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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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1.  フェリーニのアマルコルド 《ネタバレ》 
「アマルコルド」とは北部イタリアのリミニ地方の古い言葉で“エム・エルコルド”(私は覚えている)。 この映画は、1930年代を舞台にフェリーニが忘れられない1年を語り、春夏秋冬で彩られ2時間をあっと言う間に駆け抜けるコメディだ。 桜の花びらが舞い、春一番が吹く港町。 夜になれば、からくたの山に冬の女神の人形を掲げて火を放ち、寒い冬が明け暖かい春の訪れを祝う祭りを開く。 ブラスバンドの演奏を、拳銃や爆竹の“音色”で盛り上げる狂騒振り。劇中で幾度と無くバイクが猛スピードで路地を走りぬけ、盛大に燃やされる古い家財道具の山、盲目のオルガン弾きや狂女の、群衆が奏でるアンサンブル! 祭りは終わっても、街には人々の歓喜や悲鳴がこだまし続ける。 食卓での大喧嘩。息子がお手玉をしだせば、爺さんは屁をブッ放しオトンはキレだしテーブルクロス引きを失敗、オカンもブギレまくりの大騒動。お父さんの血管がいつ切れてブッ倒れるかと心配になる。頭にコブ?みたいな変な塊もあったし(お父さんの“マグマだまり”かな)。 それにしても、フェリーニのこの時期の映画はふくよかな女性が多いこと。あれだけふくよかな女性を下品かつ妙なエレガンスすら感じさせて撮れるのは凄い。 子供がその豊満なバストにむしゃぶり付くシーン。まったくエロくないのが凄い。それよりも、馬車の上でたたずむ赤いドレスマダムのの方がずっと色っポイとはどういうワケだ。服を一枚一枚脱ぎ、後はベットで愉しんで下さいってか。エロイッす。 ムッソリーニの出来そこない見たいな軍隊どもの行進。彼らはヴァイオリンの演奏に銃弾の雨を下から浴びせ、鐘楼を打ち落としその響きで演奏を締めくくる。 宮殿におけるアラブ風のベールに包まれた腰の締まった妖艶な美女たちのダンス。もっと長く見たかったなー。 夏には蝉の代わりに狂男が半日叫び続け、船に揺られて盛大に遭難。 霧の中でのダンスシーンは凄いぜ。霧がたち込め手探りで前へ進み、男たちは踊る女性の相手がいない寂しさを友達と手を繋いで埋めるのであった。 秋は車やバイクが猛スピードで走り去るようにあっと言う間に過ぎる。 冬は雪合戦でみんな真っ白、雪と共に広場に舞い降りる孔雀が美しい。 葬式でちょっぴりしんみり、その次は結婚式で新しい命が生まれる事を願いながら映画は幕を閉じていく。再び桜の舞い散る港を映しそれぞれの“春”を祝福するのである。
[DVD(字幕)] 10点(2014-11-30 10:44:00)(良:1票)
2.  やぶにらみの暴君 《ネタバレ》 
城の遠望、赤い垂れ幕でシルクハットを被った鳥が挨拶をする場面から物語は始まり、赤い垂れ幕があがると、やぶにらみの暴君こと城の王が“狩猟”をする場面に切り替わる。 自動で動くイスにふてぶてしく腰掛け、横には子犬を従え、周りには彼を守る黒ずくめの衛兵が居並ぶ。 王が猟銃で撃ち殺そうとする小鳥をさっと助け出し、王を象った彫刻の上で高らかに王を罵る鳥。 王も天空を我が物顔で飛び回る鳥を忌々しく睨み付け、引き金を引く。衛兵も短筒をブッ放しまくる。 機械仕掛けのリフトで移動し、1999階もある高い城塔に君臨する王。気に喰わない事があれば手元の“お仕置き”ボタンで奈落の底へと突き落とす。 とにかくこの映画、衛兵が落ちれば王も盲目の演奏家も羊飼いも落ちて落ちて落ちまくる。 権力で何でも意のままになると思い込む王だが、流石に二次元の中に居る女の子には手を出せないようだ。その横に並ぶ少年にも、彼は睨み付けるだけで手を出さない。ところが、その絵の方から次元の壁を抜け出し、三次元の世界へと来てしまう。 経験豊富そうな馬に乗った賢者、そして王自ら描いた王の肖像画まで動き出し、書き手そっくり、創造主である本物の王から王位を“剥奪”してしまう。 特殊な飛行機から“落下傘”を開いて降りてくる衛兵たち。 その傘は、王から下される処刑を回避するためにも使われる。 王が後を去った部屋で、その罠を回避すべく高速でステップを踏む衛兵の姿がシュール。衛兵の「お慈悲を・・・」の言葉を聴いてか聴かずか、静かに後を去っていく王の姿もまた何とも。 アヒル姿の水上バイク、白い鳥が作り出す“彫刻”、突然現れ歌いだす船の船頭、ムササビだかコウモリのように飛び回る衛兵、地下都市で太陽を望む人々、鍾乳洞に眠る巨大ロボ。巨大ロボの暴れ振りが凄い。羊飼いを“脅す”シークエンスは冷やりとする。 煙突掃除がヤケクソになって王の顔に落書きをする場面は爆笑。 地下都市に眠る獅子や黒豹、虎、白クマたちは胃も心も飢えていた。 音楽に“魅せられ”、二足歩行で踊り、決起して大行進する獣たち! 獣もロボットも「悪い奴らじゃない。扱い方次第さ」のセリフがグッとくる。 良いも悪くもリモコン次第、操縦桿を奪い取り王を“吹き飛ばす”、城を守るためのロボットが城砦で暴れまくる皮肉。 物語はうなだれるロボット、首だけになった王の像、そして記念撮影で幕を閉じる。
[インターネット(字幕)] 10点(2014-11-29 21:28:15)
3.  穴(1960) 《ネタバレ》 
ジャック・ベッケルはフレンチ・ノワールで数々の傑作を手掛けた。 元々フィルム・ノワールはドイツのフリッツ・ラング「M」やジャン・ルノワールの「十字路の夜」が原型として広く知られているが(知らない?じゃあ今すぐググレ)、アメリカの「暗黒街の顔役」や「マルタの鷹」以来すっかりノワールのお株はアメリカに奪われてしまった。 そんなフィルム・ノワールをフレンンチ・ノワールとしてフランス・・・つまりヨーロッパに復活させた監督の一人がジャック・ベッケルだ。  宇宙刑事ジャン・ギャバンが売れたのもルノワールとベッケル様々です(ギャバンの本体はタバコ)。  そんなベッケルの傑作は「アラブの盗賊」「現金に手を出すな」「モンパルナスの灯」「幸福の設計」「肉体の冠」と豊富だが、最高傑作はやはり「穴」になるだろう。 戦後実際に起きた脱獄事件をモデルに、刑務所内における一大脱獄劇をスリル万点に描いていく。 見張りの目を盗んでのやり取りは終始ドキドキの連続で、何時警備員が飛び出して来るものかと緊張の糸が絶たれない。  土まみれになりながらも穴を掘り続ける男たちの力強さ、鉄格子よりも硬い囚人たちの絆。漢の映画だぜ。 女っ気の無い作品だが、“5人”に会いに来た「あの女」は囚人たちの絆にヒビを入れるファム・ファタールだったのかも。  ラストの壮絶な展開には唖然としてしまったが、最後まで見事な作品だった。もっとベッケルの作品が見たかった。惜しまれる。
[DVD(字幕)] 10点(2014-03-11 23:57:55)(良:1票)
4.  96時間 《ネタバレ》 
この映画は、孤独な男が娘を見守り続ける平穏から始まる。  誕生日、ビデオ、母と娘を映す誰かの視点・暗い部屋で見つめる写真。 プレゼント、パーティー、抱擁、繰り返される撮影、馬、プレゼントの差。  扉を開けたら押しかける仲間たちの慰め、護衛仲間とトランプ 電話。   激しい戦いが起こるだろうと期待を抱かせるのは、10分を過ぎた辺り。 優しき父親は危機を察知すると仕事人の顔つきになり、キャメラも微かに揺れ出し不安を煽るようになり、押し寄せるファン、影に潜む刺客を取り押さえ守り抜くボディーガードの身のこなし。  一息、カフェで家族団欒…できない渡される紙とペン。  地図、別れの撮影、「電話してね」とお父さんは心配なのです。  ナンパ、観客に予告してしまうもの、「裏窓」さながらに窓の向こうで目撃するもの、嘆きを聞いて即座に行動に移るプロフェッショナリズム、アドバイス、ベッドからの視点・叫びだけが伝えるもの。  繰り返し聞いて得ようとする手掛かり、募らせる憎悪。  手掛かりを得るためなら壁を這いガラスをブチ破る! 残されたもの、推理、想像、情報収集、“鏡”に映っていたもの。  初対面に鉄拳浴びせまくる捜索者、巻き込みまくる大迷惑、狩人は車の中でとっ捕まえて殴りながら尋問、車を盗みまくる追跡、犯人も橋から飛び降りてまで必死、空回り。  女に執拗に絡むのは獲物を吊り上げ“信号”をつけるため。  腕に刺されたもの、布に覆われたもの。巻き込まれた女、女、女たちの顔、顔、顔。  斜面を敵の車ごとブッ転がしながら駆け下りるチェイス、窓に落ちるもの、壁だろうが建物ごとブチ破る。中指を立てる報告。 配線イジッてまた盗車。  ハンガーを折り曲げて吊るす治療、電話の行方。  手に刻まれた印、取り引き、声の“一致”。  机をひっくり返し、敵の得物で大暴れっ!!容赦なく拷問、膝にブッ刺す電気椅子、唾には電流でお返事、放置プレイ。  洗面所に隠していたもの、手から顔面に浴びせるもの、容赦なく引き金を引く覚悟、平手打ち。  オークション、窓の向こうで見たもの。  買い物、お約束…あるいは娘を救いたいがために信じられないパワーを発揮したのか、蒸気。  橋の上から船に飛び乗り、武器を手に入れ、扉の窓、扉越し、閉鎖空間における一騎打ち。  敏を割りまくり、足を引きずってでも迎えに行く!  締められる扉とともに終わる物語。  制作はあのリュック・ベッソンだ。 「レオン」で「リバティ・バランスを射った男」のクイズをジャン・レノに出題させたあのベッソンである。 ベッソンと監督のピエール・モレルはジョン・フォードの傑作「捜索者」も見ているに違いない。
[DVD(字幕)] 9点(2016-12-15 04:18:44)
5.  ミッション:8ミニッツ 《ネタバレ》 
この映画は、もしも運命を変えることが出来るなら…という願いも込められた作品なのだろう。 変えようと足掻き続けた者の、それを見守り続けた人々の表情と葛藤。  海岸沿いにそびえる摩天楼、列車、窓にもたれかかり眠りから目覚める男。 相席で話しかける者、胸ポケットから取り出すもの、電車内で蠢く人々、窓に映るもの、鏡、写真、列車内を奔る“風”が無情に告げる別れ。  目覚めた先で見たもの、窓の向こうで動く人々。  繰り返される光景と“8分”、視点変え、“変える”ための行動、登った先にあるもの。 ぶん殴ってでも黙らせたかった、救いたかった。 “戻る”度に刻まれる異変。  挨拶、聞き出す名前、人間観察、荷物、口づけ、中から外への追跡、隣に座った後にぶん殴る。  “出る”…いや“繋がる”ための足掻き。移動、懐中電灯でこじ開けるもの、紙に記る“印”、電話、駆け巡る記憶、焔。  突き付けるもの、扉が閉ざされるならこじ開けるまでよっ!  ポケットの中身、車越しに倒れるもの。  選択、共謀、迫り来る時間、時が止まったように残され完全に切り取られる“一瞬”、箱の中身。
[DVD(字幕)] 9点(2016-12-15 04:16:08)(良:1票)
6.  モンパルナスの灯 《ネタバレ》 
マックス・オフュルスが計画していた企画を、ベッケルが受け継いだ傑作。  人々が談笑し酒を嗜むカフェ、机の向こうを見つめ何かが終わるのをひたすら待ちわび、隣で見守り、窓の向こうで振り返り、何かを紙に書き続ける男たちの姿。 不満げな反応に酒代まで払うと言われ、それに紙を破いて返答する意地っ張り。この映画のモディリアーニは芸術家ではなく、酒と芸術に“酔った”ろくでなしとして描かれていく。  ベッケルの興味はモディ(モディリアーニ)の絵ではなく、彼そのものが破滅していく様にあるのだろう。「この物語は史実にもとづくが、事実ではない」と一応断りを入れて好きに描いてやろうという具合。  女と近づき寝るために彼女たちを描いているような気さえしてくる。熟れた御婦人も、うら若い乙女も、階段を力強く登り灯の管理も手ぬかりない大家まで心を奪われそうだ。  酒と雨を浴びるように楽しみ、貰ったばかりのマフラーもびしょ濡れにし、酒のツケはたまり放題、鍵が無いからといって体当たりでドアをこじ開け、酔った勢いで平手打ちを浴びせるなんてことも日常茶飯事らしい。  だが絵は売れなくても不思議と彼の世話をし“巨匠”と親しげにしてくれる親切な知人には恵まれる。 色男というだけじゃない。自分の好きなように絵を描き、それが曲げられるくらいなら殴り合いさえ辞さない覚悟、すべてに絶望した虚ろな眼差しを自身の絵にも描きまくり、己を貫くためなら死んでも構わないという危なげな姿をみんな放っておけず駆け寄ってしまう。だがその優しさも過ぎれば単なる甘やかし、モディを破滅に向かわせる原因の一つにもなっていく。  でも暴力を振るわれても隣に座り、甘い声で謝られてしまったら…モディに関わる女性たちは何もかも寛容に、気づけばほつれたボタンを付け、マフラーを首に巻き、一夜を過ごし肉体まで許してしまうのだ。繰り返される口づけのような抱擁。  閉ざされた扉を叩く虚しい響き、画塾に通い詰める人々のタッチとそれぞれのモデル、出遭った瞬間に惹かれ合い絵によって結びつく恋、扉を閉ざす待ち伏せ、鍵を閉める沈黙、ダンスホールで踊る人々を反射する鏡、外人部隊の国だからか黒人もアジア人も自然に溶け込む街。  葛飾北斎のように絵を広告として活用することを選んだ者も入れば、モディのように金で思うがままにされることを許せなかった画家たちもいただろう。 尊敬するゴッホを侮辱されたと思い“苦悩を忘れるためだ”と情熱を持って擁護する。表に裸婦の絵を置いて歓迎しているとは思えない態度だった者が、愛する者のために売り払い“かなぐり捨てる”ことが出来なかったくだらねえプライドが、あの瞬間だけ光り輝いて見えた。街の片隅でヴァイオリンを弾く孤高の奏者に向けたあの一瞬の輝きを。  女はそんな男を最後まで慕い続けた。札束も身も投げようと狂っていた男を正気に戻す女の眼差し。ベッドで睡眠を貪る傍らで内職までして尽くす。  その視線を誰も向けてくれなくなり、絵を突き返され金を“恵まれる”ことが繰り返された瞬間…高すぎたプライドは崩れ去り、絶望に向い歩み始めてしまうのだ。 薄れゆく中で見たもの…。    そんな彼等を嘲笑うように、黒い帽子姿で現れる死神のような画商。 くたばるのを待つように見守り続け、胸像を投げ破壊された窓ガラスの向こうでさえ挑発を続ける不敵な笑み。とぼけた表情で挨拶をし、馬車を走らせ、札束のように掲げまくる絵、絵、絵、顔、顔、顔!
[DVD(字幕)] 9点(2016-12-01 09:26:29)
7.  メリエスの素晴らしき映画魔術 《ネタバレ》 
ジョルジュ・メリエスに関するドキュメンタリー映画。  冒頭の「月世界旅行」における月に近づいていくシーンに始まり、1890年代の世紀末のパリの様子、メリエスの生涯や映画環境の変化、リュミエール兄弟、チャップリンに影響を与えたマックス・ランデー、チャップリン、メリエスの様々な作品のワンシーン、アイデアを書いたメモやイラスト、生前の写真や撮影風景をメリエスの肉声を交えながら映していく。   それを手回しのキャメラで見せ、聞かせてくれるような演出が面白い。   メリエスのアイデアが残されたイラストで幾つか気になったのが、首を切った筈の人間が追いかけてきたり、布をかけて女性を消す手品(「ロベール=ウーダン劇場における婦人の雲隠れ」)のタネなど。                実際のマジシャンだったメリエスの豊富なアイデアには驚かされる。  監督したコスタ=ガブラスも語り、ジャン=ピエール・ジュネ、ミシェル・ゴンドリー、ミシェル・アザナヴィシウス、俳優のトム・ハンクスまで様々な人間がメリエスについて語る。  サイレントのフィルムに爆発音とかを入れたフィルムもあったな(このドキュメンタリーのために付け加えたのだろう)。  撮影当時を再現しようとする試みも面白い。  14分を過ぎたあたりでいよいよ「月世界旅行」の話題に。メリエスを代表する映画と言ったらコレだし、自分でカラー化までしちまうんだからメリエス本人もかなりの思い入れがあっただろうな。 スペインのメリエスことセグンド・ド・ショーモン(Segundo de Chomón)によるリメイク「Excursion dans la lune」まで取り上げるんだからガブラスたちも凄いぜ。   ジュール・ヴェルヌの原作の挿絵、もう一つ映画の元になったハーバート・ジョージ・ウェルズ(H・G・ウエルズ)の作品群、エイリアン。 再び挿入される月に近づいていくシーン、トム・ハンクスによる月面に着陸した探査機を背景にした語り。 当時の映画館に詰めかける人々の表情、エジソン、ニューヨークの摩天楼。当時の人々が映画で夢を描いたように、現代を生きる我々は過去の作品に懐かしさを覚え、今を見つめ直す。    「月世界旅行」のカラーフィルムの修復風景。 色鮮やかなカラー、1カット1カット丁寧に着色していく。   空を飛ぼうと挑み続ける人々の姿、宇宙の前の大空、アニメーション、進化していく映画、移りゆく時代のうねり。まるでチャップリンがあの光景を劇場で見ているような編集が面白い。 火災、風刺画、トーキーの時代、見る影もない晩年のメリエスの姿が見ていて辛い。葬儀の一部を収めたカラーフィルムから現代のロケットの打ち上げへ。   劣化してしまったフィルムの様子は寒気がする光景だ。溶けて変色してしまったフィルム。  それを防ぐための作業風景。 フィルムを透明な鍋に入れて、スープのように保存し、フィルムを傷つけないようにフィルムを差し込んで少しずつ剥がし、それを一枚一枚カメラで撮影していく。 デジタル技術の進歩はよりフィルムを蘇らせられる良い時代になったと思う。切り貼り、気の遠くなるような作業、専用の洗浄液・・・どれも映画が好きだからやり遂げられるのだろうな。   最後はカラーフィルムで「月世界旅行」の“あの場面”をもう一度映して終わる。
[DVD(字幕)] 9点(2015-07-30 15:58:55)
8.  二十四時間の情事 《ネタバレ》 
「ヒロシマ・モナムール(広島、我が愛)」。  「君は何も見ていない」という言葉は、アラン・レネ自身の自問自答がこの映画に刻まれているのではないだろうか。 「夜と霧」がそうであったように、人が殺された“跡”とそれを記録したフィルムを通して見たにすぎない。直接あの惨状を見てはいないのだ、と。 レネが冒頭で原爆の惨状を伝えるフィルムとして関川秀雄の「ひろしま」を選らんだのも、あの日を経験した・あの日に家族や友人を失った者が大勢参加したフィルムだったからだろうか。岡田英次も「ひろしま」に出ていたのだから。  原爆資料館、被爆者を治療する映像、それを再現した映画が重なり、2人の男女が情事にふけながら広島の話をするのである。いや、話すのは広島にとって外部の人間であるエマニュエル・リヴァ。岡田英次はそれを黙って聞くように彼女の体を抱き続ける。人の死が刻まれた映像と共に二人は新しい生命が生まれる勢いで性交を続けるのである。 「夜と霧」が「死」だけの描かれたドキュメンタリーとして終わったならば、この映画は「死」の次にある「生」を交えながら描こうとしたのだろうか。 さすがにあれだけズッコンバッコンされると平手打ちどころじゃないけど。岡田英次もちょっと殴りたくなったわ。  2人の男女は心の中に戦争の傷跡、見えない傷が刻まれている。家族を失った男、最愛の恋人を失った女。2人は共通の痛みで接近するし、また完全な理解者にはなれないだろうという心の距離も置いている。自分の故郷にいる岡田英次は尚更だ。それは英次にとってもリヴァの過去を知らないという問題が出てくる。  リヴァもまた自分の愛した軍人と、軍人として生きていた英次の境遇を重ねているだけ。同情?興味本位?疑問が浮かぶ関係の二人は心の底から愛し合っていない。冒頭で二人の肌を覆う灰?のような粉が消えていくのは表面上の事に過ぎない。  広島のデモ行進で呼び起される彼女の記憶・「手」に刻まれた忘れることのできない記憶。冒頭シーンからして手、手、手が映される。 広島が変わりゆく街並みの中で「あの日の惨劇を絶対に忘れるものか」といたるところで叫ぶように(デモのプラカード、写真や絵まで混ざる遺影の生々しさ、被爆した人間のようなメイクを施して祭りを見物する人々、メイクで背中の火傷を再現する描写など)、女も英次に恋人の面影を狂ったように求め始める。  リヴァが悩んだ次は英次が悩む。英次はリヴァの記憶を直接見ることは出来ないのだから。リヴァが思い浮かべる故郷ヌヴェールの姿も英次は恐らく知らない。この瞬間に2人の男女の間に決定的な心の壁が生まれる。 英次がストーカーまがいの行為までして彼女を追うのも、それが悔しくてしょうがなかったのだろうか。自分も彼女も何も知る事が出来ないという点じゃ一緒だ、と。  その見えない壁は、ラストでそれぞれの故郷の名で異性を呼び合う瞬間まで存在していたのではないだろうか。何て事を思ってしまう。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-19 13:06:26)
9.  ミニミニ大作戦(2003) 《ネタバレ》 
ピーター・コリンソンの「The Italian Job」も洒落た逸品だったが、俺はF・ゲイリー・グレイの「Italian Job」の方が好きだ。  冒頭の金塊を奪うまでのシークエンス。階の違う得物をピンポイントで奪い去る緊張、裏切り、犠牲。ヴェネチアでの水上チェイス! 冒頭から穴という穴に得物を追い込んでいく。  その後に出会う凄腕の“娘”。小さくて可愛いミニ・クーパーSやアストンマーチン・V12ヴァンキッシュといった車が市街や地下鉄、下水道を縦横無尽に駆け巡るカーチェイス。 「マネーボール」やクリストファー・ノーランの傑作群の撮影を担当したウォーリー・フィスターのカメラワークを見よ!  小さな穴という穴を飛び越えるような楽しさ。それを追跡するバイクやヘリとのおにごっこ。 得物を狙うチームの絆も魅力的。ドイツもコイツも楽しそうな顔でマシンを走らせやがる。流石「交渉人」の監督だぜ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-15 16:56:14)
10.  戦争・はだかの兵隊 《ネタバレ》 
まずは、記事の作成に御協力して下さった鱗歌さんに感謝、感謝ですっ!  マリオ・モニチェリによる傑作戦争コメディ。 ニーノ・ロータの穏やかで何処か哀しさもある音楽が印象的。 舞台は第一次大戦。徴兵検査から訓練、一時の平和から一気に戦争へと突っ込んでいく内容。 徴兵をちょろまかそうとするが騙されて結局軍人となってしまう前科者のジョバンニ、 ジョバンニを騙して金をくすねたが紆余曲折を経て相棒となる衛生兵のオレステのデコボココンビ。 物語はどんどんシリアスになっていくが、ところどころに転がるギャグでクスクス笑ってしまう。 くすねた煙草をくすねた相手に勧めたり、列車の上での追いかけっこ、手榴弾のインク、ドアでのやり取り、特にジョバンニとコンスタンチーナの“再会”シーンは爆笑。 そもそもイタリア人がノリノリでナンパしているだけでも笑ってしまう。ドサクサにまぎれて人妻の胸を揉むなよ・・・w ニワトリの件も和んだ。  だが、戦争となるとシリアスだ。 爆弾に火を付ける作業は怖かったし、鉄条網を伏せて不意を付いたり、食事中の敵兵を撃たなきゃならない辛さ、ボロボロの兵士たちを見て歓迎パレードが葬式の通夜のように静まり返る場面、遠くで閃光が飛び交い味方が焼かれているというようなシーンは凄かった。D.W.グリフィスの「國民の創生」を思い出した。  戦いは冬から春へと移っていく。 街での“別れ”のシーンは切ない。 雨の中での砲撃は火薬が湿気らないだろうか? ラストは哀しい結末だが、軍人として、そして仲間のために秘密を守って散っていく姿はカッコ良くて胸に迫った。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2015-01-02 21:41:03)
11.  バリー・リンドン 《ネタバレ》 
ほんとうに長くて疲れる映画だったが、見応えのある傑作だった。 やっぱりキューブリックの戦争映画にハズレなしだね。  決闘の場面からはじまるファースト・シーン。 イギリスの簡素な自然の美しさが、劇中の寒々しさをより引き立てる。 主人公の日常も“賭け”からはじまる。 「体の何処でもご自由に。勇気があればだけど(笑)」 ほほお~積極的ですね~。けしからんおっぱいしやがって・・・うらやまし(ry  バリーもまた嫉妬と意地で決闘を申し出る。決闘の度に流れる淡々としたドラムロールが痺れるぜ。 若気の至り、だがバリーには若さと「もっと暴れたい」というエネルギーが有り余っていた。  追われる身となったバリーは紆余曲折を経て真紅の征服に惹かれ軍隊に。それにしても礼儀正しい追いはぎだ事。 馬も金もない、あるのはくいぶちを稼ぐために軍隊に入ろうという気力と覚悟だけ。バリーは七年戦争へと参加する。  血気盛んなバリーはどんな決闘も受けた。 殴り合いのシーンは「拳闘試合の日」を思い出す。  バリーと策士グローガンの友情、 軍隊としての戦い。 一斉射撃の様子は火を放つようだ。 別れは同時にバリーの生存本能を揺り動かす。 身分を偽り、 ささやかな交流、 嘘も方便、しかし嘘は次の地獄へとバリーを誘う。 バリーはどんな過酷な地獄も生き残った。 その本能が人脈や新しい絆を結んでいく。 兵卒から伍長、二重スパイ、そしてギャンブラー。バクチのような人生を送り続ける。 バリーは“取立て人”として剣の腕を振るっていた頃がピークだろう。 だがバリーは取り返しの付かないミスを犯してしまった。それは結婚相手を間違えてしまった事だ。公然と死が迫る人間に向って死の宣告をする大胆さと度胸、おごり。 ココまでは栄光に満ちた半生だが、後半はバリーが不幸のどん底へと堕ちていく。 バリーは女の本当の気持ちを知らなすぎたのだ。 つうかタイミングを考えろよコイツ。  重なる不幸はバリーの心も蝕んでいく。  ブリンドンの“戦線布告”は昔のバリーを思い出す。ブリンドンの覚悟は足りなかったが、バリーはその意気を買ってあえて身を引く。いや、昔の自分を見るような自己嫌悪だったのかも。  「ルドビコ」って「時計じかけのオレンジ」?  とにもかくにも、ラストは暗い終わり方だったが美しい者も醜い者も今はすべて同じあの世なワケです。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-31 22:07:47)(良:1票)
12.  TAXi 《ネタバレ》 
DICK DALE & his DEL TONESの「MISIRLOU」は最高の波乗りBGM。  それを冒頭、フランスの市街をバイクで駆け抜けるシーンに使った! タランティーノはコレをオープニングで使っておきながら、またかったるい会話を始めやがってテンションを下げるという“無駄遣い”をやらかしてくれた。 別にタランティーノが嫌いとかそういうものではない。 ただ単にこの映画みたいに初っ端からブチかまして欲しかっただけなんです。 そんなワケで、この冒頭部分だけはジェラール・ピレスとリュック・ベッソンを支持したい。   本作は中身投げ捨て、ひたすら車で走りまくるカーアクションムービー。 CGエフェクトがかかっているだなんて信じられない中々の迫力。  純然たるフランス映画よ。 シャレオツ(死後)な若者、性欲に走る上品なエロ、それをアメリカナイズなアクションでブッ壊すベッソン。 でもいきなりキスして胸を揉むのはNGな。  気軽に楽しめる快作。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-19 19:49:45)
13.  ル・アーヴルの靴みがき 《ネタバレ》 
今もヨーロッパに根強く残る移民問題をユーモアを交えて描いた作品。  フランスはのどかな町ル・アーヴルで元気に暮らす人々。 ビンボーで金も無い、でも心は誰よりも豊かという良い人ばかりだ。  住民がアレコレして少年を守ろうとする姿はとても楽しく、とても健気で泣けてくる。  病気を夫に隠す奥さんのセリフはさらに泣ける。  今の世の中、悪い事ばかりだ。でも、たまにはこういう良い人しか出て来ないような映画があっても良いじゃないか。  靴屋の店主が必要悪だと思うとまた泣ける。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-16 22:49:26)
14.  グレート・ブルー 《ネタバレ》 
これこそリュック・ベッソンのオリジナル「グラン・ブルー(グレート・ブルー)」。 ベッソン最高の映画はコレだ。  ベッソンは「○○狂」という一つのテーマがある。 後の「TAXI」はスピード狂、 「レオン」は「グロリア」を骨子に殺しに取り憑かれた者たち、 そして「グラン・ブルー」は海に“魅せられて”しまった男たちを描いた。 ジャックとエンゾは対照的な人物だ。 劇中のマイヨールは“静”だが本当は“動”を求め、 劇中のエンゾは“動”だが本当は“静”を求めていた。 動=生、静=死・・・実在の二人は劇中と正反対の生き方をしたと言える。  この「グラン・ブルー」は海に魅せられた二人の男、それに惚れてしまった女性の葛藤を描いている。 何処までも蒼く澄んだ海、全てを飲み込みそうな深淵・・・母親のような海に育ち、その美しさに溺れたくなったのだ。  だが人間は人魚でもイルカでも無い、陸の上で生きることを宿命付けられた存在だ。 ダイバーたちの海への挑戦は、そんな「運命」に逆らおうとする行動なのかも知れない。  二人の男は幼いころから海に生き、海のためなら死んでもいいというほど海に惚れ込んでいた。 彼らの命懸けの行動。 それは青春であり、生きがいであり、母親であり、何より最愛の異性でもある“海”に「認めてもらいたい」という純粋な思いがあったのかもしれない。 まるで恋人を奪い合いうように記録に挑み続けた二人。  ジョアンナはそんな彼らを受け止めきれない。 自分よりもイルカと一晩中たわむれる男なんてそりゃ呆れるわ(ベッドも海もジャックの股間は絶好調)。 そんなひたむきな所を好きになってしまった母性、「あの女(海)からジャックの心を奪えるほどの魅力が自分には無いのでは」と悶えるジョアンナ。 何この三角関係。  ジャックの海への愛着は、ジョアンナには「狂気」に見えたのかも知れない。 水中でイルカと戯れるジャックの無垢な笑顔が何とも言えない・・・海行きたくなった。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-16 21:50:50)
15.  審判(1963) 《ネタバレ》 
カフカの意味不明(褒め言葉)な傑作小説をよくぞここまで映像化しましたよ。やっぱりウェルズは天才。 ストーリーはいきなり主人公が逮捕されるわ、次々と異様で不可解で意味不明でエロいナース服?姿の女の娘とチューだわウェルズが相変わらずデブ(ry  とにかく不条理極まるカオスな映画だ。でもスゲー面白れえ。 ラスト・シーンはもっと謎だ。 文字通りドカーンとしたラスト。カフカはポカーンだろうぜ。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-15 23:09:19)
16.  生きているトランプ 《ネタバレ》 
「生きているトランプ(Les Cartes vivantes)」。 メリエスの遊び心に満ちたイリュージョンものの一つ。  何も無い台に小さい台を重ね、巨大なボードがトランプになったり人を召喚したりするトリック撮影。 ここでメリエスは、カメラを近づける代わりに自らカメラに少し迫り、トランプの数字を観客に印象づける。 メリエスの映画はカメラが動く代わりに人がカメラに近づいたり、対象が巨大化してしまう。この作品もトランプが巨大になる。  燃える火と共にクイーンが、キングは突き破る勢いで御登場。  最後はマジシャンそのものがトランプに飛び込み通り抜ける。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-09 23:19:17)
17.  月世界旅行 《ネタバレ》 
映画史上初のSF映画にして、初めて宇宙人と遭遇し、初めて宇宙人を殺した映画でもある(インビー・バービケーン会長の無双)。  月に「よく似た」人面衛生。 異星人が生存していたという事は、一応酸素のある衛生だったのだろう。 異星人の「歓迎」に合う博士たち。 途中遭遇した地元住民との最悪のファースト・コンタクト。 戦いの果てに無事に脱出、そしてシャツ一枚で大気圏を突破するバービケーン博士! オマケに異星人の捕虜までご招待。  この時代になんつー映画を作ってんだ・・・ジョルジュ・メリエス恐るべし。  突飛な内容というか、とにかく独創性に溢れた夢のある映画。  見る者の冒険心をくすぐる魅力的なファンタジー映画。  この後もメリエスは「生きているトランプ」といったファンタジーに富んだ映画を精力的に撮りまくった。 メリエスの情熱と野心は、今でも映画の中に生き続けている。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-09 23:15:41)
18.  ストレイト・ストーリー 《ネタバレ》 
デヴィッド・リンチは怖い映画が多いけど、こういうほのぼのとした映画も好きなんだよなあ。 村上龍、はまのゆかが組んだ絵本も良かった。 デヴィッド・リンチの真価は、「ツイン・ピークス」に代表されるように予算の限られた制作下で発揮される。 いかに低予算で人を愉しませられるか。リンチはその使い方と心の掴み方が上手い。 この映画は何せ芝刈り機でアイオワ州からウィスコンシン州まで行こうというのどかさだ。 隣通しとはいえ何10Kmも離れている。 これが実話なんだから凄い。 病気で倒れた兄を見舞いに芝刈り機だぜ?弟のアルヴィンじいさんも凄いけど、兄貴もスゲーよ。 冒頭の「ウ゛ッ」といって突き飛ばされたのはアルヴィン? アメリカの広大でのどかな農村風景。 道中で出会う様々な人々。 妊娠した若い女性やシカ事故で嘆く女性、機械に強いおっさんなどなど愉快な出会いばかり。 たまに酒で戦争の記憶を吐露するしんみりした場面も。 坂道を下る瞬間が怖いこと。 それまで兄貴が病で死なないかソッチの方が心配だけどな。 結構呑気だが、死んでも旅を終えようとするアルヴィンの男の意地を見せられる映画でもあるのよ。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-16 18:35:09)(良:1票)
19.  バルタザールどこへ行く 《ネタバレ》 
「少女ムシェット」以上に残酷な映画だ。 ロバのバルタザールは、美しい野原の光景と共にやって来る。 マリーやジャックに可愛がられたバルタザールは、不幸が重なって別れてしまう。 再会したバルタザールは、美しく成長したマリーに“惚れて”しまう。 だが、同じくマリーに好意を見せる不良のジェラールに“嫉妬”されてしまう。 マリーがジェラールに襲われる場面で、バルタザールは虚ろな瞳で傍観するしかなかった。痛めつけられるバルタザールの無力さ。バルタザールは、黙って見守るしかない我々観客でもある。 マリーは何処に行ってしまったのか。バルタザールの瞳は、彼女の行方を知ってか知らずか、ただただ虚空を見つめるのみ。 とても悲しい映画だが、悲惨さを優しく包み込む美しい原風景には癒される。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-09 18:41:01)
20.  パピヨン(1973) 《ネタバレ》 
フランクリン・J・シャフナーとダルトン・トランボ、スティーブ・マックィーンが組んだ傑作。  シャリエールの原作では、主人公はその後ベネズエラ市民権を獲得したらしいが、本作の主人公はひたすら「自由」に向かって諦めようとしなかった。  金庫破りと殺人の冤罪で刑務所に放り込まれた「パピヨン」。 蝶のように自由に生きてきたこの男は、監獄という針で標本にされようとしていた。 マックィーンが捕まるのは「大脱走」や「ネバダ・スミス」を思い出す。  だがパピヨンは最後の最後まで諦めない。 隙を伺い、泥を這いずり油虫すら食してひたすら耐えに耐える。 やせ細り、髪が白んでも眼の輝きと魂は灯火を絶やさない。 かつて「大脱走」で見せたマックィーンの不屈の精神! 友情を結んだ「ドガ」をいつも気にかけてくれた情の厚さ、看守を睨む不敵な笑み。  何度でも逃げ、何度でも戻ってくる。 そして最後の最後に「自由」を掴み取る!  基本的には暗く陰惨だが、言葉が通じずとも心で通いあった村人との交流、教会でのやりとりなど見所も多くそれなりに楽しめる。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-07 17:29:35)
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