえられ、半永久的に閉じ込められているにも関わらず、何の疑問も示さず彼らの言いなりになっている姿は、とても安直に見えた。 主人公においては、結婚を目前にした普通の人間の女性である。そんな女性が、隕石がぶつかって突如巨大化したからといって、その瞬間に捕縛され、強制的に“生物兵器”扱いされるのは、あまりに非人道的だし、三週間やそこらでその現実を全て受け止めて「これからも地球を守ろう!」なんてことになるわけがない。  そういう基本的な人間描写においては、あまりにも“乙女心”が分かっていない製作スタッフの“オタク魂”が過剰に出過ぎてしまった結果だと思った。  まあ、そういったあからさまな“ほつれ具合”も開き直って「味」として認めれば、全然問題はないのかもしれないけれど。
[DVD(字幕)] 6点(2012-09-28 15:29:41)(良:1票)
931.  メカニック(1972) 《ネタバレ》 
リメイク作品であるジェイソン・ステイサム版を今年観たばかりだった。 オリジナル版を鑑賞し、何より強く思ったことは、想像以上に先立って観たリメイク版が洗練されているということだった。 ストーリーや諸々の細かい描写において、オリジナルである今作を踏まえつつ、より理にかなった改修がされていたということを知った。 詰まる所、殺し屋アクション映画の隠れた名作として名高い今作よりも、リメイク版の方が圧倒的に面白かったと言える。 数多いオリジナル作品とリメイク作品の関係性においては、それは非常に珍しいことだ。  このオリジナル版がリメイク版よりも劣っていた点は大きく二つ。  一つは、物語の発端となる暗殺依頼、主人公の恩人であり友人のハリーを組織の指示通りに殺すくだりの軽薄さ。 依頼の忠実な遂行のためとはいえ、長年の友人である人物を殆ど疑念も抱かぬまま、淡々と殺してしまうのは如何なものか。 このハリーの息子が、この後のストーリーの主軸に絡んでくるわけだから、ハリーというキャラクターとその暗殺シーンの軽薄さは、ただただ主人公の人間的魅力を削ぐだけだったと思う。  二つ目は、ラストの顛末。 大筋の流れはオリジナルもリメイクも変わらないが、プロフェッショナルとして主人公が、結局最後まで生き残る様を描いたリメイク版に対して、オリジナル版ではそういう描写が無いので、「え、それで終わり?」と非常にフラストレーションが溜まる結末になってしまっている。  どちらも、主人公の魅力そのものに大いに関わる要素だけに、映画自体の優劣に非常に関わっていつと思う。  ただそれでも、今作の映画としての面白味は充分ではないがきちんと備わっている。 その大きな要因は、何を置いても主演のチャールズ・ブロンソンの魅力そのものだと思う。 実はチャールズ・ブロンソンの主演映画を鑑賞するのは初めてだったが、無骨な佇まいの中に時折垣間見せるチャーミングさが、多くの映画ファンから愛された理由であることは、この一作品を観ただけ明らかだった。 是非、他の主演映画も観てみたいと思う。  そして、この往年の名優の魅力は、アクション俳優というジャンルの現在唯一の“生き残り”と言っていいジェイソン・ステイサムの魅力と極めて似通っている。 そういう部分も、リメイク作品が優れたアクション娯楽に仕上がった要因の大きな一つだと思う。
[DVD(字幕)] 6点(2012-09-23 22:05:11)
932.  間諜X27
マレーネ・ディートリッヒの映画を観るのは、「情婦」に続いてまだ2作目だが、この人が映画史に残る大女優の名跡に相応しいことは、2作だけで充分に理解し得る。  「間諜X27」とういタイトルを見て、語意が分からなかった自分は、一体何の映画なのかちっとも分からなかった。 主演女優演じる未亡人が、政府の裏機関の人間にスカウトされ“女スパイ”に仕立て上げられる。そこでようやく、「間諜」=「スパイ」ということが理解できた。  “スパイ映画”として観たならば、古い映画だということをさっ引いたとしても娯楽性に乏しい。 物語自体のドラマ性も決して深みがあるとは言えず、面白味は薄いと言える。  しかし、それでもこの映画の価値を及第点レベルに押し上げているのは、言うまでもなくマレーネ・ディートリッヒの存在感に他ならない。  時代の混沌に巻き込まれつつ、最期まで「女性」としての凛とした姿を見せ続ける彼女の振る舞いに、性別を超越した“憧れ”を感じずにはいられなかった。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-08-21 23:44:09)
933.  アドレナリン(2006)
何か知らんが、アドレナリンを出し続けなければ心臓が停止するという毒薬を注入された男が、己の生命と復讐をかけ、他人の命と迷惑なんて顧みず街中を走り回るという映画。 馬鹿馬鹿しいにも程があると言わざるを得ないストーリーだが、それでもかろうじてエンターテイメントとして成立させている。 そして、この馬鹿馬鹿しさをまかり通せるのは、今はこの男しかいないだろう。  ジェイソン・ステイサムが、表現通りに“アドレナリン分泌しっ放し”の主人公を、“いつも通り”の存在感で体現してみせる。この映画のエンターテイメント性は、もうその存在感に頼りっぱなしと言っていい。  90%以上は「くだらない」と一笑に付してしまって良い映画だが、困ったことに主演俳優の存在性を盾にして、どうしたって印象に残ってしまうシーンが所々で映し出され、時に大笑いしてしまい、時にウルッときてしまうものだから、尚更始末が悪い。  公然○○○シーンや、まさかのラストシーンでの愛の告白からの衝撃のラストカット。 本当にこの映画を作った方々の頭はどうかしてしまってるんじゃないかと思ってしまう。主演俳優も含めて……。  そしてッ、このラストで続編があるってんだから、いよいよどうかしてるぜ!
[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-06-07 15:33:20)(良:1票)
934.  マチェーテ
“いかつい”なんて形容ではあまりに言葉足らずの風貌の主人公が、巨大なナタを振り回す冒頭のバイオレンスシーン10分。そして、そうそうたる濃い過ぎるキャストが勢揃いのラストの大乱闘シーン10分。 この映画は、その合計20分だけで充分!というかそれ以外の部分は、よそ見して酒でも飲んでりゃあイイ。  当たり前のことだが、この映画において、完成度の低さに目くじらを立てること程愚かなことはない。 今作監督のロバート・ロドリゲスと、その盟友クエンティン・タランティーノ、ハリウッドきっての“悪ガキ”監督が企てた“グラインドハウス”映画の中で登場する実在しない映画の予告編から生まれた今作が、まともに完成していると思うことがそもそも間違い。「完成度」など存在すらするわけがない。 大部分を占める“クソ映画”的展開の中で、時折垣間見せるハイテンションシーンに馬鹿みたいに高揚することが出来ればそれで充分なのだ………とは思う。  とは思うからこそ、想定外の不満を感じた。それは、思ったよりもずっとキレイにまとまってしまっていることだ。 先述したように冒頭やラストは、それなりに荒れていてハチャメチャな様が見ていて楽しい。が、その他の部分が思ったよりも“暴走”していない。 そもそもストーリーなんてあってないようなものなのだから、整合性なんて無視して“ぐでんぐでん”な映画世界を見せてほしかったと思う。  その期待はずれの真っ当さが、目新しさを生まず、映画全体のテンポを悪くさせ、テンションが上がり切らなかった原因だろう。 主人公はもっとはっきりとした無頼漢であってほしかったし、豪華スター勢揃いの悪役陣ももっと振り切ったキャラクターで良かった。 そして、個人的に大好きなミシェル・ロドリゲス姐さんと、ジェシカ・アルバ嬢には、もっともっとセクシーシーンがあるべきだと思った……。  まあそれでもね、正義のダニー・トレホと悪党のスティーヴン・セガールというまさかの一騎打ちが観られるだけで、やはり充分な映画だろう。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2012-05-02 00:46:37)(良:1票)
935.  ブリッツ
雑多な映画だ。いや、はっきりと「雑」と言ってしまって良いだろう。  極めて粗暴ながら警察を「天職」だと言い切るジェイソン・ステイサム演じる主人公が、警察官ばかりを狙う連続殺人鬼を追う。 ストーリーとして、至極単純明快でありながら、実際どういう映画かと言われれば説明しづらい。 というか、説明なんて面倒だから、とりあず観て、文句なり賞賛なり勝手にのたまってくれと言いたくなる。  この何だか“掴みきれない”原因は、登場するキャラクターたちの言動とか生き方が、揃いも揃って場当たり的で計算しなさ過ぎていることだと思う。 正義も悪党も皆、ただただ己のやりたいように動いていくので、その言動に対する善悪の判断以前に、「え?それでいいの?」と戸惑いが先行してしまう。  そういう部分から端を発する映画全体に漂う“違和感”が、この映画のオリジナリティとも言え、最大の突っ込みどころであると同時に、最も面白い部分とも言える。  また荒っぽい主人公が正反対のゲイの上司と志を共有していく関係性や、狡猾なのかただのイカレ野郎なのか判別し難い殺人鬼など、それぞれの人間描写はなかなか個性的でユニークだった。  今や“アクション映画スター”という肩書きの世界的トップランナーであるジェイソン・ステイサムの最新作だけに、結構な大作なんだろうと鑑賞し始めたが、想像以上に英国内向けの限定的な作品だったと言える。  そのことが、肩すかしや戸惑いに繋がってしまうかどうかは微妙なところだが、たぶん多くの人の想定外に「変な映画」であることは間違いないと思う。
[DVD(字幕)] 6点(2012-04-04 23:29:39)
936.  カウボーイ&エイリアン 《ネタバレ》 
「カウボーイ&エイリアン」なんてふざけたタイトルを掲げ、ダニエル・クレイグ&ハリソン・フォードという新旧のワイルド・ガイを競演させたこの映画が、エンターテイメント大作としてどうやってまとまっているのだろう?という疑問が、この映画に対する最大の興味だった。 その答えは、端から大作として綺麗にまとめる気なんて更々ない“とんでも映画”だということだった。 つまりは、“カウボーイ”と“エイリアン”を共存させたこの映画が、良い意味でも悪い意味でも、真っ当な映画である筈がないのだ。  当然ながら、“酷評”しようと思えばいくらでも出来る映画だろう。しかし、この映画の場合、もはや酷評することすらナンセンスに思える。 序盤から怒濤の突っ込みどころが散りばめらるが、ミステリアスなヒロインが炎の中から蘇るシーンを境にして、心の中で突っ込みを入れ続けている自分自身が馬鹿らしく思えてくる。 むしろ、このハチャメチャな世界観を馬鹿になって楽しむべきだろうと、心のシフトチェンジが起きる。  そこからは、オーソドックスな西部劇としてシンプルに楽しむことが出来た。 記憶を無くしたヒーロー、秘密を知るヒロイン、心に傷を負った老戦士、土着民族と盗賊らが、共同戦線を張り共通の「外敵」に挑む。この映画のプロットはそういう非常にありふれたものなのだ。 その敵が、今回はたまたま“エイリアン”だったということに過ぎない。  SF的な視点で見てしまうととてもじゃないが目も当てられない。 でも、大いに強引ではあるけれど、新しい要素を取り入れた西部劇として見れば、最終的には何だか悪くない映画に思えた。  決して褒められた映画ではないが、娯楽映画だからこそ許されるこの馬鹿馬鹿しさは、嫌いじゃない。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2012-03-27 16:23:40)(良:1票)
937.  アンノウン(2011) 《ネタバレ》 
殆ど予備知識無く鑑賞を始めたので、冒頭から滲み出ているサスペンスフルな空気感にすんなりと引き込まれ、二転三転する展開を堪能しながら最後まで楽しむことが出来たことは間違いない。 サスペンスアクションとして、サスペンスの緊張感とアクションの高揚感がバランス良く配置されており、鑑賞直後の満足感は当初の想定よりも随分と高かったと言える。  ただし、観賞後数分間でちょっと振り返ってみると、粗という粗がポロポロと出てきてしまうことは否めない。  よく考えると映画全編に渡って言えることだが、「実は一流の○○○」だったというには、そもそもの言動がずさん過ぎて陳腐だ。 まず目的のために徹底した偽りを謀るとはいえ、目的地への移動中に至るまでその偽りを貫く必要があるのだろうか。これは明らかに観客を欺くためだけの演出であり、人間描写上の必要性はないと思う。 そんでもって、空港のタクシー乗り場で最も重要な鞄を置き忘れるって、どんだけうっかり屋さんなんだという話だ。これも結局、ストーリーとしての一つの目的を設置するためだけの設定であり、極めて安直だ。 他にも、一流ならば乗り込んだ先の言語で世間話くらいは出来るようにしとけよ!とか、ふいの自動車事故とはいえ簡単に気を失い過ぎだろ!咄嗟に飛び降りるとかそれくらいしようよ!とか一流の組織のメンバーのくせいに素人の女の子にやられてどうすんだ!とかとか……、一度突っ込み出したら止まらなくなってきそうだが、とにかくよくよく考えると用意されていたオチに対して整合性が無さ過ぎる要素に溢れてしまっている。  ストーリーのアイデア自体は、オリジナリティが高いとは言い難いけれども充分に面白味に長けている。それが興味を最後まで持続させる最大の要因だとも思う。 しかし、このアイデアであれば、ラストの顛末でもっとどぎつく踏み込むことができたなら、数多の粗を振り切って余りある映画に仕上がっていたかもしれないなと思う。リーアム・ニーソンのクライマックスの表情は観る者を惑わせる緊張感が含まれていて良かったけれど……。  まあそこまで完璧なクオリティーを求めるべき類いの映画ではないと思うし、観ている間と観終わった瞬間に満足していたならそれで充分だと思う。  と同時に、画面から溢れ出る上質な色調と巧い俳優陣の演技によって、もの凄く質の高い映画に“見えるだけ”に、やはり残念に思う。
[DVD(字幕)] 6点(2012-02-26 02:14:25)(良:2票)
938.  トランスポーター
「運び屋」と銘打っているくらいだから、「TAXi」よろしく強引なカーアクションが問答無用に展開するB級アクションなのだろうと高をくくっていた。 B級アクションであることは間違いなかったけれど、想像以上にジャンルを無視した“ナンデモアクション”が荒唐無稽に展開され、失笑と馬鹿笑いの間で思いのほか楽しめた。  ジェイソン・ステイサムという俳優は、初期のガイ・リッチー監督作品でのブリティッシュマフィアの役柄の印象が強く、これほどまでアクションスター然としたパフォーマンスを見せるとは思わなかった。 アクションスターとしてのスタンスは、かつてのジャン=クロード・ヴァン・ダムらを彷彿とさせるもので、もはや“古臭さ”さえ感じるが、逆にあの時代のアクション映画で育った者としては、面白さを感じてしまうことを否定できない。 思った以上に鍛え上げられた体躯から繰り出される格闘アクションにも充分に説得力があり、香港映画ばりに舞台環境を駆使した闘い方には、リアリティなんて無いが素直に面白かったと思う。 偉そうに運び屋のプロとしての口上をのたまう割には、おおよそプロらしくない人間味を早々から曝け出してしまうキャラクター性も馬鹿らしくて良かった。  ストーリーに目を向けてしまうと、粗なんて突っ込みきれないほどあり、まともに見られたものではない。 が、主人公の無骨だけれど人間味のある格好良さや、アジア系ヒロインの可愛さも相まって、映画に溢れるあらゆる“粗”を“見て見ぬふり”をさせてくれるB級アクション映画としての娯楽性は充分に備わっていると思う。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-02-05 09:25:38)
939.  ハンナ
まるで拷問器具のように見えるデンタルケアセットを几帳面に並べ、自らの歯間を血が出るほど磨き続けるCIAエージェント役のケイト・ブランシェットが怖い。 “追跡者”として珍しく悪役を演じる彼女のキャラクターはとても印象的で、劇中でも表現されるが「魔女」という比喩があまりに相応しい役所だった。   赤子の頃から凍てつく森の奥に閉じ込められ、ひたすらに殺人の術を叩き込まれてきた少女。彼女の存在の“解放”と、秘められた謎を追うストーリーは、正直ありきたりと言える。 ただ、ただモチーフとして用いられている「グリム童話」が示すように、映画世界そのものがある種の“寓話”として描かれており、垣間見える非現実感が独特の世界観を構築していたとは思う。 冒頭からどこか達観した主人公の少女のたたずまいや、概念的な台詞回しに引き込まれたことは間違いない。  そこに何かしらの“含み”を持った曲のあるキャラクターたちが息づき、印象的な世界観をさらに深めていったと思う。 また画面には、常に今この瞬間に凶弾が襲ってくるかもしれないという緊張感が溢れ、上質なサスペンススリラーが映し出されていた。  しかし、最終的には物足りなさが先行したままエンドクレジットが流れ始めてしまった。  結局、寓話的な曖昧さが全体を包み込んでしまい、ストーリーに説得力が無かった。 キャラクターそれぞれに魅力的な存在感は備わっていたが、彼らが抱える過去の葛藤や人間性の描写が中途半端なままで、つまるところ何がしたかったのかが伝わってこない。  ジェイソン・フレミングが父親役で登場する家族との交流も、何だか中途半端で、捕らえられた家族があの後どうなってしまったのかとても気になって仕方が無い。 そういったあらゆる部分での人間描写があまりに中途半端過ぎたと思う。  「心臓外しちゃった」という主人公の台詞を、オープニングとエンディングで絡ませた演出は格好良かったけれど、ストーリー自体に今ひとつ中身がないので、「結局、ソレやりたかっただけじゃね?」と本来生じて欲しかったカタルシスを感じられなかった。  あとほんの少し脚本に小気味良い工夫があれば、圧倒的に素晴らしいアクション映画になっていた可能性は大いにあるだけに、とても勿体ない。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2012-02-04 14:20:55)
940.  カンフー・パンダ2
この“パンダカンフー映画”シリーズを立て続けに観て思ったことは、最新アニメーション映画において「声優」のキャスティングはこれまでとは少し違った意味で重要になるなということだった。 一昔前までは、客寄せのために著名な俳優を声優としてキャスティングするよりは、本職の声優を起用した方が良いと思っていた。  しかし、アニメーション技術の更なる進化により、造形されるアニメキャラクターの言葉遣いや仕草までもが、声優を担当する人間そのもののキャラクター性に合わせられるようになった。 詰まる所、映画の中で動き回っているのはデブのパンダだけれど、それを演じているのは明らかにジャック・ブラックだと思わずにはいられなくなった。 もし、何らかの事情で、このデブパンダの声をジャック・ブラック以外の人間がやることになってしまったら、その映画はもの凄くチグハグで違和感たっぷりの映画に成り下がってしまうだろうことは容易に想像ができる。  もはやこの映画はアニメーションだけれど、ジャック・ブラック主演でアンジェリーナ・ジョリーやダスティン・ホフマンらが脇を固める映画シリーズだと言わざるを得ない。 アニメーション映画のクオリティーはそういうレベルにまで達しているのだということを改めて感じる質の高い映画であることは間違いない。  ただし、そういったアニメーションの高い技術や、ハリウッドの一流俳優たちが演じるキャラクターの安定感に対して、ストーリーそのものにあまりに意外性がないことも事実。 「王道的」と言えばそうかもしれないが、だからと言って面白味が薄いのであれば、それはやはり問題だろう。 前作に対して、主人公には劇的な成長は無いし、敵役やその他キャラクターとの対立構造も薄い。  更なる続編も企画しているのかもしれないが、ストーリーにひねりや毒っ気がもう少し無ければ、尻つぼみになってしまうことは避けられないだろう。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2012-01-29 11:23:24)(良:1票)
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