1. 真実の瞬間(1991)
《ネタバレ》 人道を無視した米国の赤狩りについては、誰よりも知っているつもりだった。しかしこの映画を見た瞬間、それは間違いだったことに気づいた。どんなに頭の中で理解していても、それは本当に知っていたことにはならないのだ。それほどまでに、深く強烈に胸に突き刺さる映画だった。 人間誰しも自分がかわいい。自分が罪に問われ迫害が及ぶとわかっていて、それでも自分の信念が貫き通せるだろうか。友の名をあげれば自分は許されるかもしれない、しかしその友は自分とまた同じような運命をたどる。誰かが勇気を持ってその連鎖に立ち向かわなければならないのだが、・・・。職や友人をなくし悲惨な体験を味わった主人公のどこにそれがあったのだろうか。 何と言っても、ラストのロバート・デ・ニーロとゲイラード・サーテインの迫力ある法廷シーンは見ものだ。またマリリン・モンローの「紳士は金髪はお好き」を初め、50年代の映画界の雰囲気を与えてくれるのにも好感がもてる。 [DVD(字幕)] 10点(2012-09-10 23:53:14) |
2. パリ、テキサス
こういう映画を心打つ感動の映画だというのだろうと思う。しかし昔映画館で見たときは、とてもすばらしく思えてもトラヴィスの心境を理解することができなくて、私自身この映画を封印してしまっていた。以来二十数年、DVDを手に入れてからもなお、わだかまりがあってもう一度見ようとしなかった映画、非常に良かったという印象はあっても、フランスのパリではなくテキサスのパリだということくらいしか思い出せなくなってしまっていた映画、意を決してようやくDVDを見た。すると見ているうちにどんどん記憶が蘇ってきた。そして最大の難所のラストシーンもありのままに受け入れることができた。これも当時ハンターよりまだ小さかった我が子が一人前になって独立するだけの年月が経っていたからかもしれない。 年月が経てば映画に対する思いも変わっていくものだとつくづく感じる。今では素直に10点満点。 [映画館(字幕)] 10点(2012-07-30 15:07:17) |
3. ニュー・シネマ・パラダイス
《ネタバレ》 郷愁を誘う素敵な音楽、映画史上屈指の評判を持つ映画、映画好きの人だったら間違いなく好きなると薦めてくれた友に感謝。少年から青年へと成長したトトと映写技師アルフレード、古き良き時代の想い出はとても美しい。 エレナと離ればなれになって傷ついたトトに「これ(映写技師)はおまえのやる仕事ではない」と冷たく突き放すアルフレード、最後に残ったキスシーンのつなぎ合わせ、映画ってやっぱり素晴らしい。 ジャンギャバンの「どん底」、ジョン・ウェインの「駅馬車」、ルキノ・ヴィスコンティの「ゆれる大地」、「チャップリンの拳闘」、・・・。この映画の中に出てくる映画を全部見ることができた人は何と幸せだろうか。 ところで99日目に立ち去った兵士の物語、あれは? [映画館(字幕)] 10点(2011-04-17 10:42:12) |
4. クリクリのいた夏
こういう映画って大好き、フランスの田舎も良いし友を大切にする気持ちも。心温まる映画ってこんなのを言うのだろう。都会の人混みのなかであくせく働くのが悪いとは言わないが、こういうほのぼのとした心を忘れないでほしいものだ。ノスタルジックな音楽もまた良い。これがあのエマニエル夫人の作曲家だったとは・・・。 [DVD(字幕)] 9点(2015-02-12 21:37:29) |
5. ピエロの赤い鼻
《ネタバレ》 以前見たときは、突然ピエロの格好をして見せたドイツ兵に驚くとともに、戦争中なのにこんなのがありうるのだろうかという違和感が先に出てなじめなかった。しかし何度か見直すうち、主人公の息子のように「ブラボー!」とさけびたくなるほどいろいろな思いがこみ上げてくるようになった。銃の代わりにピエロの赤い鼻をつけたドイツ兵、言葉は少なかったけど笑いの中に平和を愛する心が伝わってくる。冒頭で主人公がやっていた芸はそのドイツ兵がして見せたものだった。死を無駄にしないためにもピエロになりたい、主人公の思いがビンビンと伝わってくる。いやそれは戦争という悲劇を人を笑わせるピエロの姿で伝えたい監督ジャン・ベッケルの思いだったのだろう。この映画には爆破犯を目撃しながら身代わりとなっていくフェリクス老人、またその意志を引き継いだ老婦人マリー、もう何度見ても涙が止まらない映画になってしまった。 [DVD(字幕)] 9点(2014-01-19 07:59:27)(良:1票) |
6. JFK
「ダラスの熱い日」も大変衝撃的だったけど、この映画はそれどころではない。前者は仮説という印象が強かったが、「JFK」では証言証拠に加え綿密な理論に基づいている。それに引き替え、オズワルト単独犯としたウォーレン委員会では調査が行われなかったり、記録が残されてなかったりするなど不十分さが明らかで陰謀説が出てくるのは当然のことだろう。歴代大統領やキング牧師、それにロバート・ケネディまで暗殺されるとなると米国は病んでいると言われても仕方ないだろう。ただ映画の中の裁判では、オズワルド単独犯は証明できても、クレイ・ショーを有罪にできるかというと疑問である。 [DVD(字幕)] 9点(2013-12-31 23:40:22) |
7. 奇人たちの晩餐会
テンポが良く最高におもしろいコメディ、よくできている。これを舞台で見たら笑い出してしまうと思う。10点満点をあげたいけど、軽々しくバカバカと言ってほしくないので-1点。字幕と吹き替えと繰り返し160分続けて見てしまった。 [DVD(字幕)] 9点(2013-11-16 23:04:07) |
8. さよなら子供たち
「シンドラーのリスト」や「アンネの日記」などユダヤ人を扱った映画は数多くあれど、これはこれでまた良い。ルイ・マル監督の思いが込められたすばらしい作品だと思う。映画は途中までは学園ものかと思わせるほどの、微笑ましい日常生活が続くが、ドイツ占領軍のユダヤ人狩りは少しずつ迫ってくる。そしてひとつの密告から急展開に。 監督自身の少年時代の忘れられないできごとが基になっているため、とても説得力があるように思う。連行されるユダヤ人らを見送るラストシーンは、私自身も忘れることができない。なおピアノ演奏されるシューベルトの「楽興の時」第2番は、この映画に実によく合っていて、これまた心に深く刻まれる。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2013-05-28 08:43:56) |
9. 夜ごとの美女
夢と現実が入り交じったハチャメチャなストーリーだけど、よく見るときちんと筋は通っているし、何と言っても美女が3人も出てくるが大変良い。私のお気に入りの映画の一つ。他の人も書かれているように、夢と現実の行き来が大変スムーズで監督の手腕がすばらしい。笑えるところも十分笑わせてくれるし、夢の世界と現実の世界の人たちが同人物なのも良い。 [DVD(字幕)] 9点(2012-11-23 11:30:34) |
10. 愛してる、愛してない...(2002)
「アメリ」のヒットにいまいち着いて行けなかった私がここで挽回、オドレイ・トトゥの魅力をたっぷり味わうことができた。だけどオドレイ以上に良かったのは監督を初めとする制作者側だろうし、さらにもっと良かったのは脚本だろうと思う。ラブロマンスならぬラブサスペンス、フランス映画ここにありだ。途中挿入されるナット・キング・コールの"Love"がすばらしいが、エンディングの曲もまたすばらしい。 [DVD(字幕)] 9点(2012-10-09 06:03:37) |
11. 秘密と嘘
数々の映画賞に輝いた名作である。マイク・リー監督の代表作でありながら、見る順序が逆になって「人生は、時々晴れ」や「ヴェラ・ドレイク」より後になってしまった。それだけに、家族の絆や人間愛をテーマとする彼独特のスタイル(ヒューマニズム)を身にしみて感じ取ることができた。こういう映画はハリウッドでは作れないのだろうか。 [DVD(字幕)] 9点(2012-05-23 20:33:07) |
12. 死刑台のメロディ
《ネタバレ》 第1次世界大戦後の米国の不景気は、イタリア移民の労働問題、赤狩りという左翼弾圧など暗黒社会をもたらした。(この映画の中でも「米国はアメリカ人のものだ」とプラカードが目立った) その中で起こった銀行襲撃事件、たれ込みによってサッコとヴァンゼッティというイタリア移民のアナーキストが逮捕される。人種差別と偏見によって歪められた裁判、その不正に対して米国や欧州各地で抗議の声が上がるが、二人の被告は死刑になってしまう。 映画はカラーとモノクロの映像の対比が見事だ。そしてジョーン・バエズの歌が涙を誘う。 日本にも松川事件を初めとする冤罪事件が多々あった。しかし米国のような陰謀がらみの冤罪には驚くばかりである。 [映画館(字幕)] 9点(2012-04-18 00:07:56) |
13. 黄色い星の子供たち
《ネタバレ》 黄色い星とは、ユダヤ人を識別にするためにつけられた黄色の星のマークのワッペン、それによって彼らは公共の場から閉め出されることになる。 ナチスドイツによるユダヤ人虐殺は、ドイツ国内だけでなくフランスやポーランドも行われたことは知っていたが、ヴェル・ディヴ事件についてはよく知らなかった。ナチスの命令でもあったが、フランス政府もまたユダヤ人を一斉検挙し収容所に送り込んだのである。 この映画はヴェル・ディヴ事件のわずかな生き残りの証言を元に制作されたという。いわば第2次世界大戦の歴史の一部である。この事件は近く「サラの鍵」という映画にも登場するはずなので、それもぜひ見てみたい。 映画の中で一番印象に残ったのは、ユダヤ人に対し水を分け与え、手紙を預かった消防士たち、それを認めた人道的な責任者が登場するシーン。 くまの人形抱いたかわいらしい子どもノノ、そのノノと看護婦アネットが戦後再会するシーン。おそらく事件の時のノノと戦後のノノを演じた子役は兄弟なのだろう、驚くほど似ていた。 良い映画かどうかの前に、見るべき(見なければならない)映画だと思う。 [映画館(字幕)] 9点(2011-10-09 19:48:40) |
14. シベールの日曜日
《ネタバレ》 「孤独な男女の純粋無垢な魂の交わり」などと表現すると大げさだろうか。ピエールと同棲していたマドレーヌは、とまどいながらも二人を見守るうち良き理解者となった。しかし残念なことに相談する相手を間違えてしまったと私は思う。 端から見るとピエールはロリコンとか変質者としか見えないのだろう。それが世間一般の常識だ。ナイフを持ったまま女の子に近づけば、結果は当然予想ができる。しかしそれがどんなに悲しいことか。ラストのシベールの叫びは、教会音楽の「ミゼレレ」と重なって、深く心に突き刺さる。 二人が会っていた湖の景色が美しかった。 [DVD(字幕)] 9点(2011-10-08 22:55:12) |
15. ひまわり(1970)
《ネタバレ》 広大に続くひまわり畑の美しさとヘンリー・マンシーニの哀愁を帯びた美しいメロディー、美しい風景と美しい音楽の映画と言えば、私の記憶の中では真っ先にこの「ひまわり」が浮かぶ。それほど強烈な印象を持つ映画であり、名作中の名作と言ってよい。 それと「自分の夫は必ず生きている」と信じて、遠く離れたウクライナの地まで夫を捜し求める妻のいじらしさに思わず涙が出てくる。やっとの思いで探し出した時、夫は雪原で倒れていたところを助けてもらったロシア女性と暮らしていた。 甲斐甲斐しく尽くす若きロシア女性マーシャ、戦争という長い年月で疲れ切ったジョバンナ、二人は言葉を交わさずとも、瞬時に相手が何者かを知る。 何かメロドラマにもあるようなストーリーは日本人の共感を呼びやすく、それでいて、はるかにスケールの大きいドラマである。 蛇足ながら、ソフィア・ローレンにとってこの映画は2年ぶりの映画出演になった。それは、この映画の制作者であるカルロ・ポンティの愛児を出産したからで、映画の中の赤ん坊は何とその実の子である。 [映画館(字幕)] 9点(2011-06-26 23:01:31)(良:2票) |
16. 禁じられた遊び(1952)
《ネタバレ》 大昔見たときは、いくら善悪の判断がおぼつかない子供たちとはいえ、十字架を盗む、お墓をいじるという行為に少なからず抵抗があった。しかしその後何度も映画を見てからは、それも許せるようになった。それだけ私自身が成長したのかもしれない。 この映画では「反戦」という言葉は使わなくても、それが十分に伝わってくる。どんなに相手が悪いことをしても、最終的には大きな心で許すということ、それが反戦、平和に繫がってくるのかもしれない。 この映画の幼い二人の演技は、演技であることをまったく感じさせない。人はそれを「神かがり的名演技」と言う、他に言葉が見つからないのだ。 私は大学の頃、クラシックギターを弾いていたが、この曲のテーマ「愛のロマンス」を何度も何度も弾いたのは言うまでもない。 [映画館(字幕)] 9点(2011-05-01 18:37:01)(良:1票) |
17. マルホランド・ドライブ
この映画はもう5回は見ただろう。見直す度に新発見が出てくる映画、私は好きだ。映画はわかるかわからないかではないし、よくできているかどうかでもないと思う。 評価は10点満点でなく、9点にしておこう。-1は自分でも何なのかわからない。わからないからまた見るだろう。 [DVD(字幕)] 9点(2011-02-26 23:32:22) |
18. シェルブールの雨傘
《ネタバレ》 1960年代は、「サウンド・オブ・ミュージック」から始まって、ミュージカル映画が日本で上映されると逃さず見たものです。 この映画もその一つ、フランスのミュージカルということで期待して見に行ったのですが、びっくりすることばかりでした。 まずはオープニング、雨の歩道にカラフルな雨傘、流れる主題歌、もうたまりせんね、なんとお洒落なのでしょう。 そして台詞がすべて歌ということでびっくり、カトリーヌ・ドヌーブさんはすばらしい歌手だと思ったら、すべて吹き替えだったということで、またびっくりでした。 後に私の好きな「ふたりの天使」を歌ったダニエル・リカーリさんとわかって、またまたびっくりしたものです。 [映画館(字幕)] 9点(2011-02-21 08:09:48)(良:2票) |
19. 舞踏会の手帖
一つ一つのエピソードが変化に富んでいて味わい深く印象に残る映画だった。ジョルジュの母親を含め20年ぶりに再会した相手が個性的で名優の集まりにも思える。Valse Grise(灰色のワルツ)のメロディーがいつまでもこころに残る。 [DVD(字幕)] 8点(2015-06-02 20:57:47) |
20. バツイチは恋のはじまり
ダイアン・クルーガーの映画は何本か見たけど、こんなにおもしろいラブコメは初めて。ダニー・ブーンとは「戦場のアリア」以来の共演だそうだが、記憶に残っていない。もちろんダイアン・クルーガーの印象は強烈でこんなに美人過ぎる美人がいることに大変驚いたものだ。その美人のラブコメともなればもう私にとっては・・・。パリからケニア、そしてモスクワとひとっ飛び、ライオンが出てきたり無重力になったり・・・、とにかくお勧め。 [DVD(字幕)] 8点(2015-05-01 18:45:00) |