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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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121.  スピード・レーサー
1967年のオリジナル版シリーズも、1997年のリメイク版シリーズもどちらも未見。ということで特に思い入れも先入観もなく本作を鑑賞したのですが、メジャースタジオが1億ドルもの予算を投入した作品とは到底思えないブっ飛んだ内容には驚かされました。。。 コミックの実写化企画は数あれど、アニメの実写化企画と言えば他に『トランスフォーマー』と『G.I.ジョー』くらいしか見当たらず、しかもその2作は、着想こそアニメに求めていても内容は通常のSFアクションとして組み立てられていたことを考えると、アニメの完全再現にこだわった本作は非常にユニークな存在であったと言えます。その再現の度合は常軌を逸したレベルに達しており、人間とチンパンジー以外はほぼすべてが作り物、しかも60年代特有のケバケバしい色調が画面を席巻していてカッコよさとも無縁という、「一体、誰がこの映画を楽しむんだ?」と頭を抱えたくなるような壮絶な出来となっています。主人公が乗るマッハ号はオフロードもオンロードもOKで、しかもプライベートでの乗用車としても使用されていたり、車がゴムまりのようにポンポン飛び跳ねたりと、どう考えてもおかしな点まで一切の修正を加えず丸ごと実写化。「現代風にリメイク」という甘っちょろい言葉に逃げず、ストイックなまでに映画を作り込んだ監督達の執念には圧倒されました。。。 本作の1週間前には『アイアンマン』が公開されたという不運もあって興行成績は惨敗でしたが、そりゃ、ここまでやれば当然でしょう。監督の意図を理解しながら見なければヘンな映画としか映らないのですから、普通の観客ではちょっと付いて来られなかったと思います。ただし、特異なビジュアルで思考停止せず冷静に内容を評価すれば、その出来は決して悪くなかったと思います。レース場面と回想のカットバックによりアクションとドラマを融合させた序盤、『デス・レース2000年』のようなチープな展開で観客を和ませた中盤、そして、主人公一人で敵の総本山へ殴り込むクライマックスと、本編は綺麗に色分けされており、しかも、そのいずれもが高いレベルでまとめられています。定番とはいえ、クライマックスのゴール場面では大興奮させられましたとも。バカバカしいビジュアルの一方で、M&Aや株価操作といった子供向けとは思えない用語が出て来たり、やたら上映時間が長いといった歪さも含めて、私は愛すべき映画だと感じました。
[映画館(字幕)] 8点(2014-01-20 01:18:23)
122.  運命の女(2002)
エロサスペンスの巨匠・エイドリアン・ライン監督によるエロサスペンスということで大した期待もなく見始めたのですが、これが目の覚めるほど面白い映画だったのでビックリこきました。脚本・演出・演技のすべてが高いレベルでまとまっており、大した見せ場がなくとも、それぞれのパフォーマンスの高さのみで2時間を見せきっているのです。。。 本作の脚本を担当したのは、『普通の人々』のアルヴィン・サージェントと、『アポロ13』のウィリアム・ブロイルズ・Jr。トップクラスの脚本家が二人も名を連ねているという、何とも豪華な布陣となっています。人物描写を得意とするサージェントは、主人公・コニーの心境を実に丁寧に描写しており、「不倫妻の自業自得」と思われては元も子もないこの物語において、観客に共感の余地を与えています。他方、複雑な物語の交通整理に長けたブロイルズは、幸せな家庭が徐々に追い込まれていく様をわかりやすい形で観客に伝えています。。。 このジャンルの重鎮であるエイドリアン・ラインによる演出は、抜群の安定感です。若々しくてはいけないが、おばさん臭くてもいけないという難しいポジションにある主人公を、誰が見ても美しいと感じられるように画面に収めているのです。『ナインハーフ』などと比較すると露出度はかなり抑え目であるものの、それでも濡れ場はかなりエロく撮られているし、何気ない日常の風景もいちいち美しく、本作は、彼のフィルモグラフィの総決算とも言うべき仕上がりとなっています。。。 主人公を演じるダイアン・レインは、賞とは無縁のこのジャンルにてオスカーノミネートという快挙を成し遂げましたが、確かに、彼女の演技はズバ抜けています。上述の通り、「不倫妻の自業自得」と思われてはおしまいとなる本作において、彼女はひとつひとつの感情を丁寧に表現することにより、不倫に溺れる主人公の心境を観客に肯定させているのです。彼女の相手役となるオリヴィエ・マルティネスの間男ぶりや、リチャード・ギアの小市民ぶりもそれぞれ板に付いており、登場人物全員が悪いんだけど、本当の悪人は一人もいないという本作の構図が、見事に形となっています。。。 ただし、意味不明な邦題だけは何とかならんのでしょうか。当時のフォックスジャパンは奔放すぎるネーミングセンスにより不評を買っていましたが、作品の本質をとらえない邦題をつけることはやめてほしいものです。
[DVD(吹替)] 8点(2014-01-08 01:43:16)(良:1票)
123.  レザボア・ドッグス
延々と続く音楽談義に続き、中年のおっさん達がぞろぞろと歩く様を恐ろしい程かっこよく捉えたタイトルバック、そして、肝心の強盗場面はまるまる端折られ、本編の舞台にいきなりジャンプするという奇抜な構成。現在の目で見れば当たり前に感じられることも、製作当時においてはすべてが斬新でした。本作の軸となっているのは70年代風のクライムサスペンスなのですが、そこにスプラッタ映画並みの強烈なバイオレンスとユーモア溢れるセリフ回し、そしてセンスの良い音楽など多くの要素を絡めることで、独特の味わいを出しています。タランティーノは本作でとにかくいろんなことをやっているのですが、それら雑多な要素を闇鍋状態にすることなく、ひとつの作品としてまとめてみせたという点が、彼の天才たる所以です。。。 本作が公開された時期は、私が映画を意識しはじめた頃でした。そのため、本作に対する世間の反応もギリギリ覚えているのですが、公開当時、本作はその暴力性のみがクローズアップされていたという記憶があります。構成の奇抜さや、独特のセリフ回し、洗練された楽曲センス等が評価されるのは94年の『パルプ・フィクション』からであり、本作については、新人監督が低予算・ノースターで作り上げた物凄いバイオレンス映画という認識にとどまっていたと思います。実際、本作に賞を与えたのは世界中でゆうばり国際ファンタスティック映画祭のみであり(これを恩義と感じたタランティーノは、後に『キル・ビル』で夕張の名を冠したキャラクターを登場させています)、この時点でタランティーノの真の実力を認識できていた人はごく僅かでした。まさに、当時としては規格外の傑作だったというわけです。
[DVD(吹替)] 8点(2014-01-08 01:00:38)
124.  野蛮なやつら/SAVAGES
メキシコの麻薬カルテルはとにかくヤバイ。2006年から2012年の6年間で7万6千人もの死者を出すという過激な抗争を繰り広げ、時に敵対勢力の村民を女・子供に至るまで皆殺しにするというトンデモない残虐性を見せており、もはや手のつけようのないレベルにまで達しています。他方、長引く対テロ戦争の影響でアメリカ国内には従軍経験のある若者がゴロゴロしており、世界一の先進国でありながら、血生臭い戦場の記憶を持つ世代が現在進行形で生み出されているという、なんとも異様な国家となっています。そんなメキシコのマフィアとアメリカの従軍経験者が、アメリカ国内で戦争をおっ始めたらどうなるのか?本作の切り口は非常に魅力的です。。。 監督はオリバー・ストーン。かつては映画を撮る度に論争を巻き起こしていたハリウッド随一の問題児も、『アレキサンダー』を大コケさせて以降は目立った映画を作っておらず、いよいよ才能も枯れたかと思われていましたが、本作では久々に目が覚めるような手腕を披露しています。多くの登場人物の思惑が入り乱れる複雑な物語を混乱なくまとめ上げ、ユーモアもドラマ性も残虐性も絶妙なバランスでブレンド。さらにはアクションの出来も上々であり、この手の映画としては間違いなく最高レベルの仕上がりとなっています。そう、この人は『スカーフェイス』の脚本を書き、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』を監督してバイオレンス映画の歴史にいくつもの足跡を残してきた人なのです。全盛期を彷彿とさせる脚本や演出の切れ味には唸らされました。。。 『野蛮なやつら』というタイトルは逆説的で、実際に野蛮な人間は出てこないという点が本作のポイントとなっています。映画では目を背けたくなるような暴力が繰り広げられるのですが、各キャラクターの立ち位置を考えれば、どの暴力にも合理的な目的が存在しており、ナチュラル・ボーン・キラーは一人も登場しないのです。暴力や殺人が肯定されうる状況が存在すること、本作で描かれているのはその恐ろしさなのかもしれません。上記のメキシコ麻薬戦争も、テレビのニュースで見る分には「あら、野蛮ね」なんて上から目線で悠長なことを言っていられますが、当事者としてその抗争に巻き込まれれば、自分達だって同様のことをするかもしれない。そこに暴力の根深さがあります。
[DVD(吹替)] 8点(2014-01-07 00:41:58)
125.  ザ・バンク -堕ちた巨像-
2013年には、日本国内で常識を疑う事件が2つ発生しました。ひとつは、某メガバンクが暴力団に融資を行っていたこと。もうひとつは、某餃子チェーン店の社長が、プロの殺し屋と推測される犯人によって殺害されたこと。この2つの事件からは、表社会と裏社会の距離は我々が思うほど遠くはないということを認識させられ、少なからず戦慄させられました。。。 本作のモデルは、1991年に経営破綻した国際商業信用銀行(BCCI)。独裁者を顧客に抱え、麻薬取引・武器輸出への関与、各国の諜報機関との関わりなど、出るわ出るわの悪行三昧。裏社会の組織ならともかく、世界78カ国に400拠点を構え、表社会で営業活動を行っていた金融機関がこれだけの悪事に手を染めていたということには、大変な驚きがありました。。。 本作は、そうした現実社会のトピックをエンターテイメント化すると同時に、熱い男のドラマとしてもまとめられており、さらには目を疑うほど素晴らしい銃撃戦もあり、非常に見応えのあるサスペンスアクション映画として仕上がっています。多少やりすぎな点もあるにはあるのですが、その辺りは「実話をベースにしております」という免罪符を使ってうまく言い訳しているので、致命傷にはなっていません。全体としては70年代風の骨太アクションであり、甘い要素はゼロ。主人公・サリンジャーは超絶美人の地方検事と行動を共にするも、両者が恋愛関係に発展することはありません。それどころか友達ですらなく、目的を共有し、かつ、仕事ができる相手だから一緒にいるのだという関係性は最高にクールでした。。。 また、敵方のブレーンであるウェクスラー大佐とサリンジャーの関係も激熱です。秘密警察での職務に人生を捧げたウェクスラーは、サリンジャーの将来の姿。職務のために尽くしてもそれが報われることはなかったという虚無感が現在のウェクスラーを支配しているのですが、悪を倒そうとまっすぐに生きるサリンジャーとの出会いによって、彼は再び「自分が信じるもののために戦う」という気概を取り戻します。他方、サリンジャーもまた、ウェクスラーから影響を受けます。まっすぐに戦うだけでは巨大な敵に勝つことができないということをウェクスラーから教えられ、そのことが、ラスト近くでの決断に繋がっていくのです。ドライな語り口の中に、以上の熱いドラマを忍ばせた本作の演出には、完全にノックアウトさせられました。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2014-01-06 00:58:02)
126.  キャプテン・フィリップス
ポール・グリーングラスの代表作と言えばジェイソン・ボーンシリーズですが、実はこの人はジャーナリスト出身であり、その経歴を活かして『ブラディ・サンデー』や『ユナイテッド93』といった実録物でも才能を示しています。本作もその系譜に連なる作品なのですが、同時に『ボーン・アルティメイタム』や『グリーン・ゾーン』で得た娯楽アクションの手法も存分に活かされており、圧倒的な迫力と臨場感で観客をその現場に立ち会わせるという空前絶後のスリラーとして仕上がっています。序盤で登場人物の簡単な紹介が終わると映画は一気に本編に入り、クライマックスまで一瞬の緩みもなくフルスロットルで突っ走るという絶倫ぶり。海賊の乗る救命艇と彼らが目指すソマリア海岸、そしてそれを追う米駆逐艦の位置関係、救出作戦の進行具合など、現場の概要や事件の推移といった情報を簡潔に整理して観客へ伝える技術は超一流であり、観客の側が意識せずとも物語が自然と頭に飛び込んでくるという親切な作りになっている点でも感心しました。また、海賊の側にも同情すべき背景があること、彼らが主人公に対して乱暴するのも、受容可能な量を遥かに超えるストレスを受けたためであること等、海賊達が絶対悪として描かれていないことも好印象でした。撮影にあたって米海軍の全面協力を得られているという事実が示す通り、本作がアメリカ万歳映画であることは間違いないのですが、それでも、安易な勧善懲悪という図式は避けて、多面的な見方ができる社会派映画として作り上げた点は大いに評価できます。とにかくこの映画、貶す点が何ひとつ見つからない程よくできています。。。 ここしばらくは大物臭が漂い、『キャスト・アウェイ』以降は骨身を削るような演技からも遠ざかっていたトム・ハンクスですが、そんな彼が本作ではかなり体を張っています。彼ほどのクラスの俳優がここまでやるのかと驚いた程であり、久々のオスカーノミネートもありうるのではないかと思いました。凄いと言えば、主人公と対峙する海賊達も同様であり、アメリカ在住のソマリア人から選ばれた演技経験ゼロのど素人でありながら、ハンクスと堂々と渡り合ってみせています。
[映画館(字幕)] 8点(2013-12-01 00:39:44)
127.  スターダスト(2007)
『ロード・オブ・ザ・リング』と『ハリー・ポッター』の大ヒットに触発され、ファンタジー映画が乱発されていた時期に製作された一本。大したヒットにならず終わったので今の今まで鑑賞してこなかったのですが、これが見てビックリ。結構な完成度だったので驚かされました。『ロード・オブ・ザ・リング』のような重厚長大な大作ではないためジャンルの代表作にはなりえないものの、中規模作品としては、実に理想的なレベルでまとめられています。。。 ファンタジー小説では、読者は世界観を一から理解する必要があるし、登場人物の数も多くなりがちです。読み返しの利く書籍ならともかく、観客の側が能動的に情報量をコントロールできない映画という媒体においては、そのような雑多な要素をどうまとめあげるのかが大きな問題となります。『ロード・オブ・ザ・リング』のように、当初より3部作構成で製作されることが決定しており、シリーズを合計すればタップリとした上映時間を稼げる作品であれば、そうした問題への対処も容易にはなるのですが、大半の映画はそれほど恵まれた環境では製作されません。まず1本撮り、ヒットすれば続編を製作。第1作については、単品で成立する程度に話をまとめておく必要があります。そして、多くのファンタジー映画はここで躓きます。物語をコンパクトにまとめるという過程において、原作が持っていた魅力的な要素を多く切り捨ててしまい、焦点の定まらない凡作が出来上がってしまうのです。。。 本作についても、3つのパーティが同時に動き、さらには冒険に絡んでくるサブキャラの数も多く、かつ、舞台の移動も盛んであり、一本の映画の枠に収めるにはなかなか厄介な素材だったと言えます。しかし、マシュー・ヴォーンはこの複雑な物語を、奇跡的な手腕でまとめてみせています。各キャラクターの背景や行動原理を的確に伝えており、また、端正なビジュアルによって世界観の特徴も表現できており、観客に情報を与えるという作業を非常にスムーズにこなしているのです。特に感心したのは、感動の高ぶりとともにイヴェインが光を発するという処理であり、この設定を挟むことで、ドラマが非常にわかりやすくなっています。また、この原作には性や暴力が少なからず含まれているのですが、ヴォーンはそうした毒を描くという点でも躊躇しておらず、その結果、血の通った真っ当な物語として仕上がっています。
[DVD(吹替)] 8点(2013-11-18 00:46:39)(良:2票)
128.  ジャンゴ 繋がれざる者
『ジャッキー・ブラウン』までは緻密な構成力とオタクらしいおふざけのバランスが素晴らしかったものの、『キル・ビル』辺りからB級マニアを意識しすぎた映画作りが鼻につくようになり、『グラインドハウス』でとうとう自家中毒に陥ってしまったタランティーノですが、その後の2作(『イングロリアス・バスターズ』と本作)ではオタク趣味を控えめにし、純粋に面白い映画を作ろうという姿勢にシフトしたように感じます。どちらの映画も時代劇であり、得意の音楽談義や映画談義ができない舞台を設けることで自身に制約を課したようなのですが、それでいて、従前からの選曲センスで観客の意表を突いてくるという遊びは面白く、タラの個性が非常に良い形で出た娯楽作として仕上がっています。。。 本作で感じたのは、私たちが思っている以上に、タランティーノは引き出しの多い監督さんだということです。かつて、タランティーノと言えば捻れた構成が第一の特徴として挙げられていましたが、一方本作は驚く程シンプルです。ジャンゴという男の物語が一直線に進むのみであり、時間軸の解体等のテクニックで観客の目を誤魔化したりはしていません。また、演出についても笑いに逃げている部分が少なく、正統派のウエスタンをやってやろうという気概に溢れています。90年代にはオフビート専門でオンビートの映画を撮れない監督だと思われていたタランティーノが、ここまで真っ当な娯楽を追求したことは意外であり、本作はこれまでの彼の作風の正反対をいく企画だと言えるのですが、これをほぼ完璧に作ってきたことには驚かされました。ジャンゴのかっこよさ、生理的嫌悪感を抱かせる敵、そしてガンファイトの迫力、そのどれもが非常に高いレベルで仕上がっています。長い上映時間がまったく苦にならないほど展開はスピーディであり、さらには農場での食事の場面など、アクション以外の部分にも只ならぬ緊張感が漂っています。これだけやってくれれば大満足です。。。 さらに、黒人奴隷の物語でありながら、人種問題を過度に扱い過ぎていない点でも好感を持ちました。ジャンゴのパートナーは白人だし、敵方にも黒人のブレーンがいる。余計な政治的要素を排除したおかげで、純粋に楽しめる娯楽作となっています。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2013-09-30 01:03:54)(良:1票)
129.  スター・トレック/イントゥ・ダークネス 《ネタバレ》 
IMAX-3Dにて鑑賞。舞台の奥行きや高さを用いたアクションが多く、3D効果を実感しやすいアトラクション映画として仕上がっていました。IMAX料金を払うだけの価値のある作品だったと思います。。。 前作で世界観やキャラクターの紹介が終わり、新シリーズもいよいよ本格始動となった本作。序盤から見せ場はフルスロットルであり、宇宙のインディ・ジョーンズとも言える状態となっています。「対話による平和が真髄のスタートレックにおいて、このバカ騒ぎは何だ?」と見る向きもあるようですが、ここまでサービスしてもらえればお腹いっぱい。娯楽作としては十分すぎる程の出来だと言えます。。。 もちろん、本作にも真面目なテーマはあります。本作はリーダーシップ論を描いた作品であり、多くのクルーの命を預かった艦長として、どう意思決定するのかという命題がカークに突きつけられます。規則に縛られ過ぎても良くない、かといって場当たり的でも良くない。こういうサジ加減の難しさは現実社会で多くの方が味わうものであり、ドラマ部分もなかなか侮れない内容となっています。さらには、本作の敵をカーンとしたことも、このドラマの意義をより深める要因のひとつとなっています。本シリーズはリメイクでもリブートでもなく、旧シリーズのパラレルワールドという位置づけにあります。そこにきて、旧シリーズでもお馴染みのカーンが姿を現し、我々が知っているカーンとはまるで違う行動をとりはじめることで、観客の我々にとっても、映画がどの方向に転がるのかが読めなくなるのです。この手の娯楽作の難しさは、主人公が勝つという結末が見え見えであるために観客を騙すことができないという点にあるのですが、本作ではカーンというキャラクターを効果的に用いることで観客に先読みをさせず、ひとつひとつの意思決定がどんな結果をもたらすのかを固唾を飲んで見守るという構図を作り上げています。この発想は見事と言う他ありませんでした。。。 さらに、連邦とカーンの関係は米国とウサマ・ビン・ラディンを想起させるものであり、現実社会の出来事を内容に反映させたことで、映画には奥行きが出来ています。宇宙船が都市を破壊するクライマックスは、まんま911だったし。娯楽作であってもきちんとテーマを掲げるという点において、やはりハリウッドは突出していると思います。
[映画館(字幕)] 8点(2013-08-26 00:51:38)(良:2票)
130.  スター・トレック(2009) 《ネタバレ》 
旧シリーズの劇場版には一通り目を通しているものの、テレビシリーズは未見。ファンではないものの、主要キャラクターや物語の背景についての知識はある程度持っているという状況での鑑賞です。。。 21世紀に入り、スタートレックシリーズは危機的状況に陥っていました。劇場版の興行成績は回を重ねる毎にワースト記録を更新し続け、テレビの新シリーズの視聴率も初回から低迷。長年、固定客のみを相手に商売を続けた結果、一般の観客・視聴者には理解不能な程に世界観が複雑化したことがその要因であり、大幅なリニューアルによって新規のファンを取り込むことしか、シリーズの維持を図ることはできないという状況にまで追い込まれていたのです。しかし、これが難題でした。少しでも気に食わない点があれば大騒ぎをする旧来のファンを納得させつつも、一般の観客をも取り込まなければならない。このリニューアル企画に最初に挑んだのはテレビシリーズのクリエイター達でしたが、話をまとめきれずに企画は頓挫。結局、スターウォーズ派を公言するJJエイブラムスにシリーズの命運を委ねることとなったのです。。。 エイブラムスは奇想天外なアイデアで、この難題を片付けてみせました。エピソード0でもリメイクでもない、タイムスリップにより時間軸が歪められたパラレルワールドでの物語としたのです。このアイデアには唸らされました。オリジナルの時系列を引き継ぎながらも、設定などについては全面リニューアルをする。これなら旧来のファンは納得するし、新規のファンは設定を一から覚えられる。このアイデアを思いついた時点で、この企画は勝ちだったのです。。。 さらに、リニューアルのメリットはこれだけではありません。旧劇場版にはテレビシリーズの俳優陣がそのまま出演し続けたため、主要キャストは中年や初老ばかり。これが娯楽作としての大きな制約条件となっていたのですが、リニューアルによって出演者全体が若返ったことから、見せ場はダイナミックなものとなりました。エイブラムスの小慣れた演出とも相俟って、スリル溢れる連続活劇に仕上がっています。ロミュラン人の逆恨みはさすがに度を越していないか?とか、ラスト、身動きがとれなくなったロミュラン船を攻撃するカークは容赦なさすぎないか?とか、細かい部分には疑問符も付きますが、そんなことはどうでもいいと思わせる程の勢いのあるアクション大作でした。
[映画館(字幕)] 8点(2013-08-26 00:50:46)(良:1票)
131.  マーリー/世界一おバカな犬が教えてくれたこと
普段はヴァンダムとかスタローンばかり観ている私ですが、「たまには家族で見られる映画も借りてきてよ」と嫁に言われたので、ゲオで何気なくレンタル。子犬の可愛さを全面に押し出したジャケットと女性受けを狙った邦題から、事前には『ベートーベン』や『101』のような「犬さえ出しとけばOKなんだろ映画」だと思っていたのですが、意外や意外、これが犬のいる生活を丁寧に描いた良作でした。ラスト15分では涙腺から涙を搾り取られます。家族の前なので泣くまいと思ってたんですけど、どうしても堪えることができずに号泣。さらには、寝る前に映画の内容を思い出してまた号泣。本作の感動は、もはや暴力的とも言える領域に達しています。。。 原作はコラムニストが自身の経験をまとめたエッセイであり、基本的に実話ベースなので話のリアリティが違います。犬を飼った経験のある方であれば、身に覚えのあるエピソードの連続なのです。特に、わが家は作者と非常に酷似した歴史を歩んでいるので、他人事とは思えないほどでした。子供と犬の両方が騒ぎ出して手が付けられなくなった時に、「犬なんて飼うべきじゃなかったのよ!」と絶叫する嫁。うちでもまったく同じ光景が繰り広げられています。。。 映画化に際しての脚色では、犬に擦り寄りすぎない姿勢が好印象でした。映画の中心にあるのはあくまで主人公の人生であり、その人生において仕事の重要度が高い時期には仕事の描写を、子供の重要度が高い時期には子供の描写をと、必ずしも犬ばかりが描かれているわけではありません。さらには、子供と犬との触れ合いというビジュアル的に美味しい部分は、本作にはほとんど登場しません。なぜなら、子供と犬が遊んでいる時間には主人公は会社にいるので、その光景を見ていないから。そんな当たり前のことを貫き通し、安易なウケを狙わなかったことが、本作に動物映画を越える深みを与えています。。。 ただし、映画の視点が固定されすぎていることが凶と出ている面もあります。ヒステリックに怒ってばかりの奥さんが悪役に近いポジションになっているし(女性には女性の言い分があるでしょう)、長男が犬に対して寄せる思いも伝わってきません。そもそもの問題として、どストライクな私以外の観客・視聴者が、どれだけ感情移入できるのかは不明だし。本作には、あとわずかな客観性が必要だったと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2013-07-08 22:37:36)(良:1票)
132.  声をかくす人
南北の歴史観の相違はアメリカ社会において未だにデリケートな問題であり、本作はそんなタブーに片足を突っ込んでしまったがために、興行的にも批評的にも微妙な結果しか残せなかったようです。しかし、そんな色眼鏡をとっ払って見れば、本作は硬派な題材と娯楽性を見事に両立させた非常に完成度の高いドラマであり、オスカー監督・レッドフォードの最高傑作とも言えるレベルに達していると言えます。。。 北部人が敬愛するリンカーン大統領が南部人に殺された。人々の復讐感情を充足させるためにも早期に容疑者を処刑することが求められるのだが、問題は、犯人グループの一人が逃走中で未だ身柄を確保できていないということ。そこで政府は、その母親を首謀者の一人とみなすことで事件の幕引きを図ることにする。まぁ無茶苦茶な話なのですが、東京裁判にニュルンベルク裁判、フセイン裁判と、アメリカ合衆国は歴史上何度もこの手の茶番をやらかしており、ある一時代のお話といってタカをくくれない怖さがあります。。。 結論ありきで進められる魔女裁判に、加害者への厳罰を求める世論。必死に証言者を探して来ても、証言台に立たせる頃にはすでに政府の手が回っていて、必要な証言を引き出すことができない。主人公達は容赦なく追い詰められていきます。巨悪と戦う主人公の姿はこの手の映画の定番ですが、ここまでのプレッシャーを受ける登場人物は稀です。さらに、主人公たちは個人的なジレンマとも戦わねばなりません。エイキン弁護士はこの裁判を戦い抜くことに確かな正義を見出しているものの、自分のアイデンティティと相反する立場に立たされたことで、友人も恋人も失ってしまいます。メアリー・サラット被告は自身の潔白を主張しながらも、それを証明するためには息子の有罪を立証しなければなりません。裁判がどう転んでも大きなものを失うという、まさに絶望的な戦いなのです。。。 以上、本作は社会派ドラマとして非常に充実しているのですが、同時に娯楽への目配りも出来ています。当初は絶対に勝てないと思っていた裁判だったが、目の前の壁を一枚ずつ崩していくことで次第に形勢を逆転させていく。アクション映画さながらの展開には、最後までハラハラの連続でした。結末はわかりきっているのに、それでも目を釘付けにされてしまうのです。脚本・演出ともに、非常に充実した映画でした。
[DVD(吹替)] 8点(2013-07-08 22:30:45)(良:1票)
133.  アバウト・シュミット 《ネタバレ》 
会社を定年退職し、さらには妻にも先立たれ、自分を管理していたものをすべて失った老人のお話なのですが、これが恐ろしく日本的な内容だったので驚きました。アメリカのホワイトカラーは個人主義でバリバリやっているイメージだったのですが、実際には日本のサラリーマンと同じく、組織への滅私奉公に人生の時間の大半を費やしているようです。。。 仕事をしている間にはそれなりにやることもあったし、家族と向き合わないことを正当化する言い訳もあった。プライベートで気に入らないことがあれば、妻のせいにしてればいいし。しかし、仕事を離れてそれらの制約条件がとっぱらわれた時に、それまでの人生への評価が冷酷な形で下される。以上、本作のテーマは普遍的なのですが、一方でその語り口は非常に型破りです。主人公は妻を失ってもさほど悲しまないし、疎遠になっていた娘との劇的な和解もない。娘の旦那は相変わらず好きになれないし、長旅に出ても感動的な出会いなどない。そして、主人公の偏屈な性格も一向に治らない。この手のドラマにありがちな展開は全て外してきているのです。。。 ハリウッド的な感動ストーリーに代わって描かれるのは、ひたすらに非力な老人の姿。その生き方のツケから家族にも友人にも恵まれず、その状況を変えるだけの力も度胸もない。ただ目の前にある孤独な余生を受け入れるしかない主人公の姿が、情け容赦なく描かれます。コメディとして作られているので直感的な衝撃度は低いものの、よくよく考えれば相当に欝な話です。。。 そして、オチの付け方も底意地の悪いものでした。アフリカの子供が描いた絵を受け取って涙する主人公。これを、主人公が人間性を回復した瞬間だと解釈する向きもあるようですが、私はそうは思いません。添付の手紙には、この子は英語が分からないという説明がありました。つまり、子供は主人公からの手紙の内容を分かっておらず、当然主人公の人となりも理解しておらず、恐らくは保護者から促される形でとりあえず描いた絵があれだったのです。主人公の涙は、こんなものにすがり付くしかない自分のみっともなさを嘆いたものでしょう。たまに小銭を寄付し、そのお礼に絵や手紙が送られてくるだけの関係。しかし、主人公が誰かから求められていると実感できる瞬間は、これしかないのです。本作では、家族を大事にしないと大変なことになるという重要な教訓が提示されています。 
[DVD(吹替)] 8点(2013-07-06 00:14:47)
134.  オブリビオン(2013)
IMAXにて鑑賞。 映像技術の進歩により、地球レベルの災厄を描いたSF映画は珍しくなくなっていますが、半壊した月や廃墟と化した人類文明、宙に浮かぶ巨大建造物など、本作のビジュアルイメージはかなりのインパクトを持っています。具体的な設定はやや強引で、後半になって明かされる謎の正体についても首を傾げざるをえない部分が多々あるのですが、それでもビジュアルのインパクトによってSFとしての大きな説得力が与えられているので、観ていて不快にはなりません。SFは画なんだなぁとあらためて実感させられました。さらには、『トロン:レガシー』ではビジュアル偏重でストーリーテリングが追いついていなかったジョセフ・コシンスキーの演出も本作では垢抜けしてきており、アクション映画としてもなかなかメリハリのある内容となっています。。。 本作はコシンスキー自身が手掛けたグラフィックノーブルを『ディパーテッド』のウィリアム・モナハンが脚色し、それを『トイ・ストーリー3』のマイケル・アーントが手直しするという、鉄壁の布陣で話が練り上げられています。観客をどうやって騙すか、また、どのタイミングでネタばらしをするのかという映画全体の組立がよく出来ており、非常に求心力のある物語となっています。前述の通り、謎の核心部分には不合理な点が多々あるのですが、脚本家達もこのアキレス腱については重々承知している様子で、真相部分に深入りしすぎることなくサラっと流しているので、少なくとも観ている間は難しいことを考えることなく、純粋に楽しむことができました。。。 トム・クルーズは相変わらずスタントを頑張っているし、彼の個性によって、主人公は観客にとって感情移入可能なキャラクターに仕上がっています。なんだかんだ言われていますが、この人は華があるし、演技も巧いので観ていて安定感があります。また、最近はB級映画への出演が多かったオルガ・キュリレンコも久しぶりのメジャー大作でなかなかの存在感を披露しており、本作のキャスティングは概ね成功しています。ただし、モーガン・フリーマンがいかにもな役柄で出てきた時には、さすがに笑ってしまいましたが。主演のトム・クルーズが50歳を過ぎていることとのバランスを考えると、あの役柄にはモーガン・フリーマンほどの超ベテランを据えるしかなかったのでしょうが。
[映画館(字幕)] 8点(2013-05-31 18:15:45)(良:2票)
135.  アイアンマン3
IMAX3Dにて鑑賞。『アベンジャーズ』という特盛大サービスで観客の目が肥えてしまった後に、平常営業の単品作品をどんな形で出してくるのかという点に大きな感心があったのですが、その点、本作は映画としての完成度を高めるという地道な方法でシリーズを再開しており、大変好感が持てました。シリーズの功労者であるジョン・ファブローに代わり、質の高い娯楽作を多く手がけてきたシェーン・ブラックを新監督に抜擢した辺りに、製作陣の思惑が現れています。。。 本作の前半パートは驚くほど静かです。『アイアンマン』の新作とは思えないほど雰囲気が暗く、トニーからは前作までの破天荒さが消え失せています。『アベンジャーズ』で死にかけた経験から心を患い、ブルース・ウェイン並みにウジウジと悩む描写が続きます。おまけに、アーマーで敵を倒すという爽快な見せ場がまったくなく、アイアンマンの活躍を期待してきた観客にとっては拷問に近い時間が続きます。もちろんこれは監督の計算のうちであり、『アベンジャーズ』でパワーのインフレを目の当たりにした観客の意識を落ち着けるために、意図的にダイナミックな描写を避けているのです。。。 以上の通り、前半部分ではテンション下がりまくるのですが、その分は後半で一気に取り戻します。トニーが再びアイアンマンとして戦う場面の爽快感はシリーズ最高レベル。前半部分でチマチマと設定やドラマを作り込んできたことの成果が、ここで一気に披露されます。また、見せ場の素晴らしさにも目を見張りました。パワーのインフレを抑制するために生身の人間による格闘とアーマーによる戦闘が組み合わされているのですが、このバランス感覚が絶妙なのです。さらには、35体のアーマーが救援に駆けつけるタイミングも完璧なものだったし、壮絶な戦闘の合間に挿入されるユーモアも作品の質を向上させています。ここにきて、シェーン・ブラックの力量が炸裂しまくりなのです。。。 ヴィランに実力派俳優をキャスティングすることが本シリーズの特色ですが、本作ではガイ・ピアースとベン・キングスレイという最強のタッグが作品を大いに盛り上げています。特に、原作コミックでは最強の敵として名を馳せているマンダリン役を演じるベン・キングスレイの怪演には、目を見張るものがありました。ある意味、ヒース・レジャーのジョーカーをも超えてますよ。
[映画館(字幕)] 8点(2013-04-29 00:29:02)(良:3票)
136.  ユニバーサル・ソルジャー 殺戮の黙示録
20年以上に渡って細々と続いている本シリーズですが、今回でまさかの4作目に突入(他にTVMとして制作された『Ⅱ』『Ⅲ』がありますが、これらはシリーズにカウントされていない模様)。第1作の生みの親であるローランド・エメリッヒもマリオ・カサールも遠の昔にシリーズを去り、ヴァンダムが半ば私物化していた本シリーズですが、ここに来てまさかの主役交代。スタントマン出身で今もっとも動ける男・スコット・アドキンスが新たな主人公・ジョンを演じ、「俺が俺が」のヴァンダムは脇役に徹しています。この世代交代が吉と出るのか凶と出るのかが鑑賞前の最大の関心事だったのですが、嬉しいことにこの交代によってシリーズは見事な若返りを果たし、B級アクションとしてはかなりのレベルに達しています。ジャンルに関心のない方までを振り向かせるほどの傑作というわけではありませんが、こういう映画がお好きな方であれば、概ね満足できる仕上がりではないでしょうか。。。 舞台となるのはユニソルが普及し、闇の世界で多用されている世界。設定上、第一作以外はなかったことにされるという平成ゴジラ的な強引さには呆れ返ってしまいますが、シリーズに係る予備知識がなくても話に入り込める親切設計だと考えれば、これはこれで有り難くもあります。本作でユニソルを使用しているのはFBIであり、軍事アクションだった過去作品と比較すると全体の雰囲気がかなり変わっています。見せ場は銃による派手なドンパチから刃物を使った凄惨な殺し合いにシフトし、スプラッタホラー並の血糊が飛び散る修羅場と化しているのです。予算に見合う小さな舞台に設定し直したことで個々の見せ場のクォリティは驚くほど向上し、肉体と肉体のぶつかり合いを基礎としたことでアドキンスによる勢いのあるアクションが活かされまくっています。ラストの長回し大殺戮などはメジャー映画にも引けを取らない完成度であり、本作の監督を務めたジョン・ハイアムズ(ピーター・ハイアムズの息子)は、今後要注目の監督になるのではないかとの期待を抱きました。。。 登場場面は少ないながら、ヴァンダムも光っています。何かとバカにされがちな御大ですが、この人は決して演技が下手ではないので悪のカリスマ役が意外と様になっているし、アドキンスとのタイマンではいまだ現役レベルの動きを披露しています。50歳過ぎてこの動きができるのかと驚いてしまいました。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2013-04-15 22:14:34)
137.  タイタンの逆襲(2012) 《ネタバレ》 
『タイタンの戦い』が眠たくなるような駄作だったので続編の本作には期待していなかったのですが、そんな予想とは裏腹にこれが意外なほど面白くてビックリしました。まず、前作と比較して脚本が大幅に引き締まっています。前作は主人公・ペルセウスの心理描写が不足していたり、さらには各キャラクターの思いや目的をまとめきれていなかったりと、アクションを盛り上げるための背景の描写に失敗していたのですが、それが本作では大幅に改善されています。キャラクターの人数は前作よりも増えているものの、それぞれの目的や行動原理がかなりわかりやすくまとめられているので、ドラマの通りが良いのです。大事な息子を守りたいという純粋な感情から敷衍して世界を守るために立ち上がるというペルセウスの背景は簡潔ながら力強いものだったし、冒頭で世界滅亡のイメージをドンと提示し、危機感を煽ったところで本編に入るという構成も気が利いていました。さらには、親殺し・兄弟殺しというギリシャ神話ならではのドロドロもきちんと物語に活かされており、本作の脚本は非常に充実しています。。。 また、前作のルイ・レテリエから監督を引き継いだジョナサン・リーベスマンによる演出も絶好調。個人的に贔屓にしている監督さんなのですが、やはりこの人は巧いということを実感しました。ライブアクションとVFXを組み合わせた見せ場の迫力やスピード感は前作を軽く上回るレベルだし、神・半神・人間の戦力差の描き分けも出来ています。さらには、アクションのみならず決戦前の煽りなども非常に巧いものだし、男らしさとユーモアのバランス感覚もお見事。ラストでは、リーアム・ニーソンとレイフ・ファインズという『シンドラーのリスト』の名優二人が仲良くカメハメ波を放つというなんとも間抜けな見せ場が待っているものの、このシーンをお笑いにしなかったという点でもリーベスマンの手腕は評価できます。この企画について要求される仕事は、ほぼ完璧にこなしていると言えます。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2013-04-10 01:20:48)(良:1票)
138.  ウェイバック -脱出6500km- 《ネタバレ》 
共産主義国家を地獄として描いている上に、独立国家だった時代のチベットが登場することがネックになったのか、世界的な巨匠の最新作であるにも関わらず完成から日本上陸まで2年も寝かされた挙句に、ロクな宣伝もなく捨てるように公開されてしまった不運な映画ですが、肝心の内容はメチャクチャによくできています。『マスター&コマンダー』でも歴史考証にこだわりまくったピーター・ウィアーが、ナショナルジオグラフィックの協力の下に製作した映画ですから、とにかく映像の迫力や説得力が段違い。さらには暑さ寒さや飢餓感・疲労感の表現も素晴らしいレベルに達しており、観客も過酷な旅を追体験することができます。。。 ドラマの構成も非常に自制的かつ良心的であると感じました。露悪的な描写は控えめだし、追っ手とのアクション等の娯楽的な要素もほぼ排除されており、グループ内での駆け引きや裏切り等も一切なし。意志の力で過酷な大自然に挑む人々の姿のみがフィーチャーされており、一秒たりとも企画の趣旨から脱線することがありません。さらに、ドラマの着地点も良いと感じました。主人公たちはゴール手前でチベットの優しい人々に出会い、「これからは厳しい季節になるから、しばらくここで休んでいきなさい」との好意を受けます。ボロボロになっていた仲間達はこの親切に甘えようとするものの、主人公だけは「ここで足を止めれば、ゴールを目指そうとする自分の意志が負けてしまって、二度と動けなくなる。だから僕は休まずに旅を続ける」と主張するのです。決して激しい口調ではないし、ドラマティックな演出も施されていないのですが、それでも内面に燃えるような意志を感じさせるこの場面には、思わず胸が熱くなりました。。。 以上、全体としては非常に優秀なのですが、細かな点では問題もあります。まず、上映時間を短くするためか序盤を詰めすぎているためにキャラクターの紹介場面が不足しており、旅の前半では誰が誰だかわからないという混乱が生じています。また、製作費の関係か、最大の難所であるはずのヒマラヤ越えがかなりアッサリとした描写に留められているため、尻切れトンボの印象を受けました。。。 ちなみに、本作は実話であるとのテロップが冒頭に出てきますが、原作の内容については疑義が指摘されており、これはフィクションとして観るのが正解のようです。
[DVD(吹替)] 8点(2013-04-04 00:19:38)
139.  アルゴ 《ネタバレ》 
コメディにしかなりようのない題材をシリアスなサスペンスとしてまとめてみせたベン・アフレックの演出は素晴らしかったと思います。前2作でも感じたのですが、この人は空気作りが抜群に巧い。件のサスペンスフルな演出といい、一滴の血も見せずして殺伐とした舞台を作り上げた手腕といい、ベテラン監督以上に小慣れた技を披露しています。さらには、クライマックスにおける滑走路上のカーチェイスではスペクタクルもモノにしており、その内容はかなり充実しています。かつて『パールハーバー』に主演したのと同一人物とは思えないほどの活躍ぶりです。。。 また、脚本もよく練られています。イランでの作戦行動自体はかなり地味なのですが、本国での下準備や決裁ルートでの混乱を丁寧に描くことで、映画全体のボリュームをうまく調整しているのです。その一方で、主人公・トニーの家庭環境や上司との関係など、本筋とは直接関係のない要素には深入りしすぎなかったバランス感覚も見事なものだし、あえてヒーローを作らなかったという地に足のついたキャラ造型も素晴らしいと感じました。感動的なセリフや熱い演説を排除したことにより、必死で職務をこなす役人達の誠実さがより際立っているのです。。。 地味ではあるのですが、欠点らしい欠点のない素晴らしい映画でした。こういう堅実な映画をきちんと評価して最高賞を与えるオスカーは、やはり侮れない賞だと感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2013-03-27 22:52:15)(良:2票)
140.  ニュースの天才 《ネタバレ》 
面白かったです。この題材であれば「ジャーナリズムとは何ぞや」を説く小難しい社会派映画になるのだろうと思っていたのですが、そんな予想に反し、本編は部下との信頼関係を作り損ねた上司の物語という普遍的な切り口で作られていたため、非常に感情移入して観ることができました。。。 コミュニケーション不足が原因で一方的に嫌っていた上司が、実は自分を守るために陰で戦ってくれていたということは、社会人をやっていると一度は経験するものです。本作でピーター・サースガードが演じる編集長は、就任のタイミングのマズさや淡々とした仕事ぶりから「人情派の前編集長を蹴落とした冷徹な新編集長」と勘違いされ、現場からの総スカンを喰らいます。しかし、記事の捏造をした部下が他社の追跡取材によって丸裸にされそうになった時、その部下の将来をもっとも案じ、最善の着地点を探そうと奔走したのは彼でした。もし、上司と部下との間に信頼関係が築けていれば、困った時に泣きついていける間柄であれば、外圧よりも先に対応策を打って傷を最小限に出来たかもしれなかったのですが、悲しいかなこの部下は最後まで上司を信用せず、嘘を嘘で隠そうとするうちに時間切れを迎えます。自分に係る誤解を早期に解き、良好な職場環境を作る努力を怠った編集長にも問題があるのですが、そうとは切って捨てられない難しさがあるのも確か。これは多くの組織に存在する問題であり、それを突いたという点で、この企画は非常に鋭いと感じました。。。 ヘイデン・クリステンセンは『スター・ウォーズ』に続き、何でも上司のせいにする青二才を熱演しています。人当たりは良いのだが、点数稼ぎとも受け取れる小手先の親切ばかりでホンネが見えてこないヤツ、こういう人っていますよね。人を騙して利益を得てやろうという意思があるわけでもないのに、まったく必要のないウソをつくヤツ、こういう人もいますよね。主人公を特殊な人格ではなく、誰にでも心当たりのある人物像に設定した点でも、この脚本は巧いと感じました。この主人公にあったのは虚栄心でも功名心でもなく、コミュニケーションの手段として自然についてきたウソが、いつの間にか巨大化して収拾がつかなくなってしまったという程度のものなのです。社会派映画を期待して本作を鑑賞された方にとってはガックリきた結論かもしれませんが、私は事実の一側面を的確に切り取っていると感じました。
[DVD(吹替)] 8点(2013-03-05 01:10:29)(良:2票)
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