1. オルカ
哀しみのある海洋アドベンチャー。見所はオルカと漁師の死闘。動物パニックというと、先にジョーズがあるので宣伝がしにくいのでしょうが、本作品は地味な上、有名スターも出ているわけでもない(リチャード・ハリスは好きですが)のでインパクトに欠けます。確かに作品の持つ視覚的なインパクトもオルカの撮影のうまさぐらいで、「白鯨」をイメージすると(勝手にイメージした自分が悪い)とんでもない痛手をくらいます。 4点(2004-03-27 13:02:09) |
2. 黄金の七人
黄金の七人と聞くと、今はない「月曜ロードショー」を思い浮かべるのは自分だけ?トラウマのようにあのブルーバックに白字のオープニングが頭に浮かんでくるのです。おそらく、この番組で多くの「七人シリーズ」を観たせいだと思うのですが。何故か、自分には忘れられなくて。作品よりもその記憶の擦り込みに感心したりして。 5点(2004-03-23 17:32:35) |
3. ゾンビ/ダリオ・アルジェント監修版
この映画が好き、と言うと大抵怪訝な顔をされます。「何で?」と理由を聞かれますが、うまく答えようがありません。気持ち悪い、無気味や、救いようのない話など「負」の要素ばっかりの印象を持たれていますが、自分にはその「負」の要素が映画ならではの素晴らしい題材となっている、と思うのです。人が人を喰らう、それも死人がよたよたと歩きながら襲ってくるという設定だけでも、凄いと感心。極限の状況下にあって生き残った人間はどうするのか。相手が災害や怪獣、エイリアンなら大スペクタクルにもなろうというもの。しかし、ここでは人間心理としてのパニックが丁寧に描れています。喰われれば自分も死人。仲間を襲う。いつ、誰がやられてもおかしくない状態では発狂もするというもの。視覚的にも、造形的にも、人に不快感を与える目的はちゃんと成し遂げられていて、そうした点でも「徹底」している作り手の情熱が伝わってきます。「負」なら「負」で見せ切る一途な姿勢。物作りに欠かせないものが、この映画の持っている「良さ」だと思うのです。 8点(2004-03-23 12:05:56)(良:1票) |
4. カサンドラ・クロス
《ネタバレ》 公開当時「心あるパニック映画」という宣伝コピーにつられて観に行きました。大阪の北野劇場と言う大きな映画館で、正月作品の中でも特に注目作でした。しかし、観ていても、はて?心あるとはどういうことかいな。の疑問ばかりであまり楽しめず。パニック映画といっても視覚的な怖さ、危機感は鉄橋から落ちるクライマックスまではおとなしく、むしろ細菌に騒然となる人間の状態を指しているのが分り、このへんが今までのパニックものと違うのかな?などど考えたり。確かに渋めのオールスターキャストで描かれる見所のある映画ですが、走る列車の疾走感、閉じ込められた閉塞感、鉄橋までの時間の緊迫感などが非常に乏しいと感じました。出演者達のアップや苦悩ばかりでは、それらの要素を満たすのは難しいのでは。最後の鉄橋もミニチュアと分かってしまう作りでは、盛り上がりに欠けますし。題材的には美味しいので、リメイクしても面白いのでは。舞台を宇宙にして。なんて勝手な感想で申し訳ない。 5点(2004-03-15 17:24:32) |
5. ベニスに死す
《ネタバレ》 「美」なんて絵画の世界だけかと思っていた少年を、カナヅチでたたきのめした、なんとも妖しく美しい映画。この作品の前では映像で見せる美しさなんて、雄大な自然や特撮効果、大掛かりなセットだけぐらいと、自分の見識の浅さを、見事に露呈してしまいます。人間の中にある「美」を求める「心」を、この映画は見せてくれます。感じさせてくれます。少年を追いかける、恥じらいをわすれた初老の男。かなわぬ願いの結末を知っているのに、追わずにはいられない「美」への愛。朽ちていく自分にはない生命の輝かしい波動。受けるには遅すぎた。あまりにも遅すぎた出会い。最後、蜃気楼のような海辺で死んでいく男。何事もなかったように、流れる風。時間。絵画は止まった「美」。しかし、この映画には脈打つ、心臓の鼓動と同じ、動く「美」が存在する。それは退廃していく者と生まれ来て、生きる者との出会いに求めた刹那の「美」。ああ、ためいきが出る程素晴らしい映画です。 10点(2004-03-08 17:50:20)(良:1票) |
6. ドクトル・ジバゴ(1965)
《ネタバレ》 これは恋愛映画なのですが、同時に大きな歴史のうねりの前にあっては、個人の力や常識など「無」にひとしくなる、そのはかなさや危うさを謳った映画でもあります。その中に希望を見い出そうとする、人間としての欲求、それがラ-ラという女性への「愛」だったのですが。雄大なロシアの自然を舞台に、これでもかという逆境に遭遇し、乗り越えるジバゴ。一途に追い求めるが故、離されていく距離もひろがる2人。最後、ラ-ラを街中で見かけて、追いかけるも、命つきてしまうジバゴには、哀れな男の終焉を見た気がします。しかし、2人の間に生まれた新たな命が、ラストの「バラライカがうまいのか。遺伝だな」の言葉で、祝福される時、歴史の変貌の中でも確実に芽となり、育まれたものがある、それが人間の「愛」だと静かに訴えて来ます。やはり名作というものはどこか違うんだと、深くうなずく自分がいるのでした。 10点(2004-03-08 12:38:50) |
7. 太陽がいっぱい
《ネタバレ》 故淀川長治先生が「男が男を愛する映画。その結果、男が男を殺して、その男になろうとする恐い恐い愛の映画」というような事をおっしやってました。復刻版のパンフレットにもそのような事が記載されていました。あの当時に、そういう観点でこの映画を見ていらしたことに、深く感動し、再見すると、ああまさしくと膝をたたく場面の多い事。中学生の頃は、殺人者がアリバイやサインをまねして追究の手から逃れるただのサスペンス映画だったのが、今では妖しい男同志の映画に見えるから、あら不思議。映画を見る目を鍛える大切さを改めて教えていただいた貴重な作品です。 9点(2004-03-04 11:31:53) |
8. ニュー・シネマ・パラダイス
《ネタバレ》 これはもう映画の魔法。観ている人の気分を、幸せにしてくれる映画しか持ち得ない魔法ですね。映画しか娯楽のない時代の、ある街の、ある少年の話が、こんなにも泣けるなんて。主人公の友人である映写技師はただフィルムを回すだけ。たくさんのフィルムを回すだけ。自分では作品をつくらない。それは、他人の人生を多く見てきたことと同じ。だから、主人公の人生もフィルムと同じように、冷静に見ることができ、駅でのあんなアドバイスが出来るのですね。でも、映写技師は作品をつくっていた。世界でただひとつ。ただ1人の人に見てもらうために。その時、観客も主人公と同じ映像を真のあたりにする。検閲されたキスシーンの連続。遠い過去に忘れ去られた想い出の断片集。観客1人1人に送られた「過去」という記憶のメッセージ。感傷的と言えなくもないですが、人生において過去の自分を見つめる、思い出す事は、決して無駄なことではないはず。今の自分を再確認するためにも、こうした魔法にならよろこんでかかりたいと思います。 10点(2004-03-03 11:03:37)(良:4票) |