41. アビエイター
アカデミー賞というは、映画に対する一つの価値観でしかないと思っているが、今年のノミネート作品の中では本当はこの映画こそ受賞にふさわしい映画ではなかったのかと思う。非常に良い意味でアカデミー賞を獲るべき作品であると思う。 ハワード・ヒューズという人物の知識はまるで無く、この映画で描かれることがどこまで真実なのかは分からない。しかし、少なくともこの映画の中で息づく彼の姿は、まさに伝説であり、最高のスタッフによって描かれるべき人物であると感じる。夢を追い、夢に生き、夢に苦しみぬいたヒューズの姿に、ひとりの人間として複雑な感情が渦巻く。果たして彼は“成功者”なのか?多くの人達が彼の成功の是非について語ってきたのであろうが、ヒューズにとって本当はそんなことどうでもいいことなのだと思う。最初から最後まで、世界で唯一無二の“飛行機野郎=AVIATOR”であり続けることが、彼の望みだったのだ。そしてそれを体現し続けたハワード・ヒューズという人物はやはり“伝説”なのであろう。 それにしても、またしても大願成就ならなかったスコセッシとディカプリオ。彼らにとって最高の仕事をしたと思うだけにとても気の毒だ。他の賞ならいざ知らず、やはりアカデミー賞だけは、良い意味でも悪い意味でも“狙って獲る”というのが醍醐味であり伝統のような気がする。「ミリオンダラー・ベイビー」を観ていないので本当は何とも言えないのだけれど、既に受賞経験があり余裕綽々のイーストウッド&スワンク組よりは、獲る気満々のスコセッシ&ディカプリ組が受賞した方が盛り上がったような気がする。まあ“またも受賞ならず~!”というのもドラマティックな気もするけども。スコセッシは次作再度ディカプリオと組むそうで、これはこれで映画史における“伝説”になり得そうでなんだかワクワクする。 [映画館(字幕)] 9点(2005-04-02 10:52:54) |
42. アンダーワールド(2003)
「マトリックス」の誕生以後、同作を真似たスタイリッシュな映像を売りにするアクション映画は量産され続けいる。今作においてもその例の範疇であり、「ヴァンパイアが暗躍する世界」というもはや若干新鮮味に欠けるジャンルも手伝って、“オリジナル性”という部分においては難があることは否めない。しかしながら、「パクリだろうが二番煎じだろうがお構いなし!」と開き直れるほどのクオリティをこの映画は備えている。何と言ってもその映像美が素晴らしい。タイトル通りに全編通して光の当たらない世界を描きながらも、闇に紛れることなく徹底的にスタイリッシュに展開される美しい映像世界に舌を巻く。その闇の美の中に、クールでドライな美貌を湛えたケイト・ベッキンセールの存在が映え、非常に質の高い映画世界へと昇華されている。クライマックスにかけてますます重要になってくる“人間の男”のキャラクター性が全編通すと弱すぎるという感は残るが、単純な勧善懲悪の構図では終わらないストーリーにも満足感は高い。続編も充分に期待が持てる。 8点(2005-01-15 19:09:46) |
43. APPLESEED アップルシード
まさか感動するとは思わなかった。「攻殻機動隊」「イノセンス」などにどうしても面白味を感じることができないタイプなので、原作・士郎正宗という時点で一歩引いてしまい、映画としての力のみなぎる予告編を観ても、劇場に足を運ぶことができなかった。そのことを非常に後悔させる映画世界に対し、喜びと悔しさが入り混じる。何と言っても、ストーリー展開の潔さが素晴らしい。上記にあげた作品などと違い、あくまでストレートに人間、ロボット、新人類らの葛藤を自然な表現で描いたことが、感情の高ぶりに繋がったと思う。そうでなければ、3Dライブアニメという新しい映像世界に存在する、見慣れないビジュアルを携えたキャラクターたちにこれほど感情移入することは出来なかっただろう。価値観はもちろん様々だが、どう理屈をこねようとも、万人が理解してこその“映画”であり、そのことを充分に理解しているこの作品の価値は高い。 「戦いが終わったら、母になりたい」この映画コピーが、クライマックスにかけて実に心に染みる。 9点(2004-11-15 15:23:33)(良:1票) |
44. アナザヘヴン
《ネタバレ》 率直な感想としては、何かビミョーな後味の残る映画だった。まず中盤までの猟奇殺人とパラサイト的な題材を合わせたストーリー展開はなかなか引き込まれるところがあった。原田芳雄、柏原崇らキャスト陣はそれぞれ印象的な演技を見せてくれたと思う。しかしながら後半、特にクライマックス前後の展開は陳腐と言わざるを得ない。映画全体の雰囲気からして、多少後味は悪くなってもサスペンスとホラーを反映させたラストの流れを用意してほしかった。前半の緻密さに対し、終盤はあまりに大雑把。端から見れば明らかに常軌を逸している主演コンビの行動もさることながら、どこか白々しい感動とテーマを意識したラストシーンにトーンダウンする。まあそんなことよりも、「飛ぶのかよ!」「その距離で当たるのかよ!」「火だるまかよ!」「置いてくのかよ!」「しかも生きてるのかよ!」と無数の突っ込みどころにほくそ笑むための映画かもしれない。 3点(2004-05-23 18:31:18)(笑:1票) |
45. アダプテーション
チャーリー・カウフマンという脚本家、まさに天才である。脚本の創造に思い悩む脚本家のとめどなく乱雑した世界を混沌と並べ立て、限りなく破綻に近いところで展開させる例を見ないその構成力に唖然とする。実在の蘭収集家と架空の自分の双子を混在させどこまでも独特な世界観に観客は現実との境界線を見失いそうになる。シュールで哲学的で、何よりもユニークな傑作だ。 9点(2004-02-29 04:01:50) |
46. “アイデンティティー”
「観客の衝撃」を求め続けて映画史の長い時間の中で作られてきたサスペンス映画だが、数ある名作サスペンス映画が生み出され、人々を驚愕させ、それでもなお今作のように新たな衝撃を観客に与えることを可能にする人間の思考の想像力に感嘆せずにはいられない。「アイデンティティ」というシンプルでストレートなタイトルに今作の強かさと自信を感じる。脚本、映像、展開力、キャスティングが合致した極めて秀逸な心理サスペンス映画の誕生だ。 9点(2004-02-29 03:58:34)(良:1票) |
47. アザー・ファイナル
2002韓日ワールドカップ決勝戦の同日、ブータンで行われた世界最弱国決定戦の模様を綴ったドキュメンタリー。世界最高のゲームが行われているその日に、世界で一番サッカーが弱い国を決めるというこの企画は一面ブラックなユーモアに見える。しかし、そこで行われたことは紛れもない好ゲームだった。レベルはもちろん横浜で行われたゲームとは雲泥の差であるが、そこにひしめき合うスポーツマンスピリットは、ロナウドやカーンのそれと何の変わりもなく、感動的である。 7点(2004-02-03 19:45:01) |
48. アトランティス/失われた帝国
ディズニー映画といえばミュージカルシーンがお約束というものだが、今作ではそれが一切なく、SFアドベンチャーが徹底して展開される。映画自体の出来としては、エンターテイメント性に富んだストーリー展開を楽しめるものだったが、やはりディズニー映画らしさはなかったかもしれない。 6点(2004-01-26 17:56:27) |
49. I am Sam アイ・アム・サム
冷静に考えると、それほど深みのある物語ではないのだけれど、私は今だかつてないほど劇場で泣き伏せてしまった。この涙腺ヒットの理由はやはり素晴らしいチャーミングさを見せた天才子役ダコタ・ファニングの演技に他ならないと思う。爽快で魅力的な彼女が演じた少女の快活さは、それだけで胸に迫るものがあった。ハリウッドきっての悪童ショーン・ペンもイメージを払拭する熱演を見せたが、明らかにダコタ・ファニングに食われてしまったことは言うまでもない。 8点(2004-01-17 03:59:34) |
50. ALI アリ
モハメド・アリを知らない世代の者にとっては、伝説的なボクサーの人物像は純粋に衝撃的で、一人の人間の生き様としてとても迫力を感じることができた。実際どれほどその描き方が忠実かは分からないけど、何も知らない者としては多大な説得力があった。全体的に見ると若干間延びする感はあったが、リング上の迫力がそれを打ち消してくれた。 8点(2004-01-17 03:47:21) |
51. アザーズ
ホラー・サスペンスというジャンルにおいて今作ほど優れた作品はなかなかない。絶妙に怖く、絶妙にサスペンスフルなその映画自体のバランスに魅了される。巧妙なストーリーテリングにニコール・キッドマンの妖しい美しさが混ざり合い相当に秀逸なゴシックホラーへと昇華させている。ラストの顛末を知らない初見時の衝撃は物凄いが、再度観ても存分に楽しめる傑作。 9点(2004-01-13 15:43:04)(良:1票) |
52. アクシデンタル・スパイ
ここ数年のジャッキー映画の中では実にジャッキー・チェンらしいアクションが楽しめる映画だったと思う。ストーリーのありがち感もジャッキー映画らしくて良い。ビビアン・スーが可愛かった。 7点(2003-12-22 17:35:07) |
53. あずみ
原作の設定と流れをただなぞっただけの映画作りに落胆したというのが正直な印象だ。個人的には原作自体あまり好きではないのだけれど、それでも原作の持つパワーと真意をまったく反映できていないように感じたことは否めない。せめてこの監督得意とするアクション描写だけは評判通りのインパクトを与えてくれるかと思ったが、それさえも下手なワイヤーアクションやスローモーションを多用しただけに過ぎない陳腐なものだった。カメラワークもただ右往左往するだけで観客を引き込むだけの斬新さはまったく無かったと言える。おそらくろくな演出もなかったらしく、俳優陣の演技もことごとく軽薄である。主演の上戸彩はあずみのキャラクターにはハマっていて、アイドルという肩書きを感じさせない眼光を見せていたが、映画の中でのキャラクター自体が薄かったためもうひとつ目立たない。唯一の救いは「あ、やられちゃったよ」と死んでいく遠藤憲一か…。とにかく、海外からの評価も高い北村龍平であるが、その映画監督としての資質には疑問が残る。 3点(2003-12-08 16:31:59) |