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プロフィール
コメント数 107
性別 男性
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1.  裏切りのサーカス 《ネタバレ》 
過去に原作を二回ほど読んでいたにもかかわらず、内容をあまり覚えていなかった。しかし映画を見ながら思い出した。コントロール、ナイフ使いのリッキー・ター。ギラムが若い。年配の男だと思っていた。妻も若くてギャルっぽい。もっと地味でキャリアっぽいタイプを想像していた。カーラは顔が見えないにもかかわらず、ほぼイメージ通りなのが凄い。孤独な学生と元スパイの交流。さりげないヒューマニズムもル・カレの魅力だと思うが、きっちり描かれていて好感が持てる。運転するシーンがいい。そして何と言ってもスマイリーをゲイリーが演じるとは。太っていないスマイリーなどあり得るのか。しかしこれが見事にスマイリーなのだ。お互いに壁の向こう側にいて、顔も見えない相手に対して、策を弄して人生を破滅させようとする。アクションはほとんどない。書類を漁り、証言を集め、過去を一つずつゆっくりと辿っていく。何もかもが地味な作品だが、冷戦時代の諜報戦のリアリティと恐ろしさを、これほど堪能できる作品は他にないだろう。最初から最後までゾクゾクしっ放しでした。続編が超絶楽しみ。
[映画館(字幕)] 10点(2017-01-12 01:28:22)
2.  イーグル・アイ 《ネタバレ》 
ハイテク・ポリティカル・アクションというより、ほとんどホラーだ。アクションは派手なのだが、せわしなくて、迫力に欠ける。技術的には高度なのだろうが、懲りすぎて失敗している感がある。最近はこんなのが多い。昔映画館で観た「キングダム」のアクションは、似たような感じでも結構好きなのだが、映画館で観るとまた違うのか、自分の趣味の問題か、演出のスキルの問題かよくわからない。ストーリーは割と面白いのに、その点が残念だ。そう、何か暗いというか、悪い意味で真面目すぎる。似たようなテーマの「エネミー・オブ・アメリカ」は、やっぱりスピード感がウリのスコット弟に、スミスのコミカルな演技がマッチして面白かった。個人的に、本編よりプロローグの方が萌えたりする。アフガンの空では、今日も無人偵察機が飛び回っていることだろう。他でも書いたが、こういうテーマをちゃちゃっと映画にしちゃうところが、やっぱりハリウッドの凄いところではある。アメリカ国家の演奏で、爆弾が吹き飛ぶというのが、何とも強烈な皮肉だ。しかし何故ツアーバスが日本の会社なんだか?
[DVD(字幕)] 7点(2010-05-16 22:59:16)
3.  ヒトラーの贋札 《ネタバレ》 
何といっても、偽札造りの犯罪者という主人公の小悪党キャラがいい。ナチの収容所を出て、正装でカジノに飛び込み、美女と海岸でタンゴを踊る。実に粋である。敵のために偽札を造らなければ殺されるという極限状態。クールに抑制した演出と演技が、緊張感を高める。男たちの汗とか泥の匂いがまったくしな。ここまでスタイリッシュな収容所映画がかつてあっただろうか。と思いきや、解放され、銃を向ける同胞たちの、あまりにもみすぼらしい悲惨な姿。壁を貫通する弾丸に響き渡る悲鳴。敢えて見せないことで、恐怖を増幅させる演出が巧い。収容所の中に、極秘の偽札工場があるという二重構造が見事だ。そして収容所を出て、戦争の影など微塵も感じさせない瀟洒なカジノへ。何とも不思議というか、やるせないというか。やり場のない怒りを爆発させ、偽札を全部賭けにつぎ込む主人公が痛々しい。正義と悪、小悪と巨大な狂気、生と死、様々な対立軸が複雑に絡み合い、囚人たちと観る者をキリキリと締めつけてくる。ナチ収容所サヴァイバル・クライムサスペンスといったところか。新機軸だ。ナチの制服がまたカッコいい。不謹慎だが。
[映画館(字幕)] 9点(2010-05-16 22:48:53)(良:1票)
4.  戦場でワルツを 《ネタバレ》 
夜のシーンがいい。色のない世界をこれほどリアルに表現した絵やアニメは初めて見たような気がする。日本のアニメとは、やっぱり動きが違う。技術的なことには無知なのですが、妙なところにリアリティを追及して、逆にアニメ的に見えたりして、アニメ的に大胆なデフォルメをしてしまう日本人とは表現に対する感覚が違うのかなあ、とか思ったりしたのだがどうなんだろう。イスラエル版「地獄の黙示録」といったところだが、まさにイスラエル自体の状況が万年ベトナム的。もう何もかもが狂ってます。絵も、戦争も、人間も、音楽も、ファランヘ党も、イスラエルも、監督も。兵士がライフルでエアギター始めて、そのまま戦闘のダイジェストに突入。機関銃乱射しながらワルツを踊る。「戦車の中だと安心だった」。やっぱり戦場というのは感覚が麻痺してしまうのが怖いんですね。敵性国家に包囲されたシオニズム自体が、まさしくそういう状態。イスラエル映画界からこのような作品が生まれたというのは大変意義深いことだと思います。失われた記憶で引っ張っておいて、オチが「僕はそこにいた」だけでは物足りないような気もしますが、基本ドキュメンタリーだから仕方ないのでしょう。最後の実写は記憶を取り戻したという解釈でいいのかな?イスラエルが、あるいは世界が意識的記憶喪失になっているというメタファーのようにも思える。西岸では今も「入植」が続いているわけだが、その事実を知っている人はどのくらいいるのだろうか。
[映画館(字幕)] 10点(2010-01-06 01:52:56)
5.  バーダー・マインホフ 理想の果てに 《ネタバレ》 
ヌーディストビーチで、小さな女の子たちが駆け回っているシーンから始まる。これ海外で公開できたのか。その後もおっぱいの連続。しかも女優さんたちが皆揃いも揃って美しい。それはともかく、全編通じて異様な熱気、ハイテンションで圧倒されっ放しだ。現在では、彼らが語る革命理論も、空虚でうすら寒く響くが、当時は皆本気で信じていたのであろう。反体制派のアウトローに民衆が魅かれるのは、いつの時代も一緒である。まさに現代版「ボニー&クライド」。メンバーが逮捕されるシーンはもろに「明日に向かって撃て」だ。しかしヨルダンでは軍事訓練を投げ出し、ムスリムの若者たちの前でヌードになる無神経さ。共産主義や革命といったものは、彼らにとっては、暴れるのにいい理由を与えただけなのか。時代が違えば、嬉々としてユダヤ人をいたぶったりしていたのか。あるいは純粋さゆえの暴走なのか。連合赤軍などは、集団心理が何となくエスカレートしたような、何となく日本的なところがあるが、本作の場合は、何でもとことんやる、ゲルマン気質が作用しているような気もする。オウムの事件も記憶に新しい。コミュニズム、宗教ときて、次は何か。ネット右翼はあえなく玉砕したし。テロをやれとは言わないが、今の若者たちも、もう少しはちゃけてもいいのではないかと思う。とかいろいろと考えさせられます。ちょっと実写を使いすぎのような気もするが、とにかく凄い映画です。
[映画館(字幕)] 10点(2009-09-03 22:06:50)
6.  ザ・バンク -堕ちた巨像- 《ネタバレ》 
銀行を悪役にしたサスペンスなわけだが、捜査対象は武器売買で、殺し屋がわんさかと群がり、グッゲンハイム美術館を半壊させるという派手さ。銀行がここまで過激な悪役を演じるというのも、時代の流れというヤツか。いやいや、その点に異存はないのだが、ここまで悪辣だと、昨今の金融危機と関係があるんだかないんだか。武器売買に要人暗殺とか、もうモラルの欠如とかいうレベルではないからね。パンフによると、企画は6年前から存在しており、実際の事件をモデルにしているという。まあ我が国でも銀行と地上げヤクザの関係とかあるし、別に目新しいことではないのだろう。そもそも原題が「The International」で、銀行を中心とした金融というシステムを介した、国際的な陰謀といったニュアンスだと思うのだが、すっかり金融危機に便乗している。その割に日本での興収はイマイチだな、きっと。一転して敵の冴えない殺し屋と一緒になって戦うという展開に超萌えます。ここだけのために観る価値があると思う。善と悪、表と裏が荒々しく交錯する、作品と時代を象徴するようなシーンだ。主人公の名前も「ライ麦畑」の作者みたいでいい。
[映画館(字幕)] 8点(2009-05-22 22:47:51)
7.  キングダム/見えざる敵 《ネタバレ》 
基本的に「マンハッタン無宿」「ブラニガン」「フレンチ・コネクション2」「ブラック・レイン」と続く、異文化交流熱血刑事アクションの系譜に位置する作品といえよう。しかし今の時代、敵がテロリストで舞台がサウジとなると、無茶やって喧嘩して事件解決して仲良くなってハッピーエンドとはいかないようだ。犯罪捜査を基本にしつつ、ポリティカル・サスペンスの要素を絡め、対テロ戦闘の火力をぶち込むという荒業をやってのけた脚本はお見事。サウジの暗部に切り込み、セリフ一つでテロ戦争の不毛を表現したあたりが「ダイ・ハード」やら何やらとは一味違うところだ。もちろん脚本に負けず劣らず演出もいい。ハイウェイを疾走する黒塗りのRVを追いかける流麗なカメラワーク。臨場感溢れるブレブレなハンディカメラ。怒涛のカーチェイスとアクション・シーンにはぞくぞくした。ハイウェイで襲撃されるシーンの滅茶苦茶な編集がもうたまらん。戦闘の恐怖、銃の恐怖、テロの恐怖をまさに体感できる。「こっちは安全ですよ~」、ボーン。大佐役のアシュラル・バルフムさんもいいですね。プロローグもおしゃれです。体感アクションと知的スリルの双方を味わえる秀作である。
[映画館(字幕)] 9点(2007-11-03 23:51:04)(良:1票)
8.  エアフォース・ワン
当時流行りの飛行機ものと、大統領ものをミックスして、エアフォース・ワンを引っ張り出したアイデアは、微笑ましくも感心する。ほんとによくいろいろ考えるものだ。しかしこの監督にしては安っぽいと言うべきか、それともよくぞここまでまとめあげたと言うべきか、迷うところではある。大統領がテロリストと取っ組み合って、ハッチの縁にぶら下がって、その後ろで飛行機がドッカーンと爆発炎上してと、怒涛の展開と、暴走するヒロイズムで、一歩間違えればギャグにしかならないところを、ぎりぎりのところで踏みとどまっているのは見事としかいいようがない。この点はやはり斜に構えず、正面切って作品に挑んだキャストとスタッフの実力によるのであろう。にもかかわらず、この緊迫感の欠如は如何ともしがたい。特に後半の詰めの甘さと、安っぽいCGには萎える。トム・クランシー原作映画でジャック・ライアンを演じていたハリソン君であるが、小説の方では、本当に大統領になっているのだ。そういうわけで、ライアンが大統領になったような気がして、途中で訳がわからなくなった。グレン・クローズがサインを拒否するシーンがいいですね。「CSIラスベガス」のブラス警部が大活躍してるし。911以降では、こんなお気楽な作品はもう製作不能であろう。そう思うと郷愁すら感じる。
[DVD(字幕)] 7点(2007-02-06 02:44:12)
9.  ウォーク・ザ・ライン/君につづく道 《ネタバレ》 
ホアキンが濃いです。アップの連続は日本人には少々キツいかもしれない。しかし主役二人の演技には圧倒される。何せホアキンは、幼くして最愛の兄を亡くし、自らドラッグに溺れるという役である。彼以上の適役はいないだろう。兄のことを話すシーンは迫真の演技である。演奏シーンは吹き替えなし。リーズのアカデミーも納得である。ホアキンも賞を取るかと思ったが残念だ。私はオールドロックが結構好きなので、ロイ・オービソン、エルビス、ジェリー・リー・ルイスの登場をかなり楽しみにしていたのだが、それほど出番がなく、この点は少々微妙である。それでもステージの袖で「良かったぜ」とか言い合っているのを見ると思わずニヤける。映画館だとさすがに音質は最高で、ベースのボンボンいう音が重たい。キャッシュの曲自体も、声も歌詞もビートもかなりヘビーである。ゴスペルとカントリーを独自のダークネスで消化したキャッシュのロックンロールは、冒頭の綿花畑のように、アメリカ人にとっては原風景の一つなのであろう。「グレートボールズ・オブ・ファイア」ジェリー・リー・ルイスのハイテンションもいいが(彼もよくキャッシュの曲をカバーしている)、本作でのキャッシュのずしりと胸に響くような重みも悪くない。ラブストーリーとしてはかなり辛口である。本当は魅かれながらも、ホアキンの求愛を拒み続けるリーズと、愛のためにドラッグに溺れるホアキンの姿が痛々しい。作品全体に南部の保守的な宗教観や価値観が通奏低音のように響いているが、結局二人が結ばれるためには、時代から見ても、ジューンにとってもある程度の時間の経過が必要だったのかもしれない。
[映画館(字幕)] 10点(2006-03-09 01:06:15)(良:3票)
10.  ジャーヘッド 《ネタバレ》 
「フルメタル・ジャケット」へのオマージュから始まり、「トレイン・スポッティング」のような鬱屈した青春群像劇を経て、「プラトーン」的な戦場リアリズムで終わる。しかし「プラトーン」とは違い、イラク軍との戦闘シーンがほぼ皆無なのが面白い。訓練で殺人マシーンへと変貌する主人公。しかし戦場に来ても戦闘はなく、毎日訓練に明け暮れ、フラストレーションを発散するためにバカ騒ぎして、国の女には振られ、下ネタにオナニーと、体育会系のバカぶりと現代の若者たちのダメぶりが最高に笑える。戦争とは関係ないところで凶行に走るのがまた可笑しい。そしてやっと戦闘が始まり、狙撃兵の主人公に命令が下ったと思いきや、思いがけない結末が・・・。ストーリーは盛り上がるところであえて外しており、乾いたユーモアがさらに虚脱感を煽る。油田が燃え盛り、黒い雨が降るシーンは圧巻である。「僕たちはまだ砂漠にいる」のセリフが印象的だ。戦争自体が虚しいのか、時代が悪いのか、よくわからなくなってくる。当時のヒット曲満載で、特にパブリック・エナミーの「Fight the power」がいい。グダグダな戦争とグダグダな青春を描いた、ダルなリアリズム戦争映画。
[映画館(字幕)] 10点(2006-02-18 16:50:23)
11.  ヒトラー 最期の12日間 《ネタバレ》 
最初お客さんは、年配の方々か軍事オタクの男性ばかりと思っていたが、意外にも女性の方が多かった。あいにくと立ち見ではあったが、最後にはそんなことも忘れるほど熱中していた。物語は主に官邸の地下壕とベルリンの市街戦を交互に描きながら進む。ヒトラーはじわじわと正気を失い、ゲーリングやヒムラーはいつの間にか姿を消し、ヒトラーの隣の部屋で将官たちは酔いつぶれ、ある将軍は手榴弾で一家心中し、市内ではヒトラーユーゲントの少年たちが徹底抗戦を叫び、SSが処刑と称して市民を虐殺し、最前線は死体の山で、手術ができないためのこぎりで手足をぎこぎこし・・・ともう滅茶苦茶である。ヒトラーの妄言と彼をどうにもできない将軍たちの姿はほとんど喜劇に近い。ヒトラーの姿はあわれな老人という印象である。しかしその一方でベルリンの市街戦は凄惨を極め、誰も止めることができない。ヒトラーやゲッペルスは、市民の犠牲に対して「しょうがない」「死ぬのは若者の義務だ」と切り捨てる。考えさせられることが山ほどあると同時に、終末のカタストロフに快感を感じないでもない(私だけか?)。しかもナチの制服がかっこよい(不謹慎か?)。結局ヒトラーは自殺する。ヒトラーが死んだ途端、将兵たちがみな煙草を吸い出すシーンには笑った。そしてゲッペルスは一家心中。これがまた悲惨の一言だ。主役の女性秘書はユダヤ人虐殺について「ニュルンベルクで初めて聞いた」と証言している。「人間ヒトラー」とともにこの点も本作に対する非難の一因であろう。作家のデヴィッド・アービングを始めとする極右の人々の一部は、ヒトラーはユダヤ人虐殺を知らなかったと主張している。真偽はともかくとして、感情論を越えた、冷静かつ客観的な分析はやはり必要であろう。非難があることもふまえて、現代人は観た方がいい作品だと思う。
[映画館(字幕)] 10点(2005-08-12 00:54:28)
12.  ザ・コンテンダー
クリントン後の民主党政権という設定が哀愁を誘う。硬派でリベラルな政治ドラマとしてはなかなか面白い。政界でのセックス・スキャンダルというエグいテーマを、実にスマートかつクールに見せる抑制の利いた演出と演技は好感が持てる。しかしこの脚本であれば、もっと観る者の胸にぐりぐりと迫ってくるような演出にすることもできたはずである。政治の世界のよりダーティでどろどろな面を見たかった気もするし、これくらいの方が実はリアルな気もする。この辺りで好みが別れそうである。あるいはこの抑制にこそメッセージを見出すべきなのかもしれない。いずれにしても永田町にはないこの華麗さとカッコよさはさすがと言うべきか。映画も政治も見た目は重要である。アップの多用は臨場感がありなかなかの迫力であったが、その割にゲイリー・オールドマンに気付くのに1時間くらいかかってしまった。あの髪の毛は抜いているのだろうか?テレビ出演でだまし討ちに会うシーンの演出がスリリングでよかった。
[地上波(字幕)] 8点(2005-08-09 00:32:39)
13.  マン・オン・ザ・ムーン
オープニングで多少、というかかなり不安になったがそれも杞憂だった。実在のコメディアンの伝記映画で、作品中では彼のプライベートよりも、彼の芸やステージのシーンの方が多いにもかかわらず、一番笑えたのは彼が癌を患ってそれを告白したのに、家族にさえ信用されないというエピソードなのは実に皮肉だ。国民性の違いか、あるいは単なる趣味の問題だろうか?しかし感動作としてはあまり笑えない方がいいのかもしれない。アメリカのエンターテイメントの中でも日本人には特に馴染みの薄い、お笑いの世界の一端を覗けるのは興味深い。彼の過激な芸の根底にあるのは、ただ単に人々を驚かせたい、楽しませたいという純粋な思いだったのだ。その純粋さゆえに、周囲の人々から見ると、彼は暴走し、芸は過激になり、観客は付いていくことができなくなった。この辺りエンターテイナーや芸術家が根源的に抱えるジレンマかもしれない。しかしエンターテイナーとして最後まで自身の芸に殉じる姿は立派である。過激さの中にも人々や世界に対する大きな愛情みたいなものが見え隠れしていて感動させられる。それにしてもジム・キャリーは上手い。
9点(2005-01-02 02:03:47)
14.  バイオハザード(2001)
もちろん現代的な要素満載であるが、基本的には「ゾンビ」以来の、正統派王道ゾンビムービーの流れを汲む作品。ゲーム原作という事実を前に、この基本を忘れていたので、改めて納得した次第。ゲームの方は知らないので、比較できないのが残念。元々ゾンビ映画があまり怖くない性質なので、(「ブレインデッド」で大爆笑した)そういう意味では、あまり怖くなかった。おまけにサイバーパンクなセットと、明るく美しい色彩で清潔感さえ漂う映像は、かつてのどろどろで、ぐちゃぐちゃで、アラを隠すのにも大いに役立ったと思われるダークネスとは程遠い。しかし連続する危機、少しずつ解明される謎によって、ストーリーはスピード感と緊迫感を最後まで維持し、キメ細かな演出と力強い演技がさらにそれを増幅することに成功している。画面の人工的な明るさが、逆に密室感を強調しているのかもしれない。地中の密室という設定は、宇宙船に近いですね。ミラ・ジョボヴィッチの体当たり演技は賞賛に値する。アニメCG顔負けの端正な美しさと脚線美。そして何よりもあの強さ。戦闘美少女という奴ですね。このあたりもひじょうに現代的といえるかもしれない。こういう嗜好は日本製アニメゲームカルチャーの鬼っ子といえるでしょう。 
8点(2004-07-22 23:36:53)(良:1票)
15.  トータル・フィアーズ
「アメリカ国内で、テロリストの手により原爆が使用されるというショッキングなストーリーにもかかわらず、いまいち迫力に欠けるのは、恐らく、核の恐怖をきちんと描いていないせいだろうと思われる。この作品には、皮膚がケロイド状に垂れ下がり、断末魔の呻きを上げる被爆者の姿も、黒焦げになった死体の山も出てこない。焦土と化したボルティモアの町並みも、ほんの一瞬、しかも夜のシーンで登場するのみである。同様に核兵器が使用される、ミミ・ロジャース監督作品「ピースメーカー」において、映画の冒頭、列車事故の救出に向かおうとする年老いた農夫たちが、核の閃光に呑み込まれる、ほんの一瞬で、その恐怖や哀れみを、十二分に表現していたのと比べると、たいした違いである。倫理的にみて、あるいは唯一の被爆国民としての感情という問題を差し引いても、この欠陥は、純粋に映画としての面白さを半減するという意味で、致命傷だ。まるで気の抜けたサイダーのような作品になってしまった。しかし、もし9・11がなかったら、この作品も、非現実的として映画化されることはなかったかもしれないと思うと、やはり世界は変わったのだなと、実感を新たにする。」という投稿をしようと思ったら、下ですでに似たようなことを書かれておりました。でもせっかく苦労して書いたので投稿させて頂きます。エージント・スミスさん、気を悪くしないでくださいね。
6点(2004-07-10 03:41:47)
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