1. チャーリーとチョコレート工場
《ネタバレ》 世界一有名になった引きこもりのお話。見始めてから数分ほどで、ひどくアンニュイな気分になった。だって、ウォンカが大の人間嫌いだってことがすごくよく分かって、しかもその気持ちが痛いほど分かってしまったからだ。私も以前、人に裏切られたと思ったとき、誰とも会いたくなくて引きこもりたくなったっけ(結局しなかったけど)。そしてウォンカが姿を見せて、彼がふざければふざけるほど悲しくなっていった。自分を誇示し人を蔑むような歌を朗らか過ぎるくらい朗らかに歌えば歌うほど、「あの頃の自分」が蘇ってくるようで悲しさに耐えられなくなりそうだった。本当が自分が嫌なはずなのに、人のことを、おどけることで「これは冗談なんですよ~」って雰囲気にして、毒をやわらげてた。そんなウォンカがひどく自分には痛くて、笑いたくても笑えなくて、変な感じに心が重くなって。いろんな映画のエッセンスやオマージュがあちこちに感じられて、しかも日本のもの(映画以外も含む)の影響もかなりあってそういう意味でも面白いのだが、ウンパ・ルンパのチョコの川でのシンクロがウォーターボーイズ?なんて思ったり、歯科矯正器具はまるで巨人の星の顔面版って感じだし、そんなだから最後の場面は「愛を乞うひと」歯科医版かと思ってしまったよ。言葉を交わさずとも通じたような「愛を~」に対し、こちらははっきりと確かめ合って、そういうところに日米の違いを感じたり、いろんな意味で面白い作品ではあった。ただし、ウンパルンパもそうだけど、前時代的な人種に対する考えが時折鼻につくのでその辺はマイナス要因。 選ばれる子供も、アフリカ系やアジア系がいたっていいと思う。確かに後でひどいことされるけど、真の平等とはそういうものではないかな。この映画で問われるのは、あくまでも人間性であって人種ではないんだから。 [映画館(字幕)] 8点(2005-10-02 17:58:19)(良:1票) |
2. ダニー・ザ・ドッグ
《ネタバレ》 私はウルトラセブンオタクという隠れステータスを持っている(苦笑)一時期に比べるとオタク度は落ちたが、それでもセブンの中の名作はけっこう覚えてるのよ。で、セブンに「零下140度の対決」という回がありまして、セブン=モロボシダンは寒さに弱いことが暴露されるんだけど、それがねえ、零下140度の猛吹雪の中でもどっこい生き延びた訳。一方、ウルトラ警備隊本部にいる人間どもは、いくら温度が下がってたとはいえ吹雪ではない(よーするに屋内)のに死んでいくやつ多かったんだよねえ。セブンよりは寒さには弱くないと思うんだが・・・ってか、お前寒さに弱くないじゃん、ウルトラセブン!てかなんでこんな話をしたかっつーと、映画の中のボブ・ホスキンス扮するバートに何となくそれに似たようなツッコミ甲斐を感じてしまったのである。ダンプがぶつかり恐らく蜂の巣にされ、その後車が横転しても死ななかったのに・・・なんで、うえ(ry ←2ちゃん的表記すんまそん。まあその時にポカーンとしてしまったのは確か。え?ウルトラセブン関係ないじゃん?まあその辺は自己満足込みなので。でもジェット・リーの役ってなんで正体不明なのが多いんだろうね・・・でもこれまで見たやつに比べると表情は豊か。それでも私の中にある「ジェット・リーは大根」というイメージは覆らなかったんだが、その大根ぶりが人間性を取り戻す役柄とはマッチしていたので(誉めてます、一応)ってことで。 [映画館(字幕)] 7点(2005-07-19 00:26:45) |
3. イン・アメリカ 三つの小さな願いごと
《ネタバレ》 幽霊って心の中にいるんだろうな、ってことを強く感じた映画。誰が幽霊かって?フランキー。いつまでもその死を受け入れられない夫婦は、相手の顔にフランキーを見たりしてたし。それがマテオとの出会いによって何かが変わっていき、赤ん坊の誕生で決別できた、その流れを見ていてこれってなんだか水子霊が成仏して行ったような感じじゃない?そんな感覚だった。茶化しているような言い方になっちゃったけど、真面目な気持ちでそういうことを考えていました。そのラストは、マテオがある「魔法」をかけてくれたおかげで、まるでオー・ヘンリーの短編を読み終わったあとのような気分だった。「父の祈りを」でジム・リェリダンを好きになった私としてはあの激しさに比べて随分おとなしいなと思っていたけれど、階段で父がもみ合うシーンの激しさを見ていると、やっぱりこの人は内に熱い感情を秘めているんだなって思う。ところで「スターゲイト」が大好きな私としては、当時は大根役者だったジャイモン・ハンスゥが表情の細やかな演技ができるようになっててビックリした。演技派として歩き出したのがちょっと嬉しかった。 7点(2004-12-12 22:31:05) |
4. スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー
微妙・・・確かにこの監督、「すごいオタクだなあ」っていうのは感じるのですが、元ネタが今ひとつ思い出せないようなそういうのばっかりで、特に後半部分のトータルな雰囲気としてはFF(PS以降)でラストダンジョンに乗り込むときに飛空挺艦隊が援護してるムービーを見ているようなそんな雰囲気でした。パイロットなのにクライマックスは戦闘機が使えないし、思い切り大風呂敷を広げた割には本筋の方でショボーンとしてしまいました。ただし、映像は素晴らしい。特に前半のNY襲撃の雰囲気とか、グウィネスがタイプ打ってるときに書いてる記事の内容がバックに映し出される時の見せ方とか。前半のノリでいければよかったのに。 5点(2004-11-28 21:22:05) |
5. リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い
《ネタバレ》 ついついこの前見た「ハムナ○トラ」シリーズと比べてしまうけど、私としてはこっちの方が断然いけますね。やっぱり役者が違う。文学少年(?)ではなかったのでキャラについては知らないのですが、日本で言えばウル○ラマンと仮面ラ○ダーとゴ○ンジャーと月光○面とエイト○ンと宇○刑事とガ○ラが一緒になるみたいな、そんな感じ?(多分違う)元ネタ知っていればもっと楽しめたろうに、それだけは残念。「ハム○プトラ」での欲求不満(軽薄短小ならぬ「軽薄長大」、とにかく薄っぺらくてガックシ。特に人物!)はこちらで見事に解消されました。登場人物のことは知らなくても、彼らはそれぞれに悩みやトラウマがあって、ストーリーの中でそれを乗り越えていく構成がいいです。リーグの中のグレイとその他のメンバーの対比がしっかりしていて、戦いの中でトラウマを乗り越えた6人が勝ち、悪にすがることでトラウマから目を背けたグレイが敗れた。グレイが、避けつづけた自分の本当の姿を見せ付けられた瞬間に、たちまちミイラ化していくのは自分自身を直視する強さがなかったことのように思いますね。それにしてもラストシーンは意味深だ・・・続編希望!だけどもし続編でコネリーが現れたら、怒るかも知んない自分も否定できない・・・(苦笑) 7点(2004-09-18 00:37:16) |
6. キング・アーサー(2004)
子供のブラッカイマー少年が古い自宅の物置から「アーサー王」のオモチャ箱を引っ張り出して、思い切りひっくり返したような、良くも悪くもそんな感じです。私は「原作は 忘れてしまえ ホトトギス」っていうのがスタンスなんですが、はっきり言って知ってる人は見ないほうがいいと思います。円卓の騎士たちはガラ悪いゴロツキだし、アーサーがエクスカリバーを抜いた理由やシチュエーションも違うし、そして、ランスロット、ランスロットが・・・あああああ・・・マジかよ・・・・・それでいてメインキャラ(名前)は伝説どおりだし円卓もちゃんとあるんで(しかしでかいなあ円卓・・・)忘れようにも忘れられない。見終わってプログラム思わず買っちゃいました(800円)・・・面白かったから記念に取っときたいというより、ブラッカイマーの意図が知りたかったんですよ。こんなにオリジナルとかけ離れたアーサーの物語にしたのは意図的でした。新たなるアーサー王を構築したかった、確かに今までにないアーサー王「伝説」。って言うか、ローマの属国みたいな感じの妙なリアリティだけがある。伝説を解釈すればこういう「事実」が出てくるんだろうけど、伝説というのはそれこそ「ありえねぇ!!」って感じのファンタスティックな味付けがあるから魅力的だと思うんです。先の剣を抜いたエピソードにしても妙に人間的な動機付けがされ、「神聖で正統なる王」としてのアーサーはない。そういうの嫌いな人もいるでしょうが、神聖だからこそ神がかり的なきらびやかなエピソードに溢れていて、そういうのが面白い。やっぱり「アーサー王」って言われれば、多くの人は「伝説」を見たいと思う。でもスクリーン上にあるのは、妙にリアリティだけがある「歴史物語」だった。あんなに「ありえねぇ」アルマゲドンを作ったのに何で・・・製作国が米・アイルランドってなってるけど、本家イギリスが製作に加わらなかったのも肯ける・・・ 4点(2004-08-14 17:57:21)(良:1票) |
7. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
クイーンズイングリッシュの合衆国大統領って変なの・・・キューブリックともあろう人がとんだ勘違いじゃないの?って思ってたけど、これに限ってはそれでよかったのかも、というか、計算づくだったのでしょうね。「マンドレイク」の名前が示すとおりこれは「人を食った」話だと思って見るべきものなんでしょう。時代背景は分かっていても軍事そのものは疎い私には笑っていいのかどうか分からないようなのもたくさんあって(ミサイルの落書きとか)、そのせいか登場人物全員が狂っているように見えるので博士のインパクトはそれほどでもありませんでした。出番少ないし。でもそう見えるならそれでいいような気もしますね。これは冷戦下の狂人たちを突き放した目線で、あざ笑うつもりで見るのがいいのでしょう。「人を食った話」なんだからマジになって見ちゃいけません、ということですね。だから大統領の英語もクイーンズで全然構わないのかも。とか何とか言っていたら・・・大統領もピーター・セラーズだったのかい!ギャフン! ところでキャメロンの「トゥルーライズ」の元ネタってこれなんですかね? 6点(2004-07-25 20:49:54) |
8. ベルベット・ゴールドマイン
頬紅だけでベールを少年にしてしまうなんて!?残念ながら私にはそれしか分かりませんでした。特定の分野に対する基礎知識が必要な映画ですね・・・私には「サイケな映画」ぐらいの印象です。グラムロックまで行かなくとも、オースティンパワーズが面白い人には分かるのかな? 5点(2004-07-14 22:02:30) |
9. バンデットQ
《ネタバレ》 (!!超ネタバレです!!) これのラストは確かにバッドエンディングと言えるんだけど、私としてはすごく納得できるんです。主人公の少年は最新型システムキッチンにうつつを抜かす母親といい子にしなさいの一点張りの父親、ろくな会話もないそんな家族にうんざりしてて、そんな時に冒険に巻き込まれてしまう。自分の部屋から冒険が始まっちゃうのがミソ。早く寝なさいってことで押し込められた自室から逃げ出した、それは現実からの逃避いうこと。そして帰ってきて・・・両親消滅(苦笑)。例え理想の家族と家庭を夢見るだけのろくでもない両親でも、子供だけでは生活できない。現実から目を背けた代償は、あまりにも大きかったのです。この両親も夢見がちで、消されたのも自業自得っちゃあそう言えるけど・・・ギリアムはファンタジーや幻想、妄想と言ったモチーフを使いながら、それに溺れることの危なさを描いている。表現手法は違うけど、それはあの「はてしない物語(本の方です、念のため!)」にも通じるテーマだ。それがどうしても皮肉めいてしまうのがイギリス育ち(?)のギリアムらしいところではあるんですけどね。 9点(2004-07-11 19:34:57) |
10. エイリアン2
ホラー系はどうも苦手でこのシリーズも例外ではないんですが、唯一この「2」だけはまともに見れます(笑)キャメロン好きなせいもあるでしょうが、迫り来るエイリアンなんて吹っ飛ばせ、撃ちまくれ!ヒット作の続編の重圧の中、割り切って自分の色出したのが功を奏しましたね。後に続くキャメロンらしい女性像がリプリーにもしっかり反映されている。これって「今度は戦争だ」ってキャッチで宣伝されましたよね。確かに戦争なんです。戦争の原点とも言うべきもの。自分たちが生きるために、相手が死のうが全滅しようが必死に戦う。クイーンは子供が次々殺される怒りを露にし、リプリー達は人間が宿主にされやがて殺されることに怒る。命を生み出すクイーンがいたからこそ、戦争が持つ「哀」、それこそ「愛」から生まれるが故の哀しみってものがよく出てると思います。クライマックスのクイーンの執拗なほどの追跡がその極北。かといって全体は重たくせず、容赦なくバンバン撃ちまくるのがさっすがキャメロ~ン!ですが今になって改めて見るとセットの精巧さに驚きます。DVDなら全然今と見劣りしないどころか、二次元の世界で作られたCGより実際そこにあるセットの方が確かな存在感があるんですね。「確かにそこに存在する」というリアリティを、CGは勝ち得ることはできるんでしょうかね? 8点(2004-07-06 01:13:48)(良:1票) |
11. ハリー・ポッターと秘密の部屋
こんなアホなケネス・ブラナー初めて見た。きっと"ノキシニータス・タカサノホア"の魔法をかけられたに違いない(右から読んでみよう!)。パパさんママさん、お子様に彼はシェークスピア劇出身の名優だということを教えてあげて下さい、初めて彼を見た子がアホ役者と誤解しないように。ハリーが声変わり真っ只中で時々変な声になってたな。スネ夫みたいやん(マジ)。見た目はのび太のくせに生意気だぞ!! まあ前半はミステリー色強くてかなり面白かったけど、蜘蛛の巣を脱出するとこからしらけましたねー。何でやねんって。そこからは「やっぱりこれって賢者の石の続編なのね」的なお話。一番面白かったのはやはり真のラストシーンですな。 5点(2004-07-04 23:20:56) |
12. マイケル・ムーアの恐るべき真実 アホでマヌケなアメリカ白人
ロジャー&ミーがあって、その次のボウリング・フォー・コロンバインを見て映画っぽくないなーと思った人もいると思いますが、その原点こそがこれです。銃の正しい使い方を教えるマスコットキャラなんてのは彼らしい皮肉が利いてて、しかも最後はちょっぴり物悲しくもなったりして。「隠れNYバスツアー」「人体実験用チキン」もツボで大笑いでした。日本人にはなじみのないギングリッチ議員の女性問題ネタを見ると分かりますが、時事ネタを大衆バラエティとして料理してしまうムーアの手腕は評価できます。言うなれば彼一流のジョークであり、コロンバインも(未見ですが)華氏911も、彼が選ぶジョークのネタがあまりにどぎついだけです。でも1点です。なぜなら、これは映画ではなくアメリカのケーブルTV用に作られたバラエティ番組であり、かろうじて映画といえるのはアメリカ選挙制度の矛盾を突いた「フィカスの木」のお話くらいで(これはムーア自身が短編映画と言っているので)、それ以外は映画として点数をつけることはいたしません。10点÷12(全放映回数)=0.833333・・・、四捨五入して1点。念のため言いますが、TVバラエティとしては断然面白いです。 1点(2004-07-02 05:58:01) |
13. ハリー・ポッターと賢者の石
初めてハリー・ポッターの名前を聞いたときは「ハリボテ?」と思ったもんだ。見て確信。この映画は「ハリー・ボッテーと他山の石」です。 華々しい視覚効果やエピソードの一方で内容は非常に空虚、人物描写の浅さ(特に最後まで悪人にしか見えなかったスネイプ。アラン・リックマン好きなのに)、予定調和を遥かに超えた主人公びいきのラスト。テーマや深みは感じない。同じく大作のLOTRは勇気や友情、愛情、人間の強さと弱さ、限られた生を生きることの素晴らしさ、二つの塔では自然破壊への警鐘まで盛り込まれていてしかもどれも食い合うことなく輝きがある。しかしこちらにテーマを探すとすれば「友情」かもしれないが、今時の子供と変わらないグループ単位での友情関係に、友情の素晴らしさを見出すことはできるだろうか?「努力・友情・勝利」少年ジャ○プを読む方が遥かに有意義だ。製作側は視覚効果を派手にしてゲームやバトルを入れれば子供は喜ぶと思っていないか?「未来の大人」であり、純粋ゆえに大人以上に厳しい目をもつ子供向け作品だからこそ真剣さが求められるのであって、映画でなくてもこの日本で名作と言われるアニメを思い起こせば分かることだ。配給側の姿勢も疑問だ。手紙や看板など普段なら字幕で済ませることに吹替でナレーションを当てる必要があるとは思えない(しらける)。子供にも分かるように配慮したつもりだろうが、字幕で分からなかったら「ママ(パパ)、これなんて読むの?」って聞くもんで、これは子供だからこそ映画から与えられる親子の思い出になるはずだ。映画への満足度は何も映画そのものの出来だけではない。それ以前に吹替の学芸会演技は耳に余るが。でもね・・・一番思うのは、「最初からお姫様と分かっている『シンデレラ』はつまらない」ってことですよ、やっぱり。まさに見かけだけのハリボテ。今後作られる大作映画には他山の石としてもらいたいところだ。 4点(2004-07-01 01:13:59)(良:2票) |
14. 父の祈りを
《ネタバレ》 魂を揺さぶられる映画だった。ピート・ポスルスウェイト演じる父ジュゼッペに秘められた揺るぎない強さ。自分に利があろうと信念に反することはしない、その不器用ながら裏のない純粋な生真面目さこそが、威厳や父権の誇示とは一味違うジュゼッペの持つ強さであった。父と息子、分かり合えたと思ったときに訪れる永遠の別れ。ジュゼッペの霊を弔う炎が、ひとつまたひとつ、監獄の小さな窓から投げられる。怒り・悲しみ・憎しみ・侮蔑・・・北アイルランド闘争を巡る「大英帝国」の負の一面を描き、考えられる限りのマイナスの感情が激しくうねるこの映画の中で、その精霊流しに似た美しい場面に私は救いを見た。父の思いは荒波渦巻く海を照らす灯台のように、こんなにも多くの囚人たちの心を導いたのか。私の心象風景と一致したこの映像に涙を堪えることは不可能だった・・・そう言えばこの映画の原題は「In the name of the Father」これは「父なる神の名のもとに」という意味があるらしい。クリスチャンでない私が言うのも恐縮だが、磔になることで人々を罪から救おうとしたキリストのようでもある。ジュゼッペは命を落としても、愛する息子は今や自分の足で歩き出した。ラストの自由を勝ち得て正面から堂々と出て行くジェリーの顔のなんと誇らしいことか。巨悪は消えず許されざることはまだまだたくさんある。しかし最早過去とは違うジェリーの姿に不思議な安堵を覚えたのも確かだ。どんな事実があろうとも、もう決して逃げることはないと。弱く、落ちぶれていたとしても、人は生まれ変わることができるのだから。父親不在が言われる日本でこれほど多くの人がジュゼッペを絶賛するのも、世渡りが下手でも決して自分を曲げない、どことなく「不器用ですから」の高倉健を思わせる、少し懐かしい理想の父親像があるからではないか。どこの誰とは言わないが、近頃男の強さだの父権を誤った形で意識し、力を使うことこそ正義だと言わんばかりの人間がいるが、ただひたすらに家族を愛し神を信じ、信念を持って生きた男の「強さ」もまた、強い父親の姿であることをもう一度見直してもいいと思う。テロが題材となっている以上、今はこのような作品が作られないだろうと思うと残念でならない。序盤の住民と英国軍の衝突シーンの迫力は、アメリカ資本が入って作品の質を高めた稀有な例のひとつであるだけになおさらだ。映像も音楽も文句なし。これぞ名作。 10点(2004-06-28 17:25:22)(良:2票) |
15. エクスカリバー(1981)
「ウーサー王」って誰ですか?って思ったらお父さんだったのですね・・・不勉強ながら、ペンドラゴン王って名前しか知りませんでした(汗)全体的に映画というより、演出が舞台っぽい感じです。アーサーの顔にイマイチ魅力がない(美男子か否かではなく)感じでそこが今ひとつはまれなかった要因でもあります。実在するか分からない話に時代考証を持ち出すのも変ですが、この映画じゃ10世紀くらいの雰囲気になっちゃってますよねえ。それでもキング・アーサー公開前にアーサー王伝説を予習しておく入門編としての価値はあります。 6点(2004-06-26 12:22:03) |
16. グリーンフィンガーズ
《ネタバレ》 あたしなんかはあのショーシャンクよりもこっちに希望を感じますね。元々真面目だったのにひとつの失敗(とんでもなく大きすぎる失敗だった訳だけど)を、こっちは冤罪ではなく、やらかしてしまっている。本当に真面目だから刑務所の連中とも合わないし希望も何もない中で出会ったガーデニングに生きがいを見出し、命を育てる喜びを知り、才能を開花させた。自分の人生がどんなにダメだと感じていても、どこに自分の「生き場所」があるか分からない、もしかすると自分の思ってもいないところにそれがあるかもしれない、そんなことを思わせてくれる映画でした。ハンプトンコートのあの「作品」は、雑然としているようで実は素朴、主人公コリンの人柄がそのまま表れているようで好感度大です。そこにちゃんとファーガスが「いた」のが嬉しかった。映画としても冒頭の襲撃シーンで目を奪われた。いきなり何が起こったのかと思ったが、映画を見ていくうちにその理由が分かってくる。ストーリー構成の妙でも評価できる一本。でも満点つけられないのは、コリンとファーガス以外のガーデニングを馬鹿にしていたメンバーがどういうきっかけではまったのかイマイチ分からないことと、トニーは結局どうなったのか、編集の都合はあるでしょうがそこはむしろきちんと描いて欲しかった。省略しなくても決してだれるような内容ではないと私は思いますけどね。う~ん、惜しい。本当に惜しい! 9点(2004-06-26 10:56:07)(良:2票) |
17. デス・トゥ・スムーチー
「フィッシャー・キング」をブラック風味でアレンジしたみたいな感じです。あっちは純粋な善人でこの映画は逆恨みで復讐しようとするわけだけど、妄想に突き動かされているあたりはかなり共通してます。落ちぶれてるのも同じだし(笑)このロビンは吹っ切れた感じで見てて気持ちいいです。ロビン嫌いの人にも、ブラック風味がいやじゃなければおすすめできるかも。ノートン君については、いつ化けの皮をはがしてくれるかなあ・・・なんて思ってたけどね。彼の笑顔(被り物なしの時)は何かをたくらんでいるようにも見えてつい「まだかまだか」なんて手に汗握って・・・はいないけど、目が離せませんでした。こういうのも演技力と言うのならノートン君はやはり天才的。もうちょっとノラについては人物像を深く描いて欲しかったですね。モープスを好きになっていく過程も、ランドルフとの過去についても、もうちょっと書き込んであれば納得できたかも。ハーベイ・フィアスティンが出てきたのにはついニヤリ。確か「ミセスダウト」の中でロビンに女装させたのもこの人だったなあ(笑)それと、「アメリカン・ヒストリーX」をこんな形でパロディにするとは、と思うシーンもあってまたニヤリ(笑) ラストはこんなうまくいく訳ないだろう、と思いつつも気分はいいので良しとしましょう。 7点(2004-06-12 17:16:25) |
18. 仮面の男(1998/ランドール・ウォレス監督)
女だけど、こういう熱い男ノリの映画って大好き。多くの人が書いてますが私もおっさん四銃士がカッコよかったに一票。これは本当に嬉しい誤算だった。ジェラール・ドパルデューがあの役なのは、フランス人だから??←フランス人を何だと思ってるんだ、私(爆)あと、ジョン・マルコビッチの薄くなった頭が息子に先立たれた父親の哀愁をそこはかとなくかもし出してます。演技派でもフサフサの人じゃあそこまで役にはまらないと思う。茶化してるんじゃなくてマジで。禿頭は偉大なり。 8点(2004-06-09 20:22:51) |
19. フラッシュ・ゴードン
《ネタバレ》 いや、ね。ティモシーさんとフラッシュさんの決闘シーンがあるわけですよ。斜めになりながら回転する円盤、しかも油断してると飛び出した針にやられてしまうんだけど、その針が非常にうまい具合に、ティモシーさんやフラッシュさんを避けてくれるんですわ。出演者の安全に最大限に配慮した、当時としては先駆けの映画だったわけですね・・・な訳ないだろ(爆)まーこの針が避けてくれる決闘シーンはじめ、強引だったりこじつけが多いんですがね。まあそれを責めるのは野暮ってもんでしょう。「フレディの嵐」吹き荒れるクライマックスへの前座にすぎませんから。話は無茶苦茶でも頑張ってます、本筋以外のところで(笑)今見るとまるでドリフのコントみたいなセットを責めるのも酷でしょう。80億円(某資料による)の制作費の大半は衣装に消えたことでしょうし。「よ~く考えよ~、お金は大事だよ~」のCMソングを持ち出すまでもなくお金の使い方は間違ってます。とことんまでセンスのかけらもないですが、それで最後までブッちぎってしまったところが私には好感度大なのです。ラストシーンは意味ありげですが、まさか続編あったりして・・・コレにもし続編があったら頭が痛いです。いろんな意味で痛い映画です。でも一番痛いのは、この映画に8点つけてしまった私自身であります(自爆) 8点(2004-06-08 23:57:14)(笑:1票) |
20. サラマンダー
マシュー・マコノヒーと私が大好きなクリスチャン・ベールを使って、これはないんじゃないか?クリスチャンの役どころは彼らしいと言えばらしいんだけど、頑固なくせに時にヘタレに見えてしまうのは演出がまずかったんだろう。マシューなんて最初マシューだと気付かなかったし、っつーかマシューでなきゃいけない理由が分からない。それにマシューの役ってどうも今の世界を考えると、まさにイラクに「攻め入った」アメリカそのものって感じで、ドラゴンにやられるのがアメリカではなくヨーロッパだし、崩壊後のヨーロッパをアメリカが支配しようとしているようにすら思えて「ついにハリウッドもここまで来てしまったか」と暗澹たる気持ちになって、ベール好きにもかかわらず途中で見るのやめようかと何度も思った。後半に風向きが変わるのが救いだけどね。それに、個人的にはコレ、パニック映画に分類して欲しくない気がする。パニック映画というのは見る側が目の前で起こる出来事を自分のことのように感じ、「こんな時私はどうするだろう?と思わせる映画こそパニックの傑作だと思う。責めて自分の身に迫るだけのものが欲しい。だが設定が近未来、しかもドラゴンという完全に伝説の世界を持ち出してしまったことで、まさに「コップの中の嵐」を見ているようで奇妙な違和感があった。いろんなところで消化不良は否めない。 マシューの役は定番すぎるけどやっぱブルース・ウィリスにやって欲しかったなあ・・・でもマシューと気付かないほどの役作りは買う。 3点(2004-06-06 21:27:47) |