1. SCOOP!
《ネタバレ》 ロバート・キャパに憧れてカメラマンになったけど、中年パパラッチで終わった(死んだ)男のお話。クドカンとの関係が詳しく語られないので物語が安っぽくなってしまいました。 憧れから始まり辿り着けずに終わる。ありがちな人生だし、人生ってそんなものだとも思う。なので、映画としては特に何も言っていないのですよね。「写真」が持つジャーナリズムに於ける役割と芸能スクープは、写真を撮る作業レベルでは同じでも思想に大きな差があります。幼女連続殺人犯の「今」を撮ることがジャーナリズムの本質とも思えず、主人公がその作業で自分を取り戻すような描写はやはりTV局が作ってる映画って印象でした。 レビューから外れますが、キャパのような戦場報道を極めた写真家と芸能人のプライベートを追い回すパパラッチに私は優劣を付けたくありません。ジャンルに貴賤は無いと思うのです。花火で注意を惹いて撮った写真などは物凄く立派なプロの仕事だと思います。それで二階堂ふみさんも惚れてくれましたものねw なので戦場写真と芸能スクープを並べて比較することに無理がある。 さらにもうちょっと云うと、ジャンルに貴賤は無くとも、ジャンル内にはあたり前ですが貴賤があります。どんなジャンルでも、やるからには貴を目指したいものです。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2017-12-09 22:10:11) |
2. スワロウテイル
《ネタバレ》 製作年度は1996年。現実にはバブルが弾けて「失われた20年」と云われる経済低迷期の初期あたりです。バブル期には似たような出稼ぎ移民がいたように思う。バブルが超円高のまま継続していたらどんな世界になっていたのか。今だから覚える感想かもしれないけど、バブル景気へのレクイエムでした。日本はかつて夢の国だったのです。 ゴミゴミした世界観でも、この監督が撮ると不思議とファンタジーが匂います。ティーン伊藤歩のオッパイ、綺麗でした。エッチと云うより透明感を覚えました。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2017-06-10 01:14:21) |
3. スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ
《ネタバレ》 そうか、「マカロニ」じゃなくて「スキヤキ」なんですね。観るまで分かっていなかったです。それにしても、変な映画を作ったものです。褒め言葉です。 出演者本人が日本語を当てている吹替え版を鑑賞。声の芝居がプラスアルファの演出要素になっていて面白かったです。上手い人も、そうでない人もいるんですけどね。個人的には木村佳乃さんに見どころが多かったです。北島御大もナイスキャスティングでした。 この種の亜流ウエスタンを見ると、ジュリアーノ・ジェンマではなくて「キイハンター」を思い出します。 [CS・衛星(吹替)] 5点(2014-03-11 01:34:59) |
4. ストロベリーナイト
《ネタバレ》 読み易いことが好感で原作は全部読んでいました。ドラマ向けの話だと思っていたら、案の定ドラマになりました。私の映像化の興味は姫川玲子の役作りで、竹内結子はハマリ役だと思いました。 敬愛する美人上司を心配して追いかけたら、その人のカーセックスを見せられる。原作では寸でのところで未遂に終わった記憶があったけど、こちらは菊田クンが落胆するに十分な描写でした。姫川が刑事をやっている動機、彼女がヤクザに魅かれた理由、警察内部の人間関係と職務意識。その辺りが上手く噛み合えば奥行のある話なんだけど、本作は消化不良、と云うより菊田クンの不憫に塗りつぶされた感じです。 カタチとしては「姫川班最後の事件」ですが、内容は姫川班のお話ではない。本作唯一の青空の下で菊田クンはスッキリしていたけど、観ている方はスッキリしないです。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2014-01-17 01:41:38) |
5. SPACE ADVENTURE コブラ
《ネタバレ》 公開時に劇場で観た記憶があるんだけど、再見するとかなりつまらなかった。コブラに凄みが無い。彼の目の前でヒロインが一人、二人と殺される。彼の力不足で。三人目も殺されたも同然で、ヒーロー失格ですわ。出崎氏の演出は好きなんだけど、シャープすぎて劇場作品としては軽く見える。松崎しげるはそれなりだけど、風吹ジュンは酷いなぁ。だからという訳ではないが、レディー役の榊原良子さんの声が際立って魅力的でした。それと、クライマックスのBGMの旋律が同時期の某劇場アニメの旋律とほとんど同じで、その作曲家さんの姿勢に疑問を覚えたことを思い出しました。あれを聞かされた出崎さん、「○○○と同じですやん」と言えなかったんですかね。 [映画館(邦画)] 2点(2013-08-06 03:07:22) |
6. スマグラー おまえの未来を運べ
《ネタバレ》 ピンポイントのシチュエーションと役者たちのタカが外れた芝居を楽しむ類いの作品なのかもしれませんが、この手には「飽きた」というのが正直な感想でした。この監督の引き出しの数はあまり多くないようです。観終わった後にほとんど何も残りません。残っていたのは高島兄ちゃんの演技(これは凄かった)と拷問の痛さと満嶋ひかりのキレイな顔だけです。あれ、それだけ残れば十分なのかな。 どぎつい映像がストーリーやテーマと関連づけられないと、ゲテモノになってしまいます。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2012-12-12 22:23:44) |
7. ステキな金縛り ONCE IN A BLUE MOON
《ネタバレ》 昨年末に劇場へ行きましたが、公開から2ヶ月が経っているのにお客さんがたくさんいて驚きました。豪華な(と言っても良いと思う)出演陣の個性的な演技を楽しませてもらいました。この監督の作品は、実は苦手なタイプです。前作「ザ・マジックアワー」のような映画の内幕ウケを狙った作風にアレルギーを覚えるから。でも、本作は少しキャプラのタイトルが出た程度で済んだことが私には幸いでした。特筆したいのは深津絵里さん。不安定でイケてない主人公を、安定感を持って演じている。そして、とってもキュートです。幽霊を証人と認める法廷シーンの強引さなどは、ファンタジーと割り切れれば微笑ましい。時折り挟まれる舞台演劇的な芝居や台詞が良い具合にアクセントになっていて、客席からもそんなシーンで笑いが起こる。その笑いに押されるように気分がノリました。映画に集中するために、劇場へは閑散とした時間帯を狙って行きますが、お客さんが多い劇場も良いものです。難を言うなら、エンディングが冗長すぎること。まるごとカットした方がキレが良かったくらいです。父娘のツーショットは全く余計でしたね。 [映画館(邦画)] 6点(2012-01-02 04:45:59)(良:2票) |
8. スカイハイ[劇場版](2003)
なんというか、全体的に幼稚さが漂う安い創りの映画でした。深い感情を表現するようなところが無く、子供向けの戦隊ものを観ているような雰囲気です。無造作な喜怒哀楽が類型されて並んでいる印象で、さらに言うと怒と哀だけで9割を占めてました。まぁ、この監督にはシーンを並べる以上のものは期待しませんが、物語を演出しようという意思は持ってるんですかね? ちょっと言い過ぎか…。ドラマは観ていなかったけど「お逝きなさい」という台詞は知っている。なかなか印象的ないい決め言葉なんだけど、敬語を使ってキッツイことを言う私の勤め先の代表の口調に被って怖気が走る。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2011-02-22 23:31:56) |
9. SPACE BATTLESHIP ヤマト
「宇宙戦艦ヤマト」が実写になる日が来るとは。残念ながら感動はなかったけど、感慨でいっぱいです。初めて深く入れ込んだ作品だった最初のシリーズからこの実写版まで、実に35年。自分の人生の中に長く居座り続けているタイトルとして、看取らせてもらいました。突っ込みどころはありましたが、突っ込む気が起こりません。スクリーンに対していることに幸福感がありました。観て良かったです。 [映画館(邦画)] 7点(2010-12-04 01:05:04)(良:2票) |
10. 醜聞(1950)
《ネタバレ》 う~ん、微妙。雑誌ジャーナリズムの横暴から法廷ものを経て、最後は改心もの。テーマが入れ違いに現れて、全体として見応えを殺していました。法廷でダメ人間が改心するって、シドニー・ルメット&P・ニューマンの「評決」などがすぐに思い浮かぶけど、こちらは途中からそのテーマに切り替わった感が強くて深さを感じません。途中で何度もあった改心する機会を引っ張った理由は、志村喬の最終答弁に告発と告白と懺悔を集約して一気に解決させたかったから。そこは強引さが否めず呆気なくて拍子抜けでした。そもそも、原告側の弁護人が被告に買収されていたことが、争点を決定づける証拠になるものだろうか? 「情婦」が本作の7年後の製作だから、このジャンルはまだまだ未開拓の部分が多かったのだろう、と勝手に納得しておこう。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2010-11-15 23:47:15) |
11. 素晴らしき日曜日
《ネタバレ》 実にまったく気分が晴れることのない映画で、最後まで観るのがかなり苦痛でした。貧乏という傷口にこれでもかと塩を塗り続けます。主人公たちがそこから健気に立ち直るような体裁ですが、私は疲れ果てました。実際、週1日の休暇がこんなことだと月曜からの1週間は地獄のように辛そうです。すでに何気なく享受している現代の週休2日が愛おしくなりました。戦後の日本人は本作から希望をもらったのでしょうか? そうだとしたら、やはり今の労働者より格段にパワフルだったと思います。高度成長前夜の世相を垣間見た想いです。 [CS・衛星(吹替)] 2点(2010-10-11 00:13:20)(良:1票) |
12. 昴-スバル-
黒木メイサのファンが彼女目当てに観る分には良い具合かもしれません。自分はバレエを見る目が無い人ですが、頑張って練習したんだなあと思えるレベルにはなっています。ただ、役柄が「天才」だったりするので、そこまでのものには見えません。原作との印象の違いになりますが、主人公の幼稚なわがままとか傲慢さがその「天才」ゆえに許されるというか、周囲をねじ伏せてしまう歪んだお話が原作の味わいです。そのちょっと異質なアンチヒーローが、本作ではある程度は常識的で丸い人物に見えました。どんな世界でも一流と言われる人は人格的にも優れた(ように見える)人が多いけれど、そこに反旗を掲げているところがテーマと言えなくもないので、どうせなら思い切った嫌われバレリーナにしてくれた方がずっと見応えがあったと思います。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2010-07-05 01:44:24) |
13. 姿三四郎(1943)
紛失したフィルムの間をト書きで繋いでいる。普通じゃ観れたものじゃないけど、黒澤明の監督デビュー作という意義を持つ作品。確かに、すでに黒澤映画らしい空気があります。その黒澤監督の製作姿勢を語るとき、イメージ通りの天気になるまで粘るってのがあるが、本作のラストシーンなどはその典型だろう。山の稜線の向こうを雲が駆け抜けて行く。風雲急を告げる。まさに決闘シーンの為の空模様でした。姿三四郎って「バガボンド」の佐々木小次郎のように、その道で天才的な優男ってイメージを持っていたんだけど、藤田進はドカベンでした。このお方、東宝の怪獣映画や戦争映画に親しんだ自分には軍人以外に見えなくて、終始軍隊に号令しそうな錯覚を覚えておりました。本作は柔道が柔術を駆逐して行く話だけど、今は格闘技として柔術の方が勢いがありますな。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2010-06-01 00:38:55) |
14. 砂の上の植物群
《ネタバレ》 製作当時の視線で、真面目に「官能」を追求したような作品でした。主人公が道を踏み外してズタボロになるって感じでもない。一歩ずつ確認しながら、いろんなことにチャレンジするという印象です。性風俗が花開く前、ノーパン喫茶が初出店するよりさらに20年以上前の時代なので、現代の視点に照会するとかわいいものだが、当時としては異色の作品だったのだろう。痴漢、覗き、軽いSM、制服コスプレ。妻と父親の密通を疑っていたあたりに、近親相姦的な要素も入っている。それらに背徳を覚えながら、その性癖の源泉として自分の中に流れる父親の血を意識する主人公。明確な台詞にはなっていないが、自身の意思というより、もっと大きな摂理が背徳を希求させているような語り口です。ラスト近くで一緒に食事をする女性の口がアップになる。それは粘膜質でものを咥え込むことの象徴。その描写の生っぽさが今作の全てです。ちょっと珍しい感じの映画で面白かった。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-05-15 13:02:21) |
15. 砂の器
《ネタバレ》 う~ん、私はイマイチでした。事件の痕跡から犯人を追って行くサスペンスとして、現代的な視点では粗が目立ちますが、細かい突っ込みどころは許容できても、根幹となる部分に頷けない。それは殺人の動機です。父親に会えと言われただけで、人を殺すとはどうしても思えない。「今は忙しいけど、落ち着いたらこっそり会いに行きます」で事は済むはず。また、ハンセン病が偏見を持たれていることくらいは緒形拳も解っているはずで、社会的に注目を浴びる立場の加藤剛に、引きずってでも親父に会わせるなどと言う訳がないのだ。この伝染病に対する偏見によって地位を失う恐れから、出生を知る男を殺したという展開は訴求点が明確になるけれど、当事者たちの心理を冷静に考察すればステレオタイプなご都合主義に落としたと言わざるを得ない。松本清張の小説の多くは、事件の背後にある社会問題をテーマにしていますが、その問題をあぶり出すことに偏重するあまり、事件の動機を安直に社会問題に帰結させる作品も見受けます。先日観た「ゼロの焦点(1961)」も同様でしたが、今作はそれを顕著に感じました。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2010-02-09 03:01:16)(良:2票) |
16. スクラップ・ヘブン
メインキャストの3人は絶望感を抱えているが、ストーリーの展開に従いそれぞれの絶望にもグラデーションが見えてくる。栗山千明の絶望は身体的欠損への憤怒を外界へ投影した、世の中を破壊したい絶望。オダジョーの絶望は、自分の父親さえ救えなかったことに起因する無力感。自分を消したい絶望。そして加瀬亮の絶望は…となった時に言葉に窮した。彼の場合は絶望と云うより、自分の周りにある不条理に対抗できない不満の蓄積で、いいところ閉塞感だろう。誰もが持つものかも知れない。彼はオダジョーと出会い、感化され、「想像力」という言葉に光明を見た思いで、それまでに出来そうに無かったことに一歩を踏み出す。これは、行為の良し悪しは別にしても大きな進歩だと思う。「想像力」とは自分の殻を破ることだ。でも、栗山千明やオダジョーほど大きな絶望を抱いている訳では無いので、それ以上の世界へは行けない。それは想像力の欠如では無く、加瀬亮が小市民だということだ。内的動機の限界とも言える。表現がグロいのでゲテモノに見られる映画かも知れないけれど、一般人が想像力を発揮して、自分を取り巻く世界を変えるという意味で啓蒙的な作品であり、同時にその限界をちゃんと見せている良心的な作品とも言える。裏テーマは「タクシードライバー」や「太陽を盗んだ男」などの映画を観た側を主人公にしたらどうなるかってこと、かな…。大半の人は加瀬亮と同じ種類の小市民である。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2009-12-07 01:02:26) |
17. ストレンヂア -無皇刃譚-
BONESというプロダクションの作品にはジャパン・アニメの正統な進化を思わせる作風を感じていて好感を持っています。この作品も、演出や作画のレベルなどは手描きアニメのトップレベルなのだろうと思います。でも一本の映画として観たときには強さを感じなかったです。主人公が特定できないプロットが原因でしょう。かといって、群像劇という印象でもない。キャラの動きには感心しますが、終着点にむかってワクワク感が盛り上げって行くようなストーリーではないのが残念でした。もっと冒険しても良いのでは…。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2009-11-07 14:48:25) |
18. スカイ・クロラ The Sky Crawlers
空のドックファイトはなかなかの迫力でした。でも、戦闘をやってることや、やってる人たちに対する説明が薄くて、なにが言いたいのか良く分からなかった。どこかで、現代の無気力な若者を揶揄しているというような論評を読んだ記憶がある。制作者の狙いが本当にそうであっても、予備知識なしに観たら、そんなテーマを感じられる人は少ないと思う。この監督の癖である自己完結気味な長い台詞まわしが無くてホッとしたけれど、やっぱりどこか観る人を置いてけぼりにする特徴は変わっていない。ちなみに、草薙水素という名前は同じ監督の某ポリスものの主人公と一文字違いなんだけど、なにか関係があるんでしょうか? [CS・衛星(邦画)] 4点(2009-09-18 02:04:47) |
19. スウィングガールズ
《ネタバレ》 この映画に関してはもう面倒で他のレビュアーさんの意見を読んでいないので、内容が被っていたらすみません。題材をシンクロからJAZZに変えてるだけで、「ウォーターボーイズ」とほとんど同じです。しかも「ウォーター…」で指摘させてもらった欠陥が、ほとんどそのまま健在です。主人公たちの動機の薄さと、ご都合丸出しの上達スピード。うざったいという意味では竹中直人まで同じような役どころ。映画の楽しみ方は十人十色で良いはずなので、これを楽しめる人を否定はしないけど、こんなものがヒットしたが為に、こんないい加減な邦画が増えでもしたら、それは邦画の衰退だ。邦画ファンとして危機感を覚える。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2009-09-18 00:55:43)(良:1票) |
20. Sweet Rain 死神の精度
《ネタバレ》 生を受けたものは、いつか必ず死ぬ。小学生の頃に自分もいずれ死ぬことに気付いて、もの凄く怯えた。今もまだ自分が死ぬことに、正確な意味での実感はない。命とは「特別じゃないもの。でも、大切なもの」と富司純子が言う。生活の中に喜怒哀楽を積み重ねた末に、あの頼りなかった小西真奈美が富司純子のような骨太でいい顔をしたバアちゃんになるのなら、長生きするのも悪くないし、それこそが命の意味だろう。死を見つめるのではなく、とことん生を見つめて生きた末にある死は、命のなかに包含された概念になる。そう考えられれば、死ぬことへの恐怖が少し減る。これまでの、そしてこれからの自分の道程に、愛しさがプラスされた気がする人生賛歌ファンタジー。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2009-08-15 16:16:11) |