1. 人生は琴の弦のように
寓話的な雰囲気の中で、ゆっくりと流れていく時間が心地よいと思いました。僕のちんまいTVの画面で観てさえも、とても広い所を漂っているかのような錯覚を味あわせてくれた画造りは見事でした。この監督さんは、子供達の王様や黄色い大地などでもそうなのですが、何でもない話の中にとても奥行きのある感情の機微や寓意を巧みに織り込み、それを丁寧にかつ適度に突き放した絶妙な描き方をすることによって、心の中に深く染み入ってくる作品を残してくれます。ホントどーでもいいことですが、うどん屋さんサイコー。 6点(2003-10-14 09:42:33) |
2. バティニョールおじさん
あらすじから推測した雰囲気からは、ネビル・シュートさんのパイドパイパーを連想したんですが、いざ観てみるとずいぶんムードが違っていました。子供達とのギクシャクした交流が、優しい視点で描かれていたと思います。個人的には、パリでの生活を丁寧に語ろうとしたところは、後の展開に良い影響を与えたと思ったのですが、ここは観る人によってテンポの悪さと感じられるかもしれないですね。一つの街に一人くらいはいそうな普通のおじさんが(たとえ自己憐憫や喉に刺さった小魚の骨のような罪の意識からだろうが)ナチスに逆らおうとする決断には、素直に応援を送りたくなる説得力があると思います。最後の最後でああなるわけですけども、よく生活できたなぁと思うのは、バイト生活に疲れた学生の荒んだ心のなせるワザでしょう。どこかのんびりとした佇まいに、適度なハラハラ感があって、落ち着いてみられるとても良い作品だと思います。どうでもいい事ですが、字幕の後吹き替えで観た時、あの少年がいつ「犯人はお前だ!」とか言っておじさんを糾弾するのだろうかとドキドキしてました。貴重な経験です。 8点(2003-08-23 16:22:39) |
3. ル・ブレ
もうちょっと観覧車大暴走がみたかった。 4点(2003-08-23 16:10:39) |
4. ジャッカル
原作とも映画版オリジナルとも異なる方向性を目指すことは、別段悪いことではないと思うのですが、でてきた結果はちょっとあさってすぎるテイストだったような気がします。ビジネスの準備段階や結末への流れに、サスペンス性が薄すぎたように思いました。個人的に、ここら辺はいくら違うものを作りたいとはいっても無視してほしくはなかった部分だったので、ちょっと残念です。ウィリスさんの連続変装を見てると微笑みをもらすのを堪えきれなくなるところは、制作者の狙い通りの効果をあげていたと思います(ひょっとして僕は勘違いしてるかも) 4点(2003-08-23 16:08:03) |
5. ヴィドック
ドパルデューさんの鯨殺法に萌えました。いや、けっこー頑張ってたと思います、本気で。プロレスっぽい動きがいくつか見受けられましたが、どうせやるならウィスパーオブザウィンドやラストライド、F-5あたりを炸裂させて欲しかった(ムチャ)。CGで酔っちゃったのと、スジやオチが予想以上に平凡なのは珠にキズ。でも映像そのものとしては(たとえオジさん達のアップが濃いかろーが)不思議と奇麗だと思いました。 5点(2003-07-08 19:23:37) |
6. 魔王
ナチス政権下、奇妙に捻れたような境遇の中で流されていく主人公の顛末をわりと淡々と、しかしながら充分に印象的に描いていると思います。皮肉にもOrgreと呼ばれた人物が、その実、最も子供達の近くにいてあの最後の選択に至るまでの流れに、もの悲しくも力強いものを感じました。運命なんて、所詮は人が納得するために後付けされるレッテルですが、ラストシーンの画とナレーションに触れたとき、そういうものが本当はあるのかもしれないという不思議な気分を味わいました。淡々とした作品に抵抗が無ければオススメできる、実に良い佳作だと思います。 7点(2002-11-17 15:43:11) |
7. ストレイト・ストーリー
おじいさんが身内に会いに行くというだけのお話なんだけど、トラクターに乗ってとっとこ走ってるのが、アメリカの地方の風景と合わさってとても和やかなムードがありました。時折顔を見せる、ちょっと思考の立ち位置が違う人々の発想や会話、その人たちの画面での配置などに、リンチ監督っぽさをほんのり残してる気がします。おじいさん、長い道のりの間にたぶん多くの事を考えて、いろいろと話したいこともまとめたと思うけど、最後にお兄さんに会ったときは、たった一言だけ。。。きっと、ささいな考え事より、もっと大事な忘れ物を見つけたんだろうと感じました。のんびりとあたたかな、だけど少し寂しい雰囲気の良作だと思います。 8点(2002-10-26 09:19:34) |
8. カジノ
スコセッシ監督+デ・ニーロさん&ペシーさんの作品では、僕の中で最高の作品です。一斉に守勢に転じたその後で避けられない破局をむかえていく人間模様のような、わりとありがち(かもしれない)な光景でさえ、しっかりとした説得力をもって描かれていて最後まで飽きずに観られました。デ・ニーロさんの演技は繊細ですし、ペシーさんは刺しすぎでとても素敵です。でも、個人的な趣向を除けばグッドフェローズのほうが出来が良いかもしれません。サムは、規模こそ違うものの、全てを初めから持っていて、最後まで持ち続けていたことが、とてもしんみりさせてくれました。祭りが終わると速やかにあるべき所に帰られるというのは、大人であるという事のある種の条件なのかもしれません。ちょっと憧れ。 10点(2002-10-16 21:45:14) |
9. バルタザールどこへ行く
乾いてると思えるほど何の感情も感じさせない淡々とした撮影が、最後に捉えたロバ(僕の事ではありません)のバルタザールの瞳をとても情感深く映していたように思えたとき、清々しいほどの突き抜けた虚無感を感じました。功罪や愛憎なんてものですら、人間のちんけな部分のエゴにすぎないのかもしれません。観終わった後しばらくは爽やかに鬱生活を送れる方が多いと思います。 8点(2002-10-16 21:11:33)(良:1票) |
10. ショーガール
ケバケバしさと本音の掃き溜めの万華鏡みたい。バーホーベン監督に一生ついて行こう(出来る限り)、と思った作品その2。 9点(2002-07-30 23:22:30) |
11. コーリャ 愛のプラハ
特に奇をてらった演出やエピソードを挟むでもないのに、徐々に和んでいく老人と子供の変化が、実に自然に描かれていました。最後のシーンでの演奏も、割り切って現実を受け入れた老人の、本音の部分での寂しさを表しているようで、とても印象的です。シンプルながら、しっとりとした余韻のある秀作と思いました。 8点(2002-07-04 21:05:47)(良:1票) |