881. 波の数だけ抱きしめて
《ネタバレ》 意外なことに、「彼女が~」よりはよかった。冒頭とラストがもたらす切なさが、ベタとはいえ印象的なのです。回想がトンネルに始まりトンネルに終わるという様式美も、小技ながら効いている。ただ、それを支えるはずの登場人物の「日常」があまり感じられないのが残念(台詞と設定に多くが寄りかかっている)。あと、ラリー・リーの"Don't Talk"に+1点・・・したいところなのだが、その辺を出すのなら、全体的な選曲にはもっとこだわってほしかった。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-11-27 23:45:04) |
882. 彼女が水着にきがえたら
「楽しく遊ぶ」がテーマなんだから、徹底的に楽しく遊べばいいと思うのに、よく分からないトレジャーハンティング(しかも目的物が「宝」って、そのまんまじゃん)を絡めたり、中途半端にサスペンスっぽい演出を入れようとしたりして、目的不明の内容になってしまっている。田中美佐子の水着シーンに3点。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2010-11-26 04:20:08) |
883. 樺太1945年夏 氷雪の門
《ネタバレ》 第二次大戦中に、ソ連が条約を無視して一方的に侵攻してきたこと、日本の降伏後もさらに武力行使を続けたこと、そしてそれらの責任は現在までどこでも問われていないことという、日本の歴史上の重要事項を現在にまで伝える貴重な作品。しかも、あくまでも主人公たちの日常生活に立脚した上で、生々しさと現実性をもってその理不尽さを描写しきっているところに意味がある。とりわけ、二木てるみと藤田弓子の存在感は、作品に大きな説得力を与えている。まるで本当に郵便局内で事態の推移を見ているような迫力があるし、それによって、結末が単に衝撃的であるというにとどまらず、今日に生きる我々にも数多くの示唆と教訓を示している。 [映画館(邦画)] 8点(2010-11-04 00:17:04) |
884. 幸福(1981)
ホームドラマ的演出、説明台詞・直接台詞の連発、視点のブレといった根本的な問題が、作品素材の良さを大きく殺している。これにはがっかりした。これだけいいキャストを使っておいて何でこんなことに・・・という感じ。 [DVD(邦画)] 3点(2010-09-27 02:05:18) |
885. 家族ゲーム
《ネタバレ》 これは残念ながら、テレビ連ドラ版の圧勝。松田優作ではもともと何か有能に見えてしまい、長渕剛が発散していた「三流大学落ちこぼれ三留生がやりたい放題やっていたらなぜかそれが劣等生を改善してしまう」という設定の面白味が出せない。伊丹十三も妙に上品で、伊東四朗ならではの、何も考えてないガンコ親父の風情がない。由紀さおりには、白川由美が的確に表現していたうわべだけの上品さが醸出できていない。兄貴役の彼も、もともと優秀なお坊ちゃんに見えないので、後で立場が逆転したときの虚無感や切なさや逆の解放感が出てこない。テレビ版は直接的で単純で世俗的な描写ではあったが、それだけに、作品に原始的でストレートなパワーがあった。ここでは、演出がテクニックに走ってしまっているので、その分、家族間の生々しいドラマの部分を削いでしまっている。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2010-09-21 19:33:31) |
886. 荷車の歌
《ネタバレ》 地道で淡々とした描写で進むかと思いきや、実は今日の感覚で見ると、ホームドラマの常套手段をいろんな場面で外しているのである。意地悪姑と何となく和解したりとか、女工勤めに行って何か不幸が起こりそうな長女と次女も健康に戻って来るとか、盛大に出征した次男があっさり戻ってきたりとか、妾が出てきて騒動発生かと思いきやそのまんま同居とか。それだけにかえって作品の底に生々しいリアリティを感じてしまう。俳優陣では、ほかの作品では特に何とも感じなかった左幸子の華のある存在感が印象に残りました。あと、当時36歳であそこまでの老け役を成し遂げた三國連太郎も凄い。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2010-09-12 03:36:21) |
887. 氷点
もともとは連ドラ向きの素材だと思っていたので、はたして90分で成り立つのかというのが心配だったのですが、冒頭の慌ただしさを除けば、意外にポイントを押さえてきちんとまとまっていました。大楠道代の若々しさと可憐さにはびっくり。山本圭は、当時から画面引き締め力がありますね。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-09-01 02:03:55) |
888. 真空地帯
ほとんどのシーンが怒鳴り合ったりつかみ合ったりの繰り返しで、映画として単調なので、作品の主題が生きていない。木村功の存在感に多くを依拠してしまっている。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2010-08-30 00:12:04) |
889. もう頬づえはつかない
《ネタバレ》 結局これって、主人公のだらだらした生活と数名の行ったり来たりの会話を延々と最後まで見せられているだけのような・・・。意味があるのはラスト5分だけですね。それに至るプロセスをきちんと示してくれないと、どこにでもあるような光景を改めてそのまんま再現されても、興味を感じることはできません。 [DVD(邦画)] 5点(2010-08-19 00:38:10) |
890. サード
《ネタバレ》 脚本はいかにも狙いすぎという感じで鼻につくが、それを救っているのは、永島敏行と森下愛子の天性の存在感。特に、森下愛子は、20歳にしてこれだけあどけなさと色気が同居しているのは凄い。今頃になって見直してしまった。あと、秀逸なのは、枕元に少女の幻影が現れるシーンで、ここで一気に主人公の総括と転機を凝縮し、作品に一本の筋を通す役割を果たしている。 [DVD(邦画)] 6点(2010-08-18 00:09:13) |
891. 華麗なる一族
《ネタバレ》 冒頭、テーブルを囲む一族を1人ずつ撮っていくカットだけで、あまりの重厚さにしびれそうになる。これだけの豪華キャストの中心に立って動じない佐分利信の存在感も凄いが、それ以外も残らず巧者揃いなので、それぞれの演技を堪能するだけでも十分楽しめる(それにしても、酒井和歌子と大空真弓の若さにはびっくり)。ただし、物語の描写としては、融資をするしないの場面とか、そこから鉄平が逆襲を狙う部分とか、集中的に盛り上げられる部分はあったように感じる。210分はさすがに長く感じた。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-08-17 03:35:28) |
892. 金環蝕(1975)
宇野重吉の存在感がありすぎて、ほかの人たちがみんな食われてしまってますね。仲代達矢や三國連太郎でさえもあまり光っていなかったのが意外。キャストの面々はみんな巧い人たちではあるので、見ていて退屈ではなかったのですが、描写の対象が拡散していてテーマは最後まではっきりしませんでした。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2010-08-07 00:14:52) |
893. 大誘拐 RAINBOW KIDS
《ネタバレ》 原作は、日本ミステリー史上に残る大傑作なんです。それも、和物には珍しく、人が死なない、犯罪なのにエンターテインメント感満載、読後感は爽やかという、ほかにはほとんど例がないという意味でも傑作なのです。それだけに、映像を見ても多分満足できないだろうと先回りしてしまい、これまで見るのを避けていましたが、今回意を決して見ることにしました。さて、2時間という枠内の割には、必要なポイントはほとんど押さえており、原作を大切にしていることが窺えます(本当は3時間欲しいけど)。配役で突出しているのは、岸部一徳と天本英世。これは見事に原作そのまんま。ほかの人たちも頑張っていますが、関西弁に慣れていない人が多かったのは残念でした。あと、私のとし子刀自のイメージは、前から勝手にミヤコ蝶々を想像していたので、北林谷栄には少し違和感がありました。緒形拳は、もう少し、井狩警部の「怒り」「激しさ」の部分を前に出してほしかったと思います。それにしても、日本ミステリー屈指の名場面「カメラ越しの対面」を本当に映像化してくれたのは嬉しい。私も小説の中の一視聴者になれました。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-08-01 00:44:01)(良:1票) |
894. 地の涯に生きるもの
知床の漁師という目のつけどころはなかなか興味深く、またロケーションも頑張っていることが窺えるのだが、とにかくナレーションがしつこすぎて真剣に見る気になれない。演技ができる人を揃えて、背景にも迫力ある絵像を揃えているのだから、何でそれを信用しないのかね。もったいないことをするものです。あと、音楽も単調で工夫がありません。撮影部隊の頑張りに4点。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2010-07-27 01:36:27) |
895. 十八歳、海へ
《ネタバレ》 まさしく、主人公2人が思いつきだけの発言と行動で最後まで全部行ってしまうというだけの作品。しかし、そのコンセプトだけで最後まで押し通してしまった監督の執念は逆に凄い。しかし、永島敏行も森下愛子も、小林薫でさえ、この頃は揃って演技が上手くないのにはびっくり。辛うじて見られるのは島村佳江。 [DVD(邦画)] 5点(2010-07-05 00:53:31) |
896. 木村家の人びと
これだけの巧者キャストを揃えていながら、まったく活用されていない。そもそも、初手の段階で、鹿賀丈史や桃井かおりが、おかしみも何もない「ただの守銭奴」になってしまっているから、その時点で笑いとしては成立しないでしょ。途中からの展開も、完全につぎはぎのような感じです。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2010-04-19 00:27:48) |
897. 二百三高地
せっかくこれだけの時間を遣っていながら、攻撃シーンは同じような画面の繰り返し(エキストラのいい加減な使い方も目障りだった)、司令官側も仲代と丹波を除いてはこだわった人物造形がなされておらず、結局はこの2人+あおい輝彦に寄りかかった内容となってしまった。もっと個々の登場人物を大切にしないと、結局は全体像も出来上がってこないと思うんだけどな・・・。それと、日露戦争の発生原因や旅順の戦略的位置づけについても、もっとそれが分かる描写が必要でしょう。主題歌に5点。 [DVD(邦画)] 5点(2010-04-12 01:05:07) |
898. 誰も知らない(2004)
もっと陰惨で救いのない描写になるのかと思っていたのですが、意外に地に足の着いた堅実な描写に感心しました。この作品が優れているのは、特定の誰かをスケープゴートにしてしまって終わり、にしていないところです。ネグレクトの発生原理や防止策はそんな単純なものではないし、極端な描写はかえって現実の身の回りの事象を気づかせにくくしてしまう。本質は何よりもまず彼らの素朴な日常生活と向き合うことです。それを分かっているという点において、この作品は一歩抜き出ています。あと、音楽もいい感じですね。 [DVD(邦画)] 7点(2010-03-10 00:38:20) |
899. 阿弥陀堂だより
《ネタバレ》 前提となるべき主人公のパニック障害というものがどういうものであって、それがどのような影響を与えたのか、という点がほとんど描かれてない時点で失格。ストーリーはいきなりその辺をすっ飛ばして、信州の風景と周りの「いい人たち」先にありきでどんどん先に進んでしまう。つまり、設定によりかかっているだけの内容になってしまっているのである。これではいくら風景が美しくても意味がありません。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2010-03-08 01:29:24) |
900. デルス・ウザーラ
シベリアの大自然を延々とカメラに収めまくった執念については評価したいが、肝心の登場人物達が、そう動いた方が脚本の進行が都合良くなるというだけで動かされているにすぎず、ドラマ性が感じられない。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2010-03-06 02:08:20) |