581. 山椒大夫
《ネタバレ》 奥方の田中絹代、遊女の田中絹代、そして老婆の田中絹代。この3発の爆撃だけであまりにも強烈。これぞ役者、これぞ俳優。●映像面で印象に残ったのは、実は、最後の感動の再会からさらにその後、カメラが遠景を捉える中で、漁婦が黙々と作業を続けている風景。親子の再会という壮絶なドラマも、誰も気づかない、一番近くにいる人すらまったく気づかない中で、ごくひっそりと行われている。かつて存在した無名の町民・村民に対する製作者の祈りすら感じる。●姉弟を兄妹に変更してしまったのは、やはり大いに違和感がありました。荘園内での成長上の変化や、逃亡の決断のシーンに説得力がありません。 [映画館(邦画)] 8点(2015-12-30 00:18:04)(良:1票) |
582. おとうと(2009)
説明台詞のオンパレードの脚本にはびっくりしたが、それ以前に、肝心の鶴瓶の叔父さんが、「親戚その他周囲に迷惑をかける存在」としてのみしか切り取られていないのが最大の問題。つまり、どういう人生の背景があって、どういう生活をしていて、という部分がまったく作り込まれていない。したがって、そこからどの登場人物がどうしようと、ドラマは起こりようがないし、ペラペラの中身にしかならないし、役者も演技のしようがないのです。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2015-12-24 00:41:54) |
583. 彼岸花
《ネタバレ》 登場人物の誰もが同じような台詞の同じような芝居、どのシーンも同じような撮り方。これで面白いわけがない。唯一おっと思ったのは、終盤、肝心の娘やその結婚相手をまったく見せない場面構成、そして電報を出した時点でさらっと切り上げるラスト。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2015-12-12 23:55:05) |
584. 炎のごとく(1981)
どこをどう切っても、一体何がしたかったのか分からない、迷作にして難解作(悪い意味で)。とりあえず、この脚本は、5日くらい徹夜した後に、さらに2晩徹夜して半分以上眠った状態で書かれたのではないだろうか。それくらい、場面ぐしゃぐしゃ、前後のつながりなし、展開適当、台詞いい加減。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2015-12-07 21:05:27) |
585. ダイナマイトどんどん
《ネタバレ》 ヤクザに野球で決着をつけさせるという無茶な設定を、大真面目に真剣に映像化している時点で、もう低い点はつけられません。脇役の多い宮下順子さんも、この作品ではいい感じに目立っていますね。終盤がやや間延びしたのが残念。全体として、120分くらいに収まる内容だと思う。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-12-05 01:32:00) |
586. 仁義なき戦い 頂上作戦
《ネタバレ》 ドンパチワーワーが再三繰り広げられる割に、作品全体に妙に陰鬱なやりきれない空気が漂っているという雰囲気は、さらに加速している。普通の作品だったら絶対にどこかで制裁が下るであろう山守も打本も、さしたる展開上のお咎めなし。主役のはずの広能は後半ほとんど出番なし。そして最後は吹きすさぶ寒風の中の2人の虚しい会話。前作で各登場人物がひりひりするつばぜり合いを展開した後の、本作は壮大な崩壊の物語ですね。 [DVD(邦画)] 6点(2015-12-04 02:22:09) |
587. 鍵(1959)
《ネタバレ》 もうちょっと背徳感とか逸脱感があるべき設定だと思いますが、意外にあっさりした描写でした。剣持がいまわの際に郁子を「目だけで脱がせる」ような、心理的なやりとりも加えた官能性をもっと見たかったんですけどね。それと、京マチ子はえらく堂々と落ち着いていて、何をやっても最後には勝ちそうなので、剣持の行動が無茶に見えません。ここはもう少し弱々しそうな幸薄そうな人を起用してほしいところでした。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2015-11-30 00:22:50) |
588. 華の乱
もう、びっくりするほど主演の皆様方のキャスティングが合っていない。辛うじて適合しているのは池上季実子ぐらいか。内容的にも、与謝野晶子と有島武郎の不倫もどきの中途半端なロマンスが延々と流されているだけであって、彼女の人生のドラマチックさなどまったく表現されていない。つまり、俳優陣のビッグネームの面々を、歴史上のビッグネームに適当にあてはめて作っただけのこと。ただし、大杉栄や伊藤野枝など、明治日本の黒歴史というべき部分についても、きちんと登場人物としての位置を与えてスポットを当てた点については評価したいので、そこに+1点。 [DVD(邦画)] 5点(2015-10-30 21:20:40) |
589. 千利休 本覺坊遺文
映像や照明関係は、ロケ地の選定も含めてとても丁寧で、何か尋常ならざることが起こる不穏な雰囲気満載で期待させるのだが、役者の表現が意外なほどよくない。奥田瑛二は、各シーンの背景を表現し切れておらず一本調子な演技に陥っているし、錦之介さんも三船さんも芦田伸介も、珍しく消化不良気味。つまり、中身が背景負けしてしまっているということ。 [映画館(邦画)] 5点(2015-10-27 20:52:57) |
590. 就職戦線異状なし
バブリーな時代背景を反映しているのは決していけなくはない。しかし、肝心の作品としての中身自体が、小ネタをいろいろ積み重ねてはいるものの、登場人物の芯とか方向性というものが不明なので、物語として成立していない。何かを表現するためのフィルターとして世相(この場合は就職活動状況)があるのではなく、はじめから世相の映像化そのものが目的になってしまったということ。というわけで、俳優陣も力を発揮する余地があまり残っていない。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2015-10-13 03:17:34) |
591. ハンサム★スーツ
《ネタバレ》 昔のドラマは、「不細工であっても心の良さが花開いて最後にはいい目を見る」というのが、1つの定番であった。しかし、ある時期から、「そんなこと言ったって、実際には、見た目で全部決まっちゃうだろ。ありもしない話をするな」と見る側が変にスレてしまって、その王道パターンはいつしか廃れていった。この作品は、その失われた美徳を、おそらくは批判も嘲笑も覚悟の上で、見事なほどになぞっている。その制作姿勢そのものが、不細工の根性を最後には見せてくれる主人公の歩みそのものである。だから私はこの作品を支持する。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-10-13 02:35:03) |
592. 真田幸村の謀略
せっかくの十勇士という美味しいネタを使っていながら、全然生かされてないんですね。それぞれの勇士の個性なり特技なりという要素が掘り込まれていないので、いざ勢揃いという局面になっても、ちっともぞくぞくしない。しかもその後も、活躍らしい活躍をするわけでもなく。むしろ、描写という点においては、家康の方がはるかに主役っぽい扱いでした。役者陣の演技も何かみんなつまらなそうで、脚本や演出における熱の低さみたいなものを物語っています。 [DVD(邦画)] 5点(2015-10-12 01:02:09) |
593. 赤穂城断絶
《ネタバレ》 こういう王道話で、こういう豪華キャストなのですから、次から次へと登場する役者の皆様を眺めているだけで十分楽しめるわけなのです。ただ、深作監督はやっぱり好き放題に自由な人物造形をさせた方が本領を発揮するのであり、忠臣蔵のようなキャラクターもストーリーもかっちり固定している対象は、演出にもどかしさを感じますね。吉良邸の図面なんかの内偵パートでは、「潜入した浪士が吉良側の手に落ちて、さんざん拷問に遭わされるが、口を割ることなく絶命し、遺体は報復として衆目に晒され、それを目撃した赤穂浪士が憤激し、さらに復讐の意志を固める」みたいなことをやりたかったんじゃないでしょうか、本当は。それと、処分決定後の四十七士切腹のシークエンスを延々とつないでいるのは、忠臣蔵が単なる美談ではないという制作側の強い表現の意地を感じますね。 [DVD(邦画)] 6点(2015-10-07 01:49:35)(良:1票) |
594. 馬鹿が戦車(タンク)でやって来る
《ネタバレ》 何が怖いって、あの戦車の手作り感。それが何か1つの生き物のように動いて、田舎道を突き進み、旧家の中で暴れ倒すからこそ、それはただのネタではなくて、きちんとした感情表現・人格表現になっている。弟の死を知った後の主人公を映さず、証言と走行痕だけで組み立てているのも効果的。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-10-04 23:00:32) |
595. 波の数だけ抱きしめて
《ネタバレ》 意外なことに、「彼女が~」よりはよかった。冒頭とラストがもたらす切なさが、ベタとはいえ印象的なのです。回想がトンネルに始まりトンネルに終わるという様式美も、小技ながら効いている。ただ、それを支えるはずの登場人物の「日常」があまり感じられないのが残念(台詞と設定に多くが寄りかかっている)。あと、ラリー・リーの"Don't Talk"に+1点・・・したいところなのだが、その辺を出すのなら、全体的な選曲にはもっとこだわってほしかった。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-09-06 02:12:03) |
596. アントキノイノチ
《ネタバレ》 遺品整理業というあまり例のない世界に着目したのであれば、あくまでもその観点から徹底すればよかったのに、回想がどかどか入ったり同僚の女の子とどうのこうのが延々続いたりして、テーマは容赦なく見失われていっている。しかも最後がアレなのであれば、中心テーマ自体が完全な伏線扱いですね。あと、音楽があまりにも通俗的で、さらに作品を壊しています。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2015-09-03 01:46:31) |
597. 八月の狂詩曲
子役の演技が圧倒的に下手なのがすぐ目につくが、よく見ると、大人側も大した演技はしていない。つまり、脚本がそもそも凡庸でダメダメすぎるのです。全体的に、雰囲気がその辺のホームドラマレベルです。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2015-08-30 00:33:04) |
598. 肉弾(1968)
《ネタバレ》 ひたすらシュールな画面を次々に塗り重ねて作ろうとしたのがとてもよく分かる作品。前半の女郎屋~防空壕くらいのくだりまでは、白黒なのに絶妙に汚れ感が表現されている映像関係も含め、じめじめ感やぼろぼろ感がよく表現されていたと思う。しかし、砂漠のあたりからはそのシュールさが度を越してしまい、そもそもどういう世界観なのかという根本から迷走することになってしまった。ベースに不条理性を置くのであれば、あまりにじっくりしているのは逆効果で、90分台くらいに刈り込んでもっとペースを考える必要があったと思う。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2015-08-28 02:36:54)(良:1票) |
599. 大巨獣ガッパ
どうにも内容がないというか、パニックへの危機感もなければ怪獣そのものに対する愛情もないというか・・・テレビ番組だったら、30分以内でまとめられるような内容ではないのか。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2015-08-28 02:25:55) |
600. 運が良けりゃ
《ネタバレ》 いろんな話を複合しているので、やはり散らかった印象は拭えないのだが、そんな中でもインパクトを発しているのは、輿入れ話が飛んだときの倍賞千恵子のとてつもなく嬉しそうな絶妙な表情(誰にも気づかれてないのがよい)。それから、死人かっぽれを当たり前のようにそのままやってしまう突き抜け度。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2015-08-25 02:08:50) |