161. 楽園をください
《ネタバレ》 奴隷制撤廃を大儀に南部の人間を虐殺する北軍と、自分たちの生活(と風習)を守るため戦う南軍ゲリラとの熾烈な戦闘。しかし結局のところやっていることは単なる殺し合いに過ぎず、武器を持たない一般市民までが多数犠牲になるという戦争の不条理。南軍に籍を置きながらも、マイノリティであるドイツ系のジェイクとアフリカ系のダニエル。親友でもある主人を殺され、「自由になった」と語るダニエルの言葉は深い。彼らの目を通して戦争の悲劇が描かれており、名匠アン・リーらしい詩情豊かな映画となっている。 [DVD(吹替)] 6点(2013-01-06 07:00:08)(良:1票) |
162. ガメラ 大怪獣空中決戦
《ネタバレ》 あまり怪獣映画は観ない方なのだが、『レギオン襲来』が面白かったので、遡って観ることに。こちらは意外なほどオーソドックスな怪獣映画という感じで、特撮も、続編2作に比べたらかなり稚拙。しかしそれはそれで味がある。日本に怪獣が現れたら、というシュミレーションを真面目に行い、攻撃されるまでは手を出せない自衛隊が、ギャオスとガメラのどちらを脅威と見なすか逡巡したりする様がリアル。福岡ドームにギャオスを閉じ込めたり、東京タワーにギャオスが巣を作ったりと画的にもワクワクする。あくまで人間目線で怪獣の巨大さを表現する撮影方法も巧い。 [DVD(邦画)] 7点(2009-09-04 23:39:59)(良:1票) |
163. 女王陛下の007
《ネタバレ》 ジョージ・レーゼンビーは、コネリーのようなムンムンした男の色気がなく、後のムーアやダルトン、ブロスナンらと比べても華がない。しかし、荒唐無稽な作風へと変わり始めていたシリーズの舵取りを修正し、リアリティ重視にした結果、本作はシリーズ中、最も異色で心に残る作品となった。全体的にアクションが抑えられているが、クライマックス、ブロフェルドの砦をヘリで急襲するシーンの格好良さは文句のつけようがない。悲劇的なラストは、制作年代を考えると、アメリカン・ニューシネマの影響を窺われるが、まんまと泣かされてしまった。レーゼンビーは本作限りの出演。 [DVD(字幕)] 8点(2007-10-23 21:52:09)(良:1票) |
164. 007/慰めの報酬
《ネタバレ》 カットバックを多用したアクションシーンはボーンシリーズの影響だろうが、ポール・グリーングラスに比べ、この監督はアクションを撮り慣れていないらしく、全く何をやっているのか分からない。そのため、全編を彩る折角のアクションシーンでフラストレーションを感じるのが何とも勿体無い。前作に引き続き、ダニエル・クレイグのハードボイルドなボンド像は格好良い。復讐を胸に秘め、砂漠を横断する男女の姿は『ゲッタウェイ』を思わせる渋い構図。『ゴールドフィンガー』のオマージュも見られ、ラストにガンバレルを持ってくるあたりも心憎い演出。強大な組織を前に、今後のボンドの活躍が期待できる。 [映画館(字幕)] 8点(2009-01-30 19:22:45)(良:1票) |
165. ビューティフル・ガールズ
《ネタバレ》 人生をちょっとだけ真面目に考えなくてはならない時期に来た男たちと、彼らを取り巻く女たちの群像劇。『ビューティフル・ガールズ』というタイトルだけあって、出てくる女優陣が豪華。ユマ・サーマン、ミラ・ソルビノ、ロージー・オドネル、ローレン・ホリー、ナタリー・ポートマンといった錚々たる顔ぶれ。特に主人公の隣家に住む少女を演じたナタリーが最高に可愛い!ティモシー・ハットンが惚れてしまうのも頷ける(彼はもっと評価されて良い俳優だと思うのだが…)。『ブレックファスト・クラブ』をはじめとする80年代の青春映画の〈その後〉を描いた作品として、実は90年代の隠れた名作だと思う。祝DVD化!(2012年4月4日追記) [ブルーレイ(吹替)] 8点(2008-04-08 08:40:45)(良:1票) |
166. 少年メリケンサック
この点数はあくまで宮崎あおい評価です。あしからず。クドカン作品としては、前作『真夜中の弥次さん喜多さん』に容赦なく3点をつけているんですが、今回は良かった!全然関係ないんだけど、このアナーキーな姿勢は『悪魔のいけにえ2』に通じるものがあると感じた。故にラストはもっとぶっ壊れていても良かったと思うが、いい終わり方を思いつけず適当にまとめちゃったような気がする。宮崎あおいのエキセントリック演技も後半にいくにつれ失速していき、キャラが立たなくなったのが残念。「ニューヨークマラソン」の本当の意味が分かってスッキリ。 [映画館(邦画)] 7点(2009-02-16 12:10:51)(良:1票) |
167. アウトロー(2012)
《ネタバレ》 ひと昔前だったら、マイケル・パレあたりが主演でやってそうな、西部劇風アクション映画。『ミッション・インポッシブル』がハイテク兵器を駆使した現代戦なら、本作ではいたって古典的なカーチェイスと格闘と銃撃戦が繰り広げられる。クライマックスはロバート・デュバルが年甲斐もなく頑張っており、トムは少々お株を奪われた感じ。つまらない映画ではないが、『ミッション~』級の大作映画を期待すると肩透かしを食う。ヒロインはもう少し美人を起用してほしいものだ。 [映画館(字幕)] 6点(2013-02-03 23:59:06)(良:1票) |
168. ラースと、その彼女
《ネタバレ》 徐々に明らかになるラースの出生。母はラースの出産後すぐに亡くなり、兄は早くに家を出たため、人間嫌いの父親と二人で暮らしていた。父の死後、兄夫婦が実家に戻ってきたため、ラースは離れにひとりで暮らすことになる。ラースがビアンカを連れてきたのは、義姉の妊娠と、自分に好意を寄せてくれる女の子が現れた頃。「大人になるための通過儀礼」としてのビアンカ。一見人間嫌いのように見えて、実は心に愛が溢れているラース。母の死から人に触れられるのを畏れているラースは、「妊娠=死」という概念から逃れられず、愛する人に触れたい、触れられたいという当たり前の感覚があらかじめ失われている。それをリアルドールという形で克服していく様を実に穏やかに描いている。小さな町の人々の温もりも忘れがたい。ライアン・ゴズリングが嫌味なく純粋なラースを演じており、鑑賞後は不思議な感動を覚える。 [DVD(吹替)] 7点(2009-11-14 00:48:28)(良:1票) |
169. 川の底からこんにちは
《ネタバレ》 満島ひかりが評判通り素晴らしい。どんな困難に対しても「しょうがないじゃないですか…」と、諦観の境地にいるヒロインが、崖っぷちの人生から這い上がる清々しさ。「どうせ中の下のダメな人間なのだから、とにかく頑張るしかない!」というこの開き直り。参りました。「政府を倒せ!」という過激な社歌もスゲエ!癖になりそうな映画。監督の次回作に期待。 [DVD(邦画)] 7点(2011-02-27 01:44:49)(良:1票) |
170. シャイニング(1980)
《ネタバレ》 スティーヴン・キングの原作を離れ、キューブリック独自のスタイルで描かれた恐怖映画の最高峰。子供が三輪車を走らせているだけで、こんなに怖い映画もないだろう。画作りが巧いと言ってしまえばそれまでだが、これほど効果的に、一秒の無駄もなく緊張感を持続させることは至難の業だろう。無論、ジャック・ニコルソンの狂気を湛えた演技も素晴らしく、この映画を観て以来、他の作品でニコルソンが出てきたら、いつ暴れ出すかとビクビクしてしまう。有名な血の海エレベーターや双子のシーンになると「うわ、出たよ!」と、何かイヤ~なものを見た気分にさせてくれる。いつの間にか自分も、オーバールックホテルの出口のない迷路に迷い込んでしまうのだ。 [DVD(字幕)] 10点(2007-09-11 16:20:44)(良:1票) |
171. マイ・バック・ページ
《ネタバレ》 実体の伴わない「言葉遊び」をしているだけの学生運動家・松ケン、そんな彼の言動に翻弄されるジャーナリスト・妻夫木。やがては時代の波と共にのっぴきならない状況に追い込まれる(あるいは自らはまり込む)彼ら。70年代初頭を生きた二人の若者の苦い青春を描いた、山下監督渾身の一作。ざらついた映像に、当時を再現した美術、衣装、そして脇を固める「大人たち」の自然体の演技は圧巻。当時をよく知らなくても、そのリアルさには目を見張る。虚を突かれた時の松ケンの歪んだ口元が印象的。そして、もちろんラストの妻夫木の涙。あの瞬間のためにそれまでの長い2時間があったのだろう。 [DVD(邦画)] 8点(2011-12-16 21:54:26)(良:1票) |
172. ラスベガスをやっつけろ
《ネタバレ》 ジョニー・“ハゲ”・デップとベニチオ・“デブ”・トロのドラッグ珍道中INラスベガス。ベトナムに行かない『地獄の黙示録』か、サイケ版『悪魔のいけにえ』とでも言いましょうか(1971年というのがミソ)。『ハング・オーバー』を1000倍凶悪にしたような映画。まともな人間が観たら嘔吐しそうな内容だが、好きな人には脱糞ものの傑作だろう(下品な例えですみません)。キャメロン・ディアス、クリスティーナ・リッチ、エレン・バーキンと、女優陣が何気に豪華。テリー・ギリアムはやはり侮れない。 [DVD(字幕)] 6点(2012-04-04 15:11:47)(良:1票) |
173. ロボコップ(1987)
《ネタバレ》 バーホーベン監督の作品は過剰に暴力的で扇情的な内容なので、あまり好きにはなれなかった。しかし、『インビジブル』のメイキング映像で演出する監督の姿を見て、彼は「情熱の人」なのだと知った。深作欣二監督が『仁義なき戦い』で見せたあの情熱と本質は変わらない。ロボコップのデザインを巡って、ロブ・ボッティンと殺し合い寸前の喧嘩をしたという逸話も残っている。たかがハリボテのロボットに命を懸けているのだ、この男は。ブルーレイで観られるディレクターズ・カットは、「残酷すぎる」という理由でカットされたシーンが復活している。しかし、ここまで残酷だと逆に笑ってしまうのもまた確か。やはりバーホーベンからは目が離せない。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2009-11-23 16:02:20)(良:1票) |
174. ソナチネ(1993)
死と暴力はぽっかりと口を開けて待っている。やくざ同士のだらだらした会話。全体を覆いつくす虚無感。沖縄の空が眩しい。北野武の最高傑作。 [DVD(邦画)] 10点(2007-07-27 10:27:24)(良:1票) |
175. ターミネーター2/特別編
もう何回観たか分からないが、観るたびに興奮を覚える。遂にブルーレイまで手に入れてしまった。今後、これ以上面白い映画に出会えるかどうか…。永遠不滅の傑作。 [ブルーレイ(吹替)] 10点(2008-02-27 12:40:26)(良:1票) |
176. ミッドナイト・ラン
何度観ても楽しめる映画というのは少ない。特に最近の映画は、映像ばかりが凄くて、一度観れば充分、という作品が多過ぎる。後世に残る名作というのは、心の琴線に触れ、登場人物に感情移入でき、観終わった後、確実に自分の中の何かが変わったと感じる映画だろう。『ミッドナイト・ラン』はそういう映画だ。主人公ジャック・ウォルシュがこの旅の中で何かを得、変わったように、我々もまた変われるのだ。映画の効用とは実はそれに尽きるのではないか。 [DVD(字幕)] 10点(2007-07-27 00:04:14)(良:1票) |
177. レッド・ドラゴン(2002)
《ネタバレ》 シリーズ3作目だが、『羊たちの沈黙』の前日譚にあたるストーリーで、ハンニバル・レクター逮捕から幕を開ける。本筋は「噛み付き魔」ダラハイドによる連続殺人事件を扱ったもので、レクターは『羊たち~』同様、獄中から主人公に助言を行なう(と見せかけて、同時に主人公の命を狙っているところがレクターらしい)。全体の構成からして『羊たち~』によく似ており、『ハンニバル』が苦手だった人もこちらは大丈夫だろう。圧巻は、名優たちをこれでもかと揃えた豪華キャスティング。レクター役のアンソニー・ホプキンスは勿論、エドワード・ノートン、レイフ・ファインズ、エミリー・ワトソン、ハーヴェイ・カイテル、フィリップ・シーモア・ホフマンと、名前を挙げるだけでゾクゾクしてくる。唯一の不安要素は監督が『ラッシュアワー』のブレット・ラトナーということだったが、それも杞憂だったようだ。『羊たち~』に繋がるラストも巧い。 [DVD(吹替)] 7点(2010-01-15 09:46:01)(良:1票) |
178. ハロウィン(1978)
《ネタバレ》 実は『ハロウィン』にはいくつかのバージョンがあり、日本で最初にソフト化されたものは、米国TV放映版だった。これは残酷シーンをカットし、いくつかの補足的なシーンを追加したもので、自分が最初に観たのもこれだった。残酷シーンをカットしたホラー映画がいかに味気ないものになるかは『血のバレンタイン』などを観れば分かるように、これは全く残念な代物だった。しかし後に劇場公開版を鑑賞することが出来、溜飲を下げた。これが本物の『ハロウィン』だ。TV版で追加されたシーンは続編の伏線となる部分だが、これはストーリーの流れを悪くしているだけで不必要に感じる(劇場公開版に追加シーンを加えた完全版もDVD化されている)。やはり劇場公開版がベスト。スラッシャー映画の元祖にして最高傑作。 [DVD(字幕)] 7点(2007-07-26 20:59:26)(良:1票) |
179. レ・ミゼラブル(2012)
《ネタバレ》 壮大な映像叙事詩。『レ・ミゼラブル』は98年製作のリーアム・ニーソン版を観たことがあるが、今回は有名ミュージカルの映画化。あのラッセル・クロウが突如歌い始めた時には思わず失笑してしまったが、娼婦に身を落としたアン・ハサウェイの独唱には涙が溢れた(彼女はアカデミー助演女優賞の最有力候補だと思う)。恐らく舞台では表現不可能であろうリアルでダイナミックな映像や、役者のクローズアップによる感情表現など、映画ならではの楽しみもある。サシャ・バロン・コーエンとヘレナ・ボナム=カーターのコメディ・パートが、暗く重い物語にちょっとした明るさを持ち込んでおり良かった。ラストシーンは思わずスタンディング・オーベーションをしたくなる程。久し振りにサントラが欲しくなった。 [映画館(字幕)] 9点(2013-01-06 21:17:23)(良:1票) |
180. オー・ブラザー!
《ネタバレ》 これって数日間の話ですよね?よく分からないんだけど、たった数日でレコードが売れたり、全米の人気者になったりするものですかね?普段あまり映画にリアリティを求めない方なんですが、これはまるで数ヶ月間の話のよう。脱獄後、また捕まったタトゥーロがすぐ別の場所で労働に就かされているのも?(懲罰房に入れられたりしないものなのか?)ストーリーの根幹は面白いが、細部が穴だらけなのでシラけてしまう。クルーニーのコメディ演技は良かった。 [DVD(吹替)] 6点(2007-11-06 15:37:43)(良:1票) |