41. あの日の声を探して
《ネタバレ》 本作で生々しく描かれているチェチェンでの攻められる側と攻める側の陰惨さは、そのまま今のウクライナで起こっている事なのですね。同じプーチンだし。孤児とロシア兵がシンクロするラストシーンが見事。ため息しか出ません。お目当てアネット・ベニングは何か思うところあっての出演だったのでしょうか。 [DVD(字幕)] 8点(2022-05-21 13:47:06) |
42. エースの中のエース
二日間に亘って劇場鑑賞した5作品の中でピカイチ。良く練られた脚本での奇想天外に過ぎる展開でジャン=ポール・ベルモンドは言うに及ばず登場人物&小熊が味わい深くスクリーンに釘付け。中でも音楽が特筆ものの素晴らしさで少年救出に空路かけつけるシーンに鳥肌がたち酔いしれました。鑑賞後にウラディミール・コスマによるものと知り納得脱帽。ジェラール・ウーリー監督快心の傑作に大満足であります。 [映画館(字幕)] 8点(2021-12-27 23:57:44) |
43. リオの男
意外としっかりしたストーリーに於いて理屈抜きで彼女救出に奮闘するジャン=ポール・ベルモンド。その全力疾走シーンに惚れ惚れ。突き抜けたアクションにも体を張って全力で挑んでいるのでしょう。大満足の良作です。 [映画館(字幕)] 8点(2021-12-27 01:42:35) |
44. 悪魔の美しさ
「ファウスト」未読。覇権主義への皮肉な視線も垣間見えるなかなかに重苦しい話でありながら名優ミシェル・シモンの怪演に楽しませて貰えました。互角に渡り合う27歳ジェラール・フィリップは天才ぶりを改めて実感するところ。結末の肩透かし感が物足りないものの、見応えがあった夢の共演に大満足の作品。 [DVD(字幕)] 8点(2021-09-27 09:22:17) |
45. 母の身終い
《ネタバレ》 邦題が示す通り「究極の終活」が描かれています。 折り目正しい毎日を送る母と刑務所帰りのアラフィフ息子との確執の末の「愛してるよ」「僕もだよママ」はいけません。涙腺決壊。 身辺整理がなされていない散らかった家で独り死んでいる自分の姿を思い浮かべると彼女の身終いは見事だと感じるところです。 淡々として静かな展開ながら切れの良い場面の切り替わりと、人物の心情が滲み出る演出に魅入りました。 「愛されるために、ここにいる」のステファヌ・ブリゼ監督・脚本というのに「なるほど!」納得の秀作です。 [DVD(字幕)] 8点(2021-09-24 10:07:05) |
46. プロフェッショナル(1981)
《ネタバレ》 オープニングでの哀愁漂う音楽は流石御大モリコーネ。早くもワクワク。アフリカの大統領暗殺に送り込まれた工作員(ベルモンド)が政情の変化により国に見捨てられ売り渡され拷問・強制労働につかされ2年後に脱獄し、裏切り者と大統領に対する復讐譚。カーチェイスが自身によるというのに、こんな事も出来るのか驚きの見せ場です。また花屋の演出が粋な決闘シーンも大きな見せ場。そして最大の見せ場ラストシーン、別バージョンもあったそうですが、断然コチラ。深い余韻を音楽が後押しします。ベルモンド魅力たっぷりの秀作です。 今作の100へぇは、最後に鬱憤を晴らしたかのような徹底した噛ませ犬警部補役が「ザ・バニシング 消失」(傑作)のベルナール=ピエール・ドナデューだった事です。 [DVD(字幕)] 8点(2021-08-05 22:59:19) |
47. スペシャリスト/自覚なき殺戮者
《ネタバレ》 アドルフ・アイヒマン裁判を記録したビデオテープ350時間を2時間に編集し、デジタル加工を施している部分もある作品。「ハンナ・アーレント」で感じたそこらへんの無責任社員の言い訳を見せられるのかとゲンナリ状態でしたが。2時間に亘る証言模様で弁護士機能不全孤立無援公開処刑状態の中、背筋伸ばして感情的にならず整然と淀みなく証言する姿は決してそこらへんの無責任社員では無く、ユダヤ人への憎悪無きSS随一の実務能力を持つ怪物に見えました。ハイドリッヒの執事のようなアイヒマン(スタンリー・トゥッチ)「謀議」が浮かぶヴァンゼー会議の件で、ユダヤ人の運命を知らなかったと言うのに血圧激上がり。又、住民の引き渡しを拒否して処刑されたユダヤ人評議会員も居るというのに、傍聴人が叫ぶ「言葉巧みに我々を安心させ自分の家族だけを収容所送りから救った」輩の悪びれない姿にも激憤。人間の価値観・本質を見せられ、更に、ヒトラー型リーダーに従うアイヒマン型部下について考えさせられました。良作です。 [DVD(字幕)] 8点(2021-06-25 02:12:48)(良:1票) |
48. シェフ! ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~
作品全体が味わい深いコース料理のよう。ヒリヒリする殺気・迫力に魅せられてきたジャン・レノの丸くなった姿を始めとした敵役も含めた登場人物全員が実に味わい深い。仕事とプライベートの塩梅、ユーモアとシニカルの塩梅、それぞれ絶妙な起承転結が心地よく魅入ってしまいます。好きだから楽しいからだけでする仕事はプロではないとする「ワシはタイル職人の時、歩く人の喜びを考えた」はピリリと効いたスパイスであり忘れ難い台詞です。掘出物の秀作を堪能しました。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-04-24 18:04:32) |
49. おかしなドラマ
マルセル・カルネ監督長編作品デビュー2作目。フランソワーズ・ロゼーが自分の体裁を保つためについた大した事のない嘘が大騒動に発展してゆくドタバタぶりが半端ない。「よくこんなの引き受けたなぁ」目がテンになったルイ・ジューヴェのコスプレを筆頭に大女優・大スターが織りなす大爆笑スクリューボールコメディは希少価値の高い快作です。 [DVD(字幕)] 8点(2021-01-14 01:35:20) |
50. アンナ(1951)
《ネタバレ》 「にがい米」でのムチムチふとももに「原爆女優」という物凄いニックネームをつけられたシルヴァーナ・マンガーノ演ずる看護修道女の凛とした美しさに見惚れると共にらしからぬ姿だと思っていたら、担ぎ込まれたラフ・ヴァローネとの過去が綴られてからは、らしい 姿が見られました。二人のよりは戻るのか。余韻の深い結末が見事な良作です。 [DVD(字幕)] 8点(2020-12-18 16:24:26) |
51. 女は二度決断する
《ネタバレ》 「ママもおいでよ」ダニーロと犯人の父親に対して筋を通したカティヤ最期の決断に胸が詰まります。欲を言えば腐れ外道夫婦の命乞いを見たかった。国家社会主義地下組織(NSU)のテロ事件をベースにしたという、ひたすらに息苦しい作品であり、詭弁がまかり通る胸糞悪さを嫌と言うほど味わいました。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-12-08 03:42:28) |
52. 黄金の七人
《ネタバレ》 初見。11PMのテーマ(違うか)に乗せてオープニングからの作戦決行模様に目が離せない。ちょいちょい訪れるピンチは手に汗握る程で無く、惚れ惚れする仕事ぶりで7トンの金の延べ棒をゲットしちゃう。そこからの裏切り裏切られ模様は血の雨どころかパンチ1発繰り出される事も無い。たどり着いたアチャー!な結末(あの場に出くわしたとして1本12㎏を持って帰れるかなぁ、気合でいけるかなぁ)。上等な小春日和の如き快作で大いに楽しめました。欲を言えば実働部隊6人のキャラ分けをして欲しかったところです。 [DVD(字幕)] 8点(2020-11-25 01:14:01) |
53. 霧の波止場
フランス映画ならではの哲学的な台詞がゲージュツ的な白けるものではなく、詩情豊かで聞き入りました。ミシェル・シモンとピエール・ブラッスールの見下げ果てたゲスっぷりが際立っており、予感通りの結末に物語が導かれてゆきました。ミシェル・シモンの本質を見抜いていた(!)頑固で義理堅い犬の存在感も印象深い。脱走兵というセリフが皆無であってもそうだと分かる主人公が辿る運命を見事な演出で紡ぎあげた傑作。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-11-21 22:54:24) |
54. 嘆きのテレーズ
《ネタバレ》 松本清張作品のようで展開結末は大体で予感通りでした。テレーズの胸中が察せられるキャスト全員の演技と演出が実に見事。水兵最期の「手紙~」の演出は無かったほうが運命の皮肉さを感じるのではないかと思います。巨匠の手腕冴えわたる見応えたっぷりの名作です。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-10-31 14:08:46) |
55. 肉体の冠
《ネタバレ》 娼婦マリーに恋した市井の大工マンダの破滅までの物語。口数少ない無骨なマンダの恋愛模様は盛り上がりに欠けますが、レイモンとの友情模様は胸熱にさせられました。パリッとしたお洒落な外見とは裏腹に卑怯で下衆なクズっぷりに血圧が上がったヤクザの親分ルカの存在が三人を引き立てており、物語を盛り上げてくれました。名匠のいぶし銀の秀作。原題「黄金の兜」=マリーの結い上げた髪 これを「肉体の冠」という意味不明なタイトルにした方の感性を疑います。 [DVD(字幕)] 8点(2020-10-10 00:55:14) |
56. 男と女 人生最良の日々
1作目から53年後の本作。クロード・ルルーシュ、フランシス・レイ、ジャン=ルイ・トランティニャン、アヌーク・エーメのみならず当時の子供二人も再登場しているというのが奇跡的。アヌーク・エーメの87歳とは到底思えない美しさが特筆もの。1作目の名場面をふんだんに盛り込んだ映像が感慨深い。老いる事が絶望ではないラストシーンに救われる思い。コロナ禍で劇場鑑賞を見送ったのが何とも残念です。 [DVD(字幕)] 8点(2020-07-27 12:09:57)(良:1票) |
57. ミネソタ無頼
《ネタバレ》 冒頭、無実の罪で18年収監されているミネソタ・クレイの脱獄シーンの適当感に「駄目だハズレだこりゃ」と思ったのですが。意外や意外!!!掘り出し物で忘れじのマカロニ・ウエスタンでありました。視力が失われてゆく中で身の潔白を証明する為の闘いに挑むミネソタ、頭悪そうな小悪党オルティス(フェルナンド・サンチョ はまり過ぎ)、狡猾な大悪党フォックス、三人の男の間を立ち回る蓮っ葉エステラ、父は死んだと聞かされている娘ナンシー、それぞれキャラが立っていて展開が実に見応えあるものでした。エステラを始末するシーンで監督らしからぬ見せない演出が印象的。そして私的にウエスタン屈指の名場面であったクライマックスの暗闇での決闘模様は息を詰めて見入るもので、妻の敵でもあった汚いにも程があるフォックスのやり口を粉砕したナンシーのブレスレットに痺れました。 私が観たのはハッピーエンド版で味わい深いものの面食らったところもありました。 ナンシーに父であることを告げて力尽きる版もあると言うことです。これはありきたりなので観たいとは思えません。 [DVD(字幕)] 8点(2020-04-27 02:29:59) |
58. 泥棒貴族
《ネタバレ》 掘り出し物の傑作。脚本、キャスティング、音楽、舞台セット、全てが絶妙の小粋なクライムコメディ。最後の最後まで騙されてしまったのが心地良く余韻に浸ります。本作のMVPと言えるハーバート・ロムが絶品でありました。余談ながら、本作のリメイクがモネゲームと知り心底仰天。傑作を超絶愚作に貶めた罪深さにあの時の煮えくり返る思いが甦ります。 [DVD(字幕)] 8点(2019-06-24 00:16:18)(良:1票) |
59. 巴里の空の下セーヌは流れる
夜明けから翌朝までの一日の物語。多くの人の喜怒哀楽が絡まり合う脚本が実にお見事。最も印象深いシーンは少女に対する彫刻家の優しさで、人の心の奥底は分からない事を示してくれます。聞き覚えがあると思ったらフランソワ・ペリエだったナレーションが過剰なのが玉に瑕。 [DVD(字幕)] 8点(2019-05-25 01:46:56) |
60. ザ・バニシング-消失-
《ネタバレ》 スタンリー・キューブリック大絶賛作品で本邦劇場初公開という事で駆けつけました。 良き夫良き父親良き教師であるレイモンが自身の異常性を証明しようと静かに理路整然と行動する姿が怖くて息苦しい。 サスキア生存に一縷の望みを託したレックスの賭けの結果があまりにも酷過ぎて、誘いをかけ続けたレイモンを八つ裂きにしてやりたいと興奮状態に。 救いの無さが極まれるラストショットに後味の悪さを噛み締める。 1滴の血が流れる事も無く、殺人描写があるわけでもないのですが、上質のサイコロジカルサスペンスでした。 [映画館(字幕)] 8点(2019-04-18 01:29:05) |