1. ブレードランナー 2049
待望の続編。前作のテーマを「生」とするなら、本作のテーマは「命」だと思う。人間の本質とレプリカントたちの夜明け。「ブレードランナー」としてロサンゼルス警察に所属する新型レプリカント「K」。彼は、かつて反乱を起こした旧型レプリカントを「解任」する職務に就いている。家ではウォレス社製AIの恋人ジョイと過ごす日々を送るのみだ。ある日、彼は捜査中にある農場で旧型レプリカント、サッパー・モートンを「解任」する。その農場の木の根元に埋まっていた「箱」。発掘の結果、中には「遺骨」が納められていた。この事件を発端とし、物語は大きく動き始める...。2022年のテロによる大停電により、世界は壊滅的な被害を受けた。しかしそのお蔭で、「旧型」と呼ばれるレプリカントたちは静かに生きのび、ひっそり人間として暮らしている。人々は合成食料を生きる糧とし、目にする生物は人工動物ばかり。地球環境と生態系の崩壊後、雨と雪と砂に支配され荒涼とした風景は、フィリップ・K・ディックの原作の描写と重なる。愚直なまでに従順となり、完全に人間の下僕となった新型レプリカント「ネクサス9」。盲目の創造主ウォレスと彼らの関係は、神と人間の関係を彷彿とさせる。記憶の中の木彫りの馬。木の根元に刻まれた「06/10/21」という数字。無菌状態の部屋に保護され、記憶を創造することを生業とするアナ・ステリン博士。Kが謎の真相に近づくにつれ、彼は運命のうねりに飲み込まれて行く。全体的に長尺すぎる感はあるが、丁寧に積み上げられた伏線と情報により、世界が深みを増し広がってゆく様が心地よい。また、デッカードの登場、レイチェルの名前と声を聞く頃には、感情の波に飲まれること間違いなし。「お前たちは奇跡を見たことが無い」冒頭、サッパーの残した言葉は、ラストシーンになって心に刺さる。 [映画館(字幕)] 9点(2018-01-27 22:06:09) |
2. エクス・マキナ(2015)
"Deus ex machina"=「機械仕掛けの神」。人工知能とロボット技術の進化の先にあるものは?大手IT企業「ブルーブック」でプログラマーとして働くケイレブ。彼は抽選でその会社の社長ネイサンの自宅へと招かれる。そこは広大な森と山岳が広がる地にある、社会から隔離された巨大研究施設だった。ネイサンから開発中の人工知能に面談テストを依頼され、快諾するケイレブ。だが、その人工知能を搭載した女性型ロボット「エイヴァ」と出会ったことで、彼の人生の歯車は狂い始めるのだった...。本作は社会から隔離された研究施設で起きるサスペンスだ。施設からの逃亡を画策するエイヴァと、助けたいと思うようになったケイレブの秘密の会話を、ネイサンに聞かれるのではないとハラハラしながら観ていた。ブルーブックが開発した検索エンジンで全世界から収集した情報が、人工知能の思考アルゴリズムの中核を為しているという設定も、今までになく斬新だと思う。高度に進化した人工知能が暴走することの恐怖。『2001年宇宙の旅』『ターミネーター』『マトリックス』そして『ブレードランナー』など同じテーマを扱った作品は多いが、本作は加えて「性」という要素が大きなウェイトを占めるように感じた。始めのうちはスケルトンボディの見た目が、少しばかり違和感のあるエヴァだが、演じるアリシア・ヴィキャンデルの芯のある美しさもあり、適度なエロスを感じるようになる。また、物語中盤に突然現れるメイドのキョウコ。演じるソノヤ・ミズノが予想外の美しさで掘り出しモノ。今後の出演作に注目したい。現実の世界でも、更なる高みに向け進化を続ける人工知能とロボットの技術。それらのもたらす未来はどうなっていくのか。物語のラスト、神が無慈悲であるようにエイヴァもまた無慈悲であった。人間は「機械仕掛けの神」を制御する術を獲得できるのだろうか?ただ、それはどう転んでも人類の未来に大きな転機をもたらすのは間違いなさそうだ。ハナマル。 [DVD(吹替)] 7点(2017-04-08 21:17:51) |
3. フィフス・エレメント
四元素の石柱と五番目の要素。「愛は地球を救う」数年に1回は観たくなる作品。過去の映画で観たことあるようなシーンばかりのいいとこ取り感はある。...だが面白い。物語は単純明快。未来世界で地球存亡の危機に立ち向かう男女の活躍を描く冒険活劇だ。カッコいいヒーローとヒロインが、カラフルな世界を縦横無尽に冒険するさまはドキドキ・ワクワクする。リュック・ベッソン監督のオタク気質がいい方向に向いており、楽しませ方がうまい。お約束の「マッチ箱に残った1本のマッチ」が大好き。それと、健康なお色気を振りまく、若きミラ・ジョヴォヴィッチ演じるリールーの一挙手一投足が、ホントに可愛らしく美しい。また、ゲイリー・オールドマンが間抜けな悪役を楽しんで演技しているのも良い。ハナマル! [DVD(吹替)] 7点(2017-02-04 16:52:55) |
4. トランセンデンス(2014)
《ネタバレ》 人間は理解できないものを恐れる。最先端の人工知能の研究者であるウィルは、その技術を恐れる過激派テロリストの襲撃に合い、余命僅かの身となる。同じ研究者である妻エヴリンと親友マックスは、そんなウィルの死を否定し、意識を最先端のスーパーコンピューターに移植しようとする。何とか移植は成功し、ウィルの意識はコンピュータネットワーク世界で生き続けることとなる。やがて膨大なあらゆる知識を手に入れた彼は、驚異的な進化を遂げて行く...。人間にとって当然のごとく「善」として創造された人工知能が、自分の意思と高度な能力を持ち行動するようになると途端に「悪」となる。『ターミネーター』『マトリックス』などを彷彿とさせる王道プロット。実は善悪とは絶対的なものではなく、見る側によって異なる。人工知能側としては、自分の「善」を信じての行動なのだろう。本作は、最後の最後まで人間(更には地球)の味方であった人工知能を、危険と見做した人間による破壊行為にテーマが置かれているようだ。最先端技術の映像も地味ながら美麗で、ナノマシンの表現も未来を感じさせるものだ。でも、ウィルを愛し、彼を生き永らえさせることに心血を注いできたエヴリンですら、彼を最後まで信ずることが出来なかった。相手が未知のものであると感じた時点で、人間は恐怖を感じてしまうものなのか?こんな感じでコンセプトも映像表現も好きな部類のものなのだが...。ナノマシンの効力が人体だけでなく、機械にも及ぶ修復能力を持っており、資源が無くても構築できたり万能過ぎて説得力が無い。ラスト間際の襲撃シーンも、「ハイブリッド」VS人間の軍隊の馬鹿っぽい攻防戦に終始してしまい、B級感が漂う。また、前半で人類のためとして多くの殺人を犯したテロリスト集団が、罰せられないばかりか、後半はヒーロー的な扱いになってしったのには納得がいかない。「本当に恐ろしいのは人間だ」と言いたいのだろうが、実は彼らのお蔭で全世界が大停電による文明崩壊に至る訳で、更にどれだけの人間を殺したことだろうか。ドラマ構成がイマイチで残念。 [DVD(吹替)] 5点(2016-11-27 11:30:52) |
5. インターステラー
《ネタバレ》 時間の相対性と重要性を真正面から描いた映画って今まで無かったように思う。ブラックホールの重力による影響で1時間で地球の7年分が経過する水の惑星のエピソードなどの描写が光る。まさに「時は金なり」。静かな荒廃による滅亡を、ただ待つばかりとなった地球を救うために旅立つ者たちの英雄譚ではあるが、その献身的な英雄ですら耐えられず精神を蝕む「孤独」の厳しさ。この映画は「孤独」を包み込む人間だけが持つ「愛」の力強さを語っているのだと思う。あと、ロボットたちの異常なまでの斬新なデザインとその存在感に驚嘆すること間違いなし。複数の金属の直方体を、横並びに重ね合わせたような見た目のロボットの存在感は「凄い」の一言に尽きる。意外と動きが速いし、最後には情緒すら醸し出しているしね。ん~、尺が長い割には事象の説明が少なすぎ、イマイチ分かりにくい物語になっているが、観客を飽きさせずラストまで強引に引っ張っていける演出は流石のクリストファーノーラン節。十分及第点ってことで。 [DVD(吹替)] 7点(2015-05-26 23:26:44)(良:2票) |
6. キック・アス ジャスティス・フォーエバー
《ネタバレ》 前作から3年後という設定。中心となるのは、主人公のなりきりヒーロー"デイヴ/キック・アス"、バイオレント・キューティ"ミンディ/ヒット・ガール"、そして馬鹿"クリス/マザー・ファッカー"の3人。何と言ってもヒット・ガールは魅力的でしょう。前作で結構好みだったデイヴの彼女は早々に退場してしまったので、クロエ・グレース・モレッツに焦点が行ってしまった。育った感はあるものの、その魅力は相変わらずで、観る者の心を掴んで離さない。激しいアクションも相変わらずだが、「普通の女の子に戻ろうと努力するミンディの姿」が描かれ、葛藤し揺れ動く彼女の描写が秀逸。それに引き換え、今回のキック・アスはヒーロー軍団の仲間にも恵まれ、"ナイト・ビッチ"ともいい仲になってるし、ミンディとも知り合いだし、ヒット・ガールとの特訓で身体能力も向上したし、心身ともに充実してる感じでイマイチ。かつての「イジメられっ子」から脱却してしまい、ダメ人間が正義に目覚めて...の部分が希薄で正直残念。クリス/元レッド・ミスト/マザー・ファッカーは問題外の成長度合い。前作より更に世間知らずでとち狂ってる感が倍増してしまった。あと他の気になるキャラとしては、元ギャング/スターズ・アンド・ストライプス大佐、超絶殺人機/マザー・ロシアは存在感大だった。それと、物語展開上気に食わないのは、デイヴの友人トッド/アス・キッカー。デイヴたちからなりきりヒーローの仲間外れにされたことを逆恨みしてマザー・ファッカーに近づき、デイヴの父の情報を教えてしまう。その結果、デイヴの父親が殺されることになったというのに、トッドは何食わぬ顔でラストバトルでデイヴたちを助けて(by ゲリゲロ棒)いたのだ。彼のせいで人ひとり死んだのに、知らぬこととは言え少しの反省もなしでムカつく。など不満点は色々あるが、映画としては出来がよく、決して駄作ではない。全ての戦いが終わり、ラストシーン。ミンディがヒット・ガールとして生きていくことを決意し、立ち去る前にデイヴに突然キスをする。驚くデイヴに照れながら「私のファーストキスなんだから!笑ったらぶっ殺すよ!」と。このシーンがよいね。続編の匂いも残しつつ大団円。及第点。 [DVD(吹替)] 7点(2014-08-06 22:46:31)(良:1票) |
7. ゼロ・グラビティ
3Dで鑑賞。まさに体感型サスペンス・エンターテインメントだった。そしてラストを観終えた後のあの感覚は、やはり映画館でないと感じられないだろう。SED(宇宙技術開発株式会社)からもコメントが発表されているように、実際には導入前の機器を使用したり、あり得ない物理現象が多発するなど突っ込みどころは満載なのだが、宇宙を描く映画の中では、間違いなく最高の「リアル」を感じさせてくれた作品だ。ただ、ジョージ・クルーニーの「あのシーン」は蛇足のような気がする。折角ねえ...。とはいえ、やはり娯楽作としては上出来の作品。ハナマル。 [映画館(字幕)] 8点(2014-04-14 22:57:34) |
8. ホビット/竜に奪われた王国
《ネタバレ》 待ちに待ったホビット三部作の第二部。この冒険譚始まりの切欠となるガンダルフとトーリンの邂逅シーンに始まり、徐々に物語りに引き込まれていった。シリーズ通して映像は美麗。その壮大な世界観に飲み込まれること間違いなし。ただ、ドワーフたちが、捕まりすぎ、間抜けすぎ、諦めが早すぎ、でイマイチな感じ。ドワーフたちの人数も多すぎ、トーリンとキリー以外、名前もほとんど覚えられず。ビルボを目立たせるためかもしれないが、ドワーフたちのお家再興物語に感情移入しずらいのが難点か。でも樽ラフティングのシーンは興奮必至だし(レゴラス無双も観れるし)、メインの暴龍スマウグとの対峙のくだりは大迫力。カンバーバッヂやるな。ラストは絶妙なところでブラックアウト。第三部が今すぐ観たくて身悶えすること間違いなし。そしてエンドロールでかかる「I see fire」が最終章への期待を募らせる。第一部もそうだが、このシリーズは音楽が心に沁みる。第三部に大期待!! [映画館(字幕)] 8点(2014-03-15 23:47:22) |
9. 銀河ヒッチハイク・ガイド(2005)
《ネタバレ》 一言で言うと「シュールなSFコメディ」。宇宙と生命の根源を解き明かすかのような物語は哲学的で興味深い。でも、ん~、面白くなくは無いのだが、ギャグがシュールすぎてイマイチピンと来ない。あと、原作が書かれたのが同時期ってこともあり、主役3人がルーク、レイア、ソロみたいで、何となく『スターウォーズ』に似ているのは気のせいだろうか?お付のロボットのテンションは間逆だが。ということで、惜しくも及第せず。残念。 [DVD(吹替)] 5点(2013-04-23 22:47:20) |
10. ドラゴン・タトゥーの女
《ネタバレ》 原作、オリジナル未見。一回観ただけでは登場人物の名前と相関関係が解りにくく、そればかりに気が行ってしまい、イマイチ物語に入り込めなかった。あと、もう少し主人公二人の背景をクローズアップして人物像を掘り下げて表現してくれたら、彼らに感情移入しやすかったと思う。ただ、2時間半の長丁場でも観客の気持ちを引っ張っていける内容は素晴らしく、全体的には十分及第点。続編ありと感じさせるラストも良い。 [DVD(吹替)] 6点(2012-07-11 23:05:53) |
11. ムカデ人間
《ネタバレ》 ネットなどで話題になっているため観る前からどんな内容かは分かっていたが、何かを期待して鑑賞。一言でいうと内容は微妙だった。一応ホラーに分類されるのだろうが、物語中盤のムカデ人間誕生までの、被害者の捕獲・監禁、変態博士の手術説明辺りまでに恐怖が集約されており、後半~終盤はシュールな映像の垂流し状態であまり楽しめなかった。例にもれずこの手の映画に特有の、登場人物のバカさ加減が目立つ内容になってしまっている。ただ続編が公開されたら観てしまうんだろうなぁ。まあ、今の時代にこの内容の映画に出演した俳優さんたちには敬意を表します。あまり一般的にはお勧めできない物語ということで。 [DVD(吹替)] 5点(2012-03-04 15:29:08) |
12. 127時間
《ネタバレ》 休日はロッククライマーとして人生を謳歌していたアーロン。彼はいつものように簡単に身支度を整え、誰にも行き先を告げず国立公園の峡谷に出かけたが、岩の狭間に滑落して右腕を岩と壁の間に挟まれる。そこで「127 HOURS」とタイトル。ここから本当の物語が始まる。徐々に精神状態も不安定になり、体力の限界を悟り、脱出のための万策も尽きた彼は、最後に体の一部を切断して生きる道を選ぶ。一番驚嘆すべきは、自然という大きな力に抵抗し、絶体絶命の状況下でも最善を尽くして生き残ろうとする彼の精神力だ。水も食料も残り少なく、普通ならあきらめて然るべき状況下で、このモチベーションはどのように維持されたのだろう。彼は「何でも一人でできると思っていた」と何度も口にしていたが、それは「他人に頼らず一人で活路を見出す」ことにもつながったのではないか。彼の生命力に敬意を評して及第点と。 [DVD(吹替)] 7点(2012-02-26 20:20:07) |
13. ロビン・フッド(2010)
《ネタバレ》 中世の一人の弓の名手が「ロビンフッド」と呼ばれる英雄になるまでの話。イメージ的に軽快に弓を射るイメージ(ピーターパン的な)のロビンも、ラッセル・クロウが演じると重騎士的なイメージになる。剣を振るっている方が似合う感じ。この映画のロビンは成り行き上ロクスリー家の当主として生きることとなるが、その時代の中でも誠実(約束は守る)な人柄が効いているのか、知らず知らず庶民のリーダー的存在となってゆく。この映画の彼は、案外知略戦略に長けており、その資質がシャーウッドの森を守り、住人をまとめる礎となっていくのではないかと。ただ、映像は綺麗なのだが、中世的な「汚さ」が感じられず、時代考証をきちっとしている雰囲気なので勿体無い。リドリー・スコット監督は、都市や宇宙船では濡れや蒸気を使って「汚さ」を活き活きと表現しているのに、見るからに汚そうな泥道などは却って汚く表現できないみたいだ。表現が難しいが「濡れているのに乾いている」って言えばいいか。まあまあ及第点ってことで。 [DVD(吹替)] 7点(2011-09-27 22:53:22) |
14. PUSH 光と闇の能力者
《ネタバレ》 かなり面白かったが、世間的には評価されないみたいでがっかり。でも全体的には面白いんだが。伝わらないか・・・。登場人物の人となりが薄っぺらく、彼ら彼女らに感情移入しにくいところが低い評価の理由かな。内容は闇の国家機関から狙われる能力者たちの物語。能力者たちの能力が明確に分類されていて、同じ能力を持つものたちの中でも優劣が存在するのが秀逸。記憶操作"プッシュ"が題名となっているが、あまりその能力は重要でないような気がする。もっと使い方がうまければ、もっと展開が面白くなるのにという場面が多いし。また、"プッシュ"がなぜ国家機関にいいように使われているかも疑問。裏から誰でも操れるのに。敵味方で同じ能力を持つ能力者がいるため、シミュレーションゲームや将棋のように、どの能力でどのようにチームを組むかが戦略の鍵となる。どちらかというと直接攻撃に長ける能力が少ないため、予めの立てた作戦内容が物を言うのだが、未来予知"ウォッチャー"の能力に戦局は左右されやすいようだ。自ずとアクションがこじんまりとして地味になってしまうのも、低評価につながっているか。あのラストなら続編ができそうだが、人気なさそうなので期待薄かな。残念。 [DVD(吹替)] 7点(2011-06-10 23:01:18)(良:1票) |
15. 28日後...
《ネタバレ》 封切り時に劇場で観たがDVDにて再鑑賞。やはり何度観ても緊張感のある展開だし、映像と音楽のバランスが自分好みだなと思う。一滴の血液でも即効感染するウイルスが相手では、感染者と肉弾戦をすると自分の感染の危険性が非常に高くなり、緊張感を増す効果がある。人の怒りの増幅するレイジウイルスは、実は人間の理性を働かなくし、人間としての記憶を抹消するものではないかと思った。この映画は、人間の本質とは何かを見せたかったのではなかろうか。また、感染者の攻撃が噛み付き一辺倒になるのは、人間ではなく動物としての本能のみで他者に襲い掛かるとき、手足ではなく歯での攻撃が一番効果的だからだろうか。後半の軍隊が出て来る辺りから、物語がいまひとつな展開になってしまうが、それでも最後まで飽きずに観れるので、まずまず及第点かと。 [DVD(吹替)] 7点(2011-03-06 19:46:09) |
16. キック・アス
《ネタバレ》 期待に違わぬ快作で得した気分。現実と虚構、悲喜劇の混ざり加減が絶妙。主人公が自分の無謀さから偶然手にした特殊能力が、「鉄の骨格と無痛覚:プチ・ウルヴァリン」なところもシニカルで面白い。ヒットガールが人気あるのは分かるが、自分としては主人公の彼女の方が魅力的だった。現在の普通の米国女子はあんな感じなのかなと。悪役側も含めて登場人物の心情や今に至る裏側が丹念に描かれており、感情移入し易い。暴力的ではあるが、心地よいカタルシスを味わった後の、美しい朝日のラストシーンは癒される。ただ、ヒーロー=正義を為す者は、自分が思う主観的な正義を実践する傾向が強く、その正義は必ずしも万人の正義ではないのだなということを強く感じた。また、リンチや子供による大量虐殺など、容赦ない暴力シーンが取り沙汰されているが、それは普通の人間の所業こそがえげつないものなのだ、ということではないだろうか?兎にも角にも、なかなかの秀作であることは間違いない。続編もできるそうなので、そちらも必ず観たい。 [映画館(字幕)] 8点(2011-01-25 22:44:02)(良:1票) |
17. バイオハザードIV アフターライフ
《ネタバレ》 退屈はしないが非常に勿体無い。このシリーズはすべて映画館で鑑賞してきたが、3作目のラストと事前の風評などからきな臭さを感じたので、今作は映画館に足を運ぶ気すら起きなかった。やはり思った通りの内容で、邦題の「バイオハザード」がまったく意味を為さなくなり、細い生命線だった「何とかオブザデッド系」の物語でもなくなってしまったのが悲しい。既に荒廃してしまった地球でアンブレラの幹部たちは何をしようとしているのかが不明だし、前作のラストで広げてしまった大風呂敷を、開始数分で畳んでしまうやる気のなさには閉口する。ジョボビッチやアリ・ラーター、シエンナ・ギロリーなどの高級食材を、バイオハザードという丼に、ただ乗っけてみました的な内容だと感じる。非常に残念。 [DVD(吹替)] 4点(2011-01-23 20:21:41) |
18. ジャガーノート
《ネタバレ》 豪華客船での船旅はノーテンキな雰囲気を醸し出し、対比的に爆弾テロによる暴力描写が非常に重い物語を生み出している。俳優よりもドラム缶が写っている時間の方が多いのでは?と思わせるほど爆弾処理の描写が淡々と延々と続く。だが面白い。練りに練られた起爆スイッチをひとつひとつ解除していく様を大写ししていくため、自ずと観客が爆弾を解体しているような擬似体験ができ、緊張感が生まれる。演出・演技とも非常に上級な作品だと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2010-08-04 00:03:37) |
19. インセプション
《ネタバレ》 全編を通して哲学的だが、俳優たちの演技が巧く、難解な世界設定にもかかわらず物語に没入しやすかった。エレン・ペイジは特に注目すべき。パッと見ちんちくりんだが非常に美しく感じさせる。他人の夢に入り込む技能にも、キャラクターごとに各々得意科目(設計、抜き取り、擬装、調合など)があり、階層構造を成す夢世界を能力を存分に活かして縦横無尽に冒険する姿は、新たな映画の舞台として非常に魅力的。ある夢世界の物理現象が一階層奥の夢世界に対して干渉する(特に重力)のは斬新な設定だ。ラスト間際の「キック」の連鎖による覚醒は、時間制限の緊張感とも相まって、大きなカタルシスを感じる。ラストの止まりそうで止まらない独楽の演出も良い。ハッピーエンドであって欲しいが、夢から覚めないほうが良い場合もあるかも。非常に楽しめた。 [映画館(字幕)] 8点(2010-08-03 23:42:03) |
20. ソウ6
《ネタバレ》 相変わらずシリーズのファンにしか意味が通じない展開になっているのは否めない。でも、落ち込んできていた面白さは幾分か復活した感じで○。どこが?と聞かれると良く判らないのだが。ただ、シリーズ当初に見られた、命を粗末にしてきた者たちへの命とは何か?という問いかけを真剣に考えさせるためのゲームという側面が希薄になり、単なる罪への罰ゲームのようになってきているのは×だと思う。ラストはどう考えても続編があるぞって終わりですね。まあ何となく持ち直した内容は及第点ってことで。 [DVD(吹替)] 6点(2010-07-17 23:54:34) |