81. ブルジョワジーの秘かな愉しみ
《ネタバレ》 各シーンの顛末とか次のシーンへの流れ方なんかは、ことごとく予想を外してくるんだけど、なぜか最後まであるようなないような一本の筋でつながっているという、何とも困った作品。終盤の○オチ連発も、何か技巧に走りすぎていて鼻白む気がしないでもないが、そんなことも制作者の想定内なのだろう。こんなアホな人物たちの現実なんてどうでもいい、というシニカルな視線すら感じられる。 [DVD(字幕)] 6点(2021-02-28 18:27:58) |
82. 映画に愛をこめて/アメリカの夜
映画製作の裏側をこれでもかというくらい見せて(再現して)くれるのは、それはそれで興味深いのですが、そのまんま何のひねりもなく最後まで行ってしまわれると・・・。鑑賞の対象が「この映画はどうなるのか」ではなく「作中の映画はどうなるのか」になってしまいます。ジャクリーン・ビセットの美しさを保存した功績に+1点。 [DVD(字幕)] 6点(2021-02-24 01:01:00) |
83. ネルーダ 大いなる愛の逃亡者
《ネタバレ》 チリの詩人にして政治リーダー、パブロ・ネルーダの伝記作品です。さてはどんなにドラマチックでかつ文学的な人生が、と思っていたら、全然そうはなりませんでした。政治的な活動のあれこれに彼が作った詩をかぶせる、というのが趣向のようなのですが、ほとんどはひたすら逃げている描写と、それを割とのんびり追いかけている警官の描写で、結局何をしていたのかよく分かりません。また、詩というかそれっぽいナレーションについても、いろんな人が発言して視点がぶれぶれなのは、途中までずっと自分の見間違いかと思っていました。やはり、文芸人の描写は、その創作がどこからどのように湧いて出たのかという難易度の高さに挑まないと、ただ表層をなぞっただけになってしまうのですよ。 [DVD(字幕)] 4点(2021-02-10 01:35:30) |
84. Lovers Again/ラヴァーズ・アゲイン(2010)
エマニュエル・ベアールの最新のお姿はいかに・・・という動機で見たのですが、しかしまったく中身のない作品でした。終始変化のない暗ーい雰囲気の中で、男女がネチネチくっついたり喧嘩したりを繰り返しているだけです。よく見ると時系列もちょっと工夫しているというのは途中でやっと分かりましたが、だからといって頭を整理してきちんとついていく気力も起きませんでした。 [DVD(字幕)] 3点(2021-01-31 00:53:12) |
85. セブン・シスターズ
《ネタバレ》 いや、これはびっくりしました。「七つ子姉妹が曜日ごとに1人ずつ行動」「しかもそれを主演女優が1人七役」という突飛すぎる設定にまず驚きますが、まずその前提世界が自然に、というかむしろ当然のように自信満々に描かれている。しかもその後の進行も、設定負けしていません。7人のキャラは無理なく自然に分かれていますし、それぞれに十分な見せ場も用意されています。さらには脚本上のミスリードなんかもちりばめられていて(建物管理人の「昨夜は・・・」とか、チューズデーの「銀行員だから・・・」に対するグレン・クロースの回答とか)、唸ってしまいます。もちろん細かいところは突っ込みどころ満載、というかリアリティは最初から放棄していますし、しかしそれでも物語に引き込むパワーがあるのです。●フライデーの壮絶な作戦で吹っ飛んだはずの敵のボス捜査官が、その後怪我もなく元通り登場してたのはちょっと残念かなー。あそこはフライデーと差し違えてほしいところでした。それとこれは作品の責任ではありませんが、字幕で名前(=固有名詞)を「月曜」「火曜」とか訳したらいかんだろ。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2021-01-15 01:09:58)(良:1票) |
86. ジェヴォーダンの獣
前半部分でスリーピー・ホロウの出来損ないっぽいなあと思っていたら、途中では筋が引っかき回されてごちゃごちゃになり、さらにインチキカンフーまで堂々と登場するのに失笑。誰が何を作りたくてできた作品なのか、さっぱり分かりません。衣装関係の無意味な頑張りに3点。 [DVD(字幕)] 3点(2021-01-10 01:20:12) |
87. アデル、ブルーは熱い色
カメラがえらく落ち着かなくて、人がただ喋っているところにこっそり割って入っているような感じなのです。よって、役者の演技を見ているというよりも、隠し撮りフィルムあるいは現場同行映像か何かを見ているような気になってきます。ただそんな中でも、3時間近くをそれほどだれさせずにほぼ一直線に見せ切る静かなテンションの高さは、なかなかかも。 [DVD(字幕)] 5点(2020-12-31 00:43:40) |
88. ポワゾン
《ネタバレ》 ラストはまあまあだとしても、それに至るまでがあまりにも陳腐で退屈すぎ。騙される過程、その後の追及の過程があまりにも平凡なので、着地点でどう工夫しようと、裏返される快感がありません。もっと伏線の張りようなどあったのでは? [DVD(字幕)] 3点(2020-11-23 01:22:31) |
89. スターリンの葬送狂騒曲
世界史に残されるほどの大虐殺者・スターリンをネタにしてコメディにするんですから、針の穴を通すような周到な作り込みが必要になるはずなのですが・・・いろいろ出てくる側近の数々が、ただあれこれ騒いでいるだけで、キャラクターとして機能していない。そして皮肉なことに、スターリンが画面から消えてからは、別な意味で収拾と統制がとれなくなっています。結局、笑えるところがありませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2020-11-15 23:59:58) |
90. ダメージ
《ネタバレ》 導入部のところで、「おいおい、もうかよ」と突っ込んでしまいました。既婚者の不倫であり、さらにそれが息子の恋人ともなれば、まずそれに先立つ夫婦関係や親子関係の「日常生活」があっての、それに対する背徳や逸脱でしょうに。●加えて、ビノシュとリチャードソンが並んだときに、どう見ても「母親と、その息子の恋人」に見えません(ちなみに2人は6歳違い)。このキャスティングは役者が可哀想でしょ。ただし、ビノシュはここで自分はこういうファム・ファタールには合わないと悟ったのか、後の「イングリッシュ・ペイシェント」や「ショコラ」では家庭的ほっこり路線で才能を開花させたわけで、やはり役の選択って大事です。●息子が「それを知ったとき」がクライマックスであることは当然なのですが、その後の処理の、まあ何ともったいないこと!あそこから関係者の心理の綾がどう重層的に展開するか、がこの作品の骨であるはずなのに。あれだったら、そもそも登場人物にとっての主題自体が、不倫から息子の死にスライドしてしまいます(実際そうなってます)。●とかいろいろアラも発見しつつ、全体としては、アイアンズ/ビノシュ/リチャードソンの強固な存在感トライアングルによって自然に最後まで見られてしまうという、何とも困った作品。 [DVD(字幕)] 6点(2020-11-10 01:57:11) |
91. 怒りのガンマン/銀山の大虐殺
《ネタバレ》 進行に伴って悪そうな奴が次々出てくるんだけど、その辺がまずごちゃごちゃして整理されていない。その後雑魚は処分されて三兄弟に収斂していくんだけど、ボス格の長男は人の好さそうなオッサンだし、次男はどっちかといえば執事みたいだしで、そもそも悪の三兄弟に見えない。キーポイントとなる脱獄囚は、二枚目なのか三枚目なのか、また頭が良いのか悪いのかもはっきりしない、実に中途半端な造形。と、突っ込みどころは満載なのですが、とりあえず作品を維持しているのは、リー・ヴァン・クリーフが無敵だからです。多数の銃口の前を悠然と歩いても誰も撃たない(撃てない)、誰かが襲いかかろうとしたら一瞬で撃退。ヒーローがヒーローであって格好良ければ、こういう作品は何とか成り立つのです。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2020-11-03 02:49:08) |
92. モンスーン・ウェディング
最初の方でごちゃごちゃと大家族のいろんな人が出てきて、あまり整理されてないなあと思っていたら、そのままごちゃごちゃと最後まで行ってしまいました。同時並行的な展開でいろいろやりたかったんでしょうけど、それをするには、演出側の焦点絞り力も場面まとめ力も欠けています。 [DVD(字幕)] 3点(2020-10-31 01:36:29) |
93. ソフィー・マルソーの刑事物語
タイトルと設定から刑事系サスペンスを想像していたら、導入部だけはそんな感じだけど、あとはひたすら各登場人物が流れのままに会話劇を繰り広げているだけです。そもそもこの設定なのに、モラルに反する背徳性も、それを乗り越える情熱や執念も感じさせない時点でいかんでしょ。 [DVD(字幕)] 3点(2020-10-30 00:54:06) |
94. オープン・ユア・アイズ
夢と現実が交錯する不思議な雰囲気は悪くないのですが、コンセプト先行の作品にしては焦点が絞られずに尺が長すぎです。 [DVD(字幕)] 4点(2020-10-20 01:03:15) |
95. 奇跡の海
《ネタバレ》 トリアー監督はとりあえず、「一番救わなければならない人を拒絶する神の矛盾や偽善」とかその辺をテーマとして作り出したのでしょうが、エミリー・ワトソンという逸材に出会ってしまって、制作のポイントが異なってきたのではないかと思います。この作品は一言で言うと、「トリアー監督とワトソンのエンドレスノーガード殴り合いバトル」です。トリアーはこれでもかという状況を延々と設定してワトソンにメンタルを削りまくる芝居を要求する。ワトソン(これが映画初出演!)は驚異の粘り腰でそれにどこまでも対応していく。最後は2時間40分、時間切れドロー。ラストの鐘の音は、トリアーからワトソンに対する「よくやった」というご褒美にしか聞こえません。そしてこれで「こういう創作の方法もあるのか!」と目覚めてしまったトリアーが、後に「ダンサー・イン・ザ・ダーク」とか「ドッグヴィル」に進んでしまったのではないかと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2020-10-19 01:48:00)(良:1票) |
96. アルゲリッチ 私こそ、音楽!
アルゼンチン出身の世界を代表するピアニスト、マルタ・アルゲリッチについてのドキュメンタリー・・・なのですが、撮っているのが彼女の娘、というのがミソでありまして。当然のことながら、ドメスティックな話題(や映像)が多くを占めています。したがって、もともとこの人を知っている前提で、「なるほど、プライベートな場面ではこうだったのか~」という新発見をする見方だったら、これほど面白い作品はないのでしょうが、「そもそもこの人ってどういう(業績や技術のある)人かが知りたい」という観点であれば、解説やデータ提供が親切にあるわけでもないので、ほかのファミリーと何が違うのかがよく分からない間に終わってしまいます。そんなわけで、深く楽しめたわけではないのですが、作中における日本の比重が高めなのは、ちょっと驚きました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-08-27 00:58:29) |
97. ゴールド・パピヨン
《ネタバレ》 冒頭のインチキアジア感まる出しの一幕からして、そのとめどないB級ぶりに期待が高まります。筋としては、どこかのお嬢様とそのお付きの女性が、偶然出会った男と一緒に父親を探す、というだけのものなのですが、「仮に思いついたとしても、本当にそれを撮るか?」というくだりが随所にちりばめられていて、飽きさせません。中盤以降の展開などは、ほとんど説明不能です。しかし、主人公たちがきちんと「体を張っている」ので(船のシーンで、無意味に何回も海に投げ込まれたりとか)、いくらB級道を突き進んでいても、その根底にある制作者のブレのなさを感じさせるのです。なお、エロ度に関しては客観的な分量はそれほどでもないですが(アマゾネス軍団のコスチュームはエロ系なんだろうけど、「死霊の盆踊り」のダンサーズ並に色気を感じない)、主人公たちに関しては予想しないタイミングで繰り出されてくるので、お得感はあります。 [DVD(字幕)] 6点(2020-08-17 00:38:08) |
98. あの日の声を探して
《ネタバレ》 単純に物語として見た場合は、都合良すぎる場面が結構多くないか?というのが気にはなるのだが、それ以上にこの作品を成り立たせているのは、世界平和への最大逆行国家であるロシアへの怒り(2014年といえば、クリミア侵略の年でもありますね)。そして、無力というよりもやる気のない国際組織への徹底批判(「報告書が積まれるだけ」という台詞が中盤に登場して、会議の場面は本当にそれを体現している)。この視座が明確であるだけで、この作品は普遍的な価値を有している。また、皮肉さをちりばめながら一本の筋をすっとつなげるラストも見事。 [DVD(字幕)] 7点(2020-08-16 00:54:33)(良:1票) |
99. メトロで恋して
まさにおフランス~なラブロマンス。偶然出会った男女が着実にいい感じになっていくんだけど、ある日思いもかけない事態が発生して・・・という、もうベタベタな、一歩誤るとただのありがちなストーリーです。しかし、それを救っているのは、まずは一言一言が練られている丁寧な脚本であり、聞いているだけで心地よく響き、そして無理なく話を進めています。また、主演の彼女の存在感もなかなかで、良い感じに知的なエロティックぶりを発揮しています。 [DVD(字幕)] 6点(2020-07-14 00:28:20) |
100. モディリアーニ 真実の愛
やたらとダラダラしていて盛り上がりにも欠けていて、見ていて疲れました。モデルの知名度やエピソードに寄りかかりすぎたのが敗因ではないでしょうか。いくら主人公が重要人物であっても、それを支えるサブキャラがきちんとしていなければその存在も光りません。 [DVD(字幕)] 4点(2020-06-08 01:44:27) |