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プロフィール
コメント数 2404
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  ライアンの娘 《ネタバレ》 
デヴィッド・リーンのオール・タイム・ベストを選ぶとしたら、私は『アラビアのロレンス』じゃなくて迷わず本作です。この映画の映像・ドラマツルギー・演技は神がかっています。■まるで『ボヴァリー夫人』を彷彿させる重厚な人妻不倫物語、これが小説の映画化ではなくてロバート・ボルトのオリジナル脚本だとは驚きです。上映時間は三時間余りと長尺ですが、一時間ごとにテーマが変わってゆく構成になっています。ローズとチャールズの結婚までが最初のパートで、まさにランタイムがジャスト一時間でドリアン少佐がバスで集落に到着します。そしてその後の一時間はローズと少佐の愛欲物語、ラスト一時間ではティム・オライリーが武器弾薬を密輸しようとして村人たちに協力させますがあえなく失敗、そして悲劇的な破局になだれ込んでゆくわけです。まさに「序・破・急」のメリハリがきいたストーリーテリングで、長尺を忘れさせる巧緻な脚本です。■特筆しておかなければならないのは、オスカー受賞したジョン・ミルズのもう神がかったとしか言いようがない演技です。唖者(なんとこの言葉はいつの間にか差別用語になっているそうで、今は“発話障害者”と言わなければいけないんだって、言葉狩りって怖い…)で知的障害のマイケル、まさに俗に言う“神の子”なんですが、あの表情は素顔のミルズとはまるで別人で、本来はトレヴァー・ハワードが演じた神父のような役柄がピッタリな重厚な英国名優です。このマイケルは狂言回しのような役柄ですが、この映画で進行する出来事すべてを目撃する唯一の人物で、実は神だったのかもしれません。■そしてやはりオスカー受賞したフレディー・ヤングの撮影で、アイルランドの荒々しい自然を見せる映像は、もう適切な言葉が浮かばないぐらい感服してしまいました。雲の動きをダイナミックにとらえ、尚且つ太陽光の照りと翳りを鮮明に映した映像は、風景が雄弁にストーリーを語っているように思えます。嵐の海岸でのシーンも、スタントマンは当然使っているんでしょうが下手したら死人が出そうな凄い撮影でした。■ローズの行動はもちろんのこと、チャールズにしても演じるのがロバート・ミッチャムだけに優しいというよりも単に無気力な中年男という印象すらあって感情移入しにくいですね。第一次大戦中で独立蜂起が起きていたアイルランドが舞台ですけど、あの村人たちの民度の低さからは彼らが貧しいのは英国の圧政のためじゃなく、自分たちの怠惰のせいじゃないかとすら感じてしまいます。神父ぐらいしか好感が持てそうなキャラはいないのですが、ほぼ全方位に凡人や卑怯者を配置した脚本は上手いなと思います。幕が閉じてみれば誰にも幸福がもたらされなかった物語ですが、耳にこびりついてしまうモーリス・ジャールのテーマが流れると、こんな愚かな人間の営みにもかすかな希望があるような気がします。
[映画館(字幕)] 10点(2021-02-24 23:04:05)(良:2票)
2.  2001年宇宙の旅
本作は私たちの世代には観たくても観られない“幻の映画”だった時期が長かったのです。封切時に観た友人がいて、彼の持っていたテアトル東京の名が入ったプログラムが宝物みたいでとても羨ましかったものです。ぴあの『もあテン』がきっかけになって再上映を求める運動が起きたことは今や伝説ですが、ついにリバイバルされたときはもちろんテアトル東京に駆けつけました。 最初の20分はセリフがまったくなくて(そりゃ猿人しか出てこないんだから当然ですよね)、この映画まさか全篇セリフがないんじゃないかとちょっと心配になりました。そして上映終了、場内が明るくなると満員の観客の8割が首をひねって「訳わからん」という表情だったのを鮮明に憶えています。でも不思議なんですけど、初見の時からこの作品を難解だと思ったことは一度もないんです。何と言うか、キューブリックのイマジネーションが、自分が何となく宇宙や地球外知的生命体そして神について感じていたことにひとつの解答を与えてくれたような気がしたからでしょう。 映画史には、その作品が登場したことによって映画の概念を変えてしまったオーパーツのような特別な映画がありますが、『2001年宇宙の旅』はその筆頭でしょう。
[映画館(字幕)] 10点(2013-02-11 22:15:16)(良:2票)
3.  ゴッド・アンド・モンスター 《ネタバレ》 
自分にはその気はないのですが、ゲイが絡む映画には心を揺さぶられる傑作が多いから困っちゃいます。引退したホモの映画監督ホエール、若いムキムキだけど頭はカラッポの庭師、ホエールに15年仕えているが彼の性癖は嫌悪している信心深い老家政婦、この三人でほとんど物語は進行してゆくので舞台劇を観ているみたいな感覚です。リアル・ホモのイアン・マッケランは複雑な人格のホエールを繊細に演じきっていて見事です。「神」と「怪物」は『フランケンシュタインの花嫁』からの引用なのですが、実はどちらもホエールの内面を表すキーワードなのでした。つまり“ゴッド=モンスター”というわけなのですが、戦争で心に傷を負った過去の回想も交えて、観ていてほんと切ない気持になる素晴らしい脚本だと思います。そして家政婦を演じるリン・レッドグレーブの演技も実にいい。彼女は昨年亡くなりましたが、父マイケル・レッドグレーブもホモだったそうで、「父は罪深い人だった」とインタビューに答えています。まあ実人生のリアルな経験が映画の役柄に直結していたわけで、彼女の生涯最高の名演に役立つとは何とも皮肉なもんですね。タイトル・バックはフランケンシュタインの怪物の影絵の様なアニメーションですが、ラストにこの怪物の正体が判って「なるほど!」と唸らされました。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2011-02-11 20:30:27)
4.  コックと泥棒、その妻と愛人 《ネタバレ》 
本作はグリナーウェイの最高傑作だと思います。 まるで舞台劇を見せている様な平行移動するカメラ、ボーイソプラノの歌声、腐る肉と悪臭、早くも本作にはグリナーウェイ的な要素がすべてぶち込まれています。実は全然予備知識を持たずにこの映画を観てしまったので、観終わってあまりの凄まじい映像体験に呆然とさせられました。「食欲」と「性欲」、「悪徳」と「無垢」、この世にあるものはシメントリーに分けて対比することがグリナーウェイの映像表現の基本みたいですが、この映画ぐらい悪趣味になると「美」を感じさせられます。そして特筆すべきはヘレン・ミレンの役作りで、あの熟れきった裸身はきっと本作のために逆シェイプアップ(?)したのでしょうね。腐った食肉が詰まったトラックの荷台に隠れるシーンは、豚の頭と一緒に撮られても違和感が全然ないところが恐ろしい。出来れば、ラストは「特別料理」を旦那と一緒に食して欲しかったところです。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2010-06-23 22:12:39)
5.  時計じかけのオレンジ
おそらく、映画史上もっとも社会的反響を呼び、もっともビジュアルやアートの世界に刺激を与え、そしてもっとも評価が分かれる映画でしょう。『メアリー女王葬送曲』が響き渡る画面にアレックスの表情がどアップで映し出された瞬間、映画の新しい地平が開けたのだと私は思う。「暴力」がテーマの映画だからと本作を嫌悪する人が多いが、他にも星の数ほど「暴力」を描いた映画がある中で、『時計じかけのオレンジ』は芸術の域に達するまで昇華した映像を見せてくれるからこそここまでブーイングを浴びるのでしょう。最近これに匹敵するのは、『ファニー・ゲーム』が頭に浮かびます。そして『暴力』と音楽の融合というメッセージをこれほど明確に与えてくれたのは、キューブリックが始めてでしょう。
[映画館(字幕)] 10点(2010-04-26 01:57:04)
6.  カプリコン・1 《ネタバレ》 
初めて観たとき、興奮してしばらく映画館の席を立てなかった記憶があります。この後、駄作・凡作を量産するピーター・ハイアムズですが、そんな彼にも本作では映画の神様が降臨して歴史に残る大傑作となりました。確かに、今DVDで見直してみると、ご都合主義が目立つ部分がありますが、そこをものともしないパワーを持っている映画です。本作のあまりにも有名なプロットは世界中の妄想おたくにパクられ、「アポロ11号は月に行かなかった」という都市伝説を誕生させましたし、そもそも「NASAの陰謀」というコンセプトはこの映画が世に送り出したものです。ヘリと複葉機のスカイチェイスは、現在のCG全盛の世の中では二度と造れない価値あるシーンですね。今でもジェリー・ゴールドスミスの書いたテーマを耳にすると、アドレナリン濃度があがります。
[映画館(字幕)] 10点(2009-06-03 20:26:29)(良:1票)
7.  ジャッカルの日 《ネタバレ》 
サスペンス映画の最高傑作です。よくこの物語はジャッカルとルベル警視の一騎打ちのように語られることがありますが、本質はOSSとフランス政府の死闘を描いているのであり、二人は組織の代表として対決します(もっとも圧倒的にジャッカルの方が自由裁量権は多いのですが)。フレッド・ジンネマンは、ルベル警視が司令塔となってフランス官僚機構がジャッカルを追い詰めてゆく過程を、ドキュメンタリーのような冷徹な映像で描写しています。ジャッカルの情事が無駄なシーンという意見もありますが、この行動が後にパリに侵入する際に警察を撹乱する伏線になっていると思います。最大の疑問は、こんな大傑作がアカデミー賞でどの部門にもノミネートすらされなかったことでしょう。
[映画館(字幕)] 10点(2009-02-20 01:41:54)
8.  ジョアンナ 《ネタバレ》 
監督のマイケル・サーンは、「ナバロンの要塞」などに出演した俳優(最近ではイースタン・プロミスに出演しているそうです)兼シンガーソングライター兼映画評論家ですが、長編第一作のこの作品は彼の才気が爆発しています。60年代スゥインギングロンドンの雰囲気がたまらなくカッコ良いのです。この映画は、駅の場面で始まり駅の場面で終わるのですが、オープニングのカッコ良さは鳥肌ものです。ラストはジョアンナが列車に乗って故郷に帰るのですが、なんと彼女は撮影中のスタッフにまでお別れのキスをして回り、列車が去ったあとカーテンコールよろしく全出演者がホームでダンスをするというしゃれた演出です。ジョアンナ役のジュヌビェーブ・ウェイトは下手な演技ですが不思議な雰囲気を持っています。アートスクールの学生という役柄、ジョアンナのカラフルなファッションは現代でも通じるセンスでした。制作40年記念してDVD化して欲しいものです。 【追伸】祝! 熱狂的なファンの夢がかなって『マイラ』と共についにDVD発売! 本作は大森一樹や大林宣彦など日本映画人にもファンが多く、また『スラムドッグ・ミリオネア』のエンディングなんか、パディントン駅でのカーテン・コールへのダニー・ボイルからのオマージュですよ。DVD発売を機会にもっと大勢にぜひ観て欲しい傑作です。『ジョアンナ』観ずしてスゥィンギング・ロンドンを語るなかれ!
[地上波(字幕)] 10点(2008-12-24 23:04:39)
9.  まぼろしの市街戦
昔はTVで吹き替えで見れたのに、「言葉狩り」が厳しくなるにつれて放映されなくなり、すっかり「まぼろしの大傑作」になってしまいました。一部には熱狂的な支持者がいる(かく言う私もそのひとり)カルトムービーの名作です。3年前にDVDが発売されていることを知り狂喜しました。この映画について書きだしたらきりがないのですが、一人でも多くの人に見てもらいたいですね。私のオールタイム・フェバリットワン・ムービーです。
[DVD(字幕)] 10点(2008-12-19 23:45:30)
10.  小さな恋のメロディ 《ネタバレ》 
わたくしが初めて一人で映画館に観に行った思い出の一編、もちろんトレーシー・ハイドちゃん目当てでした。当時この映画のシーンが森永のCMで使われ爆発的な人気で、思えば彼女こそが日本のローティーン・アイドルのさきがけなのかもしれません。そんなハイドちゃん本作以降はほとんど女優活動しなくてやがて引退、二十代になるころには一般人OLになっていたそうです。不思議なことに本作は日本だけで大ヒットしてハイドちゃんも日本だけで有名になり、これには本人がいちばん驚いていたそうです。でもこれは日本にとって決して恥ずかしいことではなく、日本のアイドルを愛でる文化が世界より先に進んでいたんだと私は解釈します。その文化は今や世界中に広まり、“KAWAII”が世界語と言ってよいぐらい通じるようになりました。アレンサンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥやウェス・アンダーソンなど本作が「大好き」と公言している映画作家もいて、アンダーソンの『ムーンライズ・キングダム』などは本作へのオマージュなんだそうです。 ハイドちゃんとマーク・レスター&ジャック・ワイルド以外の生徒たちはほぼ全員が素人、この子らの生態が実に生き生きとしているのがこの映画の楽しいところでもあります。ケバくなる前のビージーズのサントラは名曲ぞろいですが、自分としてはやはりC.S.N.&Yの“Teach Your Children”を推したい。この曲をバックにダニーとメロディがトロッコで去ってゆくラスト空撮はまさに青春映画の金字塔だと言えるでしょう。 永遠の名作です。
[映画館(字幕)] 9点(2018-08-31 16:00:10)(良:1票)
11.  イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 《ネタバレ》 
自分にはその趣味は無いんですけど、それにしてもホモが主人公の映画ってなんでこんなに心を打たれる名作が多いんでしょうかね。製作したマシーンに早世した初恋の少年の名前“クリストファー”と名づけるなんて泣かされてしまいます。もっともこれは史実ではなく脚本家の創作だそうです、でもGJ! オスカー脚色賞をゲットした脚本もいいけど、やはりここはベディクト・カンバーバッチの好演が素晴らしいと褒めるべきで、もう彼には名優の風格さえ感じます。エニグマ解読の話は本で読んだことはありますが数学的なことはさっぱり理解不能だったんですが、そういう数学的な要素は無視してひたすらチューリングのマシーンが解読してゆくところに絞った見せかたは視覚的に判り易くなっていて良かったですね。解読に成功するところをラストに持ってくるんじゃなく、その後の秘密保持の苦悩にも重点が置かれているところもなかなか誠実な観せかただと思います。史実でもこの“ウルトラ”情報で目標都市を事前に知っていたにも関わらず、チャーチルはコヴェントリー空襲(大戦中一夜で最大の死者が出た爆撃)の際には何の情報も軍や自治体に伝えなかったそうです。だから「誰が死んで誰が生き残るか」を神のように決めてしまったと苦悩するべきなのは、本当はチューリング達じゃなくて政治家じゃなきゃおかしいんですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2016-02-24 23:05:59)
12.  英国万歳! 《ネタバレ》 
王と王太子の仲が悪いというのは、現代まで連綿と続く英王室の伝統みたいなものなんですね。それにしても、王室の物語だというのにウンコやオシッコのネタが多いのは笑っちゃうほどです。それも国王のですからねえ、こんなもので患者の精神状態が判るなんてほんと眉つばものです。よく考えるとこのストーリーは『英国王のスピーチ』と基本的には同じ話なんですね、王族への視点が本作の方がはるかにシニカルですけど。このジョージ三世という王様はは失政が多くてアメリカ植民地の独立を招いてしまったりしてますが、悪役扱いの王太子の方が奴隷解放を唱えたりして政策的にはまともな感じなのは凄い皮肉です。この王様、精神錯乱状態のときに助けてくれた侍従や医師を回復するとクビにするなど、『英国王のスピーチ』のジョージ六世と違ってなかなか非情です。感動を呼ぶには程遠い結末ですけど、これはこれで王族という人達の本質を鋭く突いていると思います。ラストで「家族円満を見せることが王室の大事な仕事だ」と犬猿の仲のロイヤルファミリーが民衆に笑顔を振りまくところなんか皮肉がきつ過ぎです。 ナイジェル・ホーソンの演技は、狂っているというよりも強度のノイローゼという感じなのです。でも本当は正気なのに厳しい現実から逃避するために深層心理が暴走している様にも見え、なかなか優れた演出だと思いました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-12-02 00:14:01)
13.  蜜の味 《ネタバレ》 
この映画のプロットは、反抗的な少女が背伸びをした恋をして思わぬ妊娠をしてしまうというところが、ベルイマンの『不良少女モニカ』を思い出させてくれます。でもリアリズムと暗い雰囲気の映画だった『モニカ』とは違い、家庭環境に恵まれない少女の転落物語という見方を吹き飛ばすような詩情と明るさに満ちてるんですよね。 英国映画史上に名を残すファニー・フェイス、R・トゥシンハムの瑞々しい演技がまたいいんです。彼女の表情を追うだけでもホント見飽きないです。またあのお母さんの恋する熟女ぶりも、やってることはけっこう滅茶苦茶だけどなんか憎めないんです。観てる方がびっくりするほどあっさり娘を見捨てて男に走るくせに、最後はお腹が大きくなったジョーのもとに帰ってくるところは、やっぱ親子なんですよ。 『長距離ランナーの孤独』とともに、最近とうとう本作がDVD化されたというのは喜ばしい限りです(遅いんだよ!時代はもうブルー・レイだぜ!)。これを機会に、T・リチャードソンの再評価の機運が高まってくれるといいんだが…
[ビデオ(字幕)] 9点(2013-08-28 23:15:00)
14.  恋人たちの曲/悲愴 《ネタバレ》 
この映画、「チャイコフスキーをホモ扱いした」と彼のファンからは忌み嫌われているそうです。日本のクラシック・ファンにはどうも音楽家を聖人君子視したがる傾向があるみたいですが、別にゲイでもいいじゃないですかね(その真偽は私には判りませんが)。 さて、音楽家の伝記になると異常にテンションが高くなるK・ラッセルですが、このチャイコフスキーと妻の愛と死を強烈なインパクトで見せてくれるこの作品、間違いなくケンちゃんの最高傑作だと断言しちゃいます。冒頭でチャイコフスキーがピアノ協奏曲第一番を初上演するシーンがありますがこれが凄い迫力で、同時にチャイコフスキーの幻想を見せる巧みな演出もあって唸らされました。R・チェンバレン、まるで本当に彼がピアノを弾いているみたいで熱演です。 彼の妻がG・ジャクソンで、これがもうほとんど色情狂と言っても構わないんじゃないでしょうか。列車の中でチャイコフスキーを誘惑して悶えまくるシーンなんか、ちっとも魅力的じゃないヌードに思わず引いてしまいます。ケンちゃんの醜女好きは有名ですが、そう言えばこの映画には普通の感覚で言うところの美女はひとりも出ていませんでした。 ラストは完全に狂ったG・ジャクソンが精神病院に幽閉されてしまうのですが、そこにいたるまでの彼女の狂おしい熱演は必見です。でもそこまで思う存分芝居をさせて、それでいて完全に映画をコントロールしているケンちゃんの手腕も大したものです。 「ホモでマザコンの男が色情狂の女と結婚するお話し」とケンちゃんは映画会社にこの映画のプロットを説明したそうですが、いやいやどうして、巨匠音楽家たちの生涯を鋭く抉ってきたケンちゃんでなきゃ撮れないチャイコフスキー像でした。
[ビデオ(字幕)] 9点(2013-08-26 21:08:38)
15.  ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ 《ネタバレ》 
この映画を初めて観たときは、「俺さまこそが、英国のタランティーノじゃ!」というG・リッチーの雄叫びを聞かされたような気がしました。たしかに音楽の使い方のセンスなんかは、その当時のタランティーノを超えているんじゃないかな(もっともタランティーノの方はその後も進化を続けてG・リッチーを遥か彼方に置いてけぼりにしてしまいましたが)。 出てくる連中がどいつもこいつもろくでもないおバカさんなので、物語が動き出す前でも退屈させられません。派手な銃撃戦がある割には死ぬのは悪党だけなのでまあ後味すっきりと言うところでしょうか。 まあこの映画は、ビッグ・クリスことV・ジョーンズが最後はおいしいところを持っていってしまいましたが、あの“車のドア、バタバタ殺法”がちゃんと“スナッチ”でのV・ジョーンズ登場シーンに繋がっているところがにくいです。
[DVD(字幕)] 9点(2013-07-16 21:16:54)
16.  デュエリスト/決闘者 《ネタバレ》 
R・スコットの監督デビュー作にして、映画の神が降臨した傑作。観るたびにため息をつかされる荘厳なラスト・シーン、そしてデュベールがアデルに求婚するシーンで二人の馬までがまるでキスするかの様に頬をすりよせるカット、これらが偶然に撮れたなんてもう神のなせる業だったとしか言いようがないです。剣を使う闘いにはR・スコットのこだわりがよく出ています。特に馬小屋の中でサーベルを使って決闘するシーン、騎兵のサーベルがあんなに重たいものとは知りませんでした。まるでマチェーテか青龍刀を振り回している様な感じでド迫力です。 決闘が罪であるというのは近代市民社会を律する秩序の原点の一つであり、ナポレオン帝政のフランス社会がこの原則を受け入れてゆくのが二人の軍人の立身出世と没落を通して不思議な静謐感を持って描かれています。フェローはもともと決闘マニアだったので、デュベールと決闘を始めたころは大した理由づけは無かったのだが、最後の方では彼との決闘が皇帝ナポレオンとともに没落してゆく自身のレーゾン・デートルとなってしまう。そして王党派として新時代にも席が与えられるデュベールとは対照的に、骨の髄までボナパルティストだったフェローは生ける屍となってしまうのが痛々しい。三角帽をかぶって呆然と立ちすくむフェローの後姿は、過去の人となった廃帝ナポレオンそのものです。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-05-14 21:04:48)
17.  博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか 《ネタバレ》 
キューブリックは数少ないフィルモグラフィの中で色んなジャンルの映画をとっているが、彼が撮った唯一のコメディはブラックコメディとしては究極の域に達したと思います。なにがすごいと言ったら、P・セラーズ、G・C・スコット、S・ヘイドン、S・ピケンズ、P・ブルといった主要登場人物が全員で映画史に残る強烈な怪演を繰り広げてくれるところでしょう。良くこの映画ではセラーズの三役が話題にされますが、そんな彼を上回る凄まじい怪演でもっと評価されるべきなのはG・C・スコットのタージドソン将軍ですよね。この将軍のキャラは、当時の空軍司令官のC・ルメイ大将(太平洋戦争でB29による無差別爆撃戦略を実行した張本人)がモデルだそうですが、実は狂人なんじゃないかという説まであったルメイを強烈にカリカチュアしていて見事です。 いきなり空中で交尾しているB52爆撃機を見せてくれるオープニングは洒落てます。このB52が飛ぶシーンのチープな特撮がまた曲者で、完璧主義者のキューブリックですから低予算を逆手にとって狙った映像なのは明白です。地上戦闘のシーンも手持ちカメラで撮ったニュースフィルムみたいで、キューブリックの拘りが伝わってくるところです。そして“We'll Meet Again”をとんでもない映像にかぶせるあまりに有名なエンディング、そのセンスは今の眼で観ても鳥肌が立ちます。 こうして観ると、この映画は筒井康隆の初期の疑似イベントSFに通じるところがありますね(と言うより、筒井康隆の方が影響を受けたのかもしれません)。
[映画館(字幕)] 9点(2013-04-09 23:37:21)(良:1票)
18.  エイリアン 《ネタバレ》 
このシリーズでは『エイリアン2』の評価が高いけど、わたしは断然オリジナル派です。まずはエイリアン・モンスターありきの物語なんですが、あの姿を初めて見て嫌悪感を覚えなかった人はまずいないでしょう。二本足走行で尻尾があるけど、地球上のどんな生物にも親和感がないと言うのは、もうこれはデザイン革命だったとしか言いようがありません。 ネタ元がM・バーヴァの『バンパイアの惑星』であることは有名ですが、徹底的にスタイルから入るR・スコットのエイリアン・モンスターの見せ方は、今やこの手の映画のスタンダードとなっています。リプリーたちがまるっきりブルー・カラーなのもとても斬新なキャラ付けです。だいいち、無精ひげ生やしたH・ディーン・スタントンに宇宙飛行士役を演じさせるなんて、それまで誰も考えつかなかったキャスティングでしょう。 この後この映画がリプリーとエイリアンのオデッセイ物語に発展してゆくとは、当時のR・スコットも予想できなかったでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-01-02 22:15:30)(良:1票)
19.  ファーゴ 《ネタバレ》 
“実話”なんて大ウソで、実在するのは地名ぐらいでしょう。その地名にしたって、タイトルになっているファーゴからして冒頭ブシェミたちが打合せに集まった場所ですが、その後まったくストーリーに無関係というおとぼけぶりです。田舎の町ですから警察署長を始めのんびりした人ばかりのところに、ウィリアム・H・メイシーが立てた間抜けな誘拐計画のためにやって来たよそ者二人が期せずして凄惨な殺しを重ねてゆくところは、後年の『ノーカントリー』に繋がってゆくわけです。メイシーのかみさんが拉致されるシークエンスは、侵入してくるところから実に怖いカットの連続なのですがドタバタ喜劇の様なかみさんのリアクションが妙にシュールに見えてコーエン兄弟の演出の真骨頂です(このかみさん、その後殺されるまでずっと袋かぶせられたままというのもおかしい)。フランシス・マクドーマンドの食事シーンが何度かありますが、どれも脂ぎった喰い物をバクバク平らげているのが、とってもグロテスク。「食べる」ことは「生きる」ということに直結しているということが言いたいシンボリックな表現なのかなと思いました。いずれにせよ、コーエン兄弟映画のひとつの頂点であるのは確かです。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2011-02-25 19:12:00)
20.  追いつめられて…(1959) 《ネタバレ》 
『追いつめられて』と87年製作のケビン・コスナー主演のやつをすぐ思いうかべてしまいすが、本作とは原題も違うしまったく関係ありません。まあ邦題だけの問題で、日本だけのことです(それにしても、87年版の邦題を考えた配給会社の人は本作のことを知らなかったのではないでしょうか)。主人公のポーランド人船員をホルスト・ブッフホルツが演じていますが、彼が主演している映画は初めて観た様な気がします。船員が恋人を殺害する現場をヘイリー・ミルズが目撃して、船員は次の外国船に乗り込んで海外脱出するまでミルズを連れて警察の捜索をかいくぐって逃げ回ります。ヘイリー・ミルズはジョン・ミルズの娘で本作が映画デビュー、まだ12歳です。とてもボーイッシュなので最初は男の子かと思ったぐらいでしたが、とても12歳とは思えないレベルの高い演技力をもっているのはさすが名優の子です。警部役のジョン・ミルズに殺人犯の容貌を尋問されるのですが、ブッフホルツをかばうためにウソをつきまくるシーンはなかなか見応えがありました。陸地から3マイル以上離れた外国船には警察権が及ばないという法律が英国にはあるそうで、この3マイルをめぐるラストのサスペンスの盛り上げは、監督J・リー・トンプソンの演出が冴え渡ります。トンプソンは、一時期「ヒッチコックの後継者」と英国映画界で目されていただけのことはあります。ラストの単純なハッピーエンドとはならないほろ苦さも英国映画らしいところです。今やすっかり忘れられた様なものですが、再評価されるべき良作だと思いました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2011-02-20 22:39:09)(良:1票)
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