1. ALWAYS 三丁目の夕日
《ネタバレ》 過去というものは人の頭の中で無意識のうちに美化されていくものだと思っている。現実が厳しくて辛いほど、過去というものは「古きよき時代」として徐々に美しいものに作り変えられていく。 三丁目の夕日は、リアルさよりもむしろ人の記憶が作り上げた美化された過去を再現したファンタジー映画ですね。 それと六子ちゃんの演技に涙しました。ケーキをこっそり食べて、おなかを壊しても、お茶目で微笑ましくうつる。しかしもし、おなかを壊して寝込んでいるのがブサイク女だったら、どんなに上手な演技をしても観客にはブーイングものだろう。ヒムラーだったら即刻銃殺だと考える。 小雪さんもしかり。美しいからこそ、あのくさい指輪をはめるシーンが絵になる。美人は得だ。 それと鈴木オートの社長をみて思ったのだけど、この時代に「過労死」という言葉はなかったと思いませんか?しかし現在以上に昔の人たちは働いていましたよ。そして労働は今よりも過酷だったはず。ではなぜ現代人だけが過労死するのか?その答えは簡単である。現代は働き甲斐がないのです。つまり働いているのではなくて働かされていると感じることが多い。鈴木オートの活き活きした仕事振りを見ていてそのようなことを漠然と感じたのでした。 [DVD(字幕)] 7点(2006-09-12 17:52:58)(良:2票) |
2. es[エス](2001)
《ネタバレ》 人の人格は一朝一夕では変わることは決してありません。ましてや1週間足らずでここまで劇的に変化はしない。これこそ深層心理の常識ですよ。スタンフォード大学の実験がこのような事故につながった原因は、実験のせいではなくてあれは本当にただの喧嘩だったのです。ようするに、子供が夜中にまくら投げをして はしゃいでいるうちに、だんだんエキサイトしてきて喧嘩になるのと同じレベルでした。だいたい人が大勢集って閉鎖された空間で毎日顔をあわせていれば騒ぎは必然的に起きるものじゃないですか、それもタクシーの運ちゃんなどガラの悪い連中を集めているのだからなおさらです。それを無理やり実験のせいにしてしまうなど言語道断ですよ、本当の刑務所で看守と囚人の関係をみればこの実験が人間心理の真実だとは恥ずかしくて言えないはずです。権力を与えられた者に支配欲が発生することはわかりますが看守役に支配権はなかったと断言します。警棒がそんなに恐ろしいですか?冗談じゃありませんよ、それだけで囚人役をあそこまで奴隷扱いにすることは不可能なのです。実際の事件では支配と被支配の構図は存在しなかった。従ってこれは純粋な喧嘩なのでしょう。連中が酔っ払ってバカ騒ぎの喧嘩を起したというのが真相だと思う。「極限状態が人を変えてしまう」という宣伝文句も失笑ものです。なぜならはじめから最後まで何1つ変わっていないからです。最初から金目当てでやって来ているガラの悪い連中を集めて実験しているのだから、もともと暴力的だったのです(苦笑)そもそも「応募資格:不問」というのが間違っていましたね。以上です。 [DVD(字幕)] 1点(2006-08-14 20:31:27)(良:3票) |
3. 萌の朱雀
《ネタバレ》 ひとことでいえば愚直で純粋な映画。フランスの慧眼によって表舞台に出てこなければ一生お目にかかることができなかった映画。観客のノスタルジーを刺激する映像がとても美しかった。私のように今でもこういう場所の近くで住んでいる人間にとっては、かなり痛い映像でもある。ちょうど文化大革命期の中国において、反革命分子の子が再教育のために、奥深い山村へ飛ばされる、そういう場所の映像を思い出してしまった。都会の人間にはさぞかし癒される光景だろうが、実際にそこに暮らす人々にとっては、吉幾三の歌ではないが切実な問題なのです。過疎化は過去の遺物ではない。スズムシの泣き声は都会暮らしの人間にはさぞかし風流だろう、しかし私の住む場所では、スズムシだけではなく、近くの田んぼでカエルまでがゲロゲロ鳴いている。ちょうど「カサブランカ」という映画において、兵士たちがドイツ国歌とフランス国歌を張り合うように歌う名シーンがあるが、それと同様にスズムシとカエルが競い合うようにハーモニーを奏でている。嫌になってくる。家族構成も新鮮だった。無職で無気力なダメオヤジと、すぐに逝ってしまいそうなバアさんがいる。これで老人がボケたら目も当てられない大惨事になるのは火を見るより明らかだ。都会ならば一瞬で家族崩壊であろうシュチエーションでも、田舎ではそう簡単には壊れない。俳優陣は9割が素人。まったく演技せず、素で喋っているので、もごもご何を言っているのかよく分からないけど、特に理解する必要もないとおもう。そういう映画じゃない。なにかを感じる映画です。鉛色の空色や、食卓の場面で開けた障子の合間に見える山々の頂が目線の位置にあること、充分に共感できた。久しぶりに見ごたえがある映画と出会えたと思っている。 [DVD(邦画)] 9点(2008-09-15 20:30:58)(良:1票) |
4. 未来を生きる君たちへ
《ネタバレ》 「ボウリョクはイケマンセンね!」と言われて、はいそうですかとは言えません。ガンジーのような非暴力主義であれ、マルコムXのような暴力主義であれ、いずれにせよ2人とも暗殺されています。つまり暴力が原因で、復讐の連鎖が起こるわけではない。例えば、みんなの大好きな「バック・トゥ・ザ・フューチャー」について聞いてください。あのいじめっ子のビフに対して、主人公が「復讐は無意味である」と言い出したらどうなりますか?チキン(弱虫)と言われたら、すぐ暴力をふるう主人公は間違っていますか?そもそも暴力を、暴力で返すような真似が、もし愚かだというならば、世の中の映画の大半は存在しないことになる。シュワちゃんやスタローンだって暴力に対しては暴力で問題を解決してきた。ムスカだって、未来を生きるシータとパズーたちの、バロス一発で、木端微塵になりました。2人の子供が暴力によって問題を解決したのです。そうしないと反対に大勢の人が殺されていたからです。いじめられている子を、暴力によって救ったクリスチャン。彼も悪くない。しかし確かにクリスチャンは憎しみの王様でした。その憎しみが大爆発し、友だちを傷つけた。テーマは、復讐の連鎖ではなく、赦しです。つまり、ダークサイドに堕ちた子供に対する赦しなのです。未来を生きる子供たち、それでも君たちは生きなくてはいけない、という子供に対する大人のメッセージが込められています。しかしもし、ケガをした子供が死んでいたら?そうしたらあのヒステリックな母親は、クリスチャンを赦しただろうか?首を絞めて殺していたのではないか?あの両親が、クリスチャンに報復しないのは、単にわが子が助かったからだと思う。従って、依然として「赦し」が成立するのか不透明だ。この映画には納得のいくような哲学が感じられない。しかしテーマがあまりにも難しい。むしろよくぞチャレンジした。私が言いたいことは、考えることができる映画は、やはり良い映画だということです。 [DVD(字幕)] 8点(2012-11-25 20:03:23)(良:1票) |
5. シティ・オブ・ゴッド
《ネタバレ》 ごめん、ブラジルといったら、仕事もせずにサッカーばかりして、能天気にサンバを踊っている奴らばかりだと思っていたら違うのね・・・・じつはもっとひどかったのね(苦笑) 南米特有の陽気さを持っている連中ですが、とにかく怖い。なにが怖いかって、話し合いが通じないことです。 ロナウジーニョみたいな陽気な顔をした連中が、笑いながら銃の引き金をひいて人を殺す。そういう街なんです。 横で、ぺちゃくちゃと喋りかける男がいたら、「お前、ちょっとうるさいよ」と言って、あっという間に銃で殺してしまう。 普通はうるさかったら、「うるさいから静かにしろ」と忠告を出します。乱暴な男がいても「静かにしないとぶっ殺すぞ」と最初に警告をするはずです。しかしこの街の住人は、そういう面倒な警告を、いっさい出さない。言葉が出るよりも、先に銃が出てくる。まさに問答無用。この街では、「殺すぞ」「助けてくれ」というありきたりなコミニケーションは存在しない。気がついたときは墓場の中。「あれ、オレはいつ殺されたっけ?」と、あの世で言い出す奴が大勢いそうだ。老人の映像が映し出されると、「え?なんであんたはその歳までこの街で生きてこられたの?」と驚くことができる。そういう街なのです。 子供だって平気で殺されるし、子供のほうも平気で大人を殺す。観客は結末は知らなくても、リトル・ゼが100%の確率で殺されるということを自信を持って予測できる。彼が、この街で、1日でも、いや1時間でも、まだ生きていられることが不思議に感じられた。リトルゼを殺した子供たちは、他の友達に、「今、そこでちょっとリトルゼを殺してきたよ」と、何のためらいもなく自慢するだろう。 [DVD(字幕)] 7点(2006-12-02 22:24:31)(良:1票) |
6. プリシラ(1994)
砂漠は熱帯で生じた上昇気流が下降してくるため雲が発生しにくいので空はだいたい青いんですね、青い空にオカマという組み合わせは新鮮でした。シモネタも炸裂していました。おしりの穴からピンポン玉のようなものを飛ばすシーンはめまいがするほど下らないですが癖になりそうです。オカマたち3人の外見は決して美しくありません。むしろ化け物です。食事中に観たら吐くでしょう。なにせエージェント・スミスがオカマを演じているのだから本当に怖い。変な汗が出てきました。しかし3人が旅を通じて自分の本当の姿をさらけ出していく様子を眺めていると自然と共感が持てるようになってきます。化け物だと思っていたものが人間に見えてくる。ETを観ていたときを思い出しました。 人間は外見じゃなくて中身だというあたたかいメッセージに溢れています。心が清らかなぶんだけチャーリーズ・エンジェルの3人よりも美しいでしょう。 [DVD(字幕)] 7点(2007-10-13 22:31:37)(良:1票) |
7. ターミネーター4
《ネタバレ》 この作品をターミネーターと認めたくない気持ちです。なぜならばターミネーターが出てこないからです。ではターミネーターとは何でしょうか?オリンピックマラソンで野口を追い詰めたヌデレバ選手が、なにゆえにターミネーターのような人だと畏敬の念をこめて日本人から賞賛されたかワカリマスカ??それはしぶとくて、タフで、敵を執拗に追いかけたからです。あのグラサンも脅威だったことは否定しません。その名前はすでに「しぶとい」の代名詞になっている。だから私はあえて言いたい。この作品にターミネーターは出てきましたか?いるはずもない。断じていないのだ。シュワちゃんの裸踊りでお茶を濁し、普通のアクション映画に成り下がったものに、ターミネーターという伝説のタイトルをくっつければ、シリーズ最新作として上映して良いものなのだろうか?真のファンならば恐らく悔し涙がボロボロ流れてくるはずだ。私にはまるで中国に出回っているレベルの高い偽物腕時計のような、そんな精巧な偽映画に思えてならないのです。偽物ならば、偽物らしく、タイトルをダミーネーターに改名してもらいたい。自分を人間だと思い込んでいる悲しいロボット。えぇ、たしかに泣けます。しんみりしてしまいましたよ。だけど私を落ち込ませてどうする?アクションの王道を突き進んできた本作品に、ヒューマン性など必要なない。こざかしい人間描写などクソ食らえだ。しかもこの期に及んでまだ続編を作る気らしい。いっそのこと、今度のタイトルは、ターミネーターシーズン5にしてもらいたい。もはやTVと映画の境界線すら見えなくなってきた。この冒涜はいったいいつまで続くのだろうか。 [DVD(字幕)] 3点(2010-04-16 22:33:10)(良:1票) |
8. ゴーストワールド
若者からみた大人はいつだってペコペコ頭を下げていて、何かを諦めていて、妥協していて、ダサい存在だとは思うけどイーニドさん、あなたは他人ばかり批判しているけど自分はどうなのと聞くと彼女は「あたしとあんなダサイ連中と一緒にしないでくれる?私はただ韜晦しているだけなのよ」という言葉が返ってくると思う。 あたしは他人とは違うんだという自負心。 しかし自分らしく個性的でありたいと思っていてもイーニドの強烈な自意識は虚栄心に変化しそれが本当の自分を殺しているという事実を実はイーニドは知っていて、ダサい他人を小馬鹿にすることしかできない彼女が一番嫌いな人間はたぶん自分自身。 この痛みをどうやって切り抜けていくかというと、平凡である自分を受け入れることなんだと思う。 ただし難しいのは「受け入れる」ということと「諦める」ということはとても似ていること。 イーニドがシーモアに興味を持った理由は「弱さ」に対する共感だと考えましたが、それだけではなくて彼は人間的な弱さや欠陥を隠そうとはせずにそれを受け入れてしまっている所に自分には無いもの感じましたのではないでしょうか。若い者にとって一番苦しいのはいつの時代も過剰な自意識だと思います。 [DVD(字幕)] 9点(2006-02-12 00:18:16)(良:2票) |
9. サイレントヒル
《ネタバレ》 いやぁ、楽しかった!これは生死を越えた奇跡の母娘の物語です!神を愛し魔女をでっちあげ、そして仲間の連帯意識を高めようとするサイレントヒルの住民たちは、ドッグヴィルの村人たちと似ていると感じました。最後にリーダー格のおばはんがアレッサに復讐されるシーンは、控えめながらに言わせていただくと、もっと苦しんで殺してやればよかったと感じたのは私だけ? 子役のジョデルフェルランド嬢は素晴らしかった。舌が噛みそうな名前ですが、2歳ですでにデビューしている天才少女らしいです。覚えておいて損はないでしょう。この子はアレッサの善のこころが生んだシャロンと、彼女の憎しみが生んだ死神の一人二役を見事に演じていましたね。とくに死神の時の顔の表情がすごくいい。メイクで怖そうにみせたり、悪ぶっていましたが、やはりかわいさは隠せない(笑) 死神は憎しみの塊のような存在ですが、強がっていても繊細な一面もありました。そこが切ない。 それと母親のローズは偉い!化け物を相手に彼女は一歩もひかずに我が子を取り返そうと走り回る。その姿に感動しました。それにしてもローズの夫は本当に使えない奴だ。サイレントヒルのなかにいて我が子を取り返そうと戦っている母親と、サイレントヒルの外にいてオロオロしている父親の姿が対象的にえがかれています。子供にとって母親は神であり、父親は用なしということか? 実の母親に裏切られて傷ついたアレッサの良心(シャロン)を、あたらしく母親になったローズが癒してくれた。 私にとってこの映画は絶対ハッピーエンドだ。 [DVD(字幕)] 9点(2007-02-27 19:27:42)(良:3票) |
10. 沈まぬ太陽
《ネタバレ》 俳優陣は豪華ですが、単なる有名俳優をいっぱい出演させただけのオールスター映画ではありません。オールスター映画がいつも期待はずれなのはよくあることですが、この作品だけは異質です。やはりと言った方がいいのか、意外というか、ほぼ渡辺謙しか出てきません。まさに渡辺謙の1人舞台でした。この映画に何を期待するのかは人ぞれぞれだと思います。私は「渡辺謙を見たい!」という目的のために映画館に足を運ぶ人が、一番この作品を楽しめるのではないかと確信しています。人の「不幸」は人それぞれです。左遷ごときは遺族に比べれば軽く感じる人もいるでしょう。だけどね、そういう表面的なことは別にして、恩地が不幸を不幸と感じずに生きてこられたのは、どんなに辛くても、矜持を持つことができたからだと思うのです。つまりどんな困難に遭おうとも、人生を耐えることができたのは、自分の行動や考えを、自分自身が支持できたからです。それに対して自殺したあの男。彼はいつしか自分が嫌いになってしまった。最大の不幸は自分を好きになれないことだと気がつきました。行天も同じです。出世しても彼は自分を嫌っていた。もっと悪い奴だと思っていましたが、彼は冒頭で自分の弱さを告白する。そして最後まで弱い人間でした。考えてみれば恩地以外はみんな弱い人間ばかりでした。なんの憎しみもわきません。まさに恩地が言うとおり「かなしい」それだけです。政治の問題も、日航の問題も、墜落も、ベストセラー小説ということも、まったくこの映画には関係ありません。3時間を越える長い時間の大半を、ただひたすら「人間の生き方」に費やしている。あなたは自分を好きですか?そういう問いかけが聞こえてきそうなヒューマニズムあふれる「物語」でした。 [映画館(邦画)] 5点(2009-10-31 12:15:58)(良:1票) |
11. カールじいさんの空飛ぶ家
《ネタバレ》 なぜこの映画がつまらないのかといえば、主役の男2人が魅力に乏しいからです。楽天の元監督、野村のように陰気臭い老人と、中日落合の昔の息子のように生意気な子供を見せられて、あなたはどう思いますか?この2人の冒険を純粋に応援したいと思いますか?何よりも致命的なのはヒロインがいないことです。ピクサーよ、おまえたちは間違っているぞ。むさ苦しい男だけの人間劇など誰が観たがるというのだ。ナウシカしかり、魔女の宅急便しかり、偉大なアニメの基本は偉大な女性が輝きを放っているのだ。皮肉なことにこの映画が最高に輝きを放っていた瞬間は、エリーという女性が登場したほんの数分間だけでした。あとはメタボのデブと、むっつりジジイの冒険を長々と見せられる。バカ男2人に、敵もバカ男。窒息させる気か!本来は生意気なガキが冒険を通して、だんだん「良い子」に変わっていくのが物語の鉄則のはずだが、こいつは最後まで好感度ゼロのままだった。そもそもあんな大冒険をしておいて、こいつ、まったくやせていない。お前は唾液だけで太るのかよ。それから私は3D映画レビューの第一人者です。その私があえて言わせてもらうと、本作品の3Dは質が低い。本格的な3Dは高所恐怖症の人が観られないくらいリアルです。おそらくピクサーはストーリーを重視したのだと思う。ストーリー重視と、視覚重視は両立しない。ストーリーや、人間描写のために、視覚効果をそり落とすか、視覚効果のために、ストーリーを変更するかの、二者選択をしなくてはいけないからです。悪いことにこの作品をどっちつかずになっている。つまり一貫性がないのだ。3Dならば、視覚効果のために、物語の内容を犠牲にしても、王道を突き進むべきだ。いや、むしろ、それが3D映画の宿命だ。3Dは、究極の映像を見せる為に、あらゆる犠牲の上に成り立っているのだ。3Dとは、美術である。科学である。 そして未来である。 確実にいえることは1つ。これは「3D元年」を象徴する作品ではないということです。 [映画館(吹替)] 2点(2009-12-23 21:19:48)(笑:1票) |
12. マンマ・ミーア!
《ネタバレ》 劇団四季のファンなので舞台版「マンマミーア」も観ています。映画は最初からそれほど期待していませんでした。美しい海辺の景色を眺めるだけでいいかな、と思っていました。しかしこれはひどい。あまりにもひどい。バカを通り越してスーパーバカです。わたしは今まで数々のミュージカル映画も観てきましたが、この映画はそのなかでもスーパー最低レベルだとおもいます。俳優たちのテンションが高いように思いますが、日本のくだらないバラエティー番組と同じノリです。中年女性の星であるメリルを主役に抜擢するのはよく分かります。しかしミュージカルというのは、当たり前のことですがやはり歌が基本なんです。歌という土台がしっかりしてなければミュージカルなんて、穴のあいた傘のように意味がないのです。ピアース・ブロスナンなんて頭の悪そうな男が出ていたときから多少嫌な予感がしていましたがあのやろう、オンチにもほどがある、めまいがしたぜ!歌が下手だと感じてしまったらもう何を見ても好意的に受け止めることができません。羞恥心のかけらもないオバサンたちが、裸の男たちに囲まれてぎゃあぎゃあ騒いでいるというマイナスの見方しかできなくなってしまいます。ちなみに「マンマミーア」は母と娘というテーマはあるにはあるのですが、お客層をオバサンに絞っていますので、裸の若い男がたくさんでてきて、おばさんたちはモテモテ状態になるという物語です。私はこういうのは嫌いではないほうですが今回は下品に見えて仕方ありませんでした。 [DVD(字幕)] 3点(2009-08-13 11:10:08)(良:1票) |
13. グラン・トリノ
《ネタバレ》 洪水のように氾濫した台詞のオンパレードをユーモアだと褒める寛容さは私にはありません。一言で言えば下品。低俗な言葉ばかりで非常に不愉快です。見ての通りカメラはひたすらイーストウッドのいかつい顔のズームアップばかりを捉えている。そのせいか外面描写やメタファーがまったく無視され、奥深さが決定的に不足している。これは映画の映像じゃない。テレビドラマの映像だ。挙句の果てにカメラはただ動いている人間を追うだけでそこに何かしらの意図が微塵も感じられない。かと思ったらカメラは突然意味不明な方向にパンし、呆気にとられていたら、動作の途中でカットが切り替わる。このいい加減さ、この横着さ、このでたらめさ。もはやイーストウッドの耄碌ここに極まり。 しかもラストの決着のつけ方は、イーストウッド自身がこれまで大切にしてきた己の哲学に対する背信行為だ。この老人監督は「法律なんて関係がない。やられたら自分の手で復讐する」というブッシュアメリカが標榜してきた偽善の思想をそのまま引き継いできた。ちなみにアメリカという国はいつも何かに対して「許さねえ!やっつけてやる」と叫んでいる。この怒りの源泉は「義憤」である。義憤でアメリカ人は攻撃性を発揮する。しかもそれは自己陶酔をおびた義憤だから始末に終えない。この思想をイーストウッド自身が持ち続けてきたことは、彼の過去の作品を観ればもはや疑いようがない事実である。それゆえにミスターアメリカと揶揄されてきた老人だ。しかしである、許されざる者には何の躊躇もなく、死を与えてきた監督が、今度は今までさんざん無視してきた法律に縋っているではないか。人間は老いたらここまで恥も外聞を無くなるのだろうか。アウトローよろしく、そういう肩書きで、肩で風を切って歩いてきたイーストウッドが、今になっておまわりさん、助けてくださいですか。これがひたすら己の強さを誇示してきた男の末路なのか。私は悲しい。「長期刑になるぞ」というセンスの片鱗も伺えない最後の台詞だけが空しく胸にからからと響く。信念を失い枯れ果てた老人に心から同情したい。しかし私は彼の映画に対する姿勢だけは絶対に許さない。 [DVD(字幕)] 0点(2009-12-04 22:42:23)(笑:1票) (良:2票) |
14. ウィスキー
《ネタバレ》 靴下工場のおじさんも、従業員のマルタも、無愛想な人間たちですが真面目な善人です。2人は人生に対して寂しさも感じているようにも見えます。 この物語に陽気な弟を登場させた理由は、より一層、2人のそういう部分を強調したかったからだと思いました。 監督は、このように真面目に生きる2人の老人に向って、「しかめっ面をしないで、さあ笑って!」と応援しているようにも感じます。 それが「ウィスキー」というタイトルのメッセージではないでしょうか。執拗に繰り返される同じ日常シーンが印象に残る映画ですが、こういう何気ないシーンでも感情移入ができる自分がいます。 毎日の生活は本当に孤独だし、時には辛く、そして楽しいのだと思う。 そういう微妙な空気に少しはまりました。 マルタという老女を見ていると、女はいつまでたっても女なのだなぁと感心しました。 たった3人だけの平凡な物語ですが、ぐいぐいと観客を引き込む力はあったと思います。 ミニシアター系映画の好きな人には観る価値はあるでしょう。 この映画のラストのように、人生は寂しさが付きまといますが、それでも下を向かずに笑って前に進みたいものです。 生きて生活をするということは、それだけでちょっとだけ素晴らしいことだと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2005-12-31 23:05:31)(良:2票) |
15. エリザベス:ゴールデン・エイジ
《ネタバレ》 気高くて孤独で痛々しい女王でした。1人の女として生きるか、それともお国のためにわが身を捧げて生きるか、そういう葛藤が分かりやすく描かれていたと思います。「政治家エリザベス」を支える側近たちにもスポットライトが当てられており、とくにジェフリーラッシュが演じるフランシスが面白いキャラでした。陰気で忠実な男です。彼は女王の側近として秘密警察のようなことをやっている男で、今でいうとCIAの長官のような存在でしょうか。この男が色々な場面で暗躍するが、なぜか女王からは好かれない。たとえばメアリーの処刑。あれは明らかに権力争いです。エリザベスにとってメアリーは手強い政敵でしたので、側近たちに促されて処刑を実行します。こういう政争を通して、エリザベスを支える取りまきたちの実力も垣間見ることができます。彼女はフランシスのような謀略家を毛嫌いしていたと思いますが、権力者であり続けるためには、魑魅魍魎然とした人間たちもそばに置いておく必要があったのだと思います。エリザベスが「光」ならばフランシスは「闇」。政治とはその両方があってはじめて機能する。女王は良くも悪くも百戦錬磨の政治家でした。それなのに彼女は恋愛に関してはまるで子供なのです。彼女の孤独感がかなり痛々しい。女王であるがゆえに気軽に相談できる相手もいないので、1人でクヨクヨしたり、みっともなく取り乱したりして痛い女を演じている。女王はたしかにスペインの無敵艦隊には勝ちました。しかしたった1人の侍女に完膚なきまでに負けたのでした。エリザベスの人間としての強さと弱さ、政治家としての光の部分と影の部分、そういう対極の部分を本当にうまく表現したいい映画だと思います。これぞ人間劇。ラストシーンは切ない。恋敵の侍女の産んだ赤ん坊に祝福を与えるシーンです。女性にとって何が幸せなのかは分からない。しかし悟りを開いたような彼女の清清しい表情に少し安堵する。歴史なんて関係ありません。そんな知識がなくても楽しめます。これは1人の女性の決意の物語。 [DVD(字幕)] 10点(2009-02-25 19:17:14)(良:1票) |
16. ヘイフラワーとキルトシュー
生活感や生活臭がまったくな感じられないのが素晴らしい♪ まるでディズニーランドの世界を眺めているようでした。これがフィンランドで空前の大ヒットを記録した映画だという事実が面白い。すごく疲れて癒されたい人におすすめできる作品でしょうね。まじめな姉が真剣に神さまにお祈りする姿もかわいいし、子犬のようにはしゃぐ姿の妹もかわいい。 母親も父親もちょっと浮世ばなれしているせいでかわいく見えてくる。 すべての登場人物がリアルな人間ではなく人形のようです。色彩豊かなお家もすばらしい。フランス映画の「アメリ」を思い出しました。フランスにしてもフィンランドにしても本当にセンスがいい。 このように目だけで楽しめる映画もあるわけですね。レビューは以上です。 と、いうわけでみなさん、へいへ~い♪ [DVD(字幕)] 7点(2006-10-20 20:32:16)(良:2票) |
17. スラムドッグ$ミリオネア
《ネタバレ》 物語は終始一貫してミステリー風に進みますが、全問正解の謎など最初からなかったという挑発的な大どんでん返しに驚きました。スラム育ち全員が雑学王じゃあるまいし、運じゃなくて運命なんですか?宝くじのキャッチコピーみたいですね。ラストに関しては「億万長者にならなくてもいいのに」と思った人が多かったのでは?私たちは生きていく過程で「人生にはお金よりも大切なものがある」というメッセージを植えつけさせられます。分かりますか?監督は人生の普遍的な哲学を逆手にとったのです。つまり不正解になって大金が手に入らなくても、愛する彼女と結ばれて、真の幸せを掴む─。そういうラストを観客に思い描かせようとしていた。このカモフラージュのおかげで私自身、彼が最終問題を正解するかどうか、まったく読めなかった。ラストが予想できなかったからこそ、あの緊張感が生まれたのです。うまい。それから、「国民の生活が第一」とのたまいながら私腹を肥やす小沢一郎のように偽善的な司会者。そのいやらしい演技はクソがつくほど抜群でした。主人公が正解を連発すると観客は狂喜し、笑顔のひきつった司会者は「おまえ、このへんにしておけよ」とささやく。負け組みのおまえが勝ち組の中に入ってくるなよ、という意味です。スポットライトに照らされた華やかなテレビ番組と対比して映し出されるウンコまみれのガキと小汚いスラム街。2つの世界がめまぐるしく交錯する映像は一流の芸術作品に価する。彼が全問正解したとき、2つの世界を隔てる壁は瓦解する。大金を手に入れるという事実は表面的な事実に過ぎない。これは脱出の物語。じつはクイズ番組は刑務所のメタファーになっているのです。司会者は牢番。無実の囚人の脱出を阻む存在。だから悪の象徴なのです。現状に閉塞感を抱いている観客は、主人公とヒロインが、貧困という名の刑務所から脱出する様子を固唾を飲んで見守っている。自分自身がうまくいかない現状から抜け出したいからです。そして彼らの痛快な脱出劇の成功に、己の姿を投影させ、爽快感を爆発させる。ラストシーンの駅内で踊り狂う2人。彼らが脱出したことを証明するかのようにゆっくりと列車が動き出す。おみごと。 [DVD(字幕)] 9点(2010-02-23 20:17:39)(良:1票) |
18. 28日後...
《ネタバレ》 主人公は感染していませんがとても凶暴でした。兵士のめんたまのなかに指をいれてぐりぐりして絶命させています。もしゾンビが喋れるならば「やりすぎ!」と言うと思います。もしこれで主人公が感染したら恐ろしいゾンビになりそうです。ちなみに人間たちはゾンビに殺されてしまう恐怖よりも、集団から孤立している事実に怯えている。この映画の本質はゾンビとの戦いではなく、孤独との戦いだと思います。そして孤立している人間が他の人間と出会ったときの安堵感がひしひしと伝わってくるのが素晴らしい。主人公がハローと叫びながら、無人の荒野と化した街をさ迷い歩いているシーンがあり、そこから2人の男女の仲間と出会ったときなどは、観ているこちらのほうが思わず安堵してしまう。またマンションの最上階でがんばっている父娘がようやく仲間と出会えたときも、なにかとても嬉しい気持ちになれる。死ぬか生きるか?という問題よりも、いつ孤独から解放されるのか?ということに興味をもって最後まで観る事ができました。そういう意味でDVD版のラストシーンはとても満足できる。ヘルプではなくハローには大きな意味がある。主人公は常にハローと言ってきた。彼は強烈にコミニケーションを求めていたことが分かります。孤独からの脱出。これこそこのゾンビ映画の本質です。ラストシーンにカタルシスを得ることができました。孤独な世界観が素晴らしいゆえに、人と人とのふれあいの重要性を再認識させてくれます。 [DVD(字幕)] 6点(2008-05-23 21:23:41)(良:2票) |
19. 時をかける少女(2006)
《ネタバレ》 少女漫画の世界でした。ようするにハンサムな男2人が1人の女の子をめぐるラブトライアングルムービーです。金髪のヤンキー兄ちゃんがいきなり「オレは未来からやってきたんだ」なんて言い出します。おまえはターミネーターか。 [地上波(邦画)] 4点(2007-07-26 20:53:51)(笑:2票) |
20. キル・ビル Vol.1(日本版)
《ネタバレ》 とにかくこの映画は「お馬鹿映画である」というのが、みんなの一致した意見である。いくら日本が舞台とはいえ、「寿司」「演歌」が当然のように出てきて、「天皇」や「将軍」という言葉をむやみに使ったり、「下手なチャンバラ」を見せ付けられたりすると、一人の日本人として冷え冷えとした気持ちになってしまう。 映画の中にアニメを挿入するなどの作戦もかなり好評みたいだ。 まさに「子供騙しの映画」であることを実証している。 さらにこんなオタク映画を偉大な深沢監督に捧げられては迷惑なのである。 タランティーノも堕ちるところまで堕ちたということを実感した映画であることは間違いない。 次は頑張れ、という気も失せるようなひどい内容であった。 [DVD(字幕)] 3点(2004-04-29 23:12:22)(笑:4票) (良:4票) |