1. スウォーム
「タワーリング・インフェルノ」の夢よもう一度、とばかりにI・アレンが製作・監督した“飛んで火にいる夏の虫”的駄作。豪華な顔ぶれの演技を見られるのはうれしいが、殺人蜂の恐怖を描くパニック映画としてはショボい内容。 余談だが数年前の夏、住宅の庭木に蜜蜂が黒山のように集団で集まり空中でも数多くの蜂が飛び回っていた。刺されることなく恐怖は感じなかったが、まさにこの映画の1シーンを彷彿させる現象に出くわした。某市役所のHPによれば一時的に群れている「分蜂」で、数日でいなくなるとのこと。そのとおり3日経ったらいなくなった。 [インターネット(字幕)] 3点(2025-02-02 14:13:52)★《新規》★ |
2. アパートの鍵貸します
会社の階層構造や男女関係をコミカルに描いてタテ社会を痛烈に風刺し、主人公のロマンスも織り込んだ悲喜劇。 哀愁漂う独身男を演じるJ・レモンの細やかな表現が作品に深みを与えている。彼の名演技と、笑いを誘いながらペーソス溢れる展開で作品に魂を吹き込むB・ワイルダーの職人芸が見事に融合した。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2024-12-15 16:50:55) |
3. キャノンボール
暑苦しいキャストやむさくるしい演技にガックリ。おまけにレースがダラダラ展開で退屈。 華のない主役B・レイノルズと“マスクとマントのヒーロー”のコンビがいただけない。老けこんだD・マーチンは不摂生の私生活を感じさせるしJ・イーラムのやりすぎ演技にも興ざめだ。日本人か中国人か不明の怪しげな東洋人やR・ムーアのセルフパロディーも笑えず。 「イージー・ライダー」風P・フォンダが現れて、乱闘が始まってからはいくらかマシでまあまあ観られた。 [CS・衛星(吹替)] 2点(2024-12-01 15:57:20) |
4. ブロブ/宇宙からの不明物体
《ネタバレ》 「マックイーンの絶対の危機」のリメイク。粘液状の生命体が現れてからテンポよく進む。人々を襲って飲み込むシーンが見どころで、緊迫感ある映像だがあまり怖くない。リアルな恐怖感に欠け不謹慎ながらユーモラスにすら感じてしまう(ムンクの「叫び」のような顔や、足をバタバタさせるシーンなど)。 生命体が宇宙からの飛来物でなく、生物兵器として極秘開発という一連の展開は「アウトブレイク」を彷彿させるが、こちらの方が先だったことは好意的に評価したい。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-11-17 19:24:54) |
5. ペギー・スーの結婚
バディ・ホリーの名曲をタイトル由来にして、青春を振り返り人生を見つめ直す物語。結局、家族っていいもんだね、夫婦っていいもんだね、で終わるのだがちょっと物足りない。 アポロの月着陸計画やファビアン等、時代のアイコンが挿入されているがK・ターナーやN・ケイジの高校生は老け顔の印象が強く、他の高校生に比べ浮いており若さを感じない。そのため1960年という、その当時の雰囲気を実感させる説得力がないのが残念。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-11-03 17:39:01) |
6. (500)日のサマー
若い男女の出会いとその後の交際経過をリアルに描き、恋した男の心情を巧みに織り込んだ青春映画。時系列をバラバラにしてランダムの進行だが、大きな起伏がないストーリーのため混乱なく日記を読むような感覚で観られた。 平凡な若者と少々尖った感じの女性、等身大の青春のやりとりが軽快な演出で好感が持てる。低俗なセリフもあるが主演2人の親しみやすさに救われ嫌味が残らない。 多くの映画や音楽等をオマージュしたシーンが散りばめられており、ちょっとしたお楽しみになっている。主演の男優が、わが「テキサス」の監督M・ゴードンの孫だったとは思わぬサプライズだった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-10-20 16:54:43) |
7. 100万ドルの血斗
「J・ウェインファミリーの、J・ウェインファミリーによる、J・ウェインファミリーのための映画」という感じ。自動車やオートバイが出てくる時代背景に新味はあるが、家父長制丸出しでお約束の殴り合い等、1970年代の西部劇としては演出が古臭い。誘拐された孫を無事に取り戻せば味方が死のうが何だろうがめでたしめでたし!で御終いとはお粗末だ。 殺されずに済んだ羊飼いに見覚えがあるなと思ったら「おくさまは魔女」のドクター・ボンベイだったんだね。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2024-09-29 20:08:05) |
8. 國民の創生
革新的な映画技法の数々と対照的な白人優越主義のプロパガンダ、これらを総合してどう評価するか判断が悩ましい。しかしながら、今では当たり前の映像表現を確立したという点で、その実績に敬意を表してこの点数とする。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-07-21 13:16:15) |
9. ワンダー・ボーイズ
人生の迷路に迷い込んだかつての神童が、現代の神童に出会い人生の意義を見出す。好みの俳優はいないがR・トーマスが気になって観賞。ちょっとしたいざこざや拳銃絡みの刃傷沙汰があっても、心底悪い奴が出てこないせいか観続けた後に心地よさが残った。 フリーランスの生き方を通して「酸いも甘いも」という人生の機微を味わい、良くも悪くも自由を満喫するアメリカ社会の空気を感じた。 [CS・衛星(吹替)] 5点(2024-06-02 20:04:40) |
10. 弾丸を噛め
《ネタバレ》 1100kの西部横断を競う乗馬耐久レース。馬の汗はレースの過酷さを物語る。今なら動物虐待だろうが・・・ レース展開は極端な悪党がいないため終盤までは平板に進行するものの、メキシコ人への心配りや危機時の助け合い等、ライバル同士の人情味や友情をさりげなく描くのがいいね。派手なドンパチがない異色の西部劇だが、それがむしろ心地よい。代わりにC・バーゲンの予想外の裏切りがヤマ場と言えるだろう。だがこのエピソードより、例えば途中で亡くなるB・ジョンソンなど各人の人生を深堀りした方が主題が鮮明になったのではないか。ラストの同時ゴールは物足りないが、映画全体の流れからすればまあまあ納得の良作。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-04-21 20:15:41) |
11. 西部戦線異状なし(1930)
《ネタバレ》 戦争の本質をストレートに描いた名作。トーキー始まって数年後の作品だが、教師が生徒に愛国心を説くシーンは無声映画の表現を感じさせ迫真性がある。戦闘シーンも優れたカメラワークで臨場感があり、リアルな迫力に満ちている。 初めて観た時は蝶に差し出した手の動きに作品のメッセージを感じたが、今回改めて観賞すると、行軍する兵士一人一人が振り向く時の不安そうな、あるいは何かを訴えかけるような表情が墓標と重なるラストシーンに心が動いた。見事に青年たちの内面をとらえ、蝶のシーンとともに印象深いものであった。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2024-02-11 13:53:31)(良:1票) |
12. トランボ/ハリウッドに最も嫌われた男
第二次世界大戦後の冷戦を背景とした赤狩り“ハリウッド10”の実態を赤裸々に描く。表現の自由を守るため赤狩りに対峙し、激しく闘った闘士・トランボ像は予想外だった。 映画人の思想的な立場が興味深く、記録映像やネット情報で既知の部分もあり、J・ウエインのタカ派ぶり、K・ダグラスの硬骨漢ぶりなどは想像どおり。戦場に行かなかったJ・ウエインに対し、トランボが皮肉交じりに言い返すシーンが痛快だ。公聴会で証言を拒否しても仕事ができるトランボに対し、顔で勝負するE・G・ロビンソンが証言せざるを得なくなる立場もよくわかる。 赤狩りを推進したH・ホッパーの暗躍がいやらしい。ブラックリストに載った人たちの苦悩はいかばかりだったかと思う。その当時、日本でもレッド・パージがあったと職場で聞いたことがある。 B級映画の製作会社キングブラザース幹部の方針を聴いて、かつて海外のドキュメンタリー番組で三流とみなされた映画の監督が語った言葉「俺たちも『市民ケーン』を作ろうと思えば作れるが、そんな映画を作る気はない」に通じる気概を感じた。負け惜しみとも思うが一理ある。 議論好きで理屈っぽい共産主義者の一面が、良くも悪くもリアリティに満ちている。反面、生活のためもあり仕事に没頭して赤狩りに対決するトランボの姿勢が、家族との対話不足に陥り軋轢を生むのは皮肉なこと。家族との葛藤も描かれているがややあっさりの印象。特に夫人の苦悩は並大抵のものでないと思うので若干物足りない。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-01-28 16:56:30) |
13. いちご白書
1968年に起きたコロンビア大学の学生運動をモチーフに、体制に反抗する若者たちを描いた群像劇。「平和を我らに」の合唱シーンが学生同士の連帯感を感じて心に残る。また、警官隊突入後の阿鼻叫喚は臨場感があって出色。 サイモン役B・デイヴィソンは「ウィラード」などを先に観たせいか線の細い役者という印象だったが、本作は学生運動に苦闘する姿を繊細ながら骨太に演じ、いい意味で印象が変わった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-12-24 14:09:56) |
14. ミクロの決死圏
人体をめぐるセンスオブワンダー。広大な宇宙の果てと同様、ミクロの先の先は宇宙そのものの世界観がいいね。その視覚化に挑戦し、アドベンチャーを通じて医療とスパイとSFの融合が程よい。タイムリミットのハラハラ感も秀逸。 医療チームの縮小は、今の視点でみれば内視鏡(潜航艇ならぬカプセル型が実現)やカテーテルなど、高度医療のメタファーと言える。 現代の映像技術と比較して古さを指摘してもアンフェアであり、むしろわかりやすさに重点をおいた映像化は高く評価できる。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-12-10 22:23:13)(良:1票) |
15. 遠い空の向こうに
実話を基に、宇宙を目指しロケット製作に熱中する少年たちを描く。何度も失敗を繰り返しながら目標に向かう主人公は、多くの失敗の上で発明・発見を成し遂げた先人の姿に重なる。ロケット打ち上げが成功した後、どこに落下?と思えば山火事発生。ぬれぎぬを着せられた少年たちが方程式で原因を探る展開が面白い。 ライリー先生や母親の理解がいいね。斜陽産業の石炭採掘で地中深く潜る父親と、未来に向け遠い空を目指す息子という対比の妙。青春映画として、家族の映画としての魅力だけでなく、社会性も織り込んでいる。ロケット失敗シーンの数々を観ると、ミサイルとロケットは同じ技術だなと痛感。ロケットと称してミサイル発射、ミサイル発射して侵略、テロと“自衛”の応酬でミサイル発射・・・技術の進歩がこれか?この頃特に考える。 全米科学コンテストは優勝までの経緯があっさり描写で少々物足りない。 廃れゆくものと伸びゆくものの対照で冷徹な現実を映しつつ、家族の愛情を浮き彫りにする。ブラウン博士は偉大な人だが「僕のヒーローじゃない」つまり「ヒーローは父さんだ」と、ホーマーの心の叫びが聞こえてくる。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-11-26 16:18:28) |
16. 暴力脱獄
何度も何度も脱出しようと試みる主人公を演じるP・ニューマンは「大脱走」のマックイーンに刺激を受けたか?「ショーシャンクの空に」の監督はこの映画の影響を受けたのでは?という思いが頭をかすめる。 ベトナム戦争や公民権運動などを背景としたアメリカン・ニューシネマ前夜ともいえる時代の物語。反逆をよしとする風潮の中、権力に屈せずひたすら自由を求める主人公の動機付けが弱い。 主人公の名前がルーク(ルカ)だったり十字架にかけられたキリスト風のポーズをとったり、刑務所を舞台に反体制と結びつけて神を語られてもなんだかなあ、キリスト教を語られてもなんだかなあ、という感じ。暗喩としては安易だな。 この種の映画において、罪人の脱獄と戦争捕虜の脱走が同一視されている文章を時折見かけるが、この二つは似て非なるものだと思うよ。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-11-12 11:08:23) |
17. 燃える平原児
歌って踊って恋をするプレスリー映画は理屈抜きで楽しめる。本人は「くだらない映画」と思っていたとのことだが、明るく屈託のない役柄はエルヴィスにお似合いだと思う。対照的に、本作ではJ・ディーンを意識したかのような陰影のあるシリアスな演技を見せるが、これはこれで悪くない。白人と先住民の子という葛藤を抱え、反抗心を見せる複雑な青年像を手堅く演じた。 本作のように先住民を悪役視するだけでない映画がニューシネマ以前にいくつか製作されており、アメリカ映画の奥深さを感じた。最後は尻切れトンボが惜しい。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-10-29 13:21:15) |
18. メジャーリーグ
《ネタバレ》 全体的にひねりがなくあまり笑えない。選手の個性は型どおりでオーナーの思惑は予定調和的。魅力的な選手(俳優)がいなかったのも残念。 ヤンキースとの決戦は大声援で盛り上がるものの、クライマックスのバントには拍子抜け。ひと工夫した脚本だと思うが、それまでの展開からすれば見事に盛り下がり。ビッグビジネス(MLB)としてもショービジネス(映画)としても、“大ホームランを予告してバント”では物足りない。「あわや」と「万事休す」の演出が欲しいところ。 バントよりもっと起伏のある筋書き、例えば「予告通り大飛球を打ってあわやホームラン!というところで外野手が落下点で構えキャッチ・・・と思ったらポロリ落としてエラー・・・ランナーがホームイン」という展開の方が弱小球団インディアンスにふさわしい勝ち方だと思うよ。えっ、大飛球をヘディング?・・・いやいや珍プレー好プレーじゃないんだから。 日本のプロ野球で“ささやき戦術”に元大リーガーが怒ったこともあったが、メジャーでもこの映画のようにやってるのかな? [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-10-15 17:28:29) |
19. 裸の町(1948)
製作当時としては画期的なオールロケ撮影の傑作。臨場感抜群で、ニューヨークの街並みをリアルに捉えたセミ・ドキュメンタリータッチが光る。 警部役B・フィッツジェラルドの安定感、若手刑事役D・テイラーのやや頼りなげな初々しさ。このコンビの捜査ぶりに加え、若手刑事の私生活も描いて映像に血を通わせており、人間味ある映像にまとめた演出はフィルム・ノワールにおける類型を確立した。ウィリアムズバーグ橋での撃ち合いに代表される縦構図等、立体感のあるカメラワークも秀逸。 「裸の町には800万通りの物語がある。これはその中のひとつだ」と語るラストのナレーションが印象深く、大都会・ニューヨークを見る視線が鋭い。 [インターネット(字幕)] 9点(2023-09-03 10:53:42) |
20. パリで一緒に
《ネタバレ》 A・ヘップバーンとW・ホールデン、1954年のオスカー主演賞コンビのコメディとして肩の力を抜いて観賞。原作にJ・デュヴィヴィエが名を連ね、T・カーティスやM・デートリッヒのカメオ出演などスタッフ・キャストが豪華。パロディ精神と遊び心いっぱいで、脚本家の仕事ぶりを見せながらの展開が楽しい。リックの役名からしてもうミエミエだね。おまけに、D・マッカーサーの名セリフ「老兵は死なず・・・」をもじって「老兵のように消える」とは恐れ入った。「完璧な人間はいない」のセリフもお馴染み。少し老けたホールデンが、オードリー相手に脚本の場面を力説してブローニュの森へディゾルブ・・・気楽に観られるものの、どこでパロディが現れるか気が抜けない。 理論派気取りの俳優役カーティスが笑わせる。感情移入や自己陶酔、品のなさとメチャな言葉遣いを批判という、ヌーベルバーグやニューヨーク派に対するハリウッドの対抗意識をちょっぴり味付け。N・リドルの洒落た音楽も結構でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-08-20 20:45:14) |