41. ラストエンペラー
スケールの大きさ、歴史の重みは感じるが、ストーリーに乗っていけない。 溥儀という人物に魅力を感じないせいだろうか。 抑圧するものたちを打ち破る力もなく、不屈の気概も感じない。 人間らしいといえば人間らしいけど、主人公としてスポットを当てるには物足りない。 史実をベースに描かれる、時代に翻弄され利用され続けた姿が、見ていて疲れてくる。 160分が長く感じられた。 歴史の勉強になるものの、それならいっそドキュメンタリーを見たい気はする。 中国なのに英語を使用していることに最初はちょっと違和感あり。 [DVD(字幕)] 5点(2014-07-31 16:25:22) |
42. 荒野の用心棒
《ネタバレ》 黒澤監督の「用心棒」より先に観た。 セルジオ・レオーネとイーストウッドでのリメイクとのことだが、筋は似ているものの雰囲気はかなり違う。 主人公のイーストウッドはあくまでクールでニヒルなイメージ。 三船敏郎の人を喰ったような飄々とした味はない。 ラモンのキャラはオリジナルより存在感があってよかった。 ラスト、ラモンが心臓ばかり狙わないで頭に変えればいいのにバカだなと思ったが、頭のキレる設定だったので少し違和感。 それでも西部劇にそこまでリアリティは求めないので、これはこれで盛り上がりもあって楽しめた。 [DVD(字幕)] 6点(2014-04-13 10:11:30) |
43. 海の上のピアニスト
《ネタバレ》 ヒューマンドラマと思っていたらファンタジーだった。 主人公の生き方や言葉は、寓意に満ちて哲学的でもある。 現代なら引きこもりに分類されそうではあるが。 船を下りずに死んでいくことに共感できるくらいの何かがあればもっと感動できた気がする。 やりようによっては傑作になりそうなアイデアだったのに惜しい。 [ビデオ(吹替)] 5点(2014-03-30 02:18:06) |
44. アパートメント(1996)
《ネタバレ》 時間軸が行ったり来たりで混乱する。 ただ、そのおかげでサスペンス性はうまく演出されている。 謎解きで引っ張られるが、ストーリーの内容自体は物足りない。 以前恋人だったリザを追いかけていた男が最後にアリスを選択したかと思えば、婚約者とって何じゃそりゃ…。 婚約者のいる男の節操のなさに引いてしまう。 モニカ・ベルッチは綺麗だった。 [DVD(吹替)] 5点(2014-03-30 02:06:58) |
45. 素肌の涙
《ネタバレ》 『レザボア・ドッグス』でオレンジを演じたティム・ロスの初監督作品。 仲睦まじく見えた家庭だったが、弟が姉と父との異常な関係に気付いたことから崩壊へと向かう。 赤ちゃんが産まれたばかりだというのにとんでもない父親で、姉を慕う弟が殺したくなる心情もわかる。 真実を突きつける弟に逆ギレして罵倒する父親の姿は、おぞましく呆れかえるばかり。 姉弟の前でヌケヌケとシラを切る醜態には、親の責任や尊厳は微塵も感じられない。 終始静かで重い空気の中、進んでいく物語は、緑の大地に覆いかぶさるような曇天とマッチしている。 海岸沿いの寂寥感あふれる風景が、禁忌の生々しい傷をリアルに浮かび上がらせるかのよう。 それまで演技経験のなかった18歳の新人ララ・ベルモントが瑞々しくて魅力的で、大抜擢されたのも納得の存在感。 映画界でもっと活躍してもいい素材に思えるのに、以降これといった作品に出ていないのがもったいない。 たまたま街でスカウトされたらしいが、本人に女優としてやっていく意志がそれほど強くなかったのだろうか。 [DVD(字幕)] 7点(2014-02-11 23:37:21) |
46. 続・夕陽のガンマン/地獄の決斗
《ネタバレ》 続とあったのでてっきり続編かと思っていたら、リー・ヴァン・クリーフが悪玉で前作とはまったく別のお話に。 夕陽も関係なかったし、この邦題は疑問。 善玉イーストウッドと卑劣漢ウォラックの丁々発止も楽しく、三者のキャラが互いに引き立てている。 南北戦争が舞台だが、前作のように純粋に荒野のガンマン対決のほうが西部劇らしい劇画的な高揚感があった。 戦争ものになると集団性を帯びてそれが薄れてしまうので、南北戦争はストーリーに入れないほうが良かった。 入れてしまったために違和感が生じたし、2時間40分の長尺になって少し中弛みができてしまった。 それでもラストの三つ巴対決は緊張感がある。 その前に、墓場で20万ドルを探すウォラックのオカマ走りには笑ってしまったけど。 [DVD(字幕)] 6点(2013-11-28 20:59:27) |
47. 鉄道員(1956)
《ネタバレ》 『自転車泥棒』と同じく庶民の厳しい生活を背景にしたイタリア映画の古典的名作だが、どこか昔の日本のホームドラマのよう。 不器用な頑固親父のせいで家族がバラバラになりながらも、最後は家族の絆を取り戻す。 今は日本も子供と友達のようなマイホームパパが主流だけど、ひと昔前は珍しくなかったタイプの親父像。 昭和の家庭をみるようで、だから日本人の共感も得やすいのだろう。 酔っ払ってクダを巻いてばかりの親父は、スト破りで仲間を裏切るろくでなし。 見てるとイライラしてくるが、それを自覚して自己嫌悪に陥る姿が身につまされる。 それでもそんな男を受け入れてやる家族と仲間の温かさ。 サンドリノ少年の存在が抜群で、子役の良し悪しがいかに大きいかを実感できる。 古い映画では特に、日本と外国の子役のレベルの違いが気になる。 [ビデオ(字幕)] 6点(2013-10-07 20:17:52)(良:2票) |
48. 自転車泥棒
《ネタバレ》 学校行事の芸術鑑賞で観たときは、名作だかなんだか知らないけどなんでこんな地味で古い映画を見せるんだと不満たらたら。 ところが、ずいぶん後になって観直してみると、感想は全然変わっていた。 子供の頃から買ってもらったばかりの変則ギア付き自転車をはじめ何度も盗まれた苦い経験がある。 盗難にあったときのハラワタの煮え返る思いが、自然と主人公へ感情移入。 盗み返したことは一度もなかったけど、この男の立場なら同じ行動を取らない確信はない。 親としては一番子供に見られたくない醜態。 いろいろと残念なダメ親父ではあるけど、切なくてやりきれない。 でも、深く傷ついた父子のつないだ手の温もりが癒しになるはず。 [DVD(字幕)] 8点(2013-07-20 23:37:54)(良:1票) |
49. メリッサ・P ~青い蕾~
《ネタバレ》 イタリアの17才の女子高生が実体験を描いたという小説が原作。 セレブで遊び好きな少年を好きになったものの、弄ばれて屈辱感を与えられたことをきっかけに、どんどん無軌道な性にハマっていく。 自分をあえて傷つけるような浅はかな行動は、いかにも悲劇のヒロインを気取る自己陶酔好きの痛い女のよう。 『プラトニック・セックス』よりもっと青臭くて未熟。 なんの共感もできず、ストーリーも散漫で中途半端。 母とわかり合えてなんとなくハッピーエンドのようなラストが、とってつけたようで説得力がない。 主演のマリア・バルベルデは悪くないのに、メリッサが魅力的な人物として描かれていないのでまったく惹かれない。 [DVD(字幕)] 2点(2013-07-11 23:06:32) |
50. ニキータ
《ネタバレ》 誕生日にレストランでウキウキしながらプレゼントを開けると中には拳銃。 その場で初めての暗殺指令を受け、しかも指示された逃走用窓が塞がれていた。 穏やかな空気から一気に緊迫した展開で、この辺りは急流に巻き込まれたような感覚。 苛酷な最終テストをクリアしたニキータが、解放されて普通の生活にはしゃぐ様子が微笑ましい。 ただ、ジャンキーの殺人犯が無期懲役を務める代わりに秘密工作員になったのだから、酷い目に遭おうと同情の余地はない。 なので、ニキータに感情移入しきれないのが、この映画の弱みになっている。 ニキータが大使に化けて大使館へ入っても、全然扮装にもなっていないのに職員にバレないというミラクル。 あきれるほどのご都合主義だが、エンタメ性を最優先してストーリーの整合性は二の次にしているようだ。 ジャン・レノの暴走機関車のような掃除人ぶりは、出演時間はわずかなのに台風一過のようでインパクトあり。 ボブへの手紙の内容を明らかにしないラストは、ヨーロッパ映画らしく余韻があってオシャレ。 [DVD(字幕)] 5点(2013-07-01 22:42:00) |
51. 太陽がいっぱい
《ネタバレ》 リプリーとフィリップの間には貧富の差が大きな隔たりとしてあり、友情と呼べるものはない。 フィリップは傲慢な金持ち、リプリーは金目当ての貧乏人で、どちらにも好感が持てない。 ヨットでリプリーが本人を前に殺害計画を平然と話しているのが大胆で、嵐の前の静けさのよう。 フィリップもだんだん「こいつマジなんじゃ?」と危険を感じ始める様子がリアルで見応えがあった。 犯行は杜撰で、パスポートを偽造して声とサインを真似ただけで本人になりすます。 案の定、知り合いに出会ってバレた挙句に殺して行き当たりバッタリ状態。 指紋にも気を遣っておらず、これではあまり頭がいいようには見えない。 ところが、警察の捜査がお粗末で、指紋の鑑定がいい加減だから犯人を勘違いしてしまう。 時代が時代とはいえ攻防のレベルが低いので、犯罪ものとしては少し物足りない。 大金に婚約者とすべて手に入れて二人殺した罪悪感の欠片もなく幸福感で満ち足りている姿がふてぶてしく映る。 そんなリプリーに天誅が下るラストにはカタルシスがある。 ただ、主人公に肩入れできないとどうしてもインパクトが薄くなる。 アラン・ドロンの出世作だが、一時代を築いた正統派二枚目ぶりを発揮。 風情のある映像美とせつなく美しい音楽も堪能できるが、ストーリー自体は名作と呼ばれるに値するほどのものとは思えない。 [DVD(字幕)] 6点(2013-06-24 21:42:10) |
52. ライフ・イズ・ビューティフル
《ネタバレ》 序盤は主人公グイドがイタリア人っぽい軽さでしゃべりまくって少しうんざり。 ゆるいラブコメ風の笑えないストーリーで眠くなってくる。 前半でもううんざり気分でこれはハズレ映画だったと観たことを後悔し始めた。 ところが、後半の強制収容所に連行されるあたりから次第に物語の中に引き込まれていく。 息子に不安を与えまいとしてウソをつき続けるグイドがどんどん立派に見えてくる。 最後まで息子の前で陽気に振舞う父の思いやりが胸を打つ。 [映画館(字幕)] 9点(2013-06-20 22:12:52) |
53. イル・ポスティーノ
島の美しさは印象に残るが、ストーリーは淡々と進行するので少し盛り上がりに欠ける。 無学な男が有名な詩人と師弟関係になる設定は良かったのだが、エピソードが弱い。 女が男の詩に惹かれたシーンがいまひとつ迫ってこず、労働者の抵抗運動ともあまりリンクしていない。 それぞれのエピソードが点として存在し、傑作映画に共通するような線としてのうねりは感じなかった。 [ビデオ(吹替)] 4点(2013-06-11 00:35:28) |
54. イングリッシュ・ペイシェント
《ネタバレ》 面白くないわけではないが、アカデミー賞作品賞に値するかはちょっと疑問。 規模の大きさと映像美は感じるが、まるでハーレクインロマンスのようなストーリー。 大火傷を負ったイギリス人患者が、失われた記憶を辿っていく過程で、不明だった人間関係やスパイ活動などの真相が明らかになっていく。 そこにサスペンス性はあるのだが、テンポが悪くて緊張感がなかなか高まらず、冗長で散漫な印象を受けてしまう。 妻の不倫に勘付いたジェフリーが、飛行機でアルマシーに心中覚悟で突っ込んだあたりからやっと面白くなった。 アルマシーがドイツに地図を売ったのはやむをえないことで、砂漠の洞窟でひとり死んでいったキャサリンとの悲恋が切ない。 だからこそ親指を失ったカラヴァッジョもアルマシーへの復讐する気が失せたのだろう。 ただ、その命がけの愛が不倫で、どうしてそこまで深く愛し合ったのかの描写が不足しているので、その分共感しにくいのが難点。 また、全体にテンポアップしてハナの恋愛エピソードもカットすれば、160分の長尺をもっと短くできたはず。 ハナがアルマシーの意図を汲んでモルヒネの量を増やし安楽死させてあげたのは、結末としては良かったと思う。 [ビデオ(吹替)] 5点(2013-06-09 01:59:10)(良:1票) |
55. 道(1954)
《ネタバレ》 旅芸人のザンパノに売られたジェルソミーナは、けっしてかわいくはないが何ともいえない哀愁がある。 喜怒哀楽が素直で無垢な子供のよう。思わず肩入れしてしまう。 世話になった修道院で盗みを働き、犬猿の仲の旅芸人仲間を殴り殺すザンパノの蛮行に、気がふれたようになるジェルソミーナが哀れ。 そのジェルソミーナを置き去りにして旅立つザンパノは身勝手極まりないクズ男だ。 そんな男にもジェルソミーナの末路を知って流した涙のあったのが救いか。 哀しく美しいラッパの音が耳に残る。 [DVD(字幕)] 7点(2013-05-29 00:29:32) |
56. 食人族
串刺しになった裸の女性が印象的で、公開当時も本物かどうかで話題を呼んだ。 ゲテモノ、キワモノ見たさで成立するような映画だが、見ても後悔する作品。 [インターネット(字幕)] 2点(2013-05-17 20:36:50) |
57. ブラザー・サン シスター・ムーン
《ネタバレ》 宗教臭いのは生理的にも受け付けないのだが、人に薦められたこの映画を仕方なく見たところ、意外とよかった。 フランチェスコに感化されていく過程がシナリオ的に不足していると感じるが、その生き様に感じるものはある。 財産をすべて投げ打って神に仕える清貧の生活は、自分にはとてもできないし憧れもない。 聖人すぎてかけ離れた感じがするので共感できないが、尊敬には値する。 特にキリスト教の関係者にとっては、バイブル的な作品になりそう。 ローマ教皇という最高権威との対峙は緊張感が伝わってくる。 フランチェスコに感銘を受けてその足に接吻をした教皇だが、またその側近たちに権威の象徴たる豪華な法衣と冠を付けられる様が、含蓄があって面白い。 [DVD(吹替)] 6点(2013-03-18 21:17:11) |
58. ニュー・シネマ・パラダイス
《ネタバレ》 若い頃に最初観たときは、ヌルい映画だなという印象で、自分の中での評価は低かった。 世間の評価が自分の印象よりずいぶん高かったので、数年後にもう一度観てみると、最初観たときより面白かった。 ただ、内容はほとんど忘れていたので、その時の自分にとってはそれほど心を動かされるものがなかったということ。 ところが、最近久しぶりに見直してみると、なぜか心に染みた。 映画は観る時期を選ぶということか。 映画しか娯楽がなかった時代の映画館内の熱気が伝わってくるよう。 テレビや他の娯楽が増えて、街のみんなが一箇所で盛り上がるようなことはなくなったが、そういう不便な時代のほうが本当は楽しいのかもしれない。 想い出の映画館が取り壊される様子には、センチメンタリズムとノスタルジーがかきたてられる。 トトに対するアルフレードと母の深い愛情には胸を打たれる。 年を経るほどに味わい深くなる類の映画のようで、またいつか観直すことになるだろう。 [ビデオ(吹替)] 9点(2013-02-05 20:35:12)(良:1票) |
59. カリギュラ
イカれた男が絶大な権力を握ると本当にこんな感じになるんだろう。 カリギュラが『時計じかけのオレンジ』のマルコム・マクダウェルとは、なんというハマり役。 ハードコアポルノのようなきわどい内容なのに、一流の俳優を使って仕上げるというのは、日本では考えられない。 エログロなのでストーリーには特筆するようなものはないけど、これだけスケールが大きいと無修正版なら一見の価値あり。 [DVD(字幕なし「原語」)] 5点(2013-01-11 02:32:41) |
60. 流されて…
《ネタバレ》 しょっぱなから機関銃のようにしゃべりまくる高慢ちきな女が、ウザいことこの上ない。 バカにしてきた使用人の男と無人島に漂流し、力関係が逆転するのは小気味良い。 ブルジョアジーへの怨みつらみを女にぶつけてエスカレートする男。 ついに屈服して従順になる女に、今度は男のほうが溺れていく。 男は気に入らないことがあると女に暴力を振るうが、女がそれさえも受けいれるようになって…。 このあたりがあまりにもリアリティがなくて、ばかばかしい。 暴力を振るわれてもついていきたくなる男も存在するだろうが、そういうタイプの男にも見えない。 あれだけ高慢な女が、いくら立場が変わって現実に適応したとはいえ、そこまで変わらない。 少なくとも助けの船を拒絶したりはしないだろう。 女のキャラなら、策略として助けを拒絶するふりをして男を安心させ、男に救助をしむけるというならわかるけど。 [ビデオ(字幕)] 3点(2013-01-08 00:34:25) |