1. 関心領域
《ネタバレ》 忘れることのできなくなるトラウマ映画。直接的なバイオレンスシーンは挿入せず、遠くの運動会みたいな音で想像をかきたてる。そして、最後に博物館の実物を見せる。ああ、ヘスとその家族の暮らしぶりは、大量のカバンや靴を前にしても、もはや心が動ずることがなくなった、博物館の掃除夫たちのそれと同じなのだ。■年代や場所、登場人物について説明する字幕、ナレーションは一切なく、それで普遍性を確保している。このことに時代やロケーションは関係ないんだ、と。■作中、開かれている会議は、いわゆる「ヴァンゼー会議」であり、これ以降アウシュビッツにおいて「最終的解決」に向けて、ホロコーストはさら加速し、よりむごたらしくなっていく。つまり、この映画は、もっと悲惨なことになっていく場所へヘスが戻っていくところで終わる。この理解でいいのだろうか?(自信がない)■どんなに悲惨なありようも我が身に関係なければ、どれほどにも受け止められるか。それらを一つ一つ、キチンと受け止めていて生活が成り立つのか。■はあーーーーーーーーーーーーーーーーっ(深いため息)。 [DVD(字幕)] 9点(2025-01-18 18:06:50) |
2. 召使
《ネタバレ》 凝ったシーン(鏡越し、カーテンの影、アングル)が多く、前半はかなり引き込まれたのだが、後半。召使二人の関係がバレてから、こんな物語でいいのかと不思議になるような展開。頭下げて元に戻ったバレットが、次のシーンではすでに居丈高。無報酬で採用されたの??? 主人が没落したり、主従が入れ替わってしかるべきとは思うのですが、いかんせん、流れが不自然、というか雑。映像の作り込みの丁寧さに対してあまりのヘンさに、いま、翻訳がおかしかったのではと疑っています。ワタシが見たのは、販売元がアイ・ヴイ・シーのものですが、みなさん、どう思われますか? [DVD(字幕)] 4点(2024-08-10 20:35:04) |
3. バッド・デイ・ドライブ
《ネタバレ》 うーん、なんか、しっくりこないなあ。リメイクとのことですが、オリジナルの主人公は自宅にサンドバッグがあったり、ギリギリでかわす運転の技があるような男ではなく、なんか謝ってばっかりの普通の男だったのではないでしょうか?◾️子供らもプレッシャープレートとやらに紐付けされており、電波と関係なく車から降りたら爆発するのではなかったのか。計画外の子供が乗車していることに対する犯人のハッタリだったのか。◾️なぜ犯人は最後に不要な直接対決に出たのか?正体が分かったとたん、なんか怖くなくなっちゃいましたよねえ。そうでもしないと、映画を終わらせようがなかったからとしか思えないなあ。 [インターネット(字幕)] 4点(2024-07-01 20:56:23) |
4. ジャッカルの日
《ネタバレ》 いしいひさいち版の「ジャッカルの日々」読了済(とはいえ、8コマですけど)。だから、本作が失敗する物語ということだけは知っていました。そして、周到なジャッカルがどう失敗するかがキモだと思ってました。しかしどうでしょう。なんというあっけない失敗。ちゃんと普通の失敗。■でも、そこがいい。■決して、ジャッカルの計画が杜撰だなんて思わないし、組立ライフルの造形の美しさにはほれぼれするのだけれど。一方、接触する必要のないモンペリレ夫人に寄ってっちゃったり、パニクって交通事故を起こしたりもするわけです。■伝説の殺し屋かと思いきや、人間くさくもある。■タイトルから「決行の日」の比重が大きいのかと思いましたが、殺しの右往左往の物語なら、いしいひさいちの「ジャッカルの日々」というのもいいタイトルだなと思いました。 [DVD(字幕)] 8点(2024-04-15 08:56:33) |
5. SOSタイタニック 忘れえぬ夜
《ネタバレ》 被害状況を把握し、冷静に事態を予測するアンドリュー設計技師がかっこいい。間違いなく自分の最高のキャリアが失われた瞬間であったろうに。だから、そんな彼が沈没前にカップルに生き残るための具体的なアドバイスをしたあとの、カップルの片割れ(男)のセリフ(日本語訳)が解せないのですね。「あきらめてる」。アンドリューは乗客の救助の後には、事故の詳細の報告が必要と考えるキャラクターのはず。軽々に命を粗末にしない人物でしょう。おそらくあの日本語訳は、誤訳。■嫌なんだよ、船と命運を共にするのが美学みたいなの。□しかし、本作は面白い。主だったキャストが緊急事態に際して、隠蔽とか重要な情報を握り潰すとかしないんですね。あと、ボートに救われた人が、沈没した人のために祈るところとかもいいなあ。もちろん、阿尾驚嘆と修羅場の後半なんだけど、だからこそ、そんな紳士と淑女の行動がすばらしいんですよ。 [DVD(字幕)] 8点(2023-09-16 21:15:12) |
6. 謀議<TVM>
《ネタバレ》 「ヒトラーのための虐殺会議(2022)」を経由して本作にたどり着きました。映画的には本作の方が上だと思う。忖度と同調圧力が渦巻いて、ひたすら気色悪い「ヒトラーの~」と比べると、マッチョなハイドリッヒと法律家のシュトゥッカートの対立とか、エンドロールでこの会議に出席した面々のその後を教えてくれるのとか。アイヒマンが「1日6万人」と言ったときに、一様に息をのむ面々とか。歴史的な素養がないので、ワタシ置いていかれてましたが、休憩時間の小グループでのやりとりもホントは恐ろしいものなんだろうなと想像しています。ただし、より史実に近いのは、気色悪くて居心地が悪い「ヒトラーの~」ではないかなとも思っています。 [DVD(字幕)] 7点(2023-07-09 06:28:45) |
7. FALL/フォール
《ネタバレ》 切実に怖かったのは、はしごが崩れ落ちて以降ではなく、はしごに取り付いて上がっていくプロセス。あんなハシゴに登ったことがないのに、ワタシにそんな経験があったがごとく気持ちがヒューってなってました。怖い。■地上600mに取り残されれば、こんなもんじゃすまないだろう(自然現象、生理現象など)とも思いましたが、でも面白かったですよ。①実は、作中途中で○○していた。②○○を捕食するなど驚かしてくれましたし、生還を求めるメッセージの発出(最期の)も、確かにそれは効果的だと思いましたし(ひどい?)。■鉄塔の航空障害灯の電球が明らかに旧式のものだったり、家庭用のアダプターで充電できたりしたのもアレって思いましたが、あれも妄想パートだったのであり、ナニソレって思わされてたんでしょうなあ。そこもウマいよ。 [DVD(字幕)] 7点(2023-06-07 16:33:48) |
8. フラッド
《ネタバレ》 映画の最初から最後まで雨降りっぱなし。演者もほとんど水浸し。よくこんなの撮ったなというのが第一印象。保安官が突然悪者になってから、なんか物語が混沌というかグダグダになったなあとも思いましたが、よく最後までやりきったなあと、まあ感心しました。登場した時には、”きっと最初に死ぬ要員”だと思ったトムがヒーローだった意外性。まあ、面白かったです。しかし。終幕後につけたテレビのワイドショー。最近の全国的な我が国の大雨災害の様子。ああ。洪水って、こういう泥とかゴミとかが一緒くたに流れてくることだよなあって。もちろん彼我の国の河川の状況が全然違うんでしょうけど。なんか、急に冷めた感じになってしまいました。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-08-15 15:21:11) |
9. 007/スペクター
なんか、世紀の大脱出系のマジックの長尺モノを見ていたような気分です。みている時にはハラハラしているんだけど、ふと、なんでこの外人さんはこんなことをしているんだろうと冷めてしまうこともあったりして。ストーリーもあるようですけど、まったくそれは、オマケみたいなもんでしたよね。 [インターネット(字幕)] 3点(2022-04-28 20:43:45) |
10. モーリタニアン 黒塗りの記録
《ネタバレ》 見るべき作品だとは思うが、釈然としないところがある。■映画を通じて印象に残っているのは、①アメリカでは、諸々不都合なことはあったとしても、記録は改ざんされたりしない(一次資料である記録用覚書/MFRには事実が記されていた)。②アメリカでは不正があった場合、自らの不利益を顧みず、「できません」と言える人がいる。それらは、(たぶん)本当のことだと思うのだけれど、本作で見るほどに単純なのか?■領収書も明細書も出さない、あうんの忖度で公文書も改ざんする我が国よりましじゃんとも思えるんだけど、本当だろうか?■ラムズフェルドの”特殊尋問”は十分えげつないけど、何かを暴いたふりして、もっと重要なことを隠してないか?■なにかこう取り繕っているような感じで消化不良。どうぜならこれを題材に、マイケル・ムーアにやって欲しかった。 [DVD(字幕)] 6点(2022-04-19 20:26:58) |
11. その土曜日、7時58分
《ネタバレ》 ああ、これは10点かも知れないと思った前半1時間。ワタシがこんなにも時間軸ずらしが好きなのは、極めて映画的な手法だからだろう。アンディが暴走し始めた後半は、前半の緻密な物語運びを放棄したようで少し残念でした。が、ラストシーン。タイトルにあるように、悪魔が地獄に連れていく前に、父親が引導を渡したのでしょう。ああ、我が子がこんなモンスターになってしまった。安堵をもたらす言葉をかけつつも、一撃で仕留める。今も、誰かの子でもあるし、親でもあるワタシとしては、息を呑む終幕でした。ハンクはこの先、捕まることもなく、元のところに戻ることもできず、ただ独り後悔で身を焼きながら死んでいくのだと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2022-03-10 20:46:40) |
12. 奇蹟のイレブン-1966年北朝鮮VSイタリア戦の真実-
《ネタバレ》 墨谷二中が、何かの偶然(というか、大会事務局のやり方に反発してボイコットしたチームが多かった)から、全国中学校野球大会に出場して活躍するような話。面白くないハズがない。視聴してなにより、屈託がない。プレーする北朝鮮チームは伸びやかだし、それを2002年に振り返るおじさんになった北朝鮮チームのメンバーもそれはもううれしそうに、ワールドカップのことを話してくれるんですよね。なんといっても、無条件におおらかに彼らを応援する英国人がうらやましい。生まれる前の出来事を、ドキュメンタリー映画にまとめようとする監督がでてくるんだもの。DVD付録の監督によるイントロダクションなんてのを初めて見ましたけど、本当にサッカーが好きだ、ってことだけで監督になったような人でしたよ。 [DVD(字幕)] 7点(2022-02-23 19:49:21) |
13. ベイビー・ドライバー
《ネタバレ》 音楽を聴くことで、事故の後遺症の耳鳴りが消え、才能が覚醒する天才ドライバー、逃がし屋ベイビー。しかも、銀行強盗の物語なんていえば、まるで伊坂幸太郎の小説の主人公であり、設定なワケです。だからまあ、そこそこおもしろいのですが。伊坂の小説の特徴である、ある種残酷さや、それでいて軽妙さなどについて、それ(小説)には及ばないといった感想です。みんなでベイビーを救う最後のくだりなんて、ヤボの骨頂じゃないですか。そこまで説明してくれるなよ。 [インターネット(字幕)] 6点(2021-10-13 19:18:18) |
14. わらの犬(1971)
《ネタバレ》 ああ。オラは弱虫だから、こんな暴力映画好きじゃないなあ。同様に弱虫の主人公が暴力のことあまり知らないから、キレるともう手加減を知らないから、あんな自宅での攻防なんて、ああ。見せ場だったのかも知れないが、ラストシーンのとおり、なにも解決していない。むしろ、手のつけられない修羅場の始まりだったかのようだ。イヤだ。だいたい、何か意味ありげなタイトルの「わらの犬」。Wikipediaによれば、「天地にとって万物は芻狗(祭儀に用いるわらの犬)のようなものでしかない」という意味の老子の言葉からきたものとのこと。はぁ?そりゃ、天から見れば、人間のやってることなんて、無力で取るに足らないことですよ。そんなこというんであれば、どんな映画(万物)もそうじゃないですか。であるならば、「わらの犬~ターミネーター編」、「わらの犬~天空の城ラピュタ編」になるんじゃないですか、どうですか。…ウソです。そんなことは、全然思っていません。あんまりイヤなので、ケチつけたくて言ってみました。 [DVD(字幕)] 4点(2021-09-28 20:50:23) |
15. 魚が出てきた日
《ネタバレ》 うーん、面白くない。パロマレス米軍機墜落事故を元に作られたスラップスティック・コメディだと思うのだが、コメディであったのだろうかと確信が持てない。半裸の男(パイロットたちや軍人たち)をたくさん見たと思うのだが、なぜそれを見せられていたのか分からない。放射能とか、核とかの環境に対する影響が、いろいろと一筋縄ではないことが明らかになった現在としては、もうあまり価値のある映画ではないのでは。我々は、もう少し屈託のある世の中を今、生きていますよね。 [DVD(字幕)] 2点(2021-08-08 21:10:45) |
16. アバウト・タイム 愛おしい時間について
《ネタバレ》 これはいい。是枝裕和監督風(ふう)とも思う家族の物語。過去にだけ行けるタイムトラベル能力って、実は、ワタシたち、誰しも持っているんじゃないでしょうか。後悔したり、回顧したり、追憶したり。あいや、タイムトラベルという事象について、ことさら今までの作品のように、タイムパラドクスを持ち出したり、科学的理屈をつけたりしない、まるで、「個人のクセ」みたいに位置づけている本作に、そんな風に思ったりしました。そして、父親の結婚式での言葉。「人生は結局、同じなんだ」。振り返ってみても、同じこと。であれば、目の前にいる人に感謝し、慈しみあい生きるほかないのではないでしょうか?…なんちゃって。そういう説教くさいところがイヤなので、1点引いて、それでも9点です。 [インターネット(字幕)] 9点(2021-07-10 08:28:49) |
17. バニー・レークは行方不明
《ネタバレ》 これは…。度肝を抜かれました。奇妙な大家さんや園長先生の造形やドールホスピタルのシーンなどから、クラシックなホラーでありそして教科書的な作品なのだなと、したり顔してみていましたが、最後の15分。こんな展開ありましたっけ。クラシックでありながら最新型(オラには)。ひと一人の痕跡をそんなに簡単に消せるものかとか、転居前の住所地に問い合わせれば、バニー不在説はすぐ消えるだろうとか、無理筋もありましたが、それよりラスト展開の衝撃が勝る。使われている音楽も好きでした。 [DVD(字幕)] 9点(2021-06-12 17:08:54)(良:2票) |
18. チャーリー(1992)
《ネタバレ》 ああ、なんというベタっとした映画なんだろう。まるで、Wikipediaの「チャールズ・チャップリン」の項目を読んでいるかのようだ。作中で架空の自伝編集者であるジョージ(アンソニー・ホプキンス)に「あなただって欠陥人間なんだ。それを書くべきだ」と言わせておいて、本作では、従来の文脈を逸脱したチャップリン像を見せることをしない。作中のチャップリンに「人は成し遂げたことで評価されるんだ」と言わせる。その通り。ワタシはチャップリンの自伝も、伝記映画も必要と思わない。ただ、チャップリンの作品を見ればいいんだ。最期のシークエンスは、チャップリン映画の名作群。「キッド」のあの一番泣かせるシーンを切り取って出すのか。あああ、なんだかなあ。ずっと意味ありげで、最後は名場面集で終わらせるのかよ。なんかズルくない? [DVD(字幕)] 2点(2021-03-14 21:52:57) |
19. 素敵なウソの恋まじない<TVM>
ところどころ、主人公に対して「そいつは、無茶だ!」と叫びそうになりましたが、これはシニアの方(と言うより年寄り)を主人公にした童話みたいな話なんだからと納得しました。とはいえ、「あああああ、ダメ〜」なんて、二人の行く末に意外なくらいめちゃくちゃ感情移入させられてしまってもいたわけです。三谷幸喜のコメディのような小作ですが、脚本は「ブリジット・ジョーンズの日記」の人でしたか。そういや、そうでしょうとも。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-03-08 20:54:51)(良:1票) |
20. わたしは、ダニエル・ブレイク
《ネタバレ》 公開中の「すばらしき世界」を経由して、本作にいたりました。どちらも生きづらい初老の男の話。■西川監督曰く、『むしろ「あ、似てる……ヤバい」と思っています(笑)。』(CREAインタビュー)とのこと。どちらの主人公も循環器の病で急死してしまいます。■私が思う一番大きな違いは、最後に世の中とどう折り合いをつけたかということ。自分の心を押し殺した(ちょっとズルくなった)三上(「すばらしき世界」)に対して、「尊厳を失ったら終わりだ」と告げ、反抗に及ぶダニエル(本作)。■亡き奥さんとのエピソードや葬儀で明かされるメッセージなど、映画的なカタルシスは本作の方があります。■しかし、福祉事務所の理不尽が、さすがにこれはないだろうと思いますので8点です。(あるんですかね)。■物語中盤、園芸センターの経営主がダニエルのキャリアを認め、雇用の申し出をしてくれるのですが、ここで断らずを得ないダニエルの気持ちに胸がふさぎます。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-02-21 17:17:05) |