541. 12人の優しい日本人
《ネタバレ》 まさかオリジナルより面白いとは思いませんでした。とにかく、12人の陪審員がいちいち「いるいるこんな奴」という人たちばかりで、ずれまくる論点やかみ合わない会話を聞いているだけで笑いが止まりません(何人か、人格を強調しすぎで浮いている人もいますが)。また、オリジナルの弱点であった証拠関係の細かさについても改善されています。衝突寸前の2人の立ち位置とか、かなり無理がある論証もありますが、被害者の酔った度合いとか、移動のルートや経過時間の意味とか、目撃者の位置関係など、実際にも重要である要素にもきちんと言及されています。ただし、製作者が自分の想い(祈り)を正面から具現化したオリジナルに比べ、こちらの方は技巧に走りすぎているというイメージは拭えず、その点ではオリジナルの方が上ですね。あと、1人ずつ出て行きながらそれに合わせて字幕を出していくラストの長回しは良かったです。 [DVD(邦画)] 7点(2016-07-21 01:55:32) |
542. フィッシュストーリー
《ネタバレ》 あーもうこういうの大好き。時空を超えたつながり、時系列操作、描写を途中で止めてのミスリード、何十年も前のバンドが偶然的に録音した1曲が誰も知らないうちに地球を救うという馬鹿馬鹿しさ(しかもそれ自体がフィッシュストーリーであるという二重構造)。録音のところをフルで撮っているなど、ポイントの部分にこだわっているところに、制作者の対象に対する愛情を感じます。●バンドの4人はちゃんとキャラクターができているし、レコード会社の人やプロデューサーもいかにも本当にいそうな感じだし、多部未華子ちゃんもいい存在感だし、正義の味方は正義の味方としかいいようがないしで、各登場人物の造形にも、きちんと配慮されています。●難点は、映像が全般的に綺麗すぎで、その年代だと意識して見ないとその年代に見えないこと。それと、ビートルズの解散からパンクの勃興まではそこそこ間があるので(というか、むしろその間の部分こそが重要なので)、一緒くたに語るのは変ですよ。●原作も読みましたが、映画に比べると本当に骨子のみという感じ。いろいろなパロディやお遊びの部分もあるとはいえ、よくぞここまでイマジネーションを膨らませたものだと思う。ハイジャックをシージャックに変更したのも正解。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2016-07-13 02:05:21)(良:1票) |
543. クライマーズ・ハイ (2005)<TVM>
《ネタバレ》 導入部は説明台詞とステレオタイプな描写が目立ち、これは映画版と変わらない程度のつまんない内容かと思っていたのです。しかし、前半終了間際の焼肉屋での対決は十分スリリングでしたし、後半は前半とは別作品のようなシャープで引き締まった出来。よく見たら、前半と後半で演出が別の人やん!クライマックスの記事差し替え中止のプロセス、望月の従姉妹の登場によるテーマの深まりなど、映画版よりも優れた内容を提示しています。というわけで、返す返すも前半の凡庸な描写が残念。 [DVD(邦画)] 5点(2016-07-12 02:43:43) |
544. ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS
特撮、美術、撮影などは、結構頑張っていたと思います。途中から延々と東京に集中した戦いを引っ張る構成も良い。ラストもなかなか簡潔に引き締めています。ただ・・・主演3人の演技があまりにも駄目すぎて・・・結果、人間側のパートの意味が無に等しく、映像と音響頼みになってしまっています。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2016-07-11 03:09:01)(良:1票) |
545. 変身(2005)
やる気のない演出、中学生の部活以下のレベルの脚本、意図的かと思ってしまうくらい酷い音楽と、三位一体に揃ってしまった凄い作品。こんなものにつき合わさせられてしまった優ちゃんが何よりも不憫。 [CS・衛星(邦画)] 1点(2016-07-09 02:12:31) |
546. ゴジラVSビオランテ
《ネタバレ》 これは意外に悪くなかった。三田村邦彦、高嶋政伸、峰岸徹といったあたりの「程良く中庸な感じ」(何じゃそれ)が、この種の作品に上手くマッチしているのです。高橋幸治先生はもっと暴走エキセントリックな科学者ぶりを見たかった気もするが、まあいいや。ゴジラ進軍シーンや、芦ノ湖の決闘シーンの迫力もなかなか。スーちゃんはもっと見せ場がほしかったなあ、あれじゃただ居ただけだよ。朝ドラブレイク前の鈴木京香のさりげない登場も貴重。難点は、ラストの蛇足でしかない射殺→決闘シーン。それと、導入部分で落命する沢口靖子が、どうみても寝ているようにしか見えないこと。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2016-07-07 02:40:25) |
547. 東京上空いらっしゃいませ
何がしたい作品なのか、最後まで分からなかった。牧瀬里穂に演技力がないのは一目で明らかなのだから、変にひねったり真面目っぽく作ったりせずに、アイドル映画らしく、単純に素直に作ればいいのに・・・。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2016-07-06 23:01:54) |
548. 永遠の人
年数からみても相当な大河構成のはずなのに、時間的にも空間的にも拡がりを全然感じさせない。画面はただ筋を追っているだけで、しかもやたらちゃっちゃか進んでしまうのです。高峰秀子や仲代達矢にこれほど演技をさせていない作品も、珍しいのではないでしょうか(2人の息も、あまり合っているようには思えない)。輪をかけて問題なのが、まったく内容にそぐわないフラメンコ音楽。むしろ耳障りなくらい。 [DVD(邦画)] 4点(2016-07-04 01:06:51) |
549. ながらえば<TVM>
《ネタバレ》 夫が老妻に会うために(それもついちょっと前までいた)名古屋を目指す、という一点に絞った構成が、作品を引き締めている。実は一番ぐっときたシーンは、途中の駅で降ろされてしまった笠智衆が、することもなくベンチに座ってぼーっとしているところ(ここはもうちょっと引っ張ってほしかった)。息子とその妻が、設定も発言も、えらくステレオタイプなのが難点。 [DVD(邦画)] 5点(2016-06-28 02:11:35) |
550. 配達されない三通の手紙
《ネタバレ》 クイーンの中でも、国名シリーズでもレーン・シリーズでもなく、それでいてファンの間では評価の高い「災厄の町」に挑んだ心意気は買いたいが、評価できるのは心意気の点だけだった。●これだけのキャスティングを揃えていながら、ほとんど効果を発揮していないというか、もやもやしっぱなしというか。一番のミスは、松坂慶子が登場時点から怪しさ全開なこと。なので、かえってミスリードとして機能していない。それから、事件発生までに1時間半くらい経っているんだけど、一体どういう時間配分なのか?●だから、原作の中盤のクライマックスである裁判シーンはもちろん全カットだし、したがって真相との落差によるインパクトも表れてこない。●そんなわけで、最後の方なんかは延々とウジウジグダグダと進んでしまい、何とも締まらないフィニッシュとなってしまいました。 [DVD(邦画)] 3点(2016-06-22 02:09:14) |
551. 愛について、東京
《ネタバレ》 奇妙な三角関係の設定はなかなか優れているのですが、そこから生じる面白みを展開することができず、むしろ最後の方はグダグダになっています。ヤクザの藤岡さんがいきなり主人公と筆談で会話するシュールなシーンとか、もっといじれば効果を発揮しそうな部分はあるのですが。加えて、主人公である留学生の言動や発想がどこまでもゲスなのも、作品の魅力を削いでいます。ただ、黒沢あすかは、まだ駆け出しの頃なのにいい存在感を放っていますね。 [DVD(邦画)] 4点(2016-06-16 01:34:36) |
552. 男子高校生の日常
全員が単にワーワー騒いでいるだけにしか見えませんでした。制作者はいったい何がしたかったのでしょうか。あと、ここに出てくる役者陣は、発声とか滑舌のトレーニングはしなかったのか? [CS・衛星(邦画)] 1点(2016-06-01 20:30:03) |
553. 異邦人の河
中身の大半は、ジョニー大倉扮する主人公がああだこうだうじうじうだうだと悩んだり行ったり戻ったりしているだけというお話。しかし、それでも作品世界を完結して成り立たせているジョニーのキャラの濃さというかアクの強さは、かなり貴重かもしれん。 [DVD(邦画)] 5点(2016-05-12 01:42:10) |
554. 彼女と彼(1963)
やたらと前衛的というか何というか、通常の描写の枠組を外そうという意図が見て取れるのですが・・・怖いぞ怖いぞと煽り立てられても、逆に作り物っぽさが増してしまって、かえって怖くないのです。 [DVD(邦画)] 3点(2016-05-11 23:27:45) |
555. 舞妓Haaaan!!!
《ネタバレ》 主人公があまりにも鬱陶しくて、最初の15分で冷めてしまいました。騒がしいのとハイテンションは違います。中盤以降は少し見られるようになったかと思いましたが、ラスト15分がすべてぐしゃぐしゃ、最悪。作中で唯一光っていたのは、ミュージカルシーン。あの発想で最後まで押し通したらよかったのに、何でそうしなかったんだろう。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2016-04-21 00:43:57) |
556. 不良少年(1961)
あえて創作色を排してドキュメンタリーっぽく撮ったという意図は分からないではないが、肝心の一つ一つのシーンの流し方があまりにも雑で、自然な作り方をしているというよりも、投げっぱなしにしか見えないのだな・・・。なので、かえって作り物感が増幅しているように感じてしまう。 [DVD(邦画)] 3点(2016-04-15 02:39:11) |
557. 生きてみたいもう一度 新宿バス放火事件
《ネタバレ》 実在の事件を対象とするにふさわしく、導入部から中盤までは、カメラは地道に事実を追い続ける。決して役者に感情をあふれさせることなく、治療のディテールや実際の記事なども織り交ぜながら、救済を求める主人公の姿を浮かび上がらせている。だからこそにじみ出る緊迫感。●しかし、中盤から話は大幅に愛人との関係にシフトしてしまい、結局、放火事件も受傷も添え物扱いになってしまっている。あの前半から、何でこの後半になるかなあ・・・。芦原温泉のシークエンスなんて、残らずいらないんじゃない?それよりも、主人公の被告人に向けた心理の変化であるとか、法廷や裁判の進行であるとかを、なぜもっと描いてくれないのか?●ただし、全体の中で、ここだけは語り継がれないといけない衝撃的なシーンがあって、1つは、自宅と拘置所前で放送局のインタビューに答えるところ。この主人公のコメントは実に奥が深いし、現在にも通じる普遍性を有している(もっとも、かりに今、事件関係者がこのようなコメントを出しても、マスコミで報道されることはないだろう。こういった内容に基づいて番組を構成する力が、マスコミには存在しないからだ)。もう1つは、中盤の手紙の朗読にあわせて実名入り(一部仮名)で再現される、事件発生直前のバス内の様子。「こういう人がこのようにここにいた」という当たり前の事実こそが、何よりも重い。 [DVD(邦画)] 6点(2016-04-12 02:06:18) |
558. 晩春
《ネタバレ》 このヒロインは、父親に対する情愛が強いというのを通り越して、ほとんど依存症なんじゃないだろうか。そのような主人公に魅力を感じ難い点はさておくとしても、登場人物が同じようなやりとりを繰り返してばかりなので、それによってどうなるかということも予定調和にしか感じられない。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2016-04-11 02:02:22) |
559. 桐島、部活やめるってよ
《ネタバレ》 前半の、時系列や視点を変えての同一場面の反復は、似た手法の先例(しかも舞台も同じ学校内)がすでにあるとはいえ、やはりこういうのには弱いのです。そして、そろそろ単調になってきたかな?というあたりで一気に話は時系列通りに進み、この辺の緩急の感覚もなかなか良い感じなのですが、最後に映画部に軸足が集中してしまったのが残念。女子四人組のドロドロはもっと見たかったと思うし、吹奏楽部の部長も、せっかく大後寿々花を投入したのなら、片想いだけの使い方ではなくて、もう少し何かひねってほしかった。とはいえ、ゾンビ逆襲のカタルシスはなかなかだし(顧問のいう「身近な青春」を体現するのがほかならぬゾンビだったという皮肉も込み)、それも所詮は妄想だったというのもほろ苦感満載だし、あと、若い俳優をたくさん起用していながら、演技に目立った穴がないという演出指導力も評価したい。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2016-04-06 02:07:35) |
560. 竹取物語(1987)
もう、とにかく脚本がひどくて・・・「そんなこと、この役者だったら目の動き1つで表現できるだろう」というようなことまで、わざわざ口にさせないと気がすまない。しかも、言い回しや単語に近代以降のものが頻発していて、時代設定の意味がまったくない。台詞を聞いているだけで苦痛でした。当然、俳優陣も、魂のこもった演技などできようはずがありません。見るべきところは衣装くらいでしょうか。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2016-03-29 01:22:36) |