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プロフィール
コメント数 2405
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  イースタン・プロミス 《ネタバレ》 
まぎれもない傑作です。「ヒストリー・オブ・バイオレンス」あたりからクローネンバーグは人が変ったように監督としての腕があがってます。どのカットにも緊迫感がみなぎっていて、それが最後まで途切れません。皆さんご指摘のように、全編で使われる武器が刃物だけというのも効果絶大です。この調子でいけば、クローネンバーグがオスカーを獲る日も近いでしょう。
[DVD(字幕)] 9点(2009-01-22 21:36:41)
2.  ジョン・ウィック:チャプター2 《ネタバレ》 
前作の異世界の出来事のような不思議な世界観は後退してNYやローマと言った具体的な舞台設定が明確にされてますけど、ジョン・ウィックが属する世界的な犯罪ネットワークについてはさらにスケールアップした描かれ方になりました。どうもこのネットワークは“コンチネンタル”と呼ばれているみたいで、NYにある不思議なホテルはローマやたぶん世界各国に存在して、そこには銃のコンシェルジュや防弾スーツのテーラーなどが稼業のお手伝いをしてくれるみたいです。ジョンはそのネットワークの有力者と誓印という恐ろしい誓いを交わしてとりあえず引退することができた。まあだいたい以上のような事が判ってきました。 今作の敵はマフィアより凶暴なカモッラでございます。今回のジョン・ウィックはいきなり愛車をスクラップにされ(まあ自分でやったんですけどね)家は焼かれてホームレス状態。でも、あいかわらず殺しにかけてはブギーマンで、前作で語られていた伝説の“鉛筆殺法”まで披露してくれます。キアヌ・リーヴスのガンアクションにはマーシャル・アーツ的なスタイルが盛り込まれていて、監督がスタント・コーディネーター出身ということが活かされています。随所でセリフのキーワードだけがテロップで表示されるスタイルは面白かったですね。キアヌのアクションは相変わらず満身創痍になるガメラ・スタイルで、だいたい上映時間の三分の二は血糊が付いた顔で通したってのは、ある意味で凄い。キーパーソンとなるキャラはみなあっさりとした最期でしたが、ジアナやカシアンの死にざまにはちょっと意表を突かれてしまいました。でも唖者の女性ボディガードのキャラだけは、『ザ・レイド GOKUDO』のハンマー・ガールをパクったんじゃないの(笑)。 いい意味で型にはまらず予想を外してくるストーリー展開は、次作『パラベラム』にも期待が持てちゃいます、私このシリーズに嵌ってしまったみたいです。やっぱジョン・ウィックは21世紀最強のガンファイターですね(今のところは)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-03-21 22:44:56)
3.  ロケットマン 《ネタバレ》 
エルトン・ジョンは現代のモーツァルトだと個人的に評価している自分としては、かなり期待して鑑賞。だってその神童ぶりや恵まれなかった肉親関係、そして奇抜なファッションや言動には両者に共通点が多い気がするんですけど。初めてラジオのヒットチャートで“Saturday Night's Alright”を聴いたときの衝撃は今でも忘れられません。 ミュージカル映画と聞いていましたが、これは明らかに音楽劇風味が強い人間ドラマですね。監督がデクスチャー・フレッチャー、彼はトラブル後にブライアン・シンガーから監督を引き継いで『ボヘミアン・ラプソディー』を完成させていて、どちらも主人公がホモセクシュアルであるというのが興味深いですね。この人は芸歴の長い俳優で『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルス』のソープ役なんかが有名。その長い映画人生を活かして監督業にも進出、今後この分野でも活躍するんじゃないでしょうか。子役時代には『ダウンタウン物語』でジョデイ・フォスターとも共演していて、遅ればせながらジョデイと同じ道に進もうとしているのは感慨深いです。 しかし驚嘆するのは、現役の大スターが製作総指揮まで務めて自己の人生とその恥部をさらけ出す映画を製作したってことでしょう。もちろん全部が全部というわけではなくオブラートに包んだようなところもあったでしょうが、ホモセクシュアル描写を含めて『ボヘミアン・ラプソディー』なんかよりはるかに綺麗ごとを排したストーリーテリングには引き込まれました。これはタロン・エガートンの熱演が効いていると思いますが、オスカーで彼がノミネートすらされなかったのは納得できません。歌唱力も抜群でした、それにしても欧米の俳優たちはどうしてこんなに音楽スキルが高い人が多いんでしょうかね? 気になったところとしては、ジョン・リードに比べてバーニー・トーピンとの関係が割とあっさりめだったような印象ですかね。この黄金コンビは50年以上に渡っていていろいろあったと思いますが、自分の恥部はともかくバーニーのことは突っ込まないようにしたエルトンの友情を感じました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-08-22 22:01:25)
4.  キングコング: 髑髏島の巨神 《ネタバレ》 
コング、それにしてもでかくなったもんだ、ピー・ジャク版の五倍以上の大きさじゃないかな。懐かしの東宝特撮の南海ものを彷彿させるような怪獣プロレスに徹するところは清々しいぐらいです。でも敵役のオオトカゲ獣が怪獣と言うよりも妖怪に近い感じがして気持ち悪いことこの上なし。しかもこいつはよく見ると前脚しかないという奇妙な体型で、こんな生物が進化の道筋でどうして誕生したのか、夢想してみるのも楽しいかも。初代コングに対するリスペクトもきちんとあって、ピー・ジャク版にも登場したカニ蜘蛛がこれまた巨大化して御目見え、初代コングではカニ蜘蛛のシーンは残酷すぎるとカットされたのは有名なエピソードです。 ベトナム撤退直前の米軍ヘリボーン部隊を護衛に従えて髑髏島に乗り込むまでのストーリーテリングは、テンポも良く説得力があって申し分なし。でもやはり注目すべきなのは裏ストーリー、そうです、コングとサミュエル・L・ジャクソンと男と男(というかオス)の命を懸けた壮絶な対決!序盤でのコングとサミュエルのご対面シーンの迫力あることと言ったら、コングに対等に眼を飛ばせるのはやはりサミュエルしかいませんよ。後半ではほとんど『地獄の黙示録』のカーツ大佐状態でしたが、せめてお得意の決め台詞“Mother Fucker!”を最後まで言ってあの世に旅立って欲しかったです(笑)。 ジョン・グッドマンも実にあっさり喰われてしまうし、どう見ても死亡フラッグが立っていた黒人青年と中国女が生き残るのは意表を突かれましたが、よく見ると例によって中華資本が入っているのでしょうがないですかね。ラストを観れば続編を撮る気は満々なのが判りますが、どうも東宝特撮がらみの怪獣が出てくる雰囲気がプンプンします。キングギドラという説もありますけど、私はゴジラじゃないかと思います。ついに『キングコング対ゴジラ』の夢のリメイク実現!となるんでしょうか?
[CS・衛星(吹替)] 8点(2018-01-10 21:01:20)
5.  CUBE 《ネタバレ》 
本作こそがいまや出尽くした感があるソリッド・シチュエーション・スリラーの元祖と言えるでしょう。製作から20年ですけど、今の眼で観ても全然古さを感じさせないところは偉大です。ご存知『ソウ』も本作をパクったというかインスパイアされていますけど、『ソウ』はシリーズとして独自の世界を創造したので一枚上かもしれません。 CUBEに放り込まれた男女がなんで選ばれたのかが最後まで判らず、いやそもそもCUBE自体が何なのかすら説明なしなんで、この不条理感はカフカの小説に匹敵する怖さがあります。部屋を安全に移動する唯一のカギが数学と言うのは斬新すぎるアイデア、自分がかろうじて理解できたのは素数と因数という用語ぐらいで、あとは何を言っているのかはチンプンカンプンです。またこの手のスリラーで大事なのは登場人物たちの死亡フラッグですが、これがまた予想外の展開です。ヒーロー・キャラかと思った警官が途中から鬼畜野郎に変身するところを筆頭に、この映画の数少ない登場人物たちはほとんどが途中でキャラ変してしまうので、先読みがますます難しくなります。あのカタルシスのかけらもないラストも、なんか哲学的な感じで、この映画の価値を高めるのに貢献しているんじゃないでしょうか。 という映画史に残る偉大なスリラーですけど、最大の失敗は続編(らしきもの)を何本も撮っちゃったことです。もっとも監督のヴィンチェンゾ・ナタリたちのオリジナルスタッフは全然関与してないみたいですけど。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-11-04 23:23:33)
6.  オール・ユー・ニード・イズ・キル 《ネタバレ》 
ループ! ループ! ループ! 果たしてトム・クルーズはこの映画の中で何回タイムループしたんでしょうか?誰か数えた人いませんかね。言ってみればセーブできないRPGを何回もリプレイしている様なもんで、劇中のトムさんの身になったらこりゃ堪りませんよね。輸血されるとループ能力が失われるとのことですが、リタが強制的にリセット(つまりトムさんを殺すということ)しようとしてケイジ少佐が「待ってくれ、もうループ出来ないんだ!」と焦るシーンは、なんか可笑しくて堪りませんでした。最後のループからラストまでのシーンも、最初はちょっと理解できなかったけど良く考えられた結末ですね。 まあこれは究極の「主人公キャラが劇中で成長する」パターンの映画なわけで、やはりトム・クルーズぐらいのスターじゃないとこの映画の主役は務まりません。だいたい冒頭だけとは言え、ケイジ少佐のような腰ぬけキャラを彼が演じること自体が珍しいことですが、今後こういうダメキャラをもっと演じてみればトム・クルーズの新しい魅力が開拓できるかもしれません。 日本のライトノヴェルが原作なんだそうですが、良くここまで再構成したものです、ハリウッドの脚本家の能力はほんと侮り難いです。こういう題材を見つけてくる目利き力には感服ですけど、この宝の山に全然気がつかないというか無関心な日本映画界のダメさ加減にも呆れてしまいます。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-01-02 19:36:06)(良:1票)
7.  カポーティ 《ネタバレ》 
わー、本作を観て昔『冷血』を読んだときに味わった衝撃がまた甦ってきました。本作をご覧になった方で未読のかたは、ぜひカポーティの『冷血』も一読されることをお奨めします、ノンフィクション小説というジャンルを開拓した文学史に永遠に残る金字塔です。映画の中でもカポーティが『冷血』を朗読すると大劇場の聴衆が凍りつくシーンがありましたが、あれは決して誇張ではないと思います。この映画のカポーティ像は、自分が『冷血』を読んで残った「ああ、カポーティはペリーと一緒に処刑されちゃったんじゃないか」という感想とまったく同じなのでびっくりしました(まさかその当時は、カポーティがそのまま新作を発表しないで亡くなるとは予想してませんでしたが)。フィリップ・シーモア・ホフマンの演技は神がかり的で今さら論じるまでもないのですが、自分はキャスリーン・キーナーのネル・ハーパー・リーがまた素晴らしかったと思います。彼女はけっこう地味でおばちゃん顔(失礼!)なのでハーパー・リーの様なキャラはピッタリだと思うんですけど。
[DVD(字幕)] 8点(2011-05-16 21:25:43)
8.  アポロ13
懐かしいですね、この事件はリアル・タイムでニュースで観た記憶が残っています。当時の日本のニュースではさほど深刻な事態と騒いでなかったので、本作を観てけっこうヤバかったんだなと驚きました。何度観てもサターン・ロケットの発射シーンは素晴らしく、ロケット本体から氷の薄片がとび散る描写が個人的には好みです。ドラマ自体はロン・ハワードらしいかっちりと正統的な撮り方をしているので、引き込まれますがもうちょっと肩の力を抜いたところがあったらもっと良い作品になったのではと思います。まあ確かに、アポロ計画が終わってから誰も月に行ってないというのも変な話ですね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2010-10-31 11:01:21)
9.  プレッジ 《ネタバレ》 
回収しない伏線が多い映画はあまり好きじゃないのですが、本作は力技で押し切られたという感じでしょうか。確かにあのカタルシスからはあまりに縁遠いラストはショーン・ペンらしいところですが、でも普通の人生ではありふれて起こっていることなのですよ。あんな結末を観たくて映画に金払っているわけじゃない、と思う方もいるでしょうが、ちょっと大げさに言えば人生について考えさせてくれる良作だと私は思います。ジャック・ニコルソンは『アバウト・シュミット』とかぶるところが多い役柄ですが、どちらも同じ時期に製作されていますので役作りは楽だったのでは。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2009-11-24 20:45:52)
10.  CORD コード 《ネタバレ》 
凄い、凄すぎる…。ジェニファー・ティリーの壮絶な怪演は「屋敷女」のベアトリス・ダルといい勝負です。そう言えば「屋敷女」も妊婦がヒロインのお話でしたね。ヴィンセント・ギャロもちょっと可哀想でした、まさかあんな風に映画からフェード・アウトするとは…。そして再認識させられたのは、ダリル・ハンナの顔のごついことでした。この顔も、結構怖い…。
[ビデオ(字幕)] 8点(2009-10-08 00:41:02)
11.  ポゼッサー 《ネタバレ》 
監督しているのは、デヴィッド・クローネンバーグの息子ブランドン。最近は老いて枯れてきた風のある親父とは違って往年の親父を凌駕するようなグロい作風で、変態の性癖というのは遺伝するとは知らなんだ(笑)。この映画で見せられる殺人シーンのどれもエグいこと言ったらもう、とくにショーン・ビーンのやられ方なんて鉄杭みたいな棒を口に突っ込まれて…(以下自粛)、でもあれで死ななかったというのが信じ難い、人間という生物は思ったよりも頑丈なんですね。“マーダーinc”みたいな殺人請負企業で活躍するヒット・ウーマンがアンドレア・ライズブロー、第三者の脳に寄生するような形で操ってターゲットを仕留めたのちに操られた者を自殺させてオフィスの自分の肉体に戻ってきて任務完了、このシステム自体は『マトリックス』なんかで散々見せられてきた感じで斬新さはない。でもこんな反社企業が活動しているのが独特な世界線なんですね。時代は現代でターゲットが経営しているのはソフト制作企業みたいなんだけど、なんかレトロな雰囲気なんだよな。劇中でスマホもガラケーも誰も使っていない(ワンカットだけ携帯が鳴ったけど)、ヒロインが会社に連絡するのも自宅にある固定電話なんです。現代が舞台の映画でスマホやSNSが登場しないとここまで違和感があるとは、驚かされました。シメントリーを意識した映像や凝ったセットなどは印象に残ります。そして、ヒロインと操られた男の意識が混濁してゆくところのグロさは、これぞクローネンバーグ・ワールド!ヒロインが殺しにやたらと刃物を使って血まみれになるのが、これまたエグいんです。 ラストの展開は、私には正直?でしたが、けっこう印象に残る作品でした。ブランドン君、この調子を貫いて親父を越えていってくれ!
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-08-09 22:16:26)
12.  バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 《ネタバレ》 
バードマン≒バットマン、これはもうマイケル・キートンのセルフパロディとしか思えない、もっともバードマンとは違ってキートンは2回しかバットマンを演じてませんけどね。キートンありきで書かれたこの脚本ということは、彼にとってバットマンだったことは黒歴史だったということ何でしょうか。 イニャリトゥなどの最近のメキシコ三羽烏はワンカット風撮影がほんと好きですけど、本作では初めて自分は酔いそうになりました。とくにほとんどの舞台が劇場内の狭い空間なので余計しんどかったです。監督の意図はどうなんだか知らんけど、自分にはこの映画のテーマは映画界=ハリウッドと演劇界=ブロードウェイの、お互いにマウントを獲り合う醜い争いであるような気がしています。別に下北沢に通ったことはないけど、個人的にはとくに日本の演劇界も鼻持ちならない界隈みたいで似たような感じだなと思っています、まあ日本映画界もたいがいですけどね。婆あと言っていい様なおばさん批評家が権力を持っていて、キートンの芝居を観ようともせずに映画スターとハリウッドに対する個人的な反感だけで「明日の記事で酷評して打ち切りにしてやる」と宣う、もうこりゃいじめですやん。面白いところは主役兼脚本のキートンとこのおばさん批評家はどちらもSNSとは無縁のアナログ人種で、おばさんに至ってはメモ帳みたいなものに手書きでせっせと記事を書いている。ところが娘のエマ・ストーンを通じて見せつけられるリアルでは、ブリーフ姿でブロードウェイを彷徨うキートンの動画があっという間に300万再生を超えて不振だったチケットが爆売れしてしまう。つまりハリウッドだブロードウェイだといがみあっていてもどちらもオワコンになりかけてるんだよ、と監督のイニャリトウは皮肉っているんじゃないかな。 一度観ただけでは情報量も多くて深いところまで理解しにくい作品であることは確かです。でもイニャリトゥはやがて“21世紀のフェリーニ”と呼ばれるようになるかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-11-21 22:58:41)
13.  第9地区 《ネタバレ》 
まさに“アイデア一発勝負”で製作された映画、エイリアンを難民と捉えて大量に増えたエイリアンがスラム化した難民キャンプに押し込められるという設定は斬新でしょう。でもよく考えると、地球に来たエイリアンと人類の共存というテーマは、過去にも『エイリアン・ネイション』なんかで使われているしそう独創的でもない。このストーリーを思いついた監督が南アフリカ共和国人なんで、南アフリカ共和国や周辺アフリカ諸国の現状を織り込んだ脚本はSFながらも普遍的な社会性を持つことに成功しています。だいいち、『第9地区』というタイトルは南アフリカ共和国にかつて存在した黒人隔離施設“第6地区”のもじりなんですから。しかしながら長編映画を初めて監督したというニール・プロムカンプの力量はまだまだの水準で、オスカー作品賞にノミネートされたけど監督賞にはノミネートなしというのは止むを得ないでしょう。 プロットの秀逸さは誰しも認めるところでしょうが、私には映像やアイテムは過去のSF映画の寄せ集め的な印象が拭えないんですけどね。ヨハネスブルク上空で静止する円盤は『インデペンデンス・デイ』、ヴィカスがエイリアン化してゆく描写は『ザ・フライ』、後半に大暴れするモビルスーツは『ロボコップ2』という風に既視感が強いんですよ。まず、本来宇宙船を稼働させるための燃料を身に浴びることでヴィカスがエイリアン化するのが理屈というか説得力がまるで感じられない。エイリアンの姿形や習性のグロさは観ていて拒否反応を起こす人が多そうなレベルですけど、スラム内で活動するギャング団のナイジェリア人の描かれ方も相当なもんです。まあそれを言ったら主人公ヴィカスも感情移入できない奴で、エイリアンの卵を焼き払って「中絶だ」とはしゃぐところなんか、ほんとサイテーです。こういったポリティカル・コレクトに引っかかりそうな描写は、欧米の映画では見られないものですね。面白いのはエイリアンと人類ではお互いの言語を聞き取って理解することができるのに、決して相手の言葉を喋らない(喋れない?)ところです。この変則的なコミュニケーションは、人種や宗教の違いで起こる国際社会での摩擦の一つのメタファーなのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-22 22:12:57)
14.  スターリンの葬送狂騒曲 《ネタバレ》 
“スターリンのヒムラー”の異名を持つ秘密警察長官ラヴレンチ―・ベリヤの処刑については実は様々な異説があり、プーチン大統領はもちろん真実を把握していますが決して彼が(そしてその後のロシアの政体が)真相を明かすことは今後もないでしょう。でも本作で描かれるようにスターリンの葬儀直後に処刑されたというのはフィクション(逮捕直前の細かいディテールは一般的な通説に従っている)ですが、これはまあ許容できる創作の範囲だと思います。 スターリン死の前後のドタバタがこの映画のテーマですが、歴史上稀にみる過酷な独裁政治の終焉ですからその視点がブラックかつシニカルであるのはストーリーテリングとしては正解でしょう。スティーヴ・ブシェミのフルシチョフを始め政治局員の面々は実物と良く似せたふん装で、とくにブルガーニンやカガノヴィッチはそっくりです。この人物たちの権力欲だけは旺盛な小物ぶりは実にコミカルで、実際この人たちはスターリンに気に入れられなかったら一国の統治に関わるような資格さえ持てなかったんじゃないですかね。逆にベリヤが改革を進めようとする善玉のような見せ方になっているのが皮肉です。実際に彼はスターリンの死後いち早く収容所の開放や政治犯の釈放に取り掛かっているのですが、これはストーリーの進行上スターリン時代の悪行をほとんどスルーしてしまったためで、このことを批判する欧米の批評家も存在します。 さほど遠くない過去に起きた醜悪な歴史的人物たちが繰り広げるドタバタ劇、としかわたくしには感想が思いつきませんが、劇中NKVD内の廊下にまるで電話のベルが各部屋で鳴っているかのように響き渡る銃声が悪夢のようでした。その中で、狂言回し的なキャラだったオリガ・キュリレンコが一服の清涼剤でした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-09-07 23:23:02)
15.  人類創世 《ネタバレ》 
その発想は、ちょっと他に類を見ないような珍作、「こういう映画を撮ってみたい」と妄想した映画作家は多々いたかもしれませんが、それを実現させるのはある意味で偉業です。 登場する原人は、まるっきり猿人風からネアンデルタール人的な風貌、そしてどう見てもアマゾンの原住民にしか見えないのまで、多種多様です。IMDBで調べると、実はこの映画に登場する原人たちにはみんな名前があり、種族名までちゃんとついていることを知って驚きました。ちょっと首を傾げたくなるところですけど、演出上はやはりそういう配慮が必要だったんでしょうかね。現在の研究では、ホモ・サピエンス以外の人類も同時期に地球上には存在していたことが判明しています。そういうことを考えると、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人が共存している世界は自然なのかもしれません。そして容姿から考えると、ロン・パールマンたちが演じているがネアンデルタール人で、アマゾン原住民風の種族がホモ・サピエンスだと解釈するのが妥当な気がします。ということは、この映画は実はネアンデルタール人を主人公にした稀有な作品なわけです。 当たり前ですけど、誰も見たことがないし証拠もないのでこの映画の世界がリアルなのかは判りませんが、説得力がある映像なのは確かです。そしてホモ・サピエンス風の種族の進化の度合いは、他の種族に較べるとSF映画の高度な文明を持ったエイリアンと地球人ぐらいの差があります。 ラストにはこの異なる種族が交接して互いに夜空に輝くお月様を眺めるわけですが、そこにはやがて滅亡してしまう運命のネアンデルタール人の悲哀が感じられたりします。現在の人類の核遺伝子には、ネアンデルタール人特有の遺伝子が4%前後混入しているそうです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-06-09 22:28:32)
16.  パワープレイ
“クーデターってやつはこうやって計画し実行するんだ”という事例を、まるでその手引書みたいにバッチリと見せていただけます。ドナルド・プレザンスといいピーター・オトゥールにしても、もうピッタリのキャスティングで文句なしです。でもある意味とてもリアルなキャラだったのはデヴィッド・ヘミングスだと感じます。始めは「誰も殺さない」なんて綺麗ごと唱えていても、実行されると敵味方に死者が続出、それでも「まあ、しゃあないか」と無関心。乗り気じゃなかったはずなのに大統領の席に座るともうにんまりと満面の笑み、こういう人って世間にゴロゴロいますから切れ者と見せておいての凡人感が半端ないです。静というかもたつき気味の前半と、打って変わってスリリングなクーデターが始まってからの後半パートのメリハリもイイ感じですね。 グラサンかけて砲塔ハッチに横座りして煙草をふかすピーター・オトゥールの姿は、ため息が出るほどカッコよかったです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-12-30 23:10:35)
17.  トレヴィの泉で二度目の恋を 《ネタバレ》 
ありふれた“ボーイ・ミーツ・ガール”ストーリーの後期高齢者バージョンという感じなんですけど、予想以上にしっとりと見せてくれる映画でした。この “ボーイ”がクリストファー・プラマー、“ガール”がシャーリー・マクレーンという二大名優というところがミソです。マクレーンの住んでいるアパートに妻を亡くしたばかりのプラマーが引っ越して来てそれから…、というのが基本的なストーリーです。マクレーンはどこまでか本当の話かよくわからない虚言癖がある婆さん、もうキャラがぴったり過ぎて笑っちゃうほどです。最近思うにクリストファー・プラマーは老いてからどんどん良い俳優になってきてる気がします。気品ある風貌と演技が品格さえ感じられてきて、同年代のマイケル・ケインとある意味好対照な感じがします。また助演陣がまた豪華で、マーシャ・ゲイ・ハーデンにジェームズ・ブローリン、そして懐かしのジョージ・シーガルまでお出ましとは感無量です。 この映画はフェリーニの『甘い生活』が重要なモチーフになっていて、クライマックスではマクレーンとプラマーがトレヴィの泉で『甘い生活』の有名なシーンをオリジナルとそっくりな衣装で再現するというちょっとウルウルするようなシーンもあります。この二人の残された人生の時間はそう長くはないだろうし、もっともっと映画に出演してほしいしそれを観たいと切に願う次第です。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-10-18 19:28:33)
18.  白い家の少女 《ネタバレ》 
この年(76年)だけでジョディ・フォスターは5本もの主演・準主演作が公開されていて今で言うとクロエ・グレース・モレッツ状態、いやクロエちゃんをはるかに超える勢いだったんですね。実は彼女がトップにクレジットされるのは本作が初めてで、つまりジョディの初主演映画と言うわけです。『タクシー・ドライバー』の少女娼婦役が強烈過ぎてかすんじゃってますけど、この映画のリン・ジェイコブスはその後の彼女の映画人生に影響を与えたキャラだったんじゃないでしょうか。 面白い事にこの映画は、作家の親娘の話である『別れのこだま』と設定が酷似してるけど、まるで真逆の展開になるんです。『別れのこだま』ではジョディが心臓病を患う少女役ですが、本作では病魔に苦しむのは作家である父親で、しかもその娘は父の死後恐ろしい行動に出る。それまではハート・ウォーミングなキャラが持ち味だった彼女が、普通に見える少女の心の闇をここまで演じ切れば観客には強烈な印象を与えたことでしょうね(少女娼婦という存在はあまり普通じゃないですから)。少女なんだけど常に無表情で何を考えている測り知れない、だけど本質的なもろさはきちんと見せるという演技をこの歳で完璧にものにしているんだから恐ろしいことです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-06-28 21:59:00)(良:1票)
19.  サイレントパートナー 《ネタバレ》 
まさにデ・パルマ風タッチを模倣した様な作風の映画、デ・パルマの様なキレ味鋭いめくるめくような映像美はないですけどね。でも良く考えてみれば、この映画が撮られた78年ごろと言えばデ・パルマはまだ『フューリー』を撮ったぐらいの頃で巨匠と呼ばれるには程遠く、『殺しのドレス』や『ボディダブル』は80年代のお話しです。それなのにこの濃厚なデ・パルマ臭は実に不思議です、ラストのクリストファー・プラマーの行動なんか『殺しのドレス』をパクったのかと思ったぐらいです。 スザンナ・ヨークが意外とストーリーに絡まないで謎の女が中盤に登場し、そこから始まる三すくみの騙し合いがなかなか面白い。エリオット・グールドの部屋とその下にある電話ボックスからのやり取りは印象的です。驚くほど残虐なクリストファー・プラマーがまた秀逸で、グールドの部屋のドアの郵便受けからいきなり顔をのぞかせるシーンは(どんだけ幅の広い郵便受けだよ、という突っ込みはさておき)、心底びっくりさせられました。でもこのプラマーを罠にはめて警察に逮捕させちゃうグールドも、飄々としたただの銀行員じゃない曲者ってところが良かったですね。あとただうろうろしてるだけの銀行の同僚役だったんですが、ジョン・キャンデイが妙に目立ってました(笑)。 この映画は脚本はカーティス・ハンソンなんです、そりゃ面白くないわけがありませんよね。
[DVD(字幕)] 7点(2015-05-17 19:16:09)
20.  ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館 《ネタバレ》 
冒頭に現れるカンパニー・クレジットを観て思わず「おお、懐かしのハマー!」と心の中で叫んでしまいました。ハマー・プロが現在も活動しているとは恥ずかしながら知りませんでしたが、この映画にもしっかりハマー・プロのDNAが継承されていた気がしました。 まずハマーらしくゴシック調のプロットが素晴らしい効果をあげています。怪談映画にはその物語の舞台となる風景が重要な要素であるというのが自論なんですが、フランスの世界遺産のひとつみたいな潮の満ち引きで陸地から隔離される半島というロケーションが不気味な雰囲気を盛りたててくれます。時代設定も1900年代初頭(たぶん)に置いているというのも良く考えられています。自動車は存在しているけど田舎には電気がまだ通っていないという環境は絶妙ですね。若いけど妻の死で打ちのめされ生活に疲れきってしまっているというダニエル・ラドクリフのキャラも、けっこう説得力があったと思います。ラドクリフくんのことですから終盤にはハリー・ポッターみたいになって霊と闘うのかと誰しも思うでしょうが、最後にはあの結末ですからねえ。でもハリウッド映画では決してあり得ないこのエンディングは、“ものの哀れ”を怪談の神髄だと信じている自分にはとても心に沁みるものがありました。 小品ながら怪談映画の佳作だと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-01-18 20:32:55)
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