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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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141.  ゴッドファーザー PART Ⅱ 《ネタバレ》 
「ゴッドファーザー」は好きなシリーズだが、特に「PARTⅡ」はもう何度見たか解らない。 人によっては「PARTⅠ」こそ最高という人もいるだろう。 だが、俺は冒頭からヴィトの悲劇で始まり、ヴィトが栄光を掴んでいく“光”とマイケルが様々なものを失っていく“闇”が交錯する「PARTⅡ」が一番好きだ。ヴィトだけでなく、マイケルの過去も映されるんだ。ヴィトの思い出と混ざりながら。 初見の者にとって、ヴィトが今後どうなるかが気になって最後まで画面に釘付けにされたのだから。 シチリア島で葬儀が行われるシーンから物語は始まる。父、兄、母親まで地元のギャングに殴りこんで失ってしまうヴィトの悲劇。この瞬間からマイケルの復讐が始まり、同時に彼を救ってくれた島の人々の優しさがヴィトに生きる力と人を助ける愛情を育む。村の名前がヴィトを守る“偽名”となって。だから彼はシチリアに戻って来たのだと思う。困っている仲間や家族を守るために覚悟を決め、彼らの代わりに引き金を引いて。 彼らが奥さんの手作りパスタを美味そうに食べるシーンは和む。どうしてこの映画はあんなにも飯を美味そうに食うのだろうか。クレメンザとソニーは若い頃(物心つく前)からつるむ仲。 前半2時間のクライマックスを飾るのは、そんなヴィト自らが暗殺に向う場面だ。 ヴィトがどん底から這い上がり仲間や家族を得る一方、現代のマイケルは後半1時間30分をかけて最盛期からまた次々に最愛の仲間や家族を失っていく。フレドとコニーの何気ない会話が、別れの挨拶になるなんてさ。 華やかなパーティーですら暗い影が差し、寝室に銃弾の雨が振り込み安心して眠る事も出来ない。 議員も机の上の大砲をマフィアのボスに向けてケンカ腰。 痩せていたアル・ネリは亡きクレメンザの代わりを果たすかのように膨れ上がる。 数多の血みどろの殺し合いの後に、以前のマイケルたちが揃って食事をする場面なんかもう何回見ても泣きそうになっちゃうよ。ソニーは元気だし、コニーにブツブツ言ったりフレドとじゃれあう姿なんて・・・それが独りで煙草を吹かし、現在のマイケルの瞳に光が失われて幕を閉じる。
[DVD(字幕)] 10点(2015-05-13 20:01:55)(良:1票)
142.  ダイヤルMを廻せ! 《ネタバレ》 
今作のグレース・ケリーは「裏窓」の彼女とは正反対と言っていい。 奔放そうで脚をバキバキに折った男の面倒をみたり、愛が故に独りで乗り込むなんて事もやっちゃう「裏窓」。  対して「ダイヤルMを廻せ!」は清純そうで夫が嫉妬に狂う“原因”を作ってしまう女性を演じている。 赤いドレスで接吻なんてシーンだけでも官能的なのに、薄いナイトウェアで良いケツした若妻にうろつかれた日にゃあ襲いたくもなるわ(おいコラ)。  そりゃあ何度もキスして「愛しているわ」とやっている嫁が本当は・・・なんて事されてたら誰だって怒る。それが嫉妬によって憎悪に変わる恐ろしさ。 かつてユダがキリストを裏切る際に“接吻”をしたように、この男も女に対してその接吻で応えるのである。  女が去った後、“依頼人”は“殺し屋”に異常な依頼をする。最初数分の退屈な会話が、その異常さが露呈した瞬間に張り詰める空気。  カメラが上から部屋の様子を映し、殺し屋が徐々に依頼人の計画にのっていく様子を強める。  劇中で幾度も閉じられては開けられる扉、手袋や同窓会の写真、そして鍵。鍵への執着振りは「汚名」を思い出す。  依頼人が指紋を気にする様子に殺し屋は次第に応じるようになり、椅子に投げ込まれた“前払い”を無言で受け取り依頼は成立する。  依頼人も殺し屋のために準備を整える。 鍵を確認し、カーテンを閉め、手袋、バッグから鍵を奪う、階段にかけられる手・・・。  殺し屋も依頼人を信じて闇夜に姿を現す。 もしもグレース・ケリーが不倫だけでなくあんな事やこんな事までヤッちゃった文句なしのビッチだったならば、俺はこの二人の男たちを応援していただろう。 とにかく浮気なんて許さねえという人は問答無用で応援していた人もいただろうね。  時計が緊張を高める演出。「真昼の決闘」は戦闘まで、この映画では一瞬の決着のために!  練られた計画によって繋がる二人の男。それを“切り裂く”思わぬ得物が標的をトドメる。殺っちまった瞬間の嫌悪感・それを人の前でどうにか耐えようとする気丈さ。あるいわ図太さか。  完璧な筈の計画が音を立てて崩れていく後半の二段構え。旦那も説明できない表情になっていきます。  それでも殺し屋に手紙を“渡して”まで、法によって殺害しようとする諦めの悪さ。妻への目配せも複雑、グレース・ケリーの背景も真っ赤な血のように染まる。  「君がいなければこんな事にはならなかった」 じゃあその男を殺れやっ!ホモかテメエは。どっちにしろ嘘の上塗りも限界。一枚上手の警部にもはめられて自宅で袋小路。  警部の部下「こんにちわ」  これには依頼人も苦笑いするしかなかった。
[DVD(字幕)] 9点(2015-05-09 02:39:42)(良:1票)
143.  ある戦慄 《ネタバレ》 
アメリカ社会の縮図を電車の中に詰め込んだサスペンス。こんな変な電車ジャック見たことねえよ。  ファーストシーンの長回しが面白い。DQNの男二人が路上で犯罪を犯す場面。 そしてオープニングの電車。  電車に乗り込む人々はそれぞれに虚栄を身にまとった男女ばかり。 家族、夫婦、バカップル、若者を嘆く老人、独身サラリーマン、軍人、黒人差別・・・アメリカ社会の光と闇が1本のレールに集う。  そこに乗り込んでくる冒頭のDQNコンビ。電車の中でDQNコンビはやりたい放題だ。  ただ、この二人は掴みかかりはするが直接的な暴力はほとんどしていない。代わりに「言葉の暴力」で電車に乗り込んだ虚栄たちを挑発し、引き剥がしていく。 現代社会にもありふれた生々しい人間模様。密室、力による抑圧が人々の本心を暴き立てる。 「俺たちが何した?言葉の暴力だけで手はまだ出してないぜ?」ホームレス?のオッサンへの放火未遂はあるがな。  二人のDQNコンビの目的はよく解らないが、とにかく「楽しめれば」何でもよいのだろう。罵られる彼らが黙って耐える姿を嘲るだけでいいし、耐えかねて“殺すか殺されに来る”ことも期待している。まるで子供にように幼い、純粋な発想。だがシンプルが故に人の心をえぐりやすい。 我々観客はナイフを突き立てられる乗客と一緒に恐怖に怯え、怒りを覚える。あるいわ、DQNの立場にたって人々を嘲笑う快楽に浸るか。貴方はどっちでしたか?  次々と化けの皮が剥がれていく人々だが、俺が唯一感動したのが黒人夫婦の時だ。 「誰が傷つけられようが知らんね」とほざいていたオッサンが、妻のために握り拳を抑える場面。腐っても夫婦だねー。悔しくて泣きじゃくるオッサンの顔がたまらん。  それを嘲笑うのではなく、黙り込んだDQNコンビには驚いた。嘲る・・・というよりは本音が聞きたかっただけなのか。それは解らない。  終点に向う間に行われる“決闘”。若き軍人は「先に手を出したら負けだ」と解っていた。いや脳味噌は解っていても、肉体と魂はDQNどもをブチのめしたくてしょうがない。怪我をした友人を侮辱されたから?違うね、本当にそう思うなら侮辱された時点で彼はDQNたちに殴りかかっていた筈だ。ナイフなど恐れずに。死ぬのが怖かったのか。逆に殺してしまうのではないかという恐れからか。とにかく、二人の男は覚悟を決める。向かい合い、ナイフをバチッと出す瞬間に奔る“ある戦慄”・・・。 電車から解放された人々の表情が何とも言えない幕引きだった。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-28 19:19:27)
144.  暗黒街の顔役(1932) 《ネタバレ》 
ハワード・ホークス最高傑作の一つ。一体このハワード・ホークスという男は何処まで人を楽しませてくれるのだろう。 純粋な娯楽の中に現代にも通じるテーマをねじ込むその心意気。劇中で粉々になる夥しい窓ガラスの雨。 この一枚一枚が現代社会の「ルール」なのかも知れない。それを破壊していったある男の生き様を描く! 女性陣のメイクはサイレント時代の名残か少々濃いが、この妖艶なアイシャドウは暗黒街を照ら“瞳”となり、は本作を彩る最高の華となる。 無駄な音楽と血の描写を徹底的に廃したこだわり。 “滅びの美学”を血の雨で語らないのがこの時代の映画だ。 冒頭の“暗殺”までの張り詰めた5分間、“星”で火をつけるマフィアと警察の対立、抗争の裏で回転する“コイン”の一時の安息・・・最初25分の丁寧な展開はまったく飽きない。 だが「早く何か起こらないかな」と否応なしにワクワクしてしまうのも確かだ。 溢れかえるビールは女の初潮か、流される血の噴水を現すのか・・・。嵐の前の静かな25分間。そして次々と銃声が飛び交う凄まじい抗争の幕開けだ。 マシンガンのようにめくれるカレンダー、凄まじい銃撃戦、ぐしゃぐしゃになる車、疑心暗鬼、騙し合いと殺し合い・・・たった1時間30分の中でこれほどの密度、これほどの余裕。 終始撃ちまくっている映画なのだが、その合間合間で光る人間ドラマの魅力もこの映画を更に盛り上げてくれる。 組織社会での成り上がり、コインのような日常と犯罪の表裏一体の生活、生と死、光と闇。 際限の無い復讐戦は何も産まない。 あるのは果てしない「暴力の愚かさ」がこの映画の根底には存在している。 権力、裏切り、妹にまで欲情する色欲・・・あらゆる欲望に染まっていったトニー。 「THE WORLD IS ROURS!」 「世界は俺の物だ!全ては俺の物だ!!!」 ラスト6分の最後の銃撃まで息を抜けない、ギャング映画の傑作。
[DVD(字幕)] 10点(2015-04-27 20:31:14)(良:1票)
145.  アンタッチャブル 《ネタバレ》 
ハワード・ホークスの「暗黒街の顔役(SCAR FACE)」の復活を予感させたパルマの傑作。同時にショーン・コネリーにとっても「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」や「王になろうとした男」に並ぶ最高傑作! 豪華なキャスト、オープニングから血が騒ぐエンニオ・モリコーネの神BGM、うごめく影と「The Untouchables(触れられざる者)」の文字。 アル・カポネがふんぞり返り髭剃りをするシーンから映画は始まる。記者の質問に対して「暴力はいけない」などとほざき、裏で部下に“見せしめ”として酒場に置き土産させて吹き飛ばすような男だ。 禁酒法時代、法権力を弄び警察すらギャングに手を出さずグルになる奴まで出て腐敗しきっていた時代。 そんな時代にある男たちが立ち上がり、巨悪へと挑む。エリオット・ネスの孤独な奮闘と空回り、それに応えるジム・マローンの男気と頭脳、凄腕の新人ジョージ・ストーン、殺る時は殺る簿記係のオスカー・ウォーレスも加わり4人、いや騎兵隊さながらのレンジャーたちの協力などもあり徐々にアル・カポネに迫る。彼等を突き動かすのはカポネに殺された少女の、酒場の、人々の声なき哀しみ、そして怒り。 そんな警察とギャングの死闘の巻き添えを喰らって死ぬ市民はもっと不幸です。 「戦艦ポチョムキン」をオマージュした駅での銃撃戦は正にそんな場面。 ネスとマローンが橋の上で出会うシーンからしてカッコ良い。素早く警棒をポケットに突きつけ腕を押さえるシーン。もしマローンがギャングの仲間だったら、ネスは懐に手を入れた瞬間に殺されていた。 「新鮮なリンゴ」を収穫する仲間集め、罵り合いの面接、マローンの殴り込み、西部劇を思わせる橋の上でのガンファイトと“死体蹴り”尋問、法廷と建物内における最終闘争・・・マッチで気付く仇、ネスが文字通り“落とし前”を付けるシーンはスッとする。その直前まで指で迷い、眼が泳ぎ葛藤を表す。撃鉄を戻す瞬間に伝わる悔しさ、殺し屋がネスに殺意を戻させる“一言”。裁判長が折れ弁護士すら裏切る瞬間は何度見ても最高。 警察側に暗殺者が迫る瞬間の戦慄。カポネからマローンへの“鎮魂歌(レクイエム)”。 駅での死闘は誰も母親を助けない、助けに入ったネスが犯人に気を取られ危うく赤子を殺しかける緊張。 ネスとカポネが正面から罵りあう姿は何処か憎めない。だってデ・ニーロのブチ切れ振りが凄いんだもん。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-26 06:58:59)(良:1票)
146.  ウエスタン 《ネタバレ》 
再評価に到ったのは、二度目以降、いや見る度にどんどん魅せられる西部劇だという事に気付いたからだ。 冒頭の長く、長く、なっがああああああい回しで溜めに溜めて溜めて放つ一撃必殺の破壊力・・・! 他のレオーネ作品と比べると断トツに退屈で、ゆったりとした、そのバネが産み出す破壊力に魅せられる。 二回目以降は、退屈に感じない心地良さ、もしくわ退屈な空気を一気に張り詰めさせ、爆発させるような長回しに痺れている自分がいた。 ベルナルド・ベルトルッチの壮大なスケール感と“女”の匂い、 ダリオ・アルジェントの“血”の匂い、 トニーノ・デリ・コリの雄大さを感じさせるキャメラワーク、 そしてセルジオ・レオーネの破破壊力と“土”、“漢”の匂い。 「リオ・ブラボー」や「大砂塵」といった往年の西部劇に対するオマージュに溢れた原点回帰。 それに、西部開拓時代の無法者を現在的なギャングとして捉えた視点。 登場人物たちも善悪で片付けられる者ばかりでなく、時代の流れに翻弄されて荒れた複雑な人物も少なくない。 男だけでなく、クラウディア・カルディナーレ演じる未亡人ジル。 自立し気丈に生きる女の強さと弱さをレオーネは正面から描き出した。 マカロニウエスタンには無かった女っ気と母性。コレはカルディナーレの女性らしさ、そしてベルトルッチの原案も手伝って成し遂げた描写だと俺は思う。 「プロフェッショナル」もエロか(ry ドラマだけでなく、冒頭の銃撃をはじめ劇中のアクションは決まる度に痛快。 列車での工夫を凝らした銃撃戦、 クライマックスの一騎打ち、 クラウディア・カルディナーレが人の良いおじさんを誘惑している様にしか見えない絡みのシーン、 ラストの死に場所を求めてさ迷うそれぞれの顛末、やるせなさ、虚しさ。 ホークス、アルドリッチたちから受け継がれてきた破壊力、ジョン・フォードのドラマ性、アンソニー・マン等のリアリズム。 ジェイソン・ロバーズの人間臭さ、 チャールズ・ブロンソンの徐々に明かされる復讐劇、 悪役を貫いたヘンリー・フォンダも見事。 西部劇を飾ったヒーローが悪役として振舞う…しかし、その男も時代の流れに翻弄され荒れた一人の人間でしか無かった。 列車に始まり列車に終わる・・・ジョン・フォードの「リバティ・バランスを射った男」を思い出す締めくくりだ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-26 06:38:06)(良:1票)
147.  キッド(1921) 《ネタバレ》 
「犬の生活」の進化版とも言うべき傑作。 病院から出てくる赤ん坊を抱いた母親。彼女は頼るはずの子供の父親に“忘れられて”しまい、子供を育てる余裕もないほど追い詰められていた。腹を痛めて産んだ子供を育てたい母性、それを守るために愛する我が子を手放し他人に託さなければならない自分の無責任さ、不甲斐なさ、無力さへの葛藤。 いや、一番の原因はテメえでタネを蒔いた事も焼き捨てちまうようなクソ野郎の方だ。 母親も後悔先に立たず、イスで彼女が祈る間にも運命は赤ん坊を車から引き摺り下ろしてしまうのだ。普通の映画ならあの強盗2人が情が移り赤ん坊を引き取るなんて展開も面白いだろう。だが、さらに一難を経る事で赤ん坊は運命的な出会いを果たす。 上空からゴミが捨てられる日常、まさか赤ん坊まで上から捨てられたのかと勘違いしても無理は無い。 チャップリンも面倒くさいからではなく情が反応する故に赤ん坊を他人に任せようとしてしまう。だが預けられる母親も赤ん坊一人に手一杯、押し付けんじゃねえやと傘でメッタ打ち。オマケに警官が睨み付ける。この作品の警官は結果的にチャップリンと赤ん坊の絆が深まるような事しかしない。それを知らない警官は幸か不幸か解らない。 チャップリンはいっそ下水にでも捨てちまおうか、なんて一瞬思うがやっぱり赤ちゃんは可愛いくてしょうがない。情が移り「ジョン」という名前を付けて大切に育てる覚悟を決める。 月日が経ち成長したジョンと共に行う窓をめぐる“仕事”の日々。悪いと解っていても食わせるためだ背に腹は変えられない、後は父ちゃんに任せろと言った具合にせっせと治しては一緒にジョンの面倒見てくれそうな嫁探し。でも警官の人妻には手を出すなよ。 生活は貧しくても、寒くたって良い。一緒に食事をして過ごせる小さな幸せさえあればいいのだから。 一方で成功を収めた母親の捜索や街の住民との親子喧嘩、迫り来る保健所の恐怖と二重三重に絡んでくるドラマ。 愛するわが子のために警察を振り払い屋根の上を駆け抜けるシーンは熱い!ジョンも悲しそうな顔で“父親”を叫び続ける。 宿での別れ、深い哀しみが見せる“天国”の夢、悪魔のささやきと夢の中まで追ってくる警官の悪夢。いや、彼は悪夢からチャップリンを救い出すキューピッドだったのかも知れない。昨日の敵が今日の友となる瞬間の感動。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-26 06:37:40)
148.  深夜の告白(1944) 《ネタバレ》 
ワイルダーの傑作は数あれど、個人的に最高傑作を一つ挙げるとすれば「深夜の告白」になるだろうか。 レイモンド・チャンドラーと組んだシナリオというだけでも凄い。 「失われた週末」「サンセット大通り」に先駆けた初期の傑作フィルム・ノワールであり、ワイルダーが余り好きで無いという人間にもオススメする作品だ。  真夜中のハイウェイ。 冒頭から車をブッ飛ばして会社に駆け込む一人の男。どうやらこの男はかなりワケ有りのようだ。 そこから回想形式で事の顛末を告白していく形式が面白い。 如何にして事件に至ったのか。倒錯的なサスペンスとして、中盤から徐々にスリルを増していくストーリーが面白かった。 エンジンが中々かからない場面も異様に緊張感を盛り上げる。 バーバラ・スタンウィックの悪女振りも最高。真の主役はフレッド・マクマレイではなくエドワード・G・ロビンソンなのかも知れない。どちらも素晴らしい名演だ。  ワイルダーと組んだレイモンド・チャンドラーだが、この二人の折り合いは最悪と言っても良い。 ジェームズ・ケインの原作が元だが、そもそもチャンドラーはケインの作品が大嫌いだった。元々金欲しさで契約を結んでいたに過ぎず、ケインと同席しようものなら遠慮なく作品を酷評するほどだった。ワイルダーも余り好きではなかった。 ワイルダーが長くコンビを組んてきたチャールズ・ブラケットまで「糞」呼ばわり。こんな状況で一体どうやってこの傑作が生まれたのだろうか。不思議でしょうがない。  だが、それと作品の完成度は別だ。 チャンドラーの鮮やかな脚色、ワイルダーの辛辣な人物描写。制作現場のギスギスした空気は、そのまま映画の面白さに結びつく。 そんな二人を不安に満ちた表情で見守るかのようなミクロス・ローザの音楽も秀逸だ。いや、実際にカメラで見守るのはジョン・サイツの見事な撮影だろうか。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-24 09:34:21)(良:1票)
149.  アパートの鍵貸します 《ネタバレ》 
本作は「深夜の告白」と共にビリー・ワイルダーが苦手という人にもオススメな最高傑作の一つ。 窓の明りで始まる物語、保険会社に務めるさえない平社員のバド(バクスター)は回想形式で自己紹介を済ませると、毎晩“ラブホテル”と化した窓の明りが消えるまで会社で暇を潰したり家の外で待たなければならない様子を観客に見せる。 嫌な上司と鉢合わせするよりもレジスタとにらめっこしていた方がまだマシ、社員がバカなら他人の家で情事にふけるクソ上司。オマケに隣の医者に変な勘違いまでされる始末。残った酒で孤独な自分に乾杯。それを雨に濡れた冷たそうな舗道で孤独に耐えながら待ったり、キング・ヴィダーの「群衆」を思い出すオフィスと天井が拡がる空間で黙々と仕事をする姿が余計に寂しさを感じさせる。 ワイルダーの映画が面白いのは、こういう会話だけでなく細部まで造り込まれた空間が我々の眼を楽しませてくれるからであろう。 バドは不幸続きで何かと苦労を重ね、お人好しの面があり何時の間にかホテル代わりに自分の住むアパートの鍵を貸し放題。家に帰れば何時も「宿泊人」の後始末。友達への助け舟が何時の間にか上司(情事)の密会場だもんなあ。 そんなバドにも好意を寄せる女性。その彼女もまた秘密を隠している。 バドもまた生来のポジティブで前向きな性格で何時までもクヨクヨしない、殴られても殴り返さない、しかし汚名は全部返上する男に成長・・・いや戻ったのかもな。 紆余曲折を経て二人の男女の距離は縮まる。縮まったりまた離れたり。そして束の間のトランプ、ラケットで茹でたパスタをキョトンとしながらも美味しそうに食べる彼女の笑顔。 職は失ってもかけがえのない隣人を得たバド、成功は収めても大切な隣人を次々と失っていくシェルドレイクの対比。悲惨な奴だ。あ、トイレの鍵はゲットしたか。 どんなに良い仕事でも、惚れた女には敵わない。シェルドレイクの仕事を蹴りイキイキと去っていくバドの姿は何度見ても良い。 「彼女を待たせているんだ」の場面で終わっても良かったが、その後に素敵な“奇跡”を用意するワイルダーの二段構え、お見事。愛のないキスに表情は変わらず、愛のこもったトランプで微笑む彼女。 勘違いとはいえ、二人とも気付いた瞬間に全力疾走で相手の元に駆け寄るお似合い振り。 ラストなんかキャプラの「或る夜の出来事」を思い出した。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-24 09:33:27)(良:1票)
150.  ゴッドファーザー 《ネタバレ》 
「ゴッドファーザー」は続編の「Part2」の方が一番面白いし大好きだが、初代も好きだ。 この作品は「映画の面白さ」というものを教えてくれる作品の一つだ。 魅せる、語る、惹きつける。 一度見ただけでは解らない。しかしこの映画には何度も見たくなるような面白さと仕掛けが散りばめられている。 一回で理解できるシーンも多いが、一番のミソは見れば見るほど理解を深められる作品だと思う。二度見てこそ、いや見れば見るほどその圧倒的な世界観に惹き込まれる。 一見すると「マフィアの暴力礼讃」のようにも見えるが、この映画の訴えたいことは「暴力の愚かさ」しかない。 暴力を振るえば振るうほど失っていく大切な何か。 「家族」とファミリーという名の「組織」。 この二つを守った者と、守りきれなかった者。 その二人の人間の光と闇を見せ付けられる。  この映画に溢れる「生」。 家族と語り合い、食事をし、人を愛す。 その裏で繰り返される破壊と「死」。 特にpart2では壊れていくマイケルの家族が「死」として、家族を創っていくヴィトが「生」として見て取れる。 このゴッドファーザーは、マリオ・プーゾの原作小説を元に描かれるが、元々は1本だけで済ます予定だった。 ところが、映画の人気が、マイケルたちの行く末やコッポラの人生まで左右し始める。 part1ではマイケルの青春とその終わり、 part2では父の光を通してマイケルが闇に堕ちていく様子を描き、 part3ではマイケルの苦悩と挫折に満ちた幕引きで終わる。 一人の男が何を成し、何を失っていったか。 それが実に心に響く。 哀しみに満ちちゃあいるが、何故か不快な感じはない。 これほど飯が食いたくなる映画は無い! みんな美味そうに飯食うんだもん。 クレメンザが頬張ってたパスタとサンド、ワイン。 ガツガツ食べてみんな死んで行く・・・。 特にpart3を見た後だと、無性にpart1やpart2のマイケルやソニーたちに会いたくなんだよな・・・。 マーロン・ブランドのしゃがれ声、 ジェームズ・カーンの兄貴ぶりなど、俳優陣の演技は全て素晴らしい(タリアは除く) アル・パチーノの演技も素晴らしいの一言。  ソニーとコニーは「暗黒街の顔役」と「悪い奴ほどよく眠る」、中盤の車の爆発は「ビッグ・ヒート/復讐は俺に任せろ」を思い出す。本当に映画が好きなんだなあコッポラは。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-24 09:29:00)
151.  グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち 《ネタバレ》 
「小説家を見つけたら」と共にガス・ヴァン・サントで一番好きな映画だ。 舞台は1970年代、大学の講義のシーンからはじまる。 数学の難問を朝飯前のように解いてしまうがウィル少年。オマケに「f●ck!」を連呼する命知らずの馬鹿でもあるバリバリのインテリ不良。 出会う人間にはデッドボール(暴言)ばかり投げているが、本当は打ち解ける事を恐れていた。親も含めて大人なんざクソッたれ、頼れるのは子供の頃からつるんできた不良グループだけ。 能力はあるが己の能力に少し酔っているというか、とにかく過去のトラウマを引きずり自分の殻から抜け出せずにいた。“超絶クソすばらしい完璧主義者”である彼は。 完璧だと思い込む人間ほど、その均衡が崩れようとする際は動揺するものだ。 物事を知りすぎて逆に自分の目で直接見る事を恐れていた。傷つける・傷つけられる事を誰よりも恐れ、面接すら“替え玉”。 一体過去にどれほどの苦痛を味わってきたのだろうか。 彼の才能に目を付けた教師たちは彼を更正させるべく“司法取引”で勉学を薦める。 しかしウィル少年の心の傷は予想以上に深く、彼を更正させようとする教師も心の傷を開いていく。 教師たちは知識ではなく経験や“癖”によって本だけでは得られない“本当に大切な何か”を語っていく。 「答えは自分で探すんだ」 「ああ言えばこう言う。なのに簡単な質問には答えられない。つまり“答え”を知らないんだ」 ウィルも痛いところを突かれてダンマリ。先生の“女房自慢”を何処か羨ましそうに聞くウィル。 ウィルは知り合った女性に性行為をせがんで“現実逃避”。それは同時に初めて芽生えた対抗意識でもあった。 ウィルは先生のような“良い大人”にもっと早く出会いたかっただろう。ウィルの心も次第に変化していく。 旅立ちの時…とにかく自分の殻を“ブッ壊したくて”しかたない。 不良グループの兄貴のセリフはトドメの一撃。 「他の奴が持っていないもんを無駄にするなんて俺は許せねえっ!」 ウィルは“宝くじ”を既に持っている。しかも努力しだいでどんな夢でも叶えられる大切な宝物を。 いや、不良たちが手に持っていたのはバットだったが、心の中には最高に“グッド”な何かを持っている奴らだった。 ウィルはようやく先生たちに本音を打ち明けられたのかも知れない。 最高のオンボロ車、最高の手紙、そして最高の“サノバビッチ”。良い映画です。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-24 09:26:38)(良:1票)
152.  恋人までの距離(ディスタンス) 《ネタバレ》 
「ビフォア・サンライズ」。 とても素敵な映画だ。これほど平和で、これほど人の心を揺さぶる恋愛映画は。  ゲーセンで不良がナンパしてきたり、ギター持った男が奇声をあげてきたり(「スクール・オブ・ロック」)とか、そういうハラハラする“イベント”はまったくないと言っていい。本当に一時の静かな出会いと別れなのさ。 音楽も冒頭と終盤までほとんど無い。  列車の中でふと出会った男女二人。最初は一人で暇な時間を潰すための会話だったが、やがて互いの心の傷を見せ合って溶け合う中となっていく。  列車にはじまり次々と移動して移動して移動して、喋って喋って喋りまくる。結んだ髪もあっと言う間にほどけるくらいに。 なのに不思議と飽きることなく、延々と聴いていたいような穏やかな時間が流れる。街からは出ないけど、移動しまくる様子はこの映画も立派なロードムービーなのだろう。  手相占いのばあさんとか、二人に絡んでくる人々の会話も面白い。  ゲーセンで体ごと動かしてゲームを愉しむ様子。確かに、解ってても体ごと動いちゃうよねーあーいうのって。  人気の無い公園での交わり。 夜が明け、昇るサンライズ(朝日)は別れの時間が迫っている知らせ。 彼女が三つ編みでラフな服装になっているのは事後を物語るのだろうか。  列車の前でハッとして「もう・・・お別れなのね」なんて表情をする場面はもらい泣きしそうになったよ。  続編の「ビフォア・サンセット」も素敵な映画です。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-24 09:26:29)
153.  エレファント・マン 《ネタバレ》 
トッド・ブラウニングの傑作「フリークス」を思い出す作品。 「エレファントマン」ことジョゼフ・ケアリー・メリック(ジョン・メリック)の人生を淡々と描いていく。 ファースト・シーンで女性が象に襲われるモンタージュ。この夢はメリックの誕生に関わる重要なテーマだ。彼を妊娠していた母親は事故に遭い、そのショックでメリックは全身に腫瘍が出来る奇形児となってしまった。 子供の頃は腫瘍もまだ大きくなく、普通に喋り一般の学校にも通っていたようだ。 それが成長していく過程で腫瘍が肥大化し、徐々に症状が悪化していく。 人々はメリックの姿を見て「奇人」だの「化物」だと罵り差別し、遂にはサーカスの見世物小屋で「エレファントマン」となってしまう。彼は偏見の目や傷つけられる恐怖で言葉も知識も封印してしまう。 そんな彼を、医者は好奇心と正義感から救おうとする。単眼の袋で覆われた“心の壁”を取り除こうと。 しかしメリックをサーカスに引き込んだオッサンは本当に不器用な人だ。 看護婦ですら悲鳴をあげるメリックの姿、だが婦長の献身的な介護や医者の熱心な語りかけでメリックは普通に喋るようになっていき、人間性を取り戻していく。 医者がメリックから“声”を聞こうとするシーンは熱い。視覚と耳に訴える。 メリックが聖書の件をする場面も良いシーンだ。院長がメリック“さん”と改めるのも。 「彼の人生は誰にも想像できないと思う」 メリックの苦労は誰にも解らない。どんなに解ったつもりになっても。我々は知り、考える事しか出来ない。 時折見せる寂しき横顔。メリックは右腕と外見の変わりに豊かな想像力と心を手に入れたのだろう。 メリックがスーツに身を包んで例の女優と語り合うシーン。彼女はメリックの“心”を見ているのだろうか。遂にはヴィクトリアの女王まで動かしてしまう。 彼の存在が認められる度に看守たちの嫉妬も大きくなる。人助けかエゴイズムか。 メリックはある出来事で再び心を閉ざしてしまう。それでもメリックの理解者でもある子供やサーカス仲間たちの協力。「俺たちみたいなのには“運”がいるんだ」 さらに駅での一件が再びメリックの心を呼び覚ます。「僕は人間なんだ!」 とりあえず婦長がGJすぎる。 再び平和な時を取り戻したメリック。彼が夢の中に見た女性は母親だったのだろうか? 彼は安らかに眠り、母親の元へと行ったのだろう。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-24 09:25:23)(良:2票)
154.  ヒズ・ガール・フライデー 《ネタバレ》 
ベン・ヘクト&チャールズ・マッカーシーの戯曲を映画化した作品では、最もアメリカで評価が高く成功した作品。 ルイス・マイルストンの「犯罪都市」、 ビリー・ワイルダーの「フロント・ページ」を含めると3回も映画化されている。その中で一番面白いと思ったのがこのホークス版。 マイルストン版は古臭くて演出過剰な上に退屈だった。 ワイルダー版も「教授と美女」でホークスと組んだだけあって悪くないと思うけど、もう一度見たいというほど惹かれなかった。 俺はホークス版の飾り気の無い感じが一番しっくりきたし、何より腹筋がヤバくなったのはホークス版だけだ。 ホークスのコメディは「教授と美女」が一番好きだけど、“破壊力”という点じゃ「ヒズ・ガール・フライデー」が最強。 最初は字幕で見ていたけど、字幕の速さが足りない!そもそも、原語のスピードに字幕が追いつけるワケないじゃないか。 クエンティン・タランティーノの映画といい、この手の作品は原語だけで見るのに限る。遅い字幕なんぞクソ喰らえ! 「赤ちゃん教育」は虎のようなキャサリン・ヘップバーンに追い回される狂気地味た内容だったが、この作品のヒロインは「赤ちゃん教育」よりは正気を保っている。 それでも瓶の中で爆竹を破裂させるような内容だ。 物語は女性記者のヒルディと前の夫だったウォルターが中心となって起こる騒動を描く。 明日再婚してしまうロザリンド・ラッセル、ケーリー・グラントは未練がましく彼女と別れるのが寂しい。 ウォルターは彼女に残ってもらうべく負かさなきゃならな、ヒルディもまた想うところがあるけどウォルターを負かしてやりたい。 かくしてここに90分に渡る嵐のような特ダネ合戦が幕を開ける。 密室において激しく繰り拡げられる男と女の言葉による“殴り合い”。 初っ端からまくし立て、どんどん加速するマシンガン・トークの凄まじさ。10分?5分の間違いじゃない? その後も一人が喋り終わらないうちにまた一人が喋りだしてカオスの坩堝。 銃で撃ち合うようなやり取り・・・そしたら本当に街中で銃撃戦をはじめやがった!ヒロインまでタックルを決めやがる。俺の腹筋を返してくれっ!! ラストスパートは機関砲を撃ちまくるようなスピードと破壊力。 激闘の果てに“降伏”するシーンは可愛い。この可愛らしさはパートナーが女性じゃないと味わえない面白味だね。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2015-04-24 09:25:16)(良:1票)
155.  キートンのセブン・チャンス 《ネタバレ》 
恋愛とシュールなギャグ、そしてラストにかけての凄まじい逃走劇! 「バスター」の名に恥じない疾走感と破壊力、そして本物の愛について考えさせられるキートン映画の傑作の一つ。 金融ブローカーの仕事に失敗して破産寸前のキートン。 そこに舞い込んだ父の遺言。喉から手が出るほどの莫大な遺産、期限までに結婚しなければその宝の山も手に入らない。 財産欲しさに女性という女性をナンパしては惨敗を期していくキートン。 人を金で買えても心までは買えない。 愛ではなく金のために動くキートンに心から振り向く女性なぞいないのだ。 ただ一人キートンの中身に惹かれ愛していた女性の心も理解できずに。 笑わない、泣かないの感情の起伏に乏しいキートンだが、彼は体の動きで豊かな感情を伝えてくれる不器用なパフォーマーでもある。 顔も背もコンプレックスの塊だが、それを個性として武器にして戦うその精神力。 チャップリンがユーモアと愛情、ロイドが勇気、キートンはアクション! 俊敏な運動神経だからこそ成せるアクションの連続で魅せる俳優なのだ。 人間の本能に動きで語りかける、キートン映画の醍醐味ここにあり。  とうとう最終手段として新聞広告で結婚相手を募集する事にしたキートン。 その邪さがキートンに悲劇となって降り掛かる。 数百人にも集まった大量の女性、女性、女性!老若美人、貴婦人、醜女とよりどりみどりの大津波。キートンも流石に怖くなって脱走。それを追う烏合のレディース。 群衆の力強さと恐ろしさをまざまざと見せつけるスピードと破壊力! キートンも全力疾走! クレーン車に中ずり、荒い地形を高速で駆け下り岩まで追ってくるなど、キートンのポテンシャルの高さが成せる命懸けの走りだ。 その過酷さを肉体だけで表現するその役者魂、震えるね。 大量の岩に追われて逃げてるんだけど、最終的にはそれを逃げるんじゃなくて避けるという発想!逃げてばかりじゃ勝てない、正面から見切ってやるぞという心の強さが良い。もう金のためじゃないよ。自分を愛してくれる人の気持ちをやっと理解して、やっと自分の愛を告白するんだと必死。時間までにたどり着かなきゃ、彼女を失うも同然。服もボロボロで息を切らして愛する女性の元へとたどり着く。金なんてどうでもいい、ただ愛が欲しい。そして迎える大団円。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-24 09:25:01)(良:1票)
156.  我輩はカモである 《ネタバレ》 
たった70分ちょっとで腹筋崩壊の連続に襲われる戦争コメディ。 アヒルの水浴びから始まり、それを極上のスープにして観客にたらふく飲ませてくれる。それも超フルスピードで。 マルクス兄弟が舞台で鍛え上げてきた笑いを、そのまま映画でも再現してしまうレオ・マッケリーとのコンビネーション。 これは舞台劇であり、舞台劇の以上の破壊力とエネルギーに満ちた傑作です。  ネジが1本抜けた首相とネジが跡形も無く消し飛んだスパイたちのやり取りを見るだけで呼吸困難を起こす。 この映画、馬鹿しかいねえ。殺人的笑いとはこの映画の事を差すのだろう。とにかくネタが多すぎる。 消える車、 サイドカーは飾り、 サイドカーの逆襲、 ナポレオンだってこんな踊らん、 公然と袖の下を要求、 浮気はフラれた男が悪い、 破壊工作員よりタチが悪い首相、 スパイは文字が読める人を呼んで、 タバコはガスバーナーで着火、 謎野球に謎レコード盤射撃、 帽子の受難、 刺繍しないと覚えられません、 後の「メメント」である、 癇癪で戦争開始、 弁護士は卒業した奴を呼べ、 「ネズミが吹奏楽するワケねえだろうがっ!」、 ミッキー「アヒルだって唄うだろ?」、 鏡が無いのに鏡を再現する名人芸、 シャンデリラが落ちれば天井も崩落、 男と女と馬の3P、 戦争中に失業とかそれどろこじゃねえ、 誤射の口止めとか皮肉効きすぎ、 というか首相自ら前線指揮とか勇気を買うべきか無謀を非難するべきか・・・。  物はブッ壊しまくるわ、唐突にミュージカルになったり、パレードになったり、戦争になったりともうカオスに次ぐカオスな映画です。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-24 09:24:44)(良:1票)
157.  ポセイドン・アドベンチャー(1972) 《ネタバレ》 
CGも発達していない時代にこんな凄い映画を造りやがった!!  ポール・ギャリコの原作をここまでリアリティのある大作に仕上げた超A級のパニック映画。  「あんな沖にいて巨大な津波に襲われるのか?」という疑問を破壊してくれる造り込み。  いや、あの時代だからこそやる意義があったし、あの時代のうねりがこの映画を産み出せた。  舞台は大洋にポツリと浮かぶ豪華客船。 逃げ場の無い海上、「方舟」は一瞬にして巨大な「棺桶」と化す。 甲板が地獄で船底が天国という皮肉。 船を大津波でひっくり返すって発想が面白い。 実際こんな目に遭ったら「悪夢」だけど、映画としてならやってみたい魅力的な「夢」だ。 天地逆転した船の中でパニックに陥る乗客、冷静な判断で生き残っていく人々。 押し寄せる海水、爆発で揺れる巨船、そして試される人間の尊厳。 極限状態で生き残ろうと必死に抗う人々の力強さ、死。 生き残るはずだった者、死ぬ運命にあった者、その容赦の無さ。  撮影も命懸け、俳優陣も持てるポテンシャル全快で命懸けの熱演を魅せてくれた。  今でもジーン・ハックマン演じる牧師の名ゼリフが聞こえてくる。 「主よ、助けてくれとは申しません。どうか邪魔はしないで下さい・・・!」
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-22 09:33:38)(良:1票)
158.  キートンの蒸気船 《ネタバレ》 
これはね、もうアレですよ。終盤の台風が直撃するクライマックスはキートン映画最強の部類。 キートンがあんなにカッコ良く見えたのは久々だぜ。 「蒸気船関係無いやん!」と思っていたらビックリ。なるほど取って置きの切り札として船を利用するアイデアが秀逸。 そんでもって最後の最後まで海に飛び込むキートンはカッコ良かったぜ。最高。 これに匹敵する蒸気船映画はジョン・フォードの「周遊する蒸気船」だけやね。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-22 09:33:32)(良:1票)
159.  E.T. 《ネタバレ》 
この映画の宇宙人=ETは侵略者ではなく道に迷った旅人で、むしろ彼を捕まえ調査しようとする人間たちを見えざる恐怖として描くところからはじまる。闇夜にうごめく人間の不気味な影、影、影。この頃のスピルバーグは本当に良いなあ。 独り残されたETは安住の場所を求めてさまよう。 ETは最初怖がられるが、徐々にその愛嬌やしぐさで人間たちと打ち解けていく。 キモい→可愛いの典型っす。上目遣いのETが凄い可愛い。でも首をニュッとやるのはちょっと勘弁。ろくろ首かよ。亀みたいに首をすぼめた感じが一番落ち着く。 ピザがもったいねーと思ったらアレはETが食べたのだろうか? とりあえずETを庇うエリオットはモチロン、兄貴と妹が良い奴すぎて泣ける。 妹は正直でよろしい。 「B!GOOD!(そうよ“B”よ!偉いわ)」が→「Be good(良い子でね)」になるのが良い。  ETとエリオットは文字通り体も心も一つになって交流を続ける。 そんなETも次第に故郷へのホームシックに・・・。 エリオットたちはETを故郷に返すべく作戦実行。ハロウィンにコスプレではしゃぐ母親を尻目に子供たちは奮闘。ヨーダも応援?に参加。 ETの不思議な能力で起こる現象は夢があって楽しい。特に月夜を背景に自転車で宙に浮くシーン!キレいだなぁ。普通ならあのシーンで涙々の別れ、ところがここからもう一波乱あるからこの映画は面白い。 最初は影だけで不気味な存在だった調査団だが・・・正体は怪しい機関どころからだの良い医者の集団だった。まったく憎い奴らだぜ。 ETは世話になった友人を助けるべく一人でいったん“旅立つ”。せめてもの恩返しなのだろう。 総てを呑み込んでエリオットに優しい言葉をかける母親もマジで良いかーちゃんだ。良い人ばっかだよこの映画は。 そこから生命を象徴する“花”の演出が最高! 熱してダメなら冷やしてみな。 雨は降らないが、みんなの涙で見事な虹の出来上がり。 「転送ビーム」って「スタートレック」? バイクVSバイク(自転車)のカーチェイスが地味に楽しい。 とにかくやりたい事をやりたいだけ詰め込んだ、夢のある最高の映画だったよ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-22 09:32:14)
160.  遊星からの物体X 《ネタバレ》 
クリスチャン・ナイビー&ハワード・ホークスによる「遊星よりの物体x」の神リメイク。 ジョン・カーペンターはホークスの傑作「リオ・ブラボー」にオマージュを捧げた「要塞警察」という傑作を撮っているし、本作もホークスへの尊敬の念を強く感じられる見事な傑作である。 ファーストシーンの謎の円盤からはじまり、物語は南極という陸の密室で展開される。 VHSのデッキか・・・オレもガキの頃はギリギリビデオだったっけか。 謎のヘリ、それから逃げるように走る謎の犬。 「本物の犬では無い(セット的な意味で)」 それにしたってどんだけ射撃下手なんだよ・・・テメえらのせいでコッチの基地にも飛び火だぜ。 音信途絶、オマケに言葉が通じない事の不幸。不幸が重なり、またも悲劇は起きてしまう。 「ゴジラ」といい「キングコング」といい、好奇心は解るけど人が死んでいるという事をもう少し考慮して欲しいもんだ。 「エイリアン」と似たプロセスだが、リメイク元の方がずっとご先祖だし、本作と「エイリアン」は徹底的に違う。 「エイリアン」は他の惑星という、別の宇宙船が助けにくる望みが絶望的にない。 今作は地峡上なので助けがくる望みがある反面、感染が拡大してしまえば地球上にまで拡まってしまう。物体Xは人体に入り込んで“同化”するという。 「既に仲間の一人が同化しているのでは?」 クルー全員が疑心暗鬼だ。緊張感が尋常ではない。 嵐の前の静けさ・・・そして次々と巻き起こる物体Xの恐怖。 犬好きが見たら発狂しそうな場面、 ある者は本当に狂い、 1人、また1人散っていく仲間たち。 物体Xの造詣がスゲーリアルで吐きそう。(褒めてる) ドクターの判断は正しかったのか間違っていたのか。 “検査”のシーンは心臓バクバクだったよ。解っていてもこの恐怖、この面白さ。 どうせ死ぬなら道連れにしてやらあっ!吹っ飛べクソ野郎があっ!! 南極の空にあがる巨大な爆煙、それで助けが来るか来ないのか。あとは神のみぞ知るところ・・・。 カーペンターの良心は、この場に女性を巻き込まなかった紳士的なところにあるのかもな。(何じゃそりゃ)
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-22 09:29:18)(良:1票)
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