1. スプライス
《ネタバレ》 観ているとどうしても、ヴィンチェンゾ・ナタリ監督と同じくカナダ出身の先輩監督の名前が浮かんでくる。ああ、これって、デヴィッド・クローネンバーグだなあ、と。 例えばあの『ザ・フライ』なんてのは妙な作品で、映画が始まったら殆ど前置きも何もなく、いきなりジェフ・ゴールドブラムが「オレって凄い研究してるんだぜ」みたいなことをジーナ・デイヴィスに吹聴している。そんでもって物語はとっとと禁断の実験へとなだれ込み、あとはひたすら、主人公の体に生じた異常が描かれていきます。登場人物がごく限られた、割と「内輪」のお話でして、これらの人物はそれぞれ、どこかイヤな部分があり倫理的な問題を抱えているにせよ、誰も悪人という程の人はおらず、なのにメチャクチャ悲惨なお話が、その特異な映像でもってこれでもか綴られていって。 ただただそこにあるのは、決して引き返すことのできない、残酷な変化。 この『スプライス』でもまるでこの『ザ・フライ』を踏襲するかのように、エイドリアン・ブロディとサラ・ポーリーはあれよあれよという間に異常な実験へと突き進んでいって、あとは、その実験がもたらした奇妙な日々が描かれます。人間に似ているけれども、人間に非ざるもの。それが、社会とどう関わるか、どう排斥されるか、などといったことはまるで描かれず、そこにあるのはただ、この3人による「内輪」のお話。ただしその中で展開される変化というものは、我々の予想を超える速度で、我々の予想ができないような方向に進んでいく。いや、マジでついていけん。と言いつつ、心のどこかに「ああ、やっぱりそうなるのか・・・」という思いもあって。こういう不条理感がまた、クローネンバーグ作品を思い起こさせます。 この「ドレン」なる生命体の描き方、幼少時の姿が登場した際は違和感ありまくりでギョッとさせられ、何だか映画が間違った方向に向かっているんじゃないか、と心配になりますが、成長すれば違和感も無くなり・・・ということは勿論無くって、違和感はずっと消えないし「間違った方向」感も消えないんですけれども、一方で、別の危うさも、何となく感じさせる・・・つまりそれが、「ああ、やっぱりそうなるのか・・・」に繋がる訳で、結局のところ映画が向かうのは、我々が予想できない方向というよりも、我々が予想したくなかった方向。 という訳で、ヒジョーに残念ではあるのだけど、「ドレン」の描写は結果的に、上手かった、ということになります。 全体的には、クローネンバーグ作品を思い起こさせること自体は悪くないとしても、その亜流止まりであるように感じさせるのは、少し残念でした。ラストもぶった切るように終わってしまう『ザ・フライ』と比べると、こちらの方がナンボがオチをつけようとはしてますが、言tっていることは同じという(笑)。変な続編が作られちゃっても知らないよ。いや、もうそれは無さそうか? それにしても、やはりというか何と言うか、エイドリアン・ブロディは役に立たんヤツを演じるとピカイチですな。演技かどうか知らんけど。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-11-17 06:10:15) |
2. ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄
何がハッピーハロウィンやねん、ハロウィンなんて興味無いわい。 とか言ってたら、もうジジイの証拠なんですかね。すみません。つい言ってしまいます。 ハロウィンの夜に、雑踏の中で息子が行方不明になる。これ、コワいですよ、本当に。子育て経験のある人なら誰しも、外出先で子供の姿を見失って震え上がった経験があるのでは。そうでもない? で、行方不明から一年、この事件をきっかけに夫婦の仲も冷め切っていたけれど、また訪れるパロウィンの夜が近づくにつれ、行方不明の息子の「気配」をたびたび感じるようになる。なぜかハロウィンの夜に子供の行方不明が多発する謎。我らがニコラス・ケイジは、無事に息子を見つけ出すことができるのか? そうでした。これもニコラスケイジ映画の一本。もちろん大作ではございません。日の当たらない作品に、ニコラス・ケイジが出演することで、良くも悪くも、少しだけ日が当たる。それでいいではないですか。できればこの世の低予算映画の全てに、彼は出演して欲しい。彼ならできる。 この作品、ハロウィンがテーマということで、仮装中に事件が発生。だもんで一見、ユーモラスに見えたりもするのですが、なにせ子供が行方不明、事件は深刻。映画の基調もシリアスです。ハロウィンの夜が終われば、翌日には街から仮装姿も消える訳ですが、それとともに「仮装姿の息子」もどこかに搔き消えて、行方は杳として知れない。もう、どうしてよいのやら。 一年経って、息子の姿を求め続ける主人公とその妻の周りで、さまざまな怪異が発生するようになる。この辺りが、「ホラー」というよりは「オカルト映画」と呼びたくなるテイスト。ちょっと懐かしい感じがあります。 クライマックスで息子を救いに異世界へと足を踏み入れる主人公、その入り口が吊り橋みたいになっているのが、お伽噺っぽい感覚で、こういうのもどこか、懐かしい雰囲気があります。セットも安上がり、だとすれば一石二鳥。 映画のところどころで、凶兆を示すようにハゲワシみたいなのが登場して、別に何をする訳でもないけれど、こういうのも同じく、雰囲気出してます。 正直、そんなに盛り上がる映画ではないんですが、意外に正攻法で、作品としてもまとまっているのではないかと。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-10-27 08:42:57) |
3. ドリームキャッチャー
いろいろ盛り込みて過ぎて一見グチャグチャな作品なんですけれども、これ、一言で言えば「ウンコが襲ってくるオハナシ」ということで、いいんじゃないですかねー。 一応、何やら宇宙生物らしきもの、グレイ型なのにやたらデカい宇宙人風のヤツ、なども出てきますが、まあ、どれもこれもウンコみたいなもんです。便器から出てこようとするウンコ、これが一番コワい。 ウンコ騒動が、しまいには軍人の暴走にまで発展する。スティーヴン・キングの本質って、きっと、そんなもんなのでは。いや、キング小説はほとんど読んだことないから知らんけど。 デ・パルマ、キューブリック、クローネンバーグ、カーペンター。特に初期において、錚々たる監督が次々にキング作品を映画の題材に取り上げ、かつ、一度しか取り上げなかったのは(後には何本か撮ってしまう人も現れるけど)、一回やればもう充分、ということなのか。 そしてかのローレンス・カスダンがまた、こうやってキング作品を映画化するのだけど、使い古したネタのオンパレード、といった感じで、それをことさら隠すわけでもなく、ホレ、これを一本見たらもう充分でしょ、と。 キングがこの映画をホメた、という話をどこまで真に受けていいのかわからんけど、何となくありそうな気がする・・・。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-09-01 19:10:40) |
4. ダウト・ゲーム
これ、なかなか面白かったです。 裁判の行方なども描く映画にしては、かなりセリフの量を絞ってきているのがまず、いいですね。もちろんセリフが少なけりゃ何でもいい、という訳ではないし、セリフが多いと全部ダメという訳でもないけれど(説明ゼリフが多いのはそれなりにウンザリするにしても、見どころもちゃんと準備されていれば、楽しめるのであって)、とりあえず、意識的にセリフを絞ろうとするのは「見せよう」という意識の表れであるのだから、期待もできようというもの。そしてこの作品でも、それはサスペンスシーンにしっかり活きています。 主人公の検察官がある晩、ひき逃げ事故を起こすが(と、自分で書いておいてナンですが、ひき逃げは事故じゃなくて事件だよな)、別の人物が逮捕されてしまう。主人公はその事件を担当することになり・・・というオハナシ。多少、強引なところのある設定ですが、スネに傷を持つ主人公、という制約、それが新たな力学を加えることになって、物語がどんどん転がっていく。これが面白いんですね。彼の抱えたやましさが次の行動を生み出し、その行動が新たな謎と物語の展開を生み出す。行動を描く、ということは、「見せる」ということであって、それがサスペンスになってりゃ、楽しむには充分でしょ? ちょいと気の利いた佳作、といったところか。 原題は「Reasonable Doubt」。こんな変な邦題つけるより、原題をそのままカタカナ書きしてもよかったのでは、と思うのですが、カタカナで「リーズナブル」と書くと、安っぽいイメージになりかねないので避けたんですかね??? [インターネット(字幕)] 7点(2023-11-12 07:34:11) |
5. ジャンパー
《ネタバレ》 テレポーテーション能力を身につけた若者が、何者かに命を狙われる。もうホントに、それだけ、の映画でして、その割り切りには好感が持てます。もちろん、登場人物が沢山出てきて、エピソードが複雑に絡みあって・・・という映画も大歓迎ですが、そういうのを作れもしないのに無理に作ろうとするくらいなら(失礼)、いっそこうやって、ただただテレポーテーションしまくる事に徹するのも、悪くないです。 この主人公、特殊能力を持ってはいるものの、それをロクなことに使っていない。この能力をどう使うか、という方向にも話は膨らまないし、膨らませない。 生き別れた母親も登場するけれど、かつストーリー上、それなりに重要なキャラのような気もするけれど、やたら印象薄くって。涙の再会なんぞどこ吹く風、サバサバしてます。 ついでに言うと、主人公がガールフレンドの母親と再会する場面もありますが、このシーンなんて、まともにこの母親の表情を映しもしない。もう、どうでもいいんですね。いかにして、物語を膨らませないか、脱線させないか。88分という短い尺を、ひたすら走り抜ける。 ひたすら繰り返す、空間移動。意味も無く東京にまで飛んできて、東京ロケを敢行したり。その他その他、いったい一本の映画に、どれだけの光景を詰めこもうというのやら。 と言うわけで、いや何かこの映画オモロイなあ、と思いながら見てはいたのですが。しかし、アクションシーンが雑なのか何なのか、イマイチわかりづらい。そこにさらに空間移動が重なって、正直、何が何やら、画面に集中し切れず。こういうハチャメチャな映画を作ろうという意気込みには頭が下がりますが、映像で惹きつけようという映画のその映像が、「見にくい」というのは、ちと痛い。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-09-10 17:15:26)(良:1票) |
6. ザ・ブルード/怒りのメタファー
「何のこっちゃ」な邦題ですが、映画を見ればこれが意外に「どストライク」な邦題であったことに気づきます。 映画の内容の方も、あくまでホラーでありファンタジーなので、こういう事が実際に起こり得るかどうかは問わないことにし、細かい部分まで納得のいく説明がなされているかも問わないことにすると―――そういう事を問うのは元々、野暮というものだけど―――「何のこっちゃ」な展開かと思いきや、最後まで見ると、邦題のコンセプトに沿ってそれなりにまとまった内容であり設定であったことがわかります。 にも拘らずこの作品には、気持ち悪さ、落ち着かさなさ、といったものが横溢しています。何とも言えぬ、割り切れなさ。 前触れなく、突然、映画に登場する襲撃者。映画の中でその正体は明かされるものの、この最初に登場した時の「いる訳のないものがいた」「見てはいけないものを見てしまった」という感覚、これがずっと尾を引いて、最後まで何とも言えぬヤな感じが続きます。確かに、「怒り」の象徴としてこの異形のものたちは存在するのだけど、そういう可視化された「怒り」の裏には、可視化しきれない人間関係のドロドロしたものが渦巻いている。もっとも近接した人間関係である家族、その家族の中にすらドロドロが渦巻いている、という落ち着かなさ。わかっちゃあいるんだけど、それをこうやって映画で突きつけられると・・・。 音楽はハワード・ショア。まだキャリア初期の仕事だと思いますが、これまたなかなかに落ち着かない音楽を響かせて、ヤな感じをしっかり増幅してくれます。 [インターネット(字幕)] 8点(2023-09-02 13:17:54) |
7. U.M.A レイク・プラシッド
《ネタバレ》 U.M.A.とは言っても、首長竜だの毛むくじゃらの大男だのが出てくる訳でもないし、レイク・プラシッドとは言っても、舞台は冬季オリンピックの開催地レークプラシッドじゃないし。じゃあ一体何なんだ、などと東宝東和に問うてみたところで、意味はなし。 それよりも、舞台となっているのがメイン州、ってのが、気が利いてるじゃないですか。えーと、メイン州ってどこだっけ(たぶんあのアメリカの右上のゴチャゴチャしたあたりだろう、と見当を付けつつ)、と思った時点で、早くも映画に引き込まれてます。 このド田舎感。静かな湖面。何かがいそうな、いや何もいなさそうな、実にイイ雰囲気。我々が子供の頃、旅行でどこかの湖に行って、「ここにもネッシーみたいなヤツがいるかも」と、一生懸命に湖面を凝視するムダな努力をしてた(え、しなかったって?)、アレに繋がるものがあります。 何やら湖に生息するらしい巨大生物に人間が食い殺される大事件が発生したにも関わらず、映画を通じて、ごく少人数のポンコツメンバーがその巨大生物の調査をチマチマとやってて、まるでパニック映画らしさがない点は期待ハズレといえば期待ハズレ何ですけど、独特のノンビリ感と、巨大生物(ワニです、ワニ!)の特撮のクオリティの高さとのギャップは、その不満を補って余り有り、この作品の大きな持ち味になってます。『レプティリア』なんかよりずっと魅力的な作品ですよ、これは。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-09-11 06:27:54) |
8. ハイランダー3/超戦士大決戦
1作目を見たきり、それも随分と前。 だもんで、このハイランダー2を見てみたのだけど・・・と思ったら、ありゃ、なんだ、第3作を私は見てたのか。と言うことに見終わってしばらくしてから気づきました。まあ、気付かなかったとしても実害は無さそうな気もするけど。 という、この第3作。まさかクリストファー・ランバートとマリオ・ヴァン・ピーブルズが小競り合いするだけの作品が「超戦士大決戦」だなんて。そりゃ間違って第3作見てても気付かんぜ。 しかし映画の設定だけは何だか壮大で、様々な時代と地域を渡り歩いてきたハイランダー。一本の映画でこれだけ色んな光景を見せてくれると、それなりの見応えがあります。オハナシ自体はスカスカで、どうでもよさそうな感じですけど。でもクリストファー・ランバートが様々な絶景の中で日本刀を振り回すその姿。ちょっとした旅番組よりも風景を楽しめます。 [インターネット(字幕)] 6点(2021-06-29 22:26:59) |
9. プロムナイト(1980)
六年前の忌まわしき事件。子供たちのイジメまがいの遊びから、一人の少女が命を落とし、加害者となった子供たちはそれを内緒にする。そして現在。プロムを前にした彼らの元に、謎めいた電話が掛かってくる・・・。 並行して発生する別の誘拐殺人だとか、ちょっと怪しげな用務員さん(?)だとか、謎めいた雰囲気を出しつつ、ついにプロムの夜がやってきて。 基本は13金タイプのスリラーですが、劇伴は控えめで、音楽でのコケ脅しに頼っていないのがいいですね。賑やかなダンス音楽の陰で行われる凶行。時に静寂が効果をあげています。 ただ凄惨な殺戮ばかりを描くのではなく、ジェイミー・リー・カーチスの見事なダンスがあって、その華やかさの陰で、不気味な兆候が発生したり、殺人が行われたり、という対比。 結局、アレは何だったんだ、コレは何だったんだ、という疑問は残るけど、いや、恐怖映画たるもの、それでいいんです。 そりゃま、大したオチでもないんだけど、余韻はしっかりと残してくれます。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-05-24 22:53:34) |
10. 戦慄の絆
《ネタバレ》 一人二役で双子を演じるジェレミー・アイアンズ。普通の映画なら(新しい方の八つ墓村の岸田今日子は別として)、その二役をどう演じ分けるか、ということになるのかも知れないけれど、少なくとも作品前半は、むしろ、まるで同一人物であるかのような描かれ方。見た目も同じなら言動にも差がなく、「おいおい、こんな役でまさか二人分の出演ギャラをせしめたんじゃなかろうな」などと要らぬ事を考えてしまうのですが(ホントはどうか知りませんが)、それはともかく、まるで二人は、精神面で互いにシャム双生児のごとく結合しているかのような、 それが後半になって、徐々に二人のキャラクターが分裂し始める。二人の「区別の無さ」を、前半に見せられてきているが故に、我々もここで不思議な感覚に捉えられてきます。 しかし、それでも二人は、分裂することを拒絶しようとし、やがて悲劇が訪れることに。 あのヘンな医療器具の悪夢的なイメージ、さらには映像上の違和感を全く感じさせない見事な合成による一人二役。もはや、一人二役なんだか、二役一役なんだか。 これなら、二人分のギャラもらっても、いいんじゃないか。もらったのかどうか知りませんけど。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-05-22 08:21:01)(良:1票) |
11. デビッド・クローネンバーグのシーバース
寄生生物モノ。なんかブヨブヨした気持ち悪い生物が人間に寄生する。 で、普通なら寄生されて精神を乗っ取られるとか、体の中で増殖するとか、という展開になるところだろうけれど、そこはクローネンバーグ、一筋縄ではいかない。 強いて言うなら、寄生されると「ヘンタイになる」って感じですかね。いや俺は寄生されてないけどヘンタイだよ、という人も多数いらっしゃるとは思いますが、そんなアナタよりももう少しだけ、ヘンタイになってしまいます。 だからこの映画、パニック映画の語法とはちょっと違う。寄生が広がりヘンタイが広がる過程、というのは確かに、一応は押さえているのだけど、テイストはむしろ、後の『ヴィデオドローム』などを思い起こさせるような、キモチ悪さ。悪夢的世界。 低予算らしい安っぽさはあるとは言え、腹の中や口の中で寄生生物がうごめく描写は、なかなかのもの。 パニックが拡がるというより、もっと受け身のまま、キモチ悪さだけが拡がっていく。ああ、実にキモチ悪い。 とは言え、最もヘンタイ的でキモチ悪いのが、冒頭の少女殺害シーンであるという皮肉。結局、寄生生物がヘンタイなのか、人間そのものがヘンタイだから寄生されるのか。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-05-15 19:08:31) |
12. レッド・ダイヤモンド
ブルース・ウィルスが小遣い稼ぎみたいに脇役出演していると聞くと、きっと激安のアクション映画だろう、と思っちゃうのですが、さにあらず。そもそも主演なら大丈夫という訳でも何でもないしね。とにかくこれが、意外にオモシロかったのでした。 だけど、この作品が本サイトで未登録だったので、登録要望出そうと、作品情報調べてたら、某サイトには「多くの批評家から酷評されている」とか書いてあって。え~。私にとっては、やたらと面白い作品だったのに~。 まあ確かに、いきなりボートチェイスが始まったりカーチェイスが始まったりしてストーリーそっちのけになっちゃうのは、いかにも安っぽくはあるのですが。しかしそれがどうした。安くてもいいではないですか、オモシロいんだから。そしてどこか、懐かしい。 まず本作の何がいいって、主人公には女性スナイパーの相棒がいて、これがなかなかのカワイ子ちゃんであるにもかかわらず、どういう訳か主人公の男は、このカワイ子ちゃんには手を出そうとせず、その代わりどういう訳かオバチャンにばかり関心を向けている、というのがスバラシイ。ホント、どういう訳なんだろうか、と思いつつ、見てて何となく安堵を感じてしまう(笑)。しかしそれにしても人の好みはワカランもんです。 ってのはさておき、オバチャンとのクサレ縁から、面倒ごとに巻き込まれる主人公。しかし心配ご無用、彼には信頼できる仲間たちがいる。という訳でその信頼できる仲間たちを招集するのだけど、これがまた、ポンコツばかり。この主人公、つくづく人間関係に恵まれていない、という気がしつつ、見てて何となく安堵を感じてしまう(笑)。 そんなこんなで、ポンコツな人たちの活躍が描かれるのですが、適度にユーモアとアクションを散りばめて、なかなかの楽しさ。終盤は映画の尺を少し残して事件が収束してしまい、残った時間で何をするんだろう、と思ってたら、冒頭の「ゴルフ打ちっぱなし」のシーンが回帰して、しかもラストで打たれるのはゴルフボールではなく・・・という、ちょいとシャレた終わり方。 さらにエンドクレジットに重ねてオマケ映像があり、途中からはNG集。撮影現場の楽しそうな雰囲気が窺えて、後味も良し。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-12-21 21:34:24) |
13. ジョン・ウィック:チャプター2
フィニッシュホールドは、三角締めからの射殺、ってか。ひでーなー(笑)と思いつつ、銃を飛び道具というよりも肉弾戦における体の一部みたいに使ったアクションが、スピーディで小気味いい。中には、「デブは撃たれても気づかない」というケースもありますが。 目まぐるしいアクションの連続。こういう場合、えてして、画面がゴチャゴチャして何が行われているのやらよくわからん、ということになりがちですが、その点では本作、どんなに激しい戦いでも、観る者を混乱させることのない、丁寧な描写になってます。中盤の暗がりの中で行われる銃撃戦なんかも、暗いけれどしっかり描いているので混乱せず、むしろ暗さ故に、発砲時の閃光が一瞬の照り返しとなって画面を見事に彩っています。 アクションの見通しの良さには、キアヌ・リーブス自身が体を張って自らアクションをこなしていることも大きく貢献しておりますが。 一方ではアクション一辺倒でもなく、いくつかのゆったりとしたシーンを交えて映画に緩急をつけており、だからこそスピーディなシーンはよりスピーディになって緊迫感を増します。そしてラストには少しアクセルを緩めて、余韻を残してみたり。 それにしても、「庶民むけの銃」は、置いてないのかね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-05-24 20:32:51) |
14. ブレードランナー 2049
《ネタバレ》 それなりに結構長いこの作品を見ているうちに、結局はこれが『ブレードランナー』の続編に過ぎなかったんだという(当たり前っちゃあアタリマエの)ことに気づかされる、そのガッカリ感ってのが、正直あるんですよね。もしかして、デッカードさえ登場しなければ、もっといい作品になってたんじゃないかなあ、と。 サイケ調の未来社会のよそよそしさが孤独感と不安感を煽る、あの前作。人間と同じく記憶を持ち、感情を持つ「レプリカント」を殺害しなければならないブレードランナー=デッカードの側から描かれた前作で、彼は、レプリカントの「殺害された仲間に対する記憶」を、苦痛とともに文字通り指折り体に刻み込まれることを通じて、結果的にはひとつの許しを得たのでしょうが、その30年後、今度はレプリカントの側から描かれるのが本作。 主人公のレプリカントも旧型の解任=殺害を命じられたブレードランナー、という設定ながら、その点は本作ではあまり深掘りされる訳ではなくって、むしろレプリカントとしての彼が持つ過去の記憶、木製の馬のオモチャを握りしめた(本来ならレプリカントが持つはずのない偽りの)記憶にスポットが当てられています。 彼が木の根元から小さな花を拾い上げる、というキッカケからして、何となく詩的なものを感じさせ、VRの女性との交流が描かれたり、荒廃した過去の街が描かれたり、水のイメージが頻出したり、色々と雰囲気作りは凝らされているのですが、結局たどりついたのがこんなデッカード爺さんなのかよ、と。そりゃま、ハリソン・フォードの登場は、ファン・サービスではあるのだけど、こんなコトに満足していいのやら悪いのやら。 いっそデッカードは最後そのまま海に沈んじゃえばよかったんじゃないの。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-12-30 10:08:10) |
15. シンクロナイズドモンスター
《ネタバレ》 どうせ誰も見てないと思って自堕落でヤサぐれた生活送ってたら、誰も見てないどころか、地球の裏側では自分の行動が、怪獣によって完全コピーされており、衆人環視の中で大々的に披露&大勢の人々に迷惑にかけちゃってる、というワケですが。 このアイデアだけ見れば、よくこんなコト思いつくねえ、と感心もするのですが、映画自体はそこから伸び悩んだ印象。 主人公がアン・ハサウェイで、本来ならアルコールでグダグダになってるダメダメ女性の役柄のハズなんですが、まあ、美人過ぎですね(笑)。こういうタイプの役柄は、男性には割と受けがイイので、その分、女性からどれだけ反発を買うことか、想像するだにオソロシイ・・・。いずれにしても、題材にしては腐女子・汚ギャル指数はかなり低くって、「そんな指数が高かったら見る気が失せる」という声もあるでしょうが、タメが無ければ飛距離も出ない、という話もあります。 怪獣や巨大ロボは一応、それなりのCG描写でそれなりに楽しませてくれはしますが、怪獣映画としての本気度は(遠い異国の出来事として描いている点を差し引いても)あまり高いと言えず、少々踏み込み不足。では一種の女性映画として見ればどうかというと、さらに踏み込み不足で、いったい何が描きたかったんだ、と言いたくもなります。過去を「投げ飛ばして」オシマイ、って、そんなんでいいんですかね??? 怪獣が現れるのがソウル、ってのも何だか胡散臭くって、単に「日本=怪獣映画」のイメージにちゃっかりタダ乗りしてるだけの印象。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-12-22 13:56:18) |
16. エイリアン:コヴェナント
《ネタバレ》 これはもしかしてアレですかね、“エイリアン VS ブレードランナー”の前日譚ですかね。そんな映画がいつかできるとして。アンドロイドは電気ウナギの夢を見るか? 見ないでしょ。 未知の惑星を防護マスクも何も無しで闊歩して、そんないい加減なことでいいのか、と思ってたら案の定、謎の花粉が飛んできて大変な花粉症に悩まされることに。まあ、一作目とは趣向を変えよう、ってのは大いに結構なんですけれども、あの「宇宙服のマスク越しに襲われる」っていう衝撃に比べると、ヌルいというか何というか。一作目って、奇妙な事象の連続で我々をグイグイ引っ張って、謎の連続で前半をアッという間に見せる(後半はパニックでアッという間に見せる)、実にスリリングな作品でしたが、タイトルのうしろに「コヴェナント」をつけただけで、こうもモッサリするものかと。 一作目とは路線を変えよう、趣向を変えよう、ってのは勿論結構ですが、終盤に「実はエイリアンが一匹、船内に」という、とってつけたような原点回帰。しかし一作目の神秘性を削ぎ落された本作では、ずいぶん見劣りがしてしまいます。 という訳で、「エイリアンもよく見ると赤ちゃんの頃はカワイイねえ」という、まあ、そんな作品でした。 本作はニーベルンクの指輪における序夜、らしいので、いつか「神々の黄昏」が描かれるのでしょうか? [DVD(字幕)] 5点(2019-09-08 17:17:51) |
17. アサインメント
これがまた予想外の面白さ。 どういうオハナシかを書こうとすると、それだけで前半のネタバレになっちゃうので書きづらい。ってのがすでにうれしいではないですか。最初、見てて「アレ?」と思わせ、ああそういうことかと気づいた時にはもう、やめられない。 一応、実際のテロリストを描いた作品、ってコトらしいけど、たぶん9割9分まで創作なんでしょう、きっと。深刻そうなテーマと見せて、ここぞというところではしっかり、エンタメ作品らしいアクションを展開してくれる、サスペンスを展開してくれる、まあ、この図々しいことといったら。 正直、このオナハシを最後どう締めくくるかについては、あまりいいアイデアが見つからなかったのかもしれません、ちょっと駆け足かつグダグダな感じもありますが。でもそれを差し引いても、充分楽しめました。 それにしてもⅮ・サザーランド。ホントこのヒト、とことん悪そうな顔してて、かえって愛嬌がありますねえ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2019-07-08 21:14:56) |
18. 爆走トラック’76
邦題を見て、これは実に安そうな映画だなあ、なんて思いつつ冒頭のクレジットを見ていると、何と監督はジョナサン・カプラン。って、誰だっけ。そう、『告発の行方』ですね。だから(というワケではもちろん無いけれど)本作、なかなか社会派です。プロレタリアート映画です。 エアーウルフでお馴染みジャン=マイケル・ヴィンセント演じる桃次郎(じゃないけど)が、退役後、トラックの運ちゃんとして一旗揚げてやろうと思ってるのですが、違法行為を断ったが故に、さまざまな妨害を受けることに。 彼のやんちゃそうな顔立ちと、一本気な主人公のキャラが、よくマッチしてます。金はかかってなさそうだけど、体を張った小気味よいアクションも見どころ。 そんでもって、妨害行為はだんだんエスカレートしていき、ついに彼の怒りが爆発。で、どうなる訳でもなく怒りが爆発したところで終わり、っちゃあ終わりなんですけどね、そこがまた社会派っぽかったりして。これが終わりじゃない、ここからが本当の始まりだ、と。 安そうな映画ではありますが、もしかしてペキンパーの『コンボイ』にも影響を与えたりしてるんじゃなかろうか(それも無さそうな話ではあるけれど)、なんて思わせる瞬間もあったり。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-10-14 14:20:54) |
19. キングコング: 髑髏島の巨神
サミュエル・L・ジャクソンが闘う気満々な点といい、おそらくは「大人の事情」によりムダに東洋人がキャスティングされている点といい、おお、これはまさに『極底探険船ポーラーボーラ』ではないか・・・いや勿論あのヘナチョコ映画が本作に1オングストロームたりとも影響しているとは思わないけど(単位として正しいのかもワカランけど)、それにしても、ヘナチョコとは言えあのヒロイズム、そのカケラくらいは本作に注入してやりたい気がしないでもない。 馬鹿正直にモンスター映画として作品をひたすら肥大化させてしまったピーター・ジャクソン、アレに比べると、確かに本作は賢く立ち回っている気はします。全編がクライマックスとばかり、始終ガチャガチャやっているけれど、要するにこれって、クライマックスが無いのと同じ。ピーター・ジャクソンはジュラシックパークシリーズを叩きのめすべく、馬鹿正直に3頭も肉食恐竜を登場させてキング・コングと戦わせてみせたけど、本作なんて、何も欲張らない、何も気負わない、ただ、巨大コングをお披露目すればそれでよし。物語も、本作を通じて結局、何も起こらなかったに等しい。そう、次に繋ぐための、あくまで序章なんです。ってな感じ。 ヒロインに対するコングの態度も煮え切らない。けど、こういうシーンも一応、入れときましょう、ってか。 ってなワケで、どうしても感じてしまう出し惜しみ感。カッチョいいシーン、迫力あるシーン、それなりに楽しめるんですけどね。ただそれが、ほどほどのところでとどめられ、表面的にただ並べられた感じ。エピソードが有機的に絡みあっていた『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』の、いかに素晴らしかったことか(そりゃチープだけどさ)。 たぶん、これはたぶんだけど、本当はもっといろいろと怪獣映画としてのアイデアがあるにも関わらず、シリーズを念頭に、ちゃっかり温存してるんじゃないのかね。 もしそうなら、商売っ気があり過ぎ。もしそうじゃないのなら、次が本当に心配。 [ブルーレイ(吹替)] 5点(2018-08-15 11:19:38)(良:2票) |
20. 暗闇にベルが鳴る
冒頭の夜、謎の人物が屋敷に入ってくることが一人称の視点で描かれ、これから長々と恐怖の一夜が描かれるのかと思いきや、あっさり夜が明けてしまう。そのままズルズルダラダラとお話が進んでいって、何となくまどろっこしいんですが、こういう取り留めのない感じが、それなりに不気味な「恐怖映画らしさ」だったりもします。 今となっては、「懐かしさ」とも不可分になっちゃってるところはあるのですが、いずれにしてもこういう雰囲気、好きですね。 殺人シーンも、実際にはそんなに残酷描写そのものがある訳じゃないんですけど、それでも精一杯、ショックシーンに仕上げてる(なので、そういうシーンだけを拾って作られた予告編を見ると、かなりコワそうなんですね)。 あと、電話が本作の重要なアイテムになってますが、逆探知の様子が(正直、何やってるのかはよくわからないながらも)描かれてるのが面白くって、ある種の説得力があります。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-04-08 12:02:49) |