901. やくざ坊主
《ネタバレ》 題名どおり、破天荒なやくざ坊主が大暴れ。 成田三樹夫目当てで観たが、成田三樹夫はやられ役で、勝新太郎演じるやくざ坊主の一人勝ちの内容ということで、個人的には不満。 しかし、予想以上に内容は面白く、最後まで飽きずに観ることができた。 女を寺に連れ込み、「成仏させてやる」と言って、手篭めにするくだりは笑えた。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-05-23 10:49:10) |
902. 人のセックスを笑うな
《ネタバレ》 美術大学を舞台にした男女の織り成す青春ドラマの佳作。 ゼロ年代映画ならではの味わいと雰囲気を感じた。 だが、中途半端な完成度。 これといって穴はなく、それなりに楽しめたが、かといって何か突き抜けるものがないというか、際立った感慨を得られずに終わってしまった。 女流監督臭さが出すぎの感ありで、それは永作博美にまさに投影されていて、どうも観ていて男の私には居心地が悪い。 でも確かに、若い男にとっては永作博美のようなお姉さんは、魅力に感じるだろう。 蒼井優もかわいいけど、なんか刺激が足りないんだろうなぁ。 そういう意味では、主人公の男の気持ちは分かる。 だけど、結婚していると分かった時点で、もう少しドライになれないもんかなぁ。 でも、それが若さってもんか。 この女流監督、映画を撮る巧さ、映画に対する愛みたいなものは感じるが、天才的なセンスは感じられない。 だけど、それが等身大の若者像を撮るのには、丁度適しているのかもしれない。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-05-17 23:03:51) |
903. 夏の妹
《ネタバレ》 なんていうか不条理劇なんだけど、それなり理解できてしまう分かりやすさも併せ持った作品。 大島渚監督作品らしさは随所に見られ、特に、終盤にここぞとばかりに近親同士でキスしまくる展開なんか、まさにそれ。 もぅ、とにかく栗田ひろみとりりィ母娘二人のしゃべり方がうざい! うざいのなんの! 栗田ひろみの70年代アイドル丸出しの恥ずかしいしゃべり、そしてりりィの気持ち悪い敬語。 これらの気色の悪さは、大島渚がおそらく無意識に作り出した“不快”だ。 本作を一言で現せば、「不条理で不快な作品」といったところか。 私はかつて、沖縄のコザという所に住んでいたことがあるが、本作がその沖縄のコザを舞台にしているのに、沖縄らしさコザらしさがほとんど映像から感じ取れないのが不満であった。 [ビデオ(邦画)] 6点(2010-05-10 23:03:33) |
904. UNloved
WOWOWの名物企画、「J・MOVIE・WARS」からのし上がった、筋金入りのラブストーリーの傑作。 森口瑤子、仲村トオル、松岡俊介の3人を主軸に取り交わされるセリフの応酬は、他に類をみない一種のスリルを感じた。 同じく「J・MOVIE・WARS」から生まれ出た傑作『月はどっちに出ている』に次ぐ傑出した日本映画と言えるだろう。 男女の価値観の相違による意思疎通の不可能性を表現しているという点については、かのミケランジェロ・アントニオーニの『太陽はひとりぼっち』に類似するテーマを扱っている。 しかし、『太陽はひとりぼっち』が、会話や行動のすれ違いといった「静寂」さでもって男女の意思疎通の不可能性を表現してみせたのに対して、本作は、ひたすら繰り広げられる「動的」な口論から男女の意思疎通の不可能性を表現したというところに違いがあり、本作はそういった点においても、オリジナリティを発揮している。 映像面においても、実に映画的な侘しさに満ちた暗いトーンの映像で全編を覆い尽くしており、森口瑤子の住むボロアパートの質素な佇まいを、味わい深く映像化することに成功している。 森口瑤子が演じた女性は、完全なる保守的思考の持ち主で、仕事においても恋愛においても、他人の言動に全く動じない。 自分というものをしっかり持った女性として捉えることもできるが、一方で、他人の意見を受け入れず、恋愛において一人相撲的な状態に陥り、相手の男が孤立感を感じてしまうという点において、実に気難しい女性とも言えるだろう。 ラストのまとめ方については、気分良く観終えることはできたが、果たしてあれで良かったんだろうか、と感じてしまった。 自分をしっかりと持った自立した女性が、恋愛についてどう向き合っていけば良いのか、それが結局分からずじまいだった感は否めない。 [ビデオ(邦画)] 8点(2010-05-09 22:34:56) |
905. 男の顔は履歴書
安藤昇主演作を初めて観た気がする。 それだけである程度満足。 内容はお決まりの任侠劇で、特別みるべきものはない。 それにしても、安藤昇の顔の傷は凄い! [ビデオ(邦画)] 6点(2010-05-08 14:46:54) |
906. 危険な英雄
《ネタバレ》 石原慎太郎の演技は巧いとはお世辞にも言えないが、本作の役柄に一番必要な「熱意」というものが十分発揮されていた。 そういう意味では、主演をそれなりに演じきっていたのではないだろうか。 『非情都市』にリンクした内容で、ちょうど主人公である新聞記者の若かりし頃を描いた様な内容である。 石原慎太郎は、非情なまでに新聞記者としての仕事に徹する男を演じていて、一種の狂気を本作は表現している。 報道の自由、新聞の客観性、真実の暴露といった新聞記者としての使命に没頭するあまり、“危険”な英雄になってしまうといった内容で、主題がはっきりしているし、結構楽しめた。 新聞記者として暴走するあまり、誘拐された子供の命を、間接的にとはいえ奪ってしまったことに対しても、全く悪びれない。 ここまで仕事人間だと、逆に観ていてスッキリもする。 とは言っても、こんな人間が身近にもし居たら、たいそう迷惑だろうけども。 時に人間は仕事に没頭するあまり、危険な道に入り込む可能性があることを示唆した作品で、仕事人間とはおよそ言えない私が観ても十分楽しめる作品だった。 [映画館(邦画)] 7点(2010-05-07 22:07:51) |
907. 牝猫たちの夜
《ネタバレ》 ゲイ少年の筆下ろしから、覗き、トルコ風呂、自殺・・・ 相変わらず、ごった煮の日活ロマンポルノ。 傑作、名作と評判の高い本作だが、リアリタイムで観ていない分、別に普通という印象。 一方で、1970年代初頭の新宿の風景を堪能できる点は楽しめたのと、まだ人もまばらな早朝の新宿西口ビル街でシャッターが一斉に上がるラストシーンは楽しめた。 日活ロマンポルノは私にとってさほど興味のあるジャンルではないが、田中登監督の作品だけは光るものを感じる。 特に場所の選び方、撮り方が秀逸。 現場撮影を大事にしているのも良い。 それにしても、新宿西口の風景は今も昔も変わらず侘しい。 タイルが汚い。 そしてロータリーが汚い。 この汚さ、猥雑さが、ATGや日活ロマンポルノの先鋭的な作品で重宝された所以であろう。 新宿の風景と言えば、線路跡。 あれは都電の線路か? 恥ずかしながら知らないが、映画で良く使われるだけあって、素晴らしく場末な新宿的風景だ。 これもまた良く映画に使われる理由が分かる気がする。 本作に出てくる三人娘は、どれも肥満気味で、中途半端におばさんで、特別美人でもない。 それがいいのか悪いのか。 私はといえば、苦手だ。 本作で知っていた出演者は、唯一、丹古母鬼馬二だけ。 しかも、その丹古母鬼馬二はノンクレジットという皮肉さ。 私がいまいち日活ロマンポルノに乗り切れない理由は、出演者たちを良く知らないからってのが大きい。 [DVD(邦画)] 5点(2010-05-07 22:00:01) |
908. マブイの旅
山田辰夫が最もかっこよく見えた作品! 劇中の山田辰夫は決して強くはないのだが、それでもかっこよい。 なんていうか、人生を諦めた男のやけくそ気味なかっこよさ。 だけど、しっかり主張している。 山田辰夫演じる男は、東京でリストラされ、沖縄に逃避行してきたアル中。 そして沖縄で酒を飲みながら女を買い、ダラダラと毎日を過ごしている。 そんな役柄が見事にはまっていた。 沖縄が舞台の作品だが、飾らず気取らず、普通の沖縄を見せてくれている。 沖縄本島が舞台で、特別に綺麗な景色とかが出てくるわけではないのだが、沖縄本島の普通の風景の中に映画があって、まるで沖縄に行ったような気分になれるのが良い。 本作は宮台真司氏のお気に入り作品ということで観たのだが、確かにお気に入りになるだけの魅力は感じた。 [DVD(邦画)] 7点(2010-05-07 21:59:00) |
909. 赤線玉の井 ぬけられます
赤線「玉の井」が舞台なのだが、「玉の井」ならではの雰囲気をもっと出してほしかった。 だけど、舞台もセットだし、予算もおそらく多くはないだろうし、あれが限度なのは仕方なしか。 しかし、玉の井の赤線街を流れる用水路はとても印象的で、実にいい情緒を生み出している。 まるで京都で見た用水路の裏バージョンという感じ。 当時自分がもし生きていたら、絶対に行って実地検分(?)してみたい赤線だ(これは「洲崎パラダイス」も同じだが)。 内容は、現在も語り継がれる名だたる日活ロマンポルノの名作たちと比べてしまうと、見劣りがする。 舞台が1つのセットしか存在しないから、屋外シーンを多く撮れないのは仕方ないかもしれないが、せっかく「玉の井」という題名を冠しているのだから、当然、屋外の風情ある描写を期待してしまうが、ほとんどは室内の濡れ場が中心で、「玉の井」を舞台にしている意味がほとんど無いのが残念である。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2010-05-07 21:57:59) |
910. 春婦伝
《ネタバレ》 鈴木清順監督にしてはストレートな作品だが、面白くない。 戦争映画というものが嫌いになるほど面白くない。 野川由美子の顔立ちが苦手というのも手伝って、余計にダメ。 そして暗い。 心中という形で幕をおろすが、これもまたありがちだった。 [ビデオ(邦画)] 2点(2010-05-07 00:40:41) |
911. 非情都市
《ネタバレ》 三橋達也が新聞記者で、特ダネの為なら何でもやる。 危険はかえりみない。 新聞社という組織からもはみ出し、単独行動で特ダネ捜し。 これじゃあ、最終的に葬られるわ・・・と思いながら観ていたら、既に題名である程度ネタバレしてるじゃん! 三橋達也は熱演していたが、どうにもゾクゾクするような面白さが足りない。 淡々と、一人の男が泥沼にはまっていくのを見させられている感じ。 そんな中、司葉子が素足にストッキングをたぐりながら履くサービスシーンが登場! やっぱり鈴木英夫監督、本作でもやってくれた! 下から上へ司葉子の脚を舐め回す用に映すという、鈴木英夫監督ならではのツボを心得たカメラワークも健在。 泥沼な内容の中、一服の清涼剤でした。 [映画館(邦画)] 6点(2010-05-05 20:10:53) |
912. 押繪と旅する男
《ネタバレ》 序盤に鷲尾いさ子の着物からチラリと見える足首をいやらしい目つきで見ていた少年が、最後に海辺で鷲尾いさ子が足をくじいたことにより、それに触る機会を得るといった展開は、まさに江戸川乱歩らしい淫靡なエロスを感じた。 全体を通して流れる雰囲気も江戸川乱歩の世界を巧く体現していたのではないだろうか。 それと、震災で大破した“浅草十二階”こと「浅草凌雲閣」の合成映像は、なかなかの出来! 現在の浅草に復元建築してほしいなぁ。 それにしても、老人になってから自分が何をしてきたのか、と落ち込む老人には全く感情移入できなかった。 [ビデオ(邦画)] 5点(2010-05-02 18:32:54) |
913. 彼奴(きゃつ)を逃すな
《ネタバレ》 ずっと観たかった鈴木英夫監督作品。 昨日、念願叶ってようやく渋谷の映画館、シネマヴェーラにて鑑賞した。 鈴木英夫監督は、基本的に社会派ドラマに向いていると思っているのだが、本作のようなサスペンスはどうだろうか。 『黒い画集 第二話 寒流』でも感じたが、鈴木英夫監督とサスペンスとの相性はそれほど良いとは感じなかった。 緊迫感はあったが、どうも刑事の鈍感な対応に苛立ちを感じた。 サスペンスとしての緊迫感を盛り上げるためとはいえ、刑事の対応の鈍さに無理を感じた。 終盤のシーンで、宮口精二が洋裁店に押しかけるシーンがあるが、あの時、木村功が看板の電気をチカチカさせているのに、外の刑事達はその異変に気付かないというのは、少し無理があったかな。 それと、暗い中とはいえ、あれだけ至近距離で犯人が銃を撃ちまくったら、普通助からないだろうに・・・ まあ、気になったところを羅列しても仕方ないが、良かった点としては、モノクロ映像の醸し出す不気味な味わいと、ロケによって実現した当時の街並みを見る面白さがあったことだ。 当時の商店の立ち並ぶ街並みや、まだジャリ道のだらけの住宅街、そして新宿のワシントン靴店やタカノなどを見渡す風景など、相変わらず鈴木英夫監督は風景描写が素晴らしい。 でもやっぱり、鈴木英夫監督には、サスペンスよりも社会派劇の方がより似合うと思う。 [映画館(邦画)] 6点(2010-05-02 11:40:32) |
914. 二百三高地
長いし、あおい輝彦に関連する不要とも思えるエピソードも見受けられるが、見応えは十分。 特に、仲代達矢、森繁久彌、三船敏郎、丹波哲郎という布陣を配したキャスティングは素晴らしい。 ラストシーンの仲代達矢の嗚咽も印象的だ。 上官と下士官との気合いのこもったやり取りもまた、見ていて気合いを感じた。 仲代達矢と丹波哲郎のガチンコ対決も迫力十分。 さだまさしは嫌いなので、テーマ曲は気持ち悪さが残ったが。 [DVD(邦画)] 7点(2010-04-28 23:59:25) |
915. 非・バランス
《ネタバレ》 主人公の少女を演じた派谷恵美がかわいい! 声はとってもキュートで、細い体がこれまた素晴らしい! 彼女を鑑賞するだけでも楽しめてしまう美しく繊細な邦画だ。 小学校時代のいじめが原因で心を閉ざした少女と、借金まみれのオカマが織り成す人情ドラマ。 この二人の奇妙な友情は、とっても透明感があった。 性という障壁がない分、年齢も関係なく、実に純粋な友情の形が描かれていたように思う。 決して派手な魅力はないが、観る者の心を洗うような清らかな佳作である。 [ビデオ(邦画)] 7点(2010-04-26 00:59:43) |
916. 禍福 後篇
《ネタバレ》 恨みを返すということがテーマになっているが、とても非建設的なテーマで陰鬱な気分になる。 ラストこそ、皆がそれぞれそれなりの幸福というか妥協点を見出すという形で幕を閉じるが、かなりの無理を感じる。 成瀬巳喜男作品は56本観たが、その中では一番肌に合わなかったかもしれない。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2010-04-25 22:55:36) |
917. 下落合焼とりムービー
うーん、こりゃ所ジョージと肌が合わないと、ただでさえ白ける内容に拍車をかけてつまらない。 というか、やや苦痛。 しかも一番裏切られたのは、作品名に「下落合」と銘打っているから、てっきり新宿区の下落合が舞台に出てくると思ったのだが、まったく出てこない! ここが一番不愉快。 唯一の見所というかウリは、タモリの若かりし頃の下品な芸を見られることかな。 それにしても赤塚不二夫があんなに肉付きが良かったとは驚いた! ラストは、岡本喜八監督の『肉弾』のラストそのまんまじゃないか! つまらないのは仕方ないにしても、パクリは良くないよ! 所ジョージの歌、くだらん悪ふざけ、妙に国家思想じみたインテリ風味、全てが当事者の自己満足的な内容に仕上がっているのが何ともイタイ。 [DVD(邦画)] 3点(2010-04-25 00:14:46) |
918. 禍福 前篇
これはさすがに古臭かった。 入江たか子がこれまたベタついた女性を演じていて、被害者意識が強く、全く感情移入できない。 だがラストの主人公男女の話し合いには気迫みたいなものを感じた。 男女のドロドロとした愛憎劇を撮らせたら、やはり成瀬巳喜男は巧い。 後篇を観たいと思わせるラストであった。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2010-04-24 15:19:31) |
919. けんかえれじい
《ネタバレ》 鈴木清順監督作品の中では比較的まともな方なのだが、それでも何だかギクシャクしてみえた。 なんか最初から最後までしっくりこない感じ。 それでもって特別見所もなく、特別面白いわけでもなく・・・ 鈴木清順監督の風変わりぶりだけを堪能すべき作品か。 終り方は確かに合点がいかない。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2010-04-21 23:19:05) |
920. 天国と地獄
《ネタバレ》 香川京子のムダ肉のない二の腕に釘付け。 アラン・ドロンも認めた三船敏郎のダンディズムに陶酔。 さて、前半の室内における心理劇は面白かったが、どうにかして三船敏郎に身代金を肩代わりさせようとするシナリオに、わざとらしさを感じた。 出発しようとして、なかなか出発しない三橋達也にも苛立ちを感じ、「うだうだ言ってないで早く出発しろや!コラ!!」と言いたくなった。 後半の犯人を追い詰めるくだりは、はっきり言ってそれほどの凄さは感じられない。 ただ、横浜の黄金町やドヤ街を舞台にした犯人と刑事との追走劇は、喧騒と不気味さの相まった街の雰囲気が存分に演出されており、緊迫感を盛り立てるような臨場感があった。 ラストシーンに関しては、山崎努の絶叫よりも、むしろ三船敏郎の落ち着きぶりの方が印象に残った。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-04-17 23:24:40)(良:1票) |