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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1249
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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1.  アイ・アム まきもと 《ネタバレ》 
「おみおくりの作法」(2013英伊)のリメイクとのことだが、撮影場所からすれば「おくりびと」(2008)の成功に味をしめた制作会社が二匹目のドジョウを狙ったように見える。変な題名は我の強い人々には受けるかも知れないが、自分にとっては見る気を減衰させる効果しかない。 内容的にはコメディ要素らしきものが多いが笑えない漫才のようで寒々しく、また本人の性格特性を言い訳にして、お役所だから非効率も許されるはずという前提で話を作っているのは安易な印象がある。都合よく人を死なせて泣かせるのは薄っぺらいドラマというしかない。  物語に関しては、世評によれば結構忠実なリメイクらしいので、この映画に対していちいち突っ込みを入れる気にならない。もとからこういう変な話だったということだ。 一つ書くと、死を語る映画であれば死者よりむしろいまを生きる人々を前向きにさせるメッセージがあってもらいたいと思うが、それがこの映画では「頑張った」だったのか。オウムが言っていたように日々の自分を励ますため、あるいは主人公のように最後にこの言葉が言えるよう、日々悔いのない働きをしようということならわからなくはないが、何にせよ最後の締めの言葉だというのが後向きの印象を残す。 未来に向けて生きていこうと人を元気づける映画でもなく、どちらかというと人生後期の人々向けに、そろそろ自分の最後を意識しておけ、という終活映画のように思われた。今の時代にふさわしい。  以下関係ないが個人的な思いとして、自分としては劇中の元炭鉱夫のように、死んだ後はもうどうでもいいので死体を適切に処理してもらいたいとしか思わない。もう死んでいるので葬式に人が来なくても困らないが、しかしそれでも自分の死を悼んで来てくれる人がいるとすれば有難いと思う(心霊になっていれば泣く)。故人を思う生者の気持ちは大事にしなければならず、自分もまた生きている限りそのような気持ちは持っていたいという程度の感慨を催す映画ではあった。特に同じ時代を生きて来た人が先に行ってしまうのはつらいものがある。
[インターネット(邦画)] 4点(2024-01-20 19:55:30)(良:2票)
2.  青ヶ島の子供たち 女教師の記録 《ネタバレ》 
東京都の離島・青ヶ島について極めて誠実に作られた映画である。この映画は1955年だが、少し新しい青ヶ島映画としては「アイランドタイムズ」(2006)もある。 青ヶ島の場面はどの程度が現地での撮影だったのか不明だが、空撮は少なくとも本物で、また船着場は現在の三宝港の場所らしく見える。方言については「おじゃる」「たもれ」といった古式ゆかしい言い方や「…だら」「かんも」といった特徴的な言葉が出ていた。 住民の暮らしに関しては「酒と喧嘩と神拝み」を死ぬまで繰り返す島だと言われ、実際に「牛メを売ってまで島酒を飲」みたい男も出ていたが、これで島全部を貶めるでもなく角を丸めた感じになっている。ただし巫女だけは目の敵にされていたようで、これにより最後は神頼みでなく人間の意思の力に助けられたという物語を作っていた。東京(港区白金)の人々の善意が実ったラストは、日の丸で万歳というのが時代錯誤的ではあるが正直感動的で、これこそ日本だと思わされた。なおタメトモの件がどうなったのかは不明だった。 個別の人物としては、東京の「鉛筆小僧」の父親は明治生まれらしく不愛想で傲慢なパワハラオヤジかと思ったが、外見がそうだというだけでちゃんと人の情を持っていることが後でわかる。娘にも嫌われていなかった。  ところで劇中では村長の長女だけが東京の大学を出て本土での活躍が期待されていたが、他の若年層は島に住み続けることに誰も疑問を感じていなかったようで、これが昭和30年頃の普通の感覚だったかも知れない。 主人公が「こんな島、海の底へ沈んでしまえばいい」と言ったのはさすがに言い過ぎで、天明の大噴火により生存者が八丈島に避難した後、約40年を経て「還住」を果たしたという苦難の歴史は知られていなかったのかと思わされる。しかしこの映画としても、一度は島を出た人々がまた戻り、外部での知見や人のつながりをもとにして、島をいい方へ変えていくことを期待していたのかも知れない。今はますます人も減って大変だろうが、これからもずっと人の住み続ける島であってもらいたいと他人事ながら願っている。  その他映画と関係ないが近況として、青ヶ島でも2020年から光ファイバーケーブルによるブロードバンドサービスが開始され、人の行き来は楽でなくとも情報通信には支障なくなったとのことだった。今は島出身・在住の人物によるYouTubeチャンネルがあったりもする。 また現在はどうなったかわからないが、新型コロナウイルス騒動の前は外国人観光客が変に殺到して困ったこともあったらしい。何かと人々の憧れを誘う島なので来島者が絶えることはなさそうである。
[DVD(邦画)] 6点(2024-01-06 10:14:42)
3.  AKIRA(1988) 《ネタバレ》 
2020年オリンピック関連で話題になっていたので改めて見た。最初に見たのは90年代のTVと思うが、その時点で印象的だったのはいわゆる「金田のバイク」と、臓器のようなのが膨れる場面だった。いま見てさすがに斬新だとまでは思わないが、1988年の時点で先進的だったろうということは否定しない。音響面でも面白いところがある(救急車のサイレンかと思ったら背景音楽だったなど)。 前提として、近未来は当時の現実の延長上にある、という考えなのは堅実な印象だが、実際に2019年を経験した立場からすれば、「貯金は××銀行へ」という看板とか紙がやたらに多いのは未来描写として外している。不良少年の仲間意識で泣かせようとするのも前世紀っぽいが、そのほか特にヘルメットに覆面の連中が火炎瓶を投げるなど、1988年ならまだ記憶に新しかっただろうが2019年では失笑モノである。一方で軍事衛星からの光線兵器であれば、実際どこかが作っていそうなので怖い。 ちなみにネオ東京というのは1980年のTVアニメ「未来警察ウラシマン」でも出て来ていたが(ネオトキオ、2050年想定)、東京湾に新都市という発想自体は昔からあったらしい(ネオ・トウキョウ・プラン、1959年)。  ストーリーとしては幼馴染の2人の自立と新たな出発という感じのようで、最終的にはこの世界と別の宇宙で新しい未来を自ら作る、という壮大なセカイ系の物語になっていたらしい。当時の若者はともかく今の自分として特に共感できるものでもないが、劇中事物に即していえば、あんな連中に宇宙創造を任せていいのかとは思った。 ほか今回見て思い出したのは、登場人物の中でわりと普通に見えるいたいけな少女の最期が衝撃的だったということだが、今の感覚で見れば、こんな男にどこまでも執着するのが悪いと切り捨てて終わりだった(結局男と一緒にあっちの世界へ行ったのか?)。好きになれる人物が誰もいない殺伐とした世界だったが(主人公の男は単純バカ)、あっちに行ってしまった連中はまあいいとして、残った連中はこれからこっちの世界をまたそれなりに作っていくのだろうとは思った。悪役っぽい強面の大佐はけっこう実直な人物だったらしい。
[DVD(邦画)] 5点(2021-01-16 09:29:24)
4.  雨の町 《ネタバレ》 
見ている間じゅう原作がどうなっているのか気になって仕方なかった。やむを得ず読んだが、それ自体は何とか成り立ちえていた短編を、長編映画にした段階で破綻したようでもある。 まず撮影地に関して、群馬県中之条町の中心街は原作の町に近い気はするが、実際の出来事はほとんど山間部(旧六合村?)で起きており、また序盤で申し訳程度に天気雨が降ったものの、基本は好天の日のため題名のイメージにかなりそぐわない。撮影の事情を観客側が斟酌してやらなければならない状態になっている。 またこの映画独自の趣向として、現代の都会では自宅に安心できる場所のない子どもがいる、という社会問題を最初に提示したのは特に悪くなく、主人公が劇中の子どもらに同情する理由にもなっている。しかし一方で「カッコウ」という言葉が原作のような侵略者的な存在を思わせるため、可哀想な子どもというイメージとの整合が取れない。最終的には侵略テーマの雰囲気が強くなり、当初の社会問題はどこへ行ったのかという変な印象を残す。 そもそもバケモノの基本的性質が整理されていないようで気分が悪いが、あるいはこの映画では少年と少女の性格付けが違っていて、少年の方は原作通りの侵略者だが、少女の方は当初の社会問題に対応した映画独自のキャラクターだったということか。それにしても少女の元の家庭環境に問題があったようでもなく、主人公の思いに直接つながる存在には感じられなかった。結果的に何を受け取ればいいのかわからない半端な作りで、どちらかというと見て損した部類の映画だった(感想もまとめにくい)。  その他気づいた点として、 ○根本原因は何なのかという疑問を持ったまま解消されずに終わる印象だったが、それは「あまんじゃく」などという言葉を半端に出したためである。 ○少年少女がモンスター化するのは安直だ。オカリナも安直だ。 ○内臓がないというのも映画独自のことである。「内臓がないぞう」というオヤジギャグを言いたくなる。 ○成海璃子という人は「妖怪大戦争」(2005)に続き変な役をしているが、小学生にしては発育が良すぎるように見える。こういう少女が「お兄ちゃん好き」では、その方面の愛好者を狙ったように見えるがそういうことなのか。内臓がなくても女の子といえるのかと思ったが、あるいは内臓がない方が純粋な少女愛の対象かも知れない(突っ込み過ぎか)。
[DVD(邦画)] 3点(2020-09-12 10:23:18)
5.  あの日のオルガン 《ネタバレ》 
保育園が主導した戦時疎開の話である。保育園というのは時間限定で預かるもの、という前提ならこんなことはしないだろうが、東日本大震災でも親元に返す途中の悲劇があったように思うので、施設主体で安全に守れるならそれに越したことはない。死ぬなら一緒に死ねばいいとはならないはずだが、それでも保護者からの批判として、親子を引き離して構わないと思うのは独身者や男だけ、と決めつけられたのは心外だった。結局誰かが死ぬまで人々は動かないということらしいが、子どもの生命は親のためでなく、みんなの未来のためにあると思わなければならない。  物語としては時系列的に出来事を追いながら、淡い恋心とか友情とか戦争関連のエピソードで起伏をつけている。妙なドタバタとか召集令状の後出しなど苛立たしくなる演出もあり、また川原の場面は話を作り過ぎだったが、最後の場面はこの物語にふさわしい終幕に感じられた。題名のオルガンは大して重要でなかった感じだが、時間稼ぎでオルガンを弾いて歌いまくる場面は確かに印象的だった。 ほか15年も戦争したとわざわざ言わせるなどはお決まりの反戦アピールのようでもあるが、それほど言いたい放題でもなく、怒りを感じたというところで止めているので政治色はあまりない(怒りだけなら誰でも感じる)。また自分としては賄い担当の人が、みんなが笑顔でいるのが文化的生活だ、と言っていたのは共感した。誰かを攻撃して貶めるのが目的の文化などには全く価値を感じない。 なお劇中の疎開先はよくある偏狭で陰湿な田舎という設定だったようで、南埼玉郡平野村の印象は悪くなる映画だったというしかない。  登場人物に関しては、現地の主任保母が何かと激昂して怒鳴るのが非常に不快だが、それでいて理解のある上司には甘えがあり、支えてほしいという心情を見せたりするのがかえって反感を増す。また歌好きの新米保母は、おまえはガキか(意訳)と言われたりしていたが、これはこれで得がたい人材だったらしく、そのことを含めていろんな人々がいて保育現場が成り立っていることの表現だったかも知れない。個人的にはラムちゃん言葉の人が、実直そうで温和そうで感じのいい人だと思った。 キャストでは、中堅保母役の三浦透子さんが色気皆無のおばさん風で(何歳の想定なのか)個性派女優ぶりを見せていたが、さすがに本人はこういう体型ではないと思われる。ほかどうでもいいことだが、「けんちゃん」の父母は顔の大きさが違い過ぎだ(母親役の陽月華という人は宝塚の出身)。  [2020/4/18追記] DVDが出たので家の者に見せたが、やはり疎開先の住民が否定的に扱われているため素直に見られないようだった。うちの地元は戦争中に学童疎開の受入側になり、その当時はいろいろトラブルもあったかも知れないが(カッペ呼ばわりで侮蔑されるなど)、それでも現在まだ地域間交流が続いているからには悪いことばかりだったわけはない。常に誰かを悪者にして自らを正当化する態度では共感も連帯も生まれない。 しかし今になって点数を落とすのも大人気ないのでそのままにしておく。
[映画館(邦画)] 6点(2019-12-07 11:22:26)
6.  青の帰り道 《ネタバレ》 
「新聞記者」(2019)の監督だそうだが、ところどころで世相を映すのが煩わしい。政権交代で何かが変わると期待したが実際うまくはいかず、その後に震災もあったが政権が変わると原発再稼働の動きが生じて怒りを感じ、もう最悪なところまで来たと思ったら実はそうでもなく、2018年の保守政権下ではかえって現実的で前向きな気分になっている、とでも思えばいいか。そういう変な読み取りを強いられるくらいなら不要である。 それとは別の話として、2016年8月に女優の高畑淳子の息子が前橋市のビジネスホテルで問題を起こして逮捕されたのはこの映画の撮影時だったそうで、これで制作が中断してしまったが、翌年に代役を立てて撮り直したとのことである。  内容としては高校卒業から10年間の群像劇のようなものになっている。7人それぞれの人物像と物語が作り込まれており、原案段階での「生きる道はひとつじゃなかった(おかもとまり)」は表現されている。 ただし常識人から見た場合の細かい突っ込みどころは結構多い。特にこの映画では“友情”や“故郷”にも重点を置いていたようだが、人生の多様さを表現するための性質がまるで違う人物を、全て同じ高校の仲良しグループにしたことで非常に不自然な状態になっている。見る側の年代のせいで直接共感できずに難点の方に目が行ってしまうところはあるわけだが、しかし関係者が執念で完成させるにふさわしい、中身の詰まった映画には見える。エンディングテーマも少し染みた。 ちなみにネタバレ的に余計なことを書くと、ラストで不明瞭だったことについて、主人公は遺された歌に励まされて改めて音楽の道を目指し、半グレ男はライブハウスを用意する、という方向性だったと思っていいか。それで実際どうなるかはこれからの話ということらしい。  出演者に関しては、特に主人公の友人役の清水くるみという人が非常に感じのいい女優だと思いながら見ていた。またその母親役の工藤夕貴は、最近はこういう感じになっているのかと少し意外だった(時々かわいい)。この母親が夜の前橋中央通り商店街で語ったことは、それ以上に解説するまでもない単純明快な真実に思われる。 また「風切羽~かざきりば~」(2013)を見たことのある立場としては、戸塚純貴と秋月三佳さんが夫婦役になっていたのは嬉しい。戸塚純貴は代役とのことだが、むしろ初めから戸塚純貴でよかったのではないか。また秋月三佳さんが息子に小言を言っていた最後の場面は少し泣かされた。この夫婦の存在は尊い。
[インターネット(邦画)] 7点(2019-11-03 15:28:03)
7.  紅い襷 ~富岡製糸場物語~ 《ネタバレ》 
2014年に世界遺産に登録された富岡製糸場を紹介する映画で、主人公の和田英という人物が後に書いた「富岡物語」をもとにして映画向けの物語を作っている。また特に前半では現代の映像(フランスで取材など)も含めた解説部分を入れており、映画としての純度は低いと見られるかも知れないが、逆に世界遺産のPRビデオにしてはかなり豪華な作りである。最近話題の渋沢栄一も登場しており、年長の役者の重厚な演技も見られる。  映画の頃の富岡製糸場は指導者(伝習工女)の養成学校のようなものらしく、主人公とその同僚は信州松代(真田家十万石の城下、現在の長野市松代町)の士族の娘である。ちなみに「女工哀史」とは違う時代の話なので同列に語らない方が無難である。 製糸場の建設は早くも明治3年に決定されたそうで、維新後の近代化がいかに急速だったか思い知らされる。似た例でいえば「坂の上の雲」で、明治日本が坂を駆け上がる高揚感があって少し感動的だった。「お国のために」という言葉を登場人物がわりと無造作に使っていたが、これは家での働きしか求められて来なかった女性が、公のために直接貢献できるようになった喜びの表現と受け取れる。出身地で対抗などせず皆で一緒に日本を盛り立てようというエピソードもあり、そのような近代社会の先駆けとして、この製糸場を印象づけるのが映画の意図だったと解される。 ほかに、身分によらず平等に能力を発揮する社会の表現として農家出身の工女も出していたが、ただその人物に物語の陰の部分を背負わせたことで、かえって身分差を際立たせているように見えたのは残念だった。ほか病気で帰郷した人もいたが、原作によればその後は「耶蘇の伝道師」になったそうである。 なお絹の関係では、世界遺産の富岡だけでなく日本遺産として認定された地方もあり、またシルク産業自体も国内で存続しているので全く過去の話でもない。点数は地方応援の意味で少しいい方にしておく。  ちなみに主演の水島優という人は、それほど美女という感じでもないが個性的で愛嬌のある顔だちで、この映画では10歳近く年下の役をしているが、特に最初の箱入り娘の場面などはちゃんと可憐に可愛らしく見せている。音大の声楽科を出たとのことで、その技能が「お歌」を披露する場面で生かされたかというとそうでもなかったが、それよりエンディングテーマを歌っていたのがこの人だったようで、さすがきれいな歌声だった。
[DVD(邦画)] 6点(2019-11-03 15:28:00)
8.  I am 日本人 《ネタバレ》 
企画・製作・原案・脚本・出演・主題歌の森田健作氏が、2005年に千葉県知事選挙に落選してから2009年に当選するまでの間に制作された映画で、劇中商店街は千葉県市川市にあることになっている。ただし実際の撮影地は東京都葛飾区の京成押上線四ツ木駅周辺らしい。 森田健作演じる八百屋の見合い相手が酒井法子とはどういう年齢設定かと思うが、同じ葛飾区の寅さん・さくらからの連想でいえば本人が40代、妹が30前後といった感じか。妹役の小野真弓という人(個人的に好きだ)は当時20代前半だったろうが、この設定のせいで今回は極めて地味系女子になっている。また登場人物の言葉として、商店街が「日本の宝」とまで言っていたのも寅さんの世界が念頭にあってのことかも知れない。ちなみに市川ということでは「野菊の墓」の雰囲気もあるかとは思った。  テーマに関していえば、製作者の言いたいのは八百屋が言った「日本が大好きだ」「日本人に生まれて本当によかった」だと想像される。また題名の意味についてはアメリカ人が言ったように、国籍はともかく「日本が好き」なら日本人ということで(若干意味不明だが)日本が好き、というのが両者の共通点になっている。 うちアメリカ人が日本を好きになった理由は「和」の心を知ったことだったようで、この映画としても「和」を最大の長所と捉えていると思われる。ただし日本人の立場としては、「和」とか「大和魂」があるから日本が好きなどという理屈を言う必要はないはずで、要は生まれ育った土地(市や町や村・国・地球)や人々への素朴な愛着があれば十分である(愛に理由は必要ない)。この映画としてはそれをまず地元商店街への愛という形で語り、その拡大版としてワールドカップを引き合いに出したと思えばいいか。 ほかにも話題が盛りだくさんのようで、見る側として物申したくなるところがかなり多いが、それが文字通り“考えさせる映画”を意図しているとすれば、なかなか巧妙に作ってあるということかも知れない。  以上で終わりにするかと思ったが書かずにいられない気がしたので一つ書くと、政治に対する不満を国全体の否定に結びつける人物がいたが(劇中では国旗を嫌悪、近年では「日本死ね」)、しかし政府=日本ではないのであって、一人ひとりの日本人が日本という国の一部だという意識がない限り、日本を侮辱されて怒るという感覚もわからないことになる。そういうことをあえてわかろうとしない国民がいる日本を、自分としては丸ごと好きだとは全くいえない。
[DVD(邦画)] 5点(2019-09-21 23:50:20)
9.  アイズ(2015) 《ネタバレ》 
鈴木光司の短編集「アイズ」のうち「しるし」を映画化したものである。ちなみに映画化されていないエピソードのうち6つはTVドラマ「鈴木光司・リアルホラー」として、2015年3月にBSフジで放送されている。 原作を読んで比較すると、もとの構成要素を使いながらかなり膨らませて深みも出しており、最終的には原作のイメージとかなり違ったものになっている(貞子も出る)。また同じ短編集の「夜光虫」というエピソードを思わせるところもあった。  内容としては、まずは原題のもとになった「マーキング」が気味悪い。最初のF(とM)は本物だったかも知れないが、あとは何だったのか正直わからない(幻視もあったか)。意味についてさまざまな解釈が出る一方、実際に関係ありそうな出来事も起きていたようだが決定的なものはなく、単に登場人物の心理を反映して後付けしていただけのようでもある。 主人公は母親似とのことなので、劇中の情報サイトの記事に出ていた症状名がオチなのかと思ったが、これで幻覚とか被害妄想まで説明がつくのかわからない。基本的に全てが主人公の目から見た主観的な映像とすれば事実関係が不明瞭なのは仕方ないが、少なくとも同級生の男と精神科医の判断は外部の客観的な視点からのものである。また今回、主人公が記憶の底から引っ張り出した情景もいわば原資料として信用するとすれば(一部に混乱があったが)一応の全体像は見えなくもない。  それにしても困るのが父親で、娘に長々と語っていた内容は、順を追った説明のようでいてどうも納得できないことが多い。例えば株で大当たりした理由を同級生の男は一応推測していたが、父親の話では超自然的なお告げのせいにしていたのと、また胎児が誰の子だったかも結局わからないで終わってしまった。ほか主人公が思い出したところによれば、どうもかなり重大な隠し事をしていたらしいのが信頼感を損ねる。 最後に帰宅した父親を、主人公がどう迎えようとするのか自分としてはわからなかったが、題名にこじつけて考えれば、これまでのように都合のいい妄想を自分の目に映そうとするのか、あるいは真相を自分の目で直視するのかが問われているということか。わかりにくいところは多いが真面目に見なければと思わされる映画で、予算に関わらないところでかなりの力作に思われる。  個別事項としては、死んだ友人宅を訪ねた場面でのいたたまれなさが心に残った。またFAT男の性格の歪み具合がいかにもな感じで、もう一人の男が人格者なのがかえって際立っている。終盤で、弟が姉を呼び続けて姉が泣き続ける場面は何ともいえず圧巻風の印象だった。 なお主演はアイドルとのことだが(伊藤万理華/まりっか、当時は乃木坂46)、この映画で見る限り悪くない(鼻水も垂れていた)。また自分が見たところでは精神科医が無駄にかわいく見えたが、無駄なようでいて無駄でない意味が何か隠されていると考えるべきか。ちなみに演者が秋山依里(もと秋山奈々)という人だということまでは調べた。
[DVD(邦画)] 7点(2019-04-06 09:59:37)(良:1票)
10.  青夏 きみに恋した30日 《ネタバレ》 
少女マンガ原作映画だが、このポスターデザインでは写る方も見る方も恥ずかしくなる。 夏休みの話なので青空と雲・緑の山・渓流・海・ヒマワリといったそれらしい映像が満載で、主な撮影場所は山村とリアス式海岸が近接する三重県度会郡から志摩にかけてだったらしい。「ハートの入江」(度会郡南伊勢町)に近い山頂で主人公を捉えたカメラが引いて、後に隠れていた友人や周辺の山河が視野に入って来るところは映像的な見所だったかも知れない。  物語としては、序盤からいきなり感情問題で角を立てるので気分が引いてしまう。田舎の純朴な少年にしてもまるで本物のガキのようなのは呆れたが、よくある完全無欠のイケメンよりはリアリティがあるといえなくもない。少し感心したのは期間限定なのでキスしないという真面目な態度で、これはこの男の純朴さがいい方向に出たということか。2週間程度のラブラブ期間中もそれほどベタつかず、ラストで決着がついて初めてキスを一回だけというのがいわゆる爽やかな青春ラブストーリーの雰囲気を出している。 また最初に「運命」という言葉が出ていながら自分で未来を作る方に重点があり、特に主人公が自分だけでなく、相手の男まで引っ張って2人の未来を作ってしまう展開はなかなかいい。こうなるともう運命という言葉自体が意味を失う気もするが、そもそも若い連中にとっての運命など不確定な未来に対する不安の表れでしかないところを、この物語では未来への意思を固める補強材として使ったということかも知れない。 若手女優に引かれてまたしょうもない少女マンガを見てしまったかと思っていたら、けっこう正統派の青春物語だったようで悪くなかった。  キャストについては、葵わかなさんはさすがに少し大人っぽいが16歳の印象も出しており、制服姿は可愛らしいがすっきり整った顔の美しさが見えるところもある。またライバル役の古畑星夏さんは、最近見たのは制服女子高生ばかりだったが今回は本来の年齢に近い役で、くっきりめのメイクが大人っぽく、夏ということもあって露出の多い服装だった(胸とか脚とか)のが刺激的で新鮮に見えた。ちなみに古畑星夏さんのお母さんがこの映画を見て、あんたいつも可哀想ね、と語っていたというネット上の記事には笑った。
[インターネット(邦画)] 6点(2019-02-02 09:29:44)
11.  青鬼 《ネタバレ》 
ゲームはやったことがない。小説版も読んでいない。ちなみにAKBの人も知らない。 時間が短いこともあってそれほど損した気はしないが得した気もしない。CGの造形物が単なる変な生き物のようで安っぽく、コミカルな顔や動きはゲーム風なのかも知れないが、映画ならもっと圧倒的に不気味なものが迫るところを見せてもらいたかった。また緊迫しているはずの場面で人物の動きが鈍いとか長々と話し込んだりするのも気が抜ける。 ストーリー的にもよくわからなかったが、実際にああいうわけのわからないことが起きて悲惨な結果になったものの、主人公が事態打開の条件をクリアしたことで、河川敷の場面まで時間が戻ったということではないか。つまり基本的にハッピーエンドだが、死んでよかったと思った男も死んでいなかったことになるのは困る。次回もあるようだがもう見ない(見る動機がない)。 なお主人公の同級生役で出ている古畑星夏さんは当時17歳くらいのはずで、まだ顔に高校生っぽい可愛らしさがある。映画出演は「1/11 じゅういちぶんのいち」(2014)に続く2作目で、女優としてのキャリアはあまりなかった時期かと思うが(本来はモデルだと思うが)、この映画の主演との対比では演技派に見える。この人と須賀健太の組み合わせなら少しまともに見えただろうが、アイドルホラーとしてはそうもいかないということか。
[インターネット(邦画)] 3点(2018-12-25 22:36:22)
12.  At the terrace テラスにて 《ネタバレ》 
舞台劇の映画化で、話の内容もキャストも舞台と同じとのことである。ほかにムササビが出るが、これは仕込みではなく単にその場にいただけのことらしい(飛ばなかった)。 紹介文には「富裕層の生態」とあるが、生まれながらの富裕層がいたとすればK大生くらいのもので、専務夫人などこの家に入る前はどこにいたのかわかったものではなく、ほかはたまたま仕事がらみで来たその辺の人間が表面だけ取り繕っている状況に見える。専務夫人を除き、深入りしない限りは普通に付き合える人間ばかりである。 当然ながら笑いを期待して見たが身をよじるほど可笑しいものでもなく、何となくニヤニヤしながら時々失笑(少し爆笑)するくらいのものだったが、話自体はすでに作り込まれた感じで退屈することはない。とりあえず石橋けいさんの谷間と平岩紙さんの腕(とか脚とか全体像)は見ておく必要がある。 その他の登場人物では病弱な男が物悲しい印象を残していた。この男だけ身内もおらず職業もわからず正体不明の人物に終わったが、ラストの破局を見届けたようで見ていたわけでもなく、一人だけ煩わしい世界から自由になったようでもある。それでもやはり寂しかったと取るべきか。
[インターネット(邦画)] 6点(2018-10-13 16:54:43)
13.  A.I. love you アイラヴユー 《ネタバレ》 
吉本興業とフジテレビが共同制作した映画で、フジテレビ所属の演出家が監督を担当し、吉本芸人も役者として出演している。全編スマホで撮影したとのことで、それが観客にとってどういう利点があるかはわからないが、映像的に人工知能の視野をスマホのディスプレイ形状(横向き)で表現する意味はあると思われる。 人工知能の恋といえば近年では2013年製作のアメリカ映画の例があるようだが、それより低予算なりにコンパクトでわかりやすいファンタジーができており、物語としてもそれほど無理なく目標達成する形でまとめてある。劇中の若手シェフは本来テイクオフまでの加速装置でしかないはずなので、主人公がパリに行くのが正しいわけでもなく、そこを引き留める役目までを果たした人工知能はさすがの出来である。ただラストは少し不満で、口調が似ているまではいいとして一緒に食べようなどという申し出は不要だった。  この映画の見所といえば、個人的には何といっても主人公の人物像である。最初から表情や行動がユーモラスで、主演女優のファンとしては森川さんかわいい!!!とか言いたくなる気持ちに可笑しみが作用して終始ニヤついた顔で見ていたが、そのニヤついた状態をベースにして、場面によってはさらに泣けるとか嬉しくなるとか複合的な感情になっていくのが心地いい。会話の中でかなりの間が空いたりするがそれ自体を楽しむ作りになっており、特に終盤では視点を固定したまま一人芝居のようなことを延々と1カットで(12分56秒とのこと)続けていたが、その間も見る側としては息を詰めるようにして主人公の表情に見入っている状態だった。主演女優はもともと普通の少女も壊れた少女もカワイイ系の性悪女子も変人少女も真面目少女も姫君でも京娘でも26歳居酒屋勤務でも何でもありの役者だが、この映画でのこういう役はこの人ならではという気がする。 また珍しく男キャラへの共感度が高い映画になっており、別に斎藤工になり切っていたわけでもないが、人工知能の視野を通じて観客も主人公と対面している気分になって嬉しくなる。人工知能ほど頭が切れるなら、こういう女子を全力でサポートしてから見返りもなく消えるという、そういう一生もいいかも知れないという気になった。正直この人工知能がうらやましい。最期のいわゆる走馬灯も切ない。
[DVD(邦画)] 7点(2017-12-31 19:26:04)
14.  愛MY~タカラモノと話せるようになった女の子の話 《ネタバレ》 
吉本興業とテレビ東京が共同制作した映画で、NMB48所属だった門脇佳奈子・上西恵の2人がダブル主演しているほか、声の出演で吉本芸人が多数参加している。監督はテレビ東京のディレクターが担当しており、ちなみに主な撮影期間は4日間だったようである。 内容としては著しくスケールの小さい映画であって、学園もののような体裁でありながら女子寮の場面が中心で教室とか教員とかは映らない。テーマに関しても、いかにも微視的かつ女子っぽい人間関係の取り方が問題にされていて、成人の目からは微笑ましくも見える。主人公が大事にしているモノがしゃべり出す、というファンタジー要素は、単に本人の内心の葛藤を外部化しただけではないかと思ったが、とりあえず隠していたものを全部表に出すことから物語を動かす趣旨だったかも知れない。 当方としてはおおむね緩い気分で見ていたわけだが、しかし終盤の和解の場面はさすがに少し心を動かされるところがあった。また全体構成としても、最初が街頭インタビュー(少し怖い)で始まり、最後にまた同様のインタビューで締める趣向は悪くない。エンドロール後に出た全体のオチもかなりいい感じで、制作上の各種制約はあったにしても、けっこう愛すべき小品ができているように思わされた。 ちなみにキャストについて、他の映画では美少女のようでいながら悲惨な目に遭わされたり、美少女のようでいながら微妙にあか抜けなく見えたりしていた吉田まどかという人が、今回は普通にまともな美少女役だったのはよかった(少し性悪)。
[DVD(邦画)] 5点(2017-10-17 19:28:19)
15.  明烏 あけがらす 《ネタバレ》 
落語の「明烏」を一応予習してから見たが、その割に序盤の展開が「芝浜」のようだと思っていたら落ちがまるきりそのままだった。これのどこが「明烏」かと思うが、中盤で真面目ホストが借金取りを篭絡しようとするあたりは「明烏」の一部を真似ていたようである。題名の方は要はホスト=カラスということだったらしい。 笑える話かどうかに関していえば、これまで自分が見たものでは「女子ーズ」(2014)と同程度である。つまり笑うところがなくもない、というくらいのものだが、ただし自分としては田中邦衛にはどうしようもなく笑ってしまった。いろいろあっても最後は全部が丸く収まるのが心地いい作りで、まあ見てよかったという気にはさせられる。 ほかキャストに関しては、主役を含めて男はどうでもいいとして、吉岡里帆という女優は注目する気がなくても否応なしに思い切り印象に残る。知らない人かと思ったら「幕が上がる」(2015)に2年生役で出ていたようで、見直してみると見事に存在感がなく、こんな人がよくも大勢の中に紛れていたものだと逆に感心した。「明烏」とは直接関係ないが、演劇を目指す人にエールを送る「幕が上がる」とのつながりで、自分としても陰ながらこの女優を応援したくなった。
[DVD(邦画)] 6点(2016-12-30 16:38:33)(良:1票)
16.  アナザヘヴン 《ネタバレ》 
原作は読んでいない。TV版もあったようだが映画とは別物だそうである。 話の中身を簡単にいうと、人の心には善悪が並存していて、そのうち悪の部分だけを煮詰めた敵に善の部分が勝ったというようなことらしい。題名の説明らしきものも出ていたが、何にせよ普通の成人の目からすればごく普通の話で特に新たな発見はない。 また全般的に理屈はわかるが感情が伴わない場面が目立ち、特に女医を追い出した後の主人公の感傷などは唐突で、もっと事前の仕込みをしておかなければ共感も何もない。また終盤の「誘ってくれてありがとう」というのはかなり切ない台詞だったはずだが、言われて初めて当該場面に遡ってそういう意味だったのかと考えるようなもので、何かと後付けで納得を迫られる感じだった。そのように物語の構成要素が不足する一方、犯罪マニアの存在などこの映画に必要だったのか不明であり、映画化の際に整理できないまま半端になったような印象もある。 そのほか腹立たしいのは男どもが粗暴なことで、こういう頭の悪い連中は早く死ねばいいだろうと思いながら最後まで死ななかったのは後味が悪かった。善悪が分化する以前のケモノのようなのが人の良心を語るというのは片腹痛い。  そういうことで特に褒められない映画だが、しかし自分にとっては女優の存在が欠点を補っている面があり、特に主人公に拒絶された後の松雪さんの表情などは見ていて切ない。 また個人的には市川実和子という女優が結構好きで、この人の演じる天真爛漫な馴れ馴れしさとか精一杯の健気さなどを見ていると、映画自体の説明不足も何も関係なく全部わかったからもう文句いいませんと言いたくなる。「勝手に運命とか思い込んじゃった」というような台詞も愛しく思われて、かえって主人公の男が馬鹿なのに怒りを感じる。そのことからも、やはり男は全員死んでしまえばすっきり終わっただろうという気がした。それでは続編ができないので困るのだろうが。
[DVD(邦画)] 4点(2016-10-18 19:41:26)
17.  愛を語れば変態ですか 《ネタバレ》 
コメディということになっているようだが特に笑うところはない。舞台劇のような映画は他にも見たことがあるのでそれ自体はいいとして、この映画に関してはことごとく噛み合わせを外したような展開が非常に苛立たしく、観客に対して答えを迫るような態度も煩わしい。執拗な相対化によって既成秩序をなし崩しに崩壊させていたのは常識に内在する価値を再認識させる意図なのか、あるいは崩壊自体を喜ぶ愉快犯のようなものか。 世界の不幸を放っておいて自分らだけが幸せになっていいのか、というのは、真面目に取れば一つの問いかけかも知れないが、一般論として自分の幸せを犠牲にしてまで不特定多数の他人を幸せにしようなどと考える人間はいない。幸せになれる人間をまず確実に幸せにした上で、その他の部分に対しては「愛は地球を救う」程度にしておくのが現実的であって、既存の枠組みを破壊してしまっては世界が崩壊して終わりである。 最後は完全に羽目を外したパニックホラーになっており、それまで市中に潜伏していたバケモノが正体を露わにして周囲の人間を襲い、被害が郊外から大都市へと拡大していく見通しを示していた。しかし被害者がまた被害者を生むゾンビパターンではなく発生源は一人のため、橋の向こうで鎮圧されて終わりになるのは目に見えている。こういうドタバタのようなものをどこまで真面目に見ればいいのかわからないが、とりあえず堅実に生きようとしている人間には馴染めない世界のようだった。 ちなみにこれを見た動機は題名のインパクト及び黒川芽以である。自分としては黒川芽以が出ていれば何でも見るわけではないが、黒川芽衣が主演だったからこそ見る気になった面もあり、今回は見てあまり得した感じではなかったが、引き続き黒川芽衣には期待していきたい。
[DVD(邦画)] 3点(2016-10-13 19:52:57)
18.  あさひるばん 《ネタバレ》 
「釣りバカ日誌」の原作者が監督したとのことで、ハマちゃん役の役者が渓流釣りに行く場面があったりする。また監督が宮崎県出身のため同県内が舞台になっており、県当局の全面的支援があったとのことだがそれほど露骨なPRもなく(細かく見るといろいろ出ていたようだが)、なかなか感じのいいところに見えた。娘の結婚相手が獣医だったのも畜産県らしくていい。 内容としては普通にほのぼの人情コメディになっている。いきなり脱獄はやりすぎだとかヒロインの娘の態度が不可解だとかヒロインの病状がどうなのか結局わからないというような問題もあったが個人的にはまあ許容範囲で、基本的に安心して見られる娯楽映画である。  ただしドラマとしては非常に割り切れない話になっており、これはやはり少し上の年代向けかも知れない。 “名を捨てて実を取る”というが、この映画の場合はどちらが名でどちらが実かわからない。表向きは3人組がパパ扱いでも実の父親はほかにおり、またこの父親が指輪の送り主という事実は動かせないが、現実にみんなと喜びを分かち合うことができるのは3人組の方である。また勝ち負けの問題でいえば、部活も恋も社会的地位でもはるか昔に負けが確定していて永遠に挽回できないが、しかし考えてみれば3人組はマドンナの娘やその結婚相手にまで名前が知れ渡っていたりして、関係者の間での存在感は絶大らしい。気持ちの問題としては最終的な勝者ともいえるが、ただ常に3人組が一からげの扱いなのが情けなくもある。 これは見ていて切なくなるが、しがない一般民としてはどうせこの3人組に感情移入するしかないわけで、とにかく何らかの意味で“実を取る”ため「もう一回戦」に挑んでいくしかないということか。それを死ぬまで続けるとなると厳しいものもあるが、まあこの監督が70過ぎて監督デビューというのも参考にしながら、ここはひとつ貴重なご意見として承っておきたい。  ちなみに登場人物の年齢設定にはかなり無理がある。関係者が揃って48歳とはとても思えず(劇中でも言い訳していたが)、またマドンナの娘も30近い年齢になるはずだがどう見ても20代前半である。まあこのあたりは笑って済ませるところだろうが、30年前のマドンナ役だけは劇中年齢とほぼ同年なので見ていて安心する。
[DVD(邦画)] 7点(2016-05-09 21:05:07)
19.  アウターマン 《ネタバレ》 
この監督のバカ特撮路線の延長上のように見えるが、今回は主人公が男のため「地球防衛少女」「…ガールズ」「…未亡人」のような華がないのは不満である(ヒロイン役と少年役はいる)。 題名は架空のTVシリーズ名だが、実質的にはいわゆるウルトラシリーズを扱った映画であり、主なターゲットは40~50代男子ということになるか。ヲタク度が高く小ネタが満載でいちいちコメントする気にもならないが、「モタモタすんな!」は正にその通りであって爆笑した。また故郷を失った宇宙人に対し、地球に住んではどうかと呼びかけた場面は正直感動的だった(「侵略者を撃て」のほかに「他人の星」を連想)。  ところで「日本バカ映画の巨匠」という割に、今回は変に真面目でどこがバカ映画かわからない。 とりあえず劇中の出来事を観察すると、まず子どもの頃に正義の味方に憧れた人々も、今は当然ながら世間の不正義には失望している。特に原発事故がらみ?のことで政府は不信感を持たれていたようだが、少なくとも防衛当局に対しては、事に当たってその責務を果たすことが強く求められていたようである。 劇中でも現実世界でも古典的な“正義”の観念は滅んでしまって久しいが、だからといって“正義の味方”的な行動様式が失われていいわけはない。人間誰しも守りたい人がいるはずで、その延長上にみんなを助けたいという意識も生じうるわけだが、この映画では特に、自分を信頼してくれる者に報いたいという思いが出発点になっていたようである。 一方で、劇中では「自分たちが住んでいる星への愛」はあって当然、という趣旨の発言もあったが、これを国家レベルで考えれば今でも一定の反発を食うだろう。しかし故郷への思いは震災復興の原動力にもなっていたはずで、一概に悪と決めつけられるものではない。みんなを助けたいという思いを互いに持ち合わなければと、少なくとも劇中の宇宙人は訴えていたように感じられた。 だいたい以上のような認識がストーリーの背景にあったように見えたが、特に新奇なところがあるわけでもなく、むしろ現代にふさわしいヒーローのスタンダードを示したものとも思われた。  なお最後に勝った宇宙人を無責任に称賛していた群衆は、その時々の雰囲気で態度を反転させる有権者一般の姿にも見える。これが皮肉だとすれば、政治家でも政府機関でもなくわれわれが受け止めなければならないものと考える。
[DVD(邦画)] 5点(2016-04-19 00:33:43)
20.  暗殺教室~卒業編~ 《ネタバレ》 
公開初日の夜に見たが、それほど心待ちにしていたわけでもなく、どうせいつか見るなら早いうちに見ておくという程度のことである。 今回には今回なりの全体構成があるのだろうが、それよりも本来は映画一本に収めるべき内容を前後編に分けて、起・承を前編、転・結を後編にしたような印象が強いため、少なくとも前回のを見ていないと楽しめないと思われる(先日TV放映したらしいが)。今回は殺せんせーと生徒(特に主人公)をめぐるドラマが中心になるので、見て単純に面白いのは前回の方だったということらしい。二宮和也と桐谷美玲の顔出し箇所は一応の見所かも知れない。 ただ今回はドラマの本筋に集中したため、前回は一応名前の出ていた生徒がどこにいるかわからなくなり、人的な広がりがなくなった印象がある。メインの人物以外では理系女子(演・上原実矩)が少し目立つ程度で、後日談に至るともう主人公以外は完全に捨象されてしまう。途中で将来の志望を述べる場面も一応あったのでそれぞれの未来があるということだろうが、特に“律”さんなどはその後どうなったのか気になるところである(最後に出た場面では見る影もない有様だった)。 今回だけでいえば以上のような感じだが、あえて前後編全体として見れば殺せんせーのキャラに一定の愛着がわくので悪い話ではない。また今回は死神の人物像も悪くなかった。そういうことで、前回少し低すぎる点だったのを補正する意味を含めて、今回は若干いい点を付けておく。 ※今回だけでこの点数にはならない。
[映画館(邦画)] 6点(2016-03-26 10:14:22)
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