1. ハウス・ジャック・ビルト
ラースフォントリアー自身がカメオ出演で、最後の「ハウス」の柱のひとつになっててほしい。その牙を、自分自身に向けよ。 [映画館(字幕)] 8点(2020-03-30 15:00:45) |
2. ナインスゲート
こういうゴシックオカルトの世界観が好きだ。そんな世界を、今を輝くジョニー・デップが旅をする。その横をついていく映画。ジョニー・デップの一番かっこいい角度ごしに、パズルのような伏線を回収していくのは楽しい。ただ、もうちょっとテンポよくてもよい。 [DVD(字幕)] 7点(2020-03-23 22:28:41) |
3. レッドタートル ある島の物語
《ネタバレ》 ブログではほかにいろいろ書いているが、ここではとりいそぎ、イカダを破壊する海の中の何かについて検討しよう。 男は島を脱出しようと、竹でイカダをこしらえて、それに乗って沖に出る。しかしその度に、イカダの底をドーンと突き上げる何かに襲われ、イカダは破壊されてしまう。男が海中に顔を沈めその何かを探すが、すでに姿はない。男は泳いで島に引き返す。これを3回くらい繰り返す。3回目にレッドタートルと出くわす。 この流れで行くと、最初のドーンの正体は、じつはレッドタートルだったのではないか、と推察できる。確証はないが、レッドタートル以外には考えにくい。無人島が男を逃がさないためにやってるのかもしれないとも考えたが、だとしたらなぜ無人島はあの男を必要としたのだろう。 でもそれはレッドタートルにも同じことが言える。なぜレッドタートルはイカダを破壊してまで男を無人島にとどめようとしたのだろう。 ネットのどこかのレビューでは、「レッドタートルが男に惚れた」という意見があった。うーん、まあそうとも取れるかもしれないけど、だとしたらなぜ映画のラスト、レッドタートルはあの行動に出たのだろうか。いまいち僕はつなげられない。 それに惚れた相手に、あんなイカダをぶっ壊すという暴力的な方法でアプローチするだろうか。なぜ1回目2回目は姿を現さなかったのだろうか。 僕はレッドタートルによる、男への仕返しだと思う。 そもそもこの映画の主題となるはずのレッドタートルの身振りそぶり、運命、意志すら解釈がビローンと広がってしまう。それこそがジブリの意図だとするならば、あのころのジブリはいずこへ? ただ少なくともラストシーンの、男の手をそっと撫でるカメの前足の優しさと、海に向かう後ろ姿には、力強い何かまっすぐな思いを感じずにはいられなかった。それが何なのかは、よくわからーん。 [映画館(邦画)] 7点(2016-11-05 22:36:01) |
4. ラストタンゴ・イン・パリ
僕が生まれる10年も前から、女は上書き保存、男は名前を付けて保存なんだなと思った。 [DVD(字幕)] 8点(2015-03-04 00:53:00)(良:2票) |
5. ニンフォマニアック Vol.2
《ネタバレ》 映画終盤、「もしこの映画の主人公が、男だったら、凡庸な話になっていただろう」と語られる。凡庸、つまり、どこにでもあるありきたりな話。この映画はもちろん女性が主人公。確かに凡庸な映画ではなかった。それは主人公が女性であるというよりも、主人公を”演じる役者が女性”だったからだと思う。とにかく性的な描写が次々に押し寄せる。もう少しでポルノ映画じゃね?と判断されかねないすれすれのところまで攻めてくる。脚本というよりも、映像から届けられる情報が強力で、凡庸さは無かった。そもそも僕たち(野澤もりやいちはらかわせ)はラースフォントリアーっていう時点で凡庸だなんて少しも思っていない。 だけども一通り映画が言いたいことを言い終わったとき、つまりなぜ主人公の女があの煉瓦作りの暗い路地で血まみれで倒れていたかが判明したとき、その理由を女性自身が老人に語るシークエンスは、凡庸であった。まるでそのへんに転がっている大衆映画のような、きれいな終わらせ方だ。なんだよラースフォントリアーのくせにこんな終わらせ方でいいのかよ、もうラースフォントリアーの映画観なくていいや!って思わせてからの、あの、とどめの、老人の、老人の、行動!からの、暗転中の会話と銃声と足音!これぞラースフォントリアー!それでこそラースフォントリアー!ありがとうラースフォントリアー!死ねラースフォントリアー!二度と映画なんか作るなラースフォントリアー!僕は一生あなたの映画観つづけます! 結局、やっぱり凡庸な映画ではなかった。 それでも中盤、主人公の女の心境にどうしてもついていけないところがあったのは確かだ。一番首をかしげたのは、セックス依存症の女性たちの集まりで暴言をまき散らすあたりだ。そのまま車に火を放つ謎のシーンが投入される。さすがにむちゃくちゃじゃないか。 あの集まりが行われる場所が、舞台と客席がある施設であることを見逃してはいけない。あの環境は、そこにいる人物を「演じさせる」ように思う。だからあの暴言のシーンは、意外と主人公の女性の本音ではないんじゃないかと思う。もっと優しくて人の気持ちを慮れる人だと僕は思う。だからこそ暴言がどうもしっくりこないままでいる。 [映画館(字幕)] 8点(2014-11-23 21:59:08) |
6. ニンフォマニアック Vol.1
《ネタバレ》 監督の醍醐味である、「悲惨な女の半生」はまだ息を潜めている。きっとボリューム2で開闢するだろう。ラストのラストで、その嫌な予感が漂い、ボリューム1は終わる。あの終わり方はワクワクする。 ちょくちょく図や数式やサンプル映像が用いられる。ドグマ95の誓いをとっくに無視して映画撮っているけど、それは結構前からだから、もうどうでもいい誓いなんだろう。 このように、ラースフォントリアーにしてはずいぶん、映画を観る人を楽しませようとしているなと感心した。昔はもっと一方的に悲惨な女をスクリーンに叩きつけていたと思うが。監督も丸くなったのかな。 ボリューム2に期待。 [映画館(字幕)] 7点(2014-10-17 00:14:27) |
7. エスター
《ネタバレ》 この映画を未鑑賞でこれから観る可能性が少しでもある方にとって、以下のネタバレを遠慮なく書いている拙レビューを読むことは、著しい損害を与えることになるので、くれぐれもご注意ください。 さて、 すべてを観終わり、真相が明らかになったうえで映画の出来事を思い返すと、僕は胸が締め付けられるような寂しさと憤りを覚えた。 僕は今30代前半の男だ。当然同世代(レンジは前後5年)のお姉さんとなかよくなりたいって思う。しかし僕が体が9歳の少年のままだったら、きっと同世代のお姉さんは僕を男性としてみてくれないだろう。ましてや奇形人として蔑まれるに違いない。 そんなとき、魅力的なお姉さんと出会い、でもそのお姉さんには旦那も子供もいたとしたら・・・。 エスターもそうだ。彼女も大人の女性(の精神)として、いけてる男性と出会えば、自分のものにしたいと望んだことだろう。 ただしその方法がサイコパスであるため、エスターはうまくいかなかった。もうちょっと命への尊崇の念があればうまくいったのかもしれない。 旦那をめった刺しにしたのもそうだ。自分を女として受け入れなかったから、むかついたんだろう。児童ポルノ法的に難しいのかもしれないが、あそこでエスターはランジェリー着てもっと妖艶に夫に迫り、夫と一緒に観客も生唾ゴクン出来るくらいエロければ・・・。 マックス(聾の娘)をかわいがっていたのも、マックスの「姉として」というよりも、むしろ「母として」愛でていたことに気付くと、なんかぞっとした。 そしてBD収録の「別のエンディング」が気に入っている。あれでこそエスター。美しさを感じた。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2014-05-08 02:03:14)(良:1票) |
8. 危険なプロット
《ネタバレ》 教室の最後列に座る青年と、職員会議で最後列に座る国語教師が、ラスト、公園のベンチという「最前列」に座ってメゾンの窓を眺める。現実と虚構がないまぜになっていく演出が心地よく、ユーモアもありとても面白かった。ただし僕は熟女が好みではないので、もうすこし若い奥さんのほうがよかった。 [映画館(字幕)] 9点(2013-10-29 18:37:54) |
9. ミスター・ノーバディ
《ネタバレ》 僕も時々思うことがある。信号待ちをしているとき、もう1メートル前に立つだけで、僕は車にはねられ、大けがをする。全く別の人生に分岐していく。もっと軽い分岐だってある。朝食をパンにするか、ごはんにするか、それでもその日一日の人生は異なるものになるだろう。 しかし我々は、時間が不可逆なわけだから、必ずどこかひとつのルートしか進めない。 でも、今の自分とは違う別ルートをすすんだ自分ってのも、存在しているのだ(多世界解釈)。この映画では、それら別ルートの人生を一通り旅していくことで、最初の分岐点(駅のホーム)へと収斂していく様は圧巻だ。 それぞれの人生ルートを回覧してみて気付いたが、この無数の多世界すべてをひっくるめて“自分”なんだなと。 [DVD(字幕)] 9点(2013-03-14 23:46:35) |
10. メランコリア
《ネタバレ》 監督はジャスティンに救済の最期を与え、クレアに苦痛と恐怖の最期を与えた。うつ病のジャスティンに、自分自身を投影したのかもしれない。でも僕は、ジャスティンなりに勝ち取った最期だったのではないかと感じる。 風邪をひいて熱が出る。なぜ熱が出るかというと、悪い菌を殺すためだ。怪我をして傷ができると、白血球が集まってきて膿ができる。ストレスを感じたら、酒を飲んだりスポーツしたりブログ書いたりして精神を安定させようとする。このように、生命を安定的に維持させようとする我々は、なんらかでそれが脅かされたとき、バランスをとろうとして何かを作動させる。 つまり、うつ病ってのももしかしたら、傷ついたメンタルに対してバランスを保とうとする機能なのかもしれない。 だとして、ラースフォントリアーはその機能を自己肯定するために、ジャスティンに安らぎを与え、対照的なクレアには恐怖を与えたのだ。 [映画館(字幕)] 8点(2012-04-13 23:02:02) |
11. 華麗なるアリバイ
とてもつまらなかったです。 [DVD(字幕)] 4点(2011-09-06 21:17:14) |
12. [リミット]
閉そく感が足りない。 [DVD(字幕)] 6点(2011-08-08 22:28:49) |
13. アンチクライスト
《ネタバレ》 おもいっきりR18指定な映像は、とてもいたいけな子どもには見せられたものではない。それは認めるけども、僕はまだまだ物足りない。というのも、上映前に断りを入れていたが、局部については画像修正を加えているのだ。上映できるようになっただけありがたく思うべきだが、あのボカシはおおいにクオリティを損なった。決してエロ目的でなく、クウォリティ。 サイコパスを起こした女が、自分の子供を虐待し、森の奥の山小屋で殺害し、穴に埋めた、その自責の念。それとセックス大好きな性欲の念。この2面を表裏として、美しくもおどろおどろしい森の中でむき出しにしたシャルロット・ゲンズブールの渾身の演技。それを鬼の演出でひねり出させ、カメラに収めることに成功したラースフォントリアーが、なんともそら恐ろしい。 [映画館(字幕)] 8点(2011-04-07 20:39:03) |
14. メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬
《ネタバレ》 二人の男と一人の死体、っていう設定のロードムービー。死体とともに映画を進めるっていうのは確か『偶然にも最悪な少年』だったかな。よく覚えてないけど。 死体の顔にアリが群がっていたから、焼き払おうっていうのとか、そういうノリを押しとおして、別役実的世界を作っていただけたら良かった。 [DVD(吹替)] 7点(2011-01-09 22:54:42) |
15. エンター・ザ・ボイド
《ネタバレ》 なんだよノエ、長いこと待たせておいて、何やってたかと思ったら、こんなもん撮ってやがって。 まず映像がPOV、死んだ後もPOVなものだから視界が当然限られてくるわけで、しかも視線が真下に固定、こんな撮影でノエのやりたかったことが本当に撮れているのだろうか。 たぶんだけど、ノエがラブホテルに(当然男と)いった時に、隣はどうなってるんだろうって思いをはせたのがこの映画の志だと思う。 ちょっと昔のノエならば、あの中絶のシーンも天井から見下ろすんじゃなくて、モザイクなしにめっちゃ目の前で凝視する撮り方してたろうに。甘い! とはいえ、オープニングとエンディングの強烈な文字の明滅はノエっぽくてよい。 [映画館(字幕)] 2点(2010-05-31 21:04:58) |
16. ヴェルクマイスター・ハーモニー
《ネタバレ》 シアターイメージフォーラムにて鑑賞。 145分もあるけど、冗長で退屈な長回しばかりなのでストーリーはのっしのっしと進んでいく。代わりに長回しを贅沢につかったダイナミックなシーンがとても見ごたえある。まず驚いたのは、クジラが入った巨大なトレーラーが、トラックによって運ばれてくるシーン。最初、遠ーくに小さくいるトレーラーが、大きなエンジン音でゆっくり手前に運ばれていく、奥から手前にむけて大きな照明がトレーラーを照らし、大きな影が壁に広がる。5分くらいかけて運ばれる。こんなに退屈で迫力満点な映画はない。実際こんな感じのシーンが繋がれていく。 ガスバンサント監督やジムジャームッシュ監督が影響うけてるんだそうだが、すごくうなずける。とくにガスバンサントに関しては撮り方とかパクリと言っても過言ではないくらい似てる。『エレファント』のときのようなステディカムによる死神のような人物の追跡や、『ジェリー』のときのような歩き続ける無言の男二人の無表情の横顔、おんなじことをこの映画はやってるし。 ただ、ガスバンサントが面白いかというと笑顔で首を縦に振りたいと思えない。 長回しのなかでとにかく印象に残るのが、音である。特に足音がガサガサうるさい。部屋に反響する食器のぶつかる音、子供がかき鳴らす太鼓の音、広場で焚かれる炎の音、ヘリコプターの爆音。そんなかんじでなんらかしら音がガガガガ止まない。きっと監督なりの意図があるんだろうけど、よくわからない。白黒の映像に環境音が栄える。 以上をまとめる限り決して面白い映画っぽく読めない。でもこの映画を見てよかったなーと思えるのが、ポイントのシーンで使われる音楽である。情感たっぷりに哀切に満ちたストリングス全力の音楽。もしかしたら特異な音律で演奏されているのかもしれない。青年がクジラを見つめるとき、暴動を起こす民衆が手を止めたとき、そしてエンディング、そういった要所要所で流れる。あれだけでもいいから聴くといい。 [映画館(字幕)] 8点(2010-02-28 03:12:11) |
17. マーターズ(2007)
《ネタバレ》 レンタルDVDだったからなのか、どうもスプラッターシーンが削られているような気がする。それくらい拍子抜けするくらい全然グロくなかった。エロくもないし。かといってオリジナル版を確認するほど魅力的な映画ではない。 「あの世を見る」という大義がいちおう彼ら彼女らにある以上、あの暴力の根拠がわかるので、さして残虐にみえないのだよ。『ホステル』みたいな大義のない(あえて言うなら自分の快楽のため)暴力だからこそ残虐であり、恐怖である。 そういう意味で、最後科学くんがつぶやいたクチパクは「くるしい」(綾瀬女子高生コンクリ事件での、女子高生の最後の言葉)でなければならないし、それを聞いたあの老婆は自殺してはならない。笑ってくれないと真の不条理にはならない。あの老婆の自殺は、映画を観た我々を赦してしまうようで、俺はマーターズ(証人)にはなれなかった。 [DVD(字幕)] 5点(2010-01-28 21:11:14) |
18. マリー・アントワネット(2006)
毎日毎日贅をつくし、トランプ遊びにふけっていたというのはつまり、すげー暇だったということだろう。それに耐えられる人ならいいが、耐えられない人だったらばさぞかし辛いだろう。そりゃあ失政もするわ。 [DVD(字幕)] 7点(2009-08-30 01:38:20) |
19. バーダー・マインホフ 理想の果てに
《ネタバレ》 間違った社会を変えたいと思うことはいいが、卑怯なやりかたはだめだ。卑怯者になりさがっていく活動家二世三世たちはなぜああなってしまったのか、映画後半は刑務所にいる一世の連中がメインになってしまったためよくわからないが、これから不安定になっていく日本にとって、そこをしっかり学ばなければいけないと感じる。 [映画館(字幕)] 8点(2009-07-29 17:41:46) |
20. レスラー
《ネタバレ》 主人公は娘にリトライしたとき、まあうまくいったが、娘に腕を抱かれたときに、絶対性的興奮していたに違いない。その証拠にすぐさまストリップ小屋に駆け込んで機嫌が悪くなっている。その時点でこの男を受け入れることができず、寝坊したのもおおいにうなずくことができた。 ラスト、ラムジャムを発動するかしないか考えたときに、ちらりとストリッパーを探し、見当たらなかったので、その身を投じたとみえた。彼の壮絶な地獄の人生はこれからだ。 [映画館(字幕)] 7点(2009-06-28 23:52:34) |