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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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41.  アナザー プラネット 《ネタバレ》 
【注意!壮絶にネタバレしています】 これまた評価に困る映画です。「もしあの事件がなければ、自分の人生はどうなっていたのか?」誰もが漠然と考える話を「もうひとつの地球」というSF設定に落とし込んだアイデアと構成力には素直に感心しました。現実的なドラマを主軸にしながらも、空に浮かぶ地球というシュールなイメージによってちゃんとSFしているバランス感覚はお見事だし、低予算映画とは思えないほど演技もしっかりしています。ただし内容にはほとんどメリハリがなく、正直言って退屈します。アート系ぶってる作りは時に鼻につき、もうちょっと観客にサービスしても良かったのではないかと思います。鑑賞中は「良い点と悪い点を差し引いて5点くらいが妥当かな」なんて考えていました。。。 しかし、クライマックスで作品の評価は一転しました。これは紛れもない傑作ですよ。ラスト、主人公はもう一人の自分と遭遇します。つまり、「もうひとつの地球」でも主人公は同じ悲劇を経験していたのです。この映画は「人生に”もし”はないのだ。起こったことは常に自分で背負わなければならない」と訴えているのです。そして、「その延長にある赦しもまた、自分自身でしか与えられない」と主張します。主人公は被害者の父親と親しくなり、一時的には心を通わせました。しかし、彼女の罪が明らかになった途端に被害者は再び心を閉ざし、彼女に赦しは与えられませんでした。結局、彼女は「アナザープラネット」へ行く権利を父親に譲り、家族と再会する機会を彼に与えることで赦されようとしますが、この結末はその願いをも全否定します。そこいらの安っぽいドラマであればこれら一連の心の交流で彼女は赦されるところですが、本作は「"罪と決別する点"は自分で見つけるしかない」と突き放すのです。その点を見つけられなかった老人は自分自身を完全に壊してしまいましたが、主人公が同様の末路を辿らないためには自らの判断で罪と決別するしかありません。しかしこれは他人に赦しを請うよりも難しいこと。本作は非常に重い主張をしているのです。SFという変化球でこんな重いことを言われるとは思いもよりませんでした。本作の構成は神がかっていますよ。
[DVD(吹替)] 8点(2012-04-25 01:48:55)(良:2票)
42.  あしたのジョー(2010) 《ネタバレ》 
「山P主演で『あしたのジョー』実写化」の一報を聞いた時には「日本映画界による原作レイプは来るところまで来たか」と思ったのですが、完成した作品は意外にも誠実な仕上がりとなっています。時代やキャラクターの再現度は非常に高く、なかなか見応えがあるのです。同時期に製作されたヤマトが「アレンジ」という便利な言葉を振り回してマンガ映画特有の難しい点や面倒な点から逃げ回っていたのに対し、本作はそんな困難に真正面から挑み、ある一定の成果を挙げてみせたという点で、非常に評価できます。懸案事項だった山Pにしても、彼は体も演技もきちっと作り込んできており、「アイドルだから」という甘えが一切ありません。おいしいところはすべて伊勢谷友介に譲っている点でも好感度が高く、彼の起用は失敗ではなかったと思います。ただし「映画として面白かったか?」と聞かれると、答えは「NO」です。ボリュームのある原作を2時間強に納めたため展開が駆け足にならざるをえず、ひとつひとつのエピソードが消化しきれていません。その一方で力石が死んだ後のエピローグが無駄に長く、本作は時間配分の面で完全に失敗しています。また、試合の場面では劇画の再現にこだわりすぎてアクション映画としてのテンポ作りが放棄されており、ひとつひとつの画は素晴らしくても、これを繋げたところで手に汗握るファイト場面にはなりえていません。監督も役者も期待通りの仕事はしたが、それ以上の映画には出来なかったというところでしょうか。
[DVD(邦画)] 5点(2012-02-12 01:44:07)
43.  アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!
これは絶対に吹替えで見るべき映画です。本作におけるウィル・フェレルはオーバーリアクションで笑いをとることはほとんどなく、微妙な言葉遣いの変化で笑わせてきます。日本で言えば、アンタッチャブル山崎や柳沢慎吾のようにテレビの音を消していても何か面白いことをやっているということが伝わってくるタイプの笑いではなく、真面目な顔をして小ボケを入れてくるところが面白い高田純二や板尾創路タイプの笑いなのです。そんな微妙なニュアンスを字幕で再現することは到底不可能であり、吹替えでは大笑いできた場面が、字幕での鑑賞では面白くも何ともないという状況になっています。例えば、マーク・ウォルバーグ扮するホイツ刑事が、ウィル・フェレル扮するギャンブル刑事をしつこく質問攻めにする場面。ギャンブル刑事は礼儀正しく小市民的であるため、マッチョに憧れるホイツ刑事は強気で質問するのですが、それまでおとなしかったギャンブル刑事が突如「うっせーんだよ、てめぇ!」とキレはじめる。そしてまた小市民に戻る。そこがこの場面の笑いどころなのですが、字幕版では単なる会話にしかなっていませんでした。。。そんなわけで吹替えでの鑑賞を前提にして本作を評価すると、物凄く笑える見事なコメディ映画であると言えます。要所要所でキレるフェレルがとにかく笑わせるし、そのパートナーであるウォルバーグはフェレルの笑いを引き出す役に徹しているため、このコンビは全編に渡って非常に安定しています。「ザ・ファイター」に続いてまたしても引き立て役に回ったウォルバーグですが、一応は主役であるにも関わらず変に目立とうとしないその姿勢には感動しました。ド派手なカーチェイスや銃撃戦は目を楽しませるし(と言っても製作費1億ドルはかかり過ぎですが)、強欲なアメリカ資本主義を悪役にするという鋭い考察も交えているし、見応えのある満足度の高い娯楽作に仕上がっています。
[DVD(吹替)] 8点(2012-01-21 21:25:08)(良:4票)
44.  アンビリーバブル
ドライな世界は「トゥモロー・ワールド」だし、夫婦愛の描写は「ファウンテン 永遠につづく愛」に似ているし、この映画はSF作品としては標準的な内容であるといえます。しかし監督はドグマ出身のヴィンターベア。彼は自分の作品がありふれたSF映画になることが許せなかったようで、シュールなイメージの大量投入を行うことで、本作を難解な芸術作品に見せようとしています。しかし監督のこの姿勢が映画を厄介なものにしていて(決して難解ではない)、正直言って私は付いていけませんでした。問題は、本筋とは無関係な設定やイメージを無秩序に氾濫させてしまったこと。前半部分は真面目に鑑賞していたのですが、「イメージは投げっぱなしで、どうやら伏線を回収する気はないらしい」ということに気付いてからは、観ているのが苦痛になるほど退屈しました。断片からストーリーを語ろうとする姿勢、真面目な顔をしてギャグを挿入してくる独特の語り口(“空飛ぶウガンダ人現象”なんてダウンタウンのコントですよ)はデビッド・リンチを相当に意識したものですが、シュールの質がリンチよりも粗いのです。リンチ作品は論理的に計算されていて、オチから逆算するとほぼすべての伏線の意味を把握できるのですが、本作には無意味な場面が多すぎます。本作は完璧に失敗作だと思います。唯一の救いはクレア・デインズを美しく撮れていたことで、同時期の「ターミネーター3」ではまったく魅力のなかった彼女が、まるで別人かのように輝いています。役者を美しく撮ることは監督の才能のひとつだと思うので、この点に関しては評価したいと思います。
[DVD(吹替)] 3点(2012-01-07 14:10:48)
45.  アウトランダー
モンスターを輸送中の宇宙人が事故って地球に不時着。モンスター退治のため宇宙人はそのまま地球に滞在って、まんまウルトラマン第1話なのです。しかもその舞台は現代ではなくバイキングの時代。これはとんでもないバカ映画だと期待したのですが、内容は至って真面目です。演技も演出も真剣そのもの、主演はイエス・キリストを演じた経験もあるジム・カヴィーゼルですからね。その他、バイキングの王にジョン・ハート、ライバル勢力の族長にロン・パールマンと共演陣も渋めで、本作は真っ当な時代劇として製作されています。変におちゃらけていないことは評価できるのですが、同時にこの真面目さが、本作が持つはずだった闇鍋的な面白さを奪う原因ともなっています。内容は「ベオウルフ/呪われし勇者」と大差ないもので、主人公が宇宙人である必要も、敵が宇宙怪獣である必要もなくなっているのです。また、本作のドラマパートは「13ウォーリアーズ」に酷似しているのですが、重厚な男のドラマだった「13ウォーリアーズ」と比較するとキャラクター描写が浅く、見応えに欠けます。SFという前提がドラマを消化不良にしており、SFと時代劇が食い合う形となっているのです。その他、撮影や編集が悪いために訳のわからない場面が多く見られたり、音楽がワンパターンで聞き飽きたり、モンスターのCGが甘かったり(2001年に製作された「ジェヴォーダンの獣」と同水準)と、技術的な面においても残念な部分が目立つ仕上がりとなっています。。。なお、本作は製作費5,000万ドルという大作でありながら、北米での興行成績はわずかに16万ドル。大コケどころか、公開前の時点で勝負を諦めていたとしか思えない成績です。美しいロケーションや渋い俳優陣に対して音楽やVFXが雑なのは、この辺りの事情が関係しているのかもしれません。
[DVD(字幕)] 4点(2012-01-06 20:57:08)
46.  アンノウン(2011)
リーアム・ニーソンと言えば、マイケル・コリンズやオスカー・シンドラー、ロブ・ロイといった歴史上の偉人達を演じてきた正真正銘の演技派でした。その素晴らしい存在感は多くの映画人から絶賛されており、ジョージ・ルーカスはジェダイの大師匠としてニーソンの起用を切望し、マイケル・ベイは「トランスフォーマー」におけるロボット軍団のリーダーについてニーソンをイメージしてそのキャラを作り上げたと語っています。そんなニーソン、55歳を過ぎて突如B級アクションに目覚めて迷走をはじめています。スティーブン・セガール、メル・ギブソン、ハリソン・フォード等の個性をたったひとりで表現できてしまう器用さが製作側にとっては便利なようで、ここんとこは娯楽アクションへの出演が相次いでいますが、本作についてはニーソンクラスの俳優が出るべき映画ではないと断言できます。そもそもの着想がありがちだし、ディティールもボロボロ。つっこみ出すとキリがないほどマヌケな殺し屋集団には呆れてしまいました。陰謀の核心も魅力的ではなく、爆弾解除に走り出す後半に至っても緊張感を出しきれていない演出は改善の余地ありです。「96時間」で起こった化学反応がいかに偶然の産物であったかが、本作を見ればよくわかりました。
[DVD(吹替)] 4点(2011-12-05 09:24:23)
47.  アジャストメント
ある日、私は行く予定のなかったある場所に思いつきで足を運び、そこで現在の妻と出会いました。妻もまたその場所には行く予定がなく、友達に誘われてたまたまその日・その場所に足を運んだということで、本当に偶然の出会いで私達の人生は決まってしまったというわけです。私は赤い糸や運命といったものは信じないのですが、偶然により人生は決定するということはかの経験から身に染みて感じています。そんな偶然と運命をテーマにしたラブストーリーが本作なのですが、重くなり過ぎず軽くなり過ぎず調度良い塩梅の娯楽作に仕上がっていて、2時間はきっちり楽しませてくれます。。。 本作のお話や雰囲気は「普通じゃない」や「ジョー・ブラックによろしく」に似ているのですが、ユニークなのは天使の設定です。彼らは人格的に優れているわけでもなければ、超越した知見を持っているわけでもない。神の指示通りに淡々と個人の運命を管理しているだけで、時として管理の目的すら見失い、凡ミスも犯してしまうという人間臭い設定は映画を面白くしています。彼らの能力には制限があって、物理的な事象はコントロールできるが、人間の心に直接影響を与えることはできない。そこで人間の出会いを管理することで、その人生を運命通りに導いているという設定となっています。「愛とは偶然なのか?それとも運命なのか?」というテーマや人間の心の扱い、扉を用いた見せ場はSF映画の傑作「ダーク・シティ」と酷似しているのですが、天使の設定の特殊性により差別化は図れています。「この恋を諦めればお前の夢は叶うが、その女性を選択すればお前の人生は平凡なものとなる」という定番のジレンマもばっちり決まっており、映画は非常にうまくまとまっています。。。 理解できないのは本作を「マイノリティ・リポート」のようなSFサスペンスとして売り込んだ日本の宣伝戦略で(本国ではラブストーリーとして宣伝されています)、配給会社の人達はSFサスペンスを期待して鑑賞した人達を落胆させるということが分からなかったのでしょうか?
[DVD(吹替)] 7点(2011-11-01 22:59:30)(良:3票)
48.  愛を読むひと 《ネタバレ》 
演技は良い、撮影も良い、テーマも良い、映画全体も上品にまとまっていて、いかにも賞レースで評価されそうな要素を多く持っているのですが、惜しいところで良作になり損ねたという印象です。スッキリしなかったのはマイケルの心理描写が雑だったことで、彼の葛藤は何となく推測できるものの、それをエモーショナルなドラマに昇華しきれていませんでした。レイフ・ファインズという瞳だけで演技のできる俳優に終始頼りっぱなしで、作り手の側がマイケルの心情を整理しきれていなかったことがその原因。冒頭、恋人から「あなたの気持ちがわからない」と言われたところからマイケルの回想が始まりますが、映画を観終わってところでハンナとの関係がマイケルの人格形成にどう影響したのかがまるで見えてきません。ひと夏の経験が少年の人生をどう変えたのかを表現できていないのでは、この題材の映画化作品としては失敗でしょう。オスカーも納得のケイト・ウィンスレットの熱演や、一風変わったホロコーストネタの料理(ホロコーストに関わった者を単純に断罪するのではなく、無知ゆえに殺戮に加担した者を罪に問うべきかという珍しい問いかけがなされます)など良い点は多くあるのですが、主人公マイケルの人物像がブレブレでは話になりません。
[DVD(吹替)] 5点(2011-04-24 16:51:07)
49.  アンツ 《ネタバレ》 
製作から13年も経った今になってようやく鑑賞したのですが、「なぜこれをスルーしてきたんだ!」と後悔するほど心を奪われました。含蓄があり、笑わせ、そして燃える。私が映画に求めるもののほとんどが含まれた圧巻の80分でした(上映時間短っ!)。アリ社会を紹介する序盤、王女様との冒険とロマンスを描く中盤、将軍との戦いに雪崩れ込む終盤と3パートに分かれているのですが、どのパートも完璧な仕上がり。次々と舞台が移動するものの特に慌ただしさは感じさせず、すべてのパートが主人公Zの物語の構成要素として機能しているため映画全体には統一感があります。脚本の出来が恐ろしく良いのです。ハリウッドとは距離を置くウッディ・アレンによりにもよってアニメ映画の主人公役をオファーし(日本で言えば、田村正和にハゲヅラ被ってコントさせるぐらいのとんでもないキャスティング)、それを承諾させた脚本の力がこれです。サメとクマノミがお友達というふざけたディズニー映画とは一線を画す世界観。働きアリは仕事だけの人生に意義を求め、兵隊アリは隣国との間で死闘を繰り広げ、権力者はクーデターを画策する。戦場で出会った気の良い兵隊アリは世にも無残な死に方をし(小さいお友達が見れば確実にトラウマになります)、コメディリリーフと思われたアシナガバチは唐突に命を落とす。これは完全に大人向けの脚本です。アニメの枠を越えてしまったが為に一部では拒絶反応も起こっているようですが、映画としては非常に見ごたえがあります。。。世界一の映画監督スピルバーグをトップに迎え、「職業経営者から映画を取り戻す!」をスローガンに設立されたドリームワークス黎明期のラインナップは、それはそれは鼻息の荒いものでした。一般市民を巻き込みながらテロリストとアメリカ合衆国が死闘を繰り広げる「ピースメーカー」を皮切りに、スピルバーグのグログロ超大作「アミスタッド」「プライベート・ライアン」、子供を巻き込みながらオモチャが殺し合いをする「スモール・ソルジャーズ」、主要登場人物のほとんどが死ぬ「ディープ・インパクト」と、ネジのとんだ大作を連打します。そんな中で作られたのが本作なので、必然的に内容はダークでアダルトなものとなったようです。なお、本作の経験を経て娯楽性と毒のバランスをより洗練させたのが「シュレック」なのでした。
[DVD(字幕)] 10点(2011-01-21 22:43:49)(良:1票)
50.  アンストッパブル(2010)
味付けについて自由度の高いラーメンには名店も多くありますが、例えばそうめんで客を唸らせる味を作ってみろと言われれば、これはとんでもない難題です。映画の世界でそんな難題に挑み、奇跡的に満足できる商品を作ってしまったのが本作。しばしば「スピード」との類似点が指摘されますが、テロリストとの駆け引きがあり、さまざまなトラップや見せ場を準備することができた「スピード」と比較すると、無人で暴走する列車を止めるだけというシンプルな本作は遥かに難儀な代物だったと思います。シンプルだからこそ監督の手腕がモロに問われ、逃げも隠れもできない素材。私はロン・ハワードのような堅実なタイプの監督に任せるべきで、ビジュアルばかりが先行するトニー・スコットは適任ではないと思っていました。が、観終わればそれは大きな間違いだったことに気付かされます。スコットは驚異的な演出力を披露し、難儀な企画を燃える傑作に変えてしまっているのです。いつものビジュアルセンスはもちろん健在で、他の監督が撮っていれば単調になったであろう本作の見せ場も、スコットの手腕によってかっこいい場面の連続に。列車を追うヘリやありえない台数のパトカーの並走など、乗り物を撮らせるとスコットは相変わらず良い仕事をします。クライマックスに向けて計ったように盛り上がっていくテンポ作りも見事で、どんどんエスカレートしていく物語には手に汗握りっぱなしなのでした。そして、今回のスコットが凄いのはここから。見せ場とドラマのバランスがほぼパーフェクトであり、神がかった職人芸を見ることができます。本作のメインはもちろんアクションでありドラマは添え物という扱いなのですが、映画のテンポを邪魔することなくアクションの高揚感に貢献させるという、アクション映画にあるべきドラマ作りが完璧になされています。ドラマを挿入するタイミングやその分量が本当に絶妙で、スコット兄やスピルバーグですらここまで巧くはできないでしょう。30年ものキャリアにおいてひたすらアクション映画を撮り続け、主要な映画賞へのノミネート経験が一度もないというアクションバカがついに辿り着いた究極の作品。それが本作なのです。。。強いて苦言を言うならば、カタカナにすると語感の悪いこの邦題、作品の趣旨から外れたヘタレな宣伝文句は何とかならなかったのでしょうか。
[映画館(字幕)] 9点(2011-01-16 23:31:49)(良:1票)
51.  アメリカン・ヒストリーX 《ネタバレ》 
人種問題をテーマとした映画は多くありますが、いずれの作品も「差別は最低の人間のすること。みんなで仲良く暮らせる社会を目指しましょう」という結論ありきの物語で、時にうんざりさせられます。もちろん差別はよくないことなのですが、時に挑戦的なメッセージを投げかける芸術という世界にあって、判を押したように優等生の意見ばかりでは物足りなく感じます。そんな不満を持っている中で鑑賞したのが本作でした。公開時から非常に評価が高く、IMDBでは「タクシー・ドライバー」や「時計じかけのオレンジ」と肩を並べる程のスコアを獲得している作品だけに、他の映画にはない独自の切り口があるのではないかという期待がありました。。。そんな心境での鑑賞でしたが、期待は半分満足し、半分は裏切られたという印象です。この映画の特異な点は差別する側を主人公とし、その主張を大きく扱っていること。差別主義者デレクは有色人種に対する憎悪を喚き散らします。「黒人はいつまで被害者面するつもりなのか?」「社会を乱す元凶である不法入国者に税金で援助を与えるとは何事か?」。客観的に聞いてその主張にはある程度の説得力があり、アメリカ社会が直面している現実のある一面を言い当てているように思います。もしかしたら、口には出さないだけで多くの白人が腹の中では考えていることなのかもしれません。それを主人公にズバっと言わせてしまった点で、本作は価値があると思います。しかし、その後の処理には不満が残りました。家庭内で暴力を振るうは、有色人種の経営するスーパーを襲撃はのやりたい放題。「こんな主張をする奴はこの通りの最低野郎です」と言わんばかりの演出で、結局いつもの人種映画に戻ってしまうのです。主人公が改心する後半のドラマも面白かったのですが、社会派作品としてはあまりに月並みな展開で物足りなさが残りました。前半における主人公の主張を真剣に突き詰めれば意義のある内容になったのに、それをあっさり放棄して安全・安直な方向へと映画の舵を切ってしまったわけです。どうやら、人種問題の渦中にいるアメリカ人監督には超えられない壁があるようです。その点、アメリカ社会の外にいるヨーロッパ人監督が撮った「マンダレイ」などは人種問題の核心を突いていて、社会問題に対する考察という点で本作よりも意義がありました。
[DVD(吹替)] 6点(2011-01-14 21:37:47)
52.  アドレナリン(2006)
エロくてグロいんだけど、笑える程度の適度なサジ加減。バカバカしい話なんだけど、しんみりとしたドラマパートも味がある。すごくバランスの良い作品だと思います。特に素晴らしかったのが冒頭で、死を宣告され絶望の淵に立たされたと思いきや、「なんだと~~!!」とブチ切れて残された時間で仕返しに走る主人公。ここで一気に物語が疾走を開始し、以降はバカバカしくも勢いのあるアクションがノンストップで繰り広げられます。見せ場における画面作りはカッコ良いし、アドレナリン切れで命の灯が消えかける主人公の描写もうまいものです。この監督さんのことはよく知りませんが、なかなかセンスのある人だと思います。また、ジェイソン・ステイサムも作品の本質をよく理解した怪演を披露。普通の俳優であればかっこつけようとしたり、感動的な演技を披露したりしようとするもんです。しかしこの人は最後までバカ。このプロ根性には頭が下がります。
[DVD(吹替)] 7点(2010-10-28 21:14:31)(良:1票)
53.  アイ・アム・レジェンド
主人公は自らが定めた日課を黙々とこなし、人に見立てた物体に話し掛けることでかろうじて人格を維持しているが、3年間も一人で生きていればさすがにマトモではいられない。冷静な観察力や判断力が失われており、独自の社会を形成している感染者を依然としてただのバケモノとしてしか見ていない。彼らが知性と感情を有していることを理解していないために、感染者との間で戦争を引き起こすことに。。。これが物語の骨子なのですが、ネヴィルの精神には異常が発生していること、彼がパラノイア的に感染者を敵視していることをはっきりと示す描写がないために、作品の意図がイマイチ伝わってきません。主人公の描写は明らかに「キャスト・アウェイ」を参考にしているようですが、「キャスト~」においては裸のトム・ハンクスがバスケットボールに話し掛ける様を見れば、一目で「イっちゃってるな」ということは分かりました。一方本作のウィル・スミスは身なりをそれなりに整えているしそこまで異常な言動をとるわけでもないので、彼がマネキンに話しかけたところで、本当に頭がおかしくなっているのか、遊び半分で「他人がいるごっこ」をやっているのか、セリフなしでは困るという製作上の都合でマネキンに話し掛けているのかの判別が難しく、「こいつは頭がきている」という決定的な描写は必要だったと思います。感染者に対する異常な敵視についても同様で、例えば誘拐してきた感染者を極度に傷付けるような実験を行う描写があれば、主人公の認識に歪んだ部分があることを示すことが出来たはず。描写の不足は感染者側にもあって、彼らの知能や社会性を示す描写が弱いために、何も考えずに見ていると「孤立無援のヒーローがバケモノを退治する話」にしか見えません。これでは、原作と真逆の物語となってしまいます。そもそも感染者の設定には不明な点が多く、NY市にはどれだけの感染者がいて、何を食べて生きているのか(主食とされる人肉はすでにありません)、彼らは夜間何をやっているのかという基本的な設定すら説明されないため、映画の芯がボヤけてしまっています。無人のNY市の描写等ビジュアル面は非常に素晴らしいのに、設定面での煮詰め方が甘いために世界観が不十分なものに。そして世界観の弱さが映画の弱さとなっており、見た後にスッキリしない作品となっています。
[映画館(字幕)] 4点(2010-09-15 22:34:59)(良:1票)
54.  アイアンマン2 《ネタバレ》 
序盤は最高でした。無許可の強力兵器が好き勝手に飛び回っているのでは、国はその規制に乗り出すはず。さらに、ライバル企業や軍事独裁政権はこれと同等のものを作ろうとし、もし自前で作れなければテクノロジーを奪おうとするはず。そんな、「もしアイアンマンが登場したら、世界はどう反応するか?」を突き詰めた視点はよく考えられています。マスクによって匿名性を維持していた従来のヒーローとは異なり、自分はアイアンマンであると公表しているトニー・スタークは公聴会に召喚されますが、ここでの振る舞いもスタークらしく、またスタークの不遜な態度をマスコミや市民が拍手で迎える様からは、アイアンマンがみんなのヒーローとして認識されていることが伝わります。こうした、第二作の世界観を伝える場面をきちんと入れてきている配慮は評価できます。また、モナコにおけるウィップラッシュ登場シーンも強烈でした。只者ではないオーラを漂わせて表舞台に乱入するや、F-1マシーンを真っ二つに切り裂くという尋常ではない力技を披露。悪役登場場面にはインパクトが必要ですが、この登場は百点満点だったと思います。さらに、携帯式アイアンスーツという意表を突いたアイアンマン登場にも大興奮。逃げ惑っていた観客達が、アイアンマンが登場するや身を乗り出して彼を見ようとする細かい演出も最高です。しかし、モナコの場面が終わると映画は急激に失速します。複数のドラマが詰め込まれているものの、そのどれもが描き込みが不足していて中途半端。スタークの病には苦悩や絶望感が少ないため「どうせ治療法が見つかるのだろう」という妙な安心感が漂っているし、ウィップラッシュの狂い方も「俺の鳥」だけでは全然足りていません。突然社長に就任したペッパーの戸惑いや、親友を裏切ったローディの苦悩、ブラックウィドウの謎の美女としての煽り、どれもが不足しています。しかし、終盤になると映画は再び息を吹き返します。ザクキャノンを思わせるハマーロボ、そしてフルアーマーガンダムを思わせるウォーマシンら、ハマー社製の無骨さ!そしてラスボスはヒートロッドを扱うグフ!これ考えた奴は絶対ガンプラ好きですよ。これらハマー社製を迎え撃つは、新エネルギーによってパワーを増したアイアンマンMk-6。この上さらに、スターク社製のMk-6とハマー社製のウォーマシンとの共闘を見せられたのでは、ロボット魂に火を点けられまくりです。
[映画館(吹替)] 7点(2010-07-08 08:41:19)(良:3票)
55.  アイアンマン
【2012/01/15レビューを変更しました】 古今東西のヒーローものの限界、それは「ヒーローは世界平和を謳いながら、なぜご当地(アメコミヒーローはアメリカ、特撮ヒーローは日本)しか救わないのか?世界には貧困や飢餓、紛争が溢れているのに、なぜそこに立ち会わないのか?」という点にあります。身も蓋もない話をすれば、それは製作費がかさんでしまうという製作上の都合であったり、内容が重くなり過ぎてしまうという品質管理上の都合であったりするわけですが、本作はその矛盾点に果敢に挑んだ内容となっています。アイアンマンははるばるアフガンに飛んで軍閥を成敗しますが、その目的は純粋にアフガンの人々を救うことであって、アメリカに危害を加えるテロリストをこらしめるというものではありませんでした。ラストバトルの舞台はアメリカ国内でしたがこちらは敵がたまたまアメリカにいただけのことであって、アメリカ国民を救うための戦いではありませんでした。真に世界平和を謳い、その目的に合致した行動をとるヒーローがいよいよ登場したという訳です。そんな挑戦的な内容でありながら、表面上は王道のアメコミ作品としてまとめられている点が実にクレバー。アメコミヒーローがベトナム戦争や東西冷戦に介在する『ウォッチメン』や、「アメリカの守護神であるスーパーマンは、なぜ911を防いでくれなかったのか?」という疑問に挑んだ『スーパーマン リターンズ』といった前例があるにはあるもののどれも重くなり過ぎて微妙な結果に終わっていった中にあって、本作はそのアグレッシブな試みを前面に出さず、表面上は軽い娯楽作を装うことで品質管理上の制約をうまくスルーしているのです。これは抜群によく出来た構成だと思います。さらに、ロバート・ダウニーJrを主演に据えるという判断も神がかっています。今でこそダウニーJrはスターに返り咲いていますが、本作製作時点では完全に過去の人でした。才能は評価されていたものの素行が悪いために観客からも製作者からも敬遠された人で、日本でいえば大河ドラマの主演に沢尻エリカや赤西仁を据えるというレベルの判断を本作の製作者は下したのです。このアグレッシブな人事も大いに評価すべきでしょう。
[映画館(字幕)] 7点(2010-07-05 08:08:10)(良:1票)
56.  暗殺者
ウォシャウスキー兄弟がオリジナルを作り、それをブライアン・ヘルゲランドが手直ししたという、今となっては驚くようなメンバーによって書かれた脚本はかなり魅力的です。ただドンパチ撃ち合うだけのアクションではなく、タクシー車内の防弾ガラスを挟んでの銃撃戦や、部屋にある日用品を利用したマンション室内での銃撃戦など、すべての見せ場には他の映画にはない一工夫がなされており、なかなか丁寧に考えられています。暗殺者という泥臭そうな仕事でありながら、当時まだ珍しかったEメールによってその指示がなされるというアイデアはウォシャウスキー兄弟ならではですが、いくつもの修羅場をくぐりぬけてきたベテラン暗殺者が、パソコンの前でぶつくさ文句言いながら愛想のいい返信をする辺りの捻り方もなかなか面白いと思いました。彼と組むこととなる女性ハッカーのキャラクターもよく出来ています。隣人の生活を覗き見ることを趣味としており、唯一の生き甲斐はネコを溺愛することというかなり危ない人なのですが、そんなエキセントリックな彼女が魅力的に描けているというギリギリのバランス感覚は、やはり脚本家がうまかったおかげでしょう。。。残念だったのは、新人脚本家達によるエッジの立った脚本を任されたベテラン監督の腕前が、あまりに安定しすぎていたことでしょうか。脚本のとんがった部分のほとんどが監督の安定した手腕のために丸く削られてしまい、人物像の作り込みや設定の面白さがほとんど伝わってきません。中年のベテラン暗殺者と若い女性ハッカーという、特殊な専門能力は持つものの社会性ゼロの二人が、お互いに弱みを補完しあいながら危機を乗り切ることが物語の骨子であったはずなのに、二人の人間的な弱みの描写が決定的に欠けているため、よくあるバディ映画にしか見えません。二人とも、暗殺者やハッカーであることを除けば常識的な普通の人にしか見えないのです。二人の病的な部分や、人間的な衝突をもっと描くべきでした(ブライアン・ヘルゲランドが参加している以上、オリジナルの脚本にはそのような描写があったはず)。そこに来て、アントニオ・バンデラス演じる明らかに危ない若手暗殺者のキャラだけが異常に立っており、この辺りのバランスの悪さも映画の出来を残念なものにしています。
[DVD(字幕)] 5点(2010-05-26 22:17:47)
57.  アポカリプト
冒頭から驚きました。独特のメイクにケツ丸出しファッション、女性方はおっぱい丸出し(エキストラのみならず、ジャガーパウの奥さんのような重要な役柄に至るまで)、NHKスペシャルで見るようなジャングルの村がまんま再現されているではありませんか。これを演じているのはプロの役者さんなのですが、ジャングルで生活している人たちにしか見えません。映画であるからにはある程度綺麗に撮ろうとするものですよ、普通。おっぱいぐらいは隠すだろうし、少なくとも主人公にはかっこいいメイクをさせるものです。しかし本作はそのような映画的な修正を可能な限り排除し、徹底的にリアルに作り込んでいます。ここまで再現してくるとは思いませんでした。マヤの都市の作り込みも凄まじいものがあります。実物大セットとCGを見事に組み合わせた(実写とCGの継ぎ目がまったく分からないという完璧な完成度)都市の再現力は、私が見てきた時代劇の中でもトップクラスです。そこに生きる人々の描写も丁寧で、エキストラひとりひとりに至るまで衣装やメイクに手抜きがなく、画面に映る全員に対してきちんと演出が施されています。これ見よがしに巨大建造物を映し出す時代劇は多くありますが、そこに生活する人々を含め、都市の全体像を提示する映画はほとんど見たことがありません。しかも本作の舞台はマヤ文明。古代エジプトやローマのようにしばしば映画の題材になるような時代ならともかく、満足に映像化されたのは恐らく本作がはじめてです。そんな、参照すべき過去の作品もロクにない状態で、ここまでの完成度で過去の文明を描写してみせたことは驚異的と言えます。メル・ギブソンの監督としての才能と、優秀なスタッフを山ほど動員してきたプロデューサーとしての能力、どちらも大いに評価すべきでしょう。こうしてマヤの世界にどっぷり馴染んだところでいよいよ猛烈なアクションがスタートしますが、ここからはメル・ギブソンの才能がフルスロットル。ジャガーパウがゼロウルフの息子を殺した瞬間、「マジかよ」と場の空気が一瞬止まり、一呼吸置いてから追跡部隊が猛スピードで走り出すところからして燃えます。槍を持ってジャングルを走り回るだけのアクションをここまで面白く撮れるものかと、燃えっぱなし、驚きっぱなしでした。追跡者の動きを俯瞰で見せるカメラワーク等、ここでも優秀なスタッフに支えられていることがわかります。
[映画館(字幕)] 8点(2009-12-26 18:51:52)(良:2票)
58.  アバター(2009)
長期のブランクを経ての監督作にして、テクノロジーと予算をふんだんに投下して製作された大作と来れば、思い出すのは「スターウォーズエピソードⅠ」の大惨事。予告で目にしたナヴィ族のデザインにもピンと来ず、これはいよいよキャメロンもやらかしたかと思っていたのですが、キャメロンすいませんでした。12年のブランクにも関わらず、その全盛期をも上回る大傑作となっています。キャメロンは観客の感情を刺激する術を忘れておらず、人類の悪辣な振る舞いに怒り、立ち上がるナヴィ族に燃え、壮絶を極める戦闘に興奮し、その中で失われる生命に悲しみを覚えるという、喜怒哀楽すべてを刺激される、極めて映画らしい映画となっています。ここで驚くべきは、大自然の美しさや神秘性といった微妙な感覚までを表現してしまっていることです。最初は奇怪に感じていたパンドラの自然に対して知らず知らずのうちに愛着を覚え、パンドラの森が破壊される場面では、自分の重要な一部を傷つけられているような痛みすら感じさせられます。こんな映画は他に見たことがありません。キャメロンが3D上映にこだわったのは戦闘シーンの大迫力を描くためではなく、パンドラの自然を表現することが目的だったと思います。3Dにより、パンドラの自然の美しさや躍動感が見事に表現され、見ている私達もパンドラを体験することとなるのです。3D映画は他にも多くありますがそれらはアトラクションとして3Dを用いているに過ぎず、ストーリーテリングの道具として映画に従属させる形で3D技術を使いこなした作品は本作がはじめてです。その意味で本作は「史上初の3D映画」と呼ぶにふさわしく、私が本作を体感して得た感動は、サイレントの時代にはじめてトーキー映画を体感した人々の感動、モノクロの時代にはじめてカラー映画を体感した人々の感動に通じるものだったと思います。本作をDVDで見ようなどもっての他、劇場にて3Dで鑑賞すること、この衝撃がもっとも新鮮な今味わうことが重要な作品です。これは歴史的な体験なのですから。本作よりも感動させる映画、考えさせる映画、興奮させる映画は他にもありますが、映画人生で二度と味わえないような体験をさせてくれる作品は本作くらいでしょう。それくらいの革命的な作品です。
[映画館(字幕)] 10点(2009-12-25 00:08:40)(良:6票)
59.  アミスタッド
脚本はよく作り込まれています。奴隷商人、アメリカ海軍、スペイン王室らの利益が複雑に絡み合い、さらに国際条約や国家間の力関係、アメリカ国内の対立までが影響を及ぼすかなり厄介な裁判をテーマとしながら、事件を取り巻く環境の交通整理がうまくなされています。マシュー・マコノヒーに「この裁判の本質は所有権争いである」と言わせ、どうすれば黒人奴隷達が裁判に勝てるのかを観客に対して事前に提示したことで、話がグっとわかりやすくなっています。このようなストーリーテリングの工夫には好感が持てます。証拠や論理を積み重ねていき、裁判を有利に導く様は小気味よく、法廷ものとしてなかなかのレベルです。しかし残念なのは、当のスピルバーグが本作を法廷ものとして描く気がなく、法廷で論理を積み重ねることよりも、いかに感動的なセリフを言わせるかを重視したこと。感動過多というスピの悪い癖がここでも出ています。また、アフリカ出身で西洋文明には馴染みがないはずの黒人奴隷が聖書に関心を持ったり、西洋の価値観である「自由」を叫んだりと、黒人の白人化が目に付きました。「奴隷制度に反対を叫んで、奴隷達そのものに無関心な人間」という印象的なセリフがありましたが、本作の作り手達にもこれを自問していただきたいところです。一方、スピお得意の残酷スペクタクルのインパクトは絶大で、本作の壮絶さはシンドラーのリストをも超えています。言葉でのみ語られてきた歴史を、迫真の映像で見せられるとここまでショッキングなものかと驚きました。ロスト・ワールド、プライベート・ライアン、そして本作と残酷描写が際立つ作品を3つもほぼ同時に作り上げたスピの絶倫ぶりは、さすが巨匠なのです。
[DVD(字幕)] 5点(2009-07-18 21:22:05)
60.  アンドリューNDR114 《ネタバレ》 
SFオンチの監督の手に渡ったのがお気の毒としか言いようのない作品。エスねこさんが詳しくレビューされていますが、本来これはほんまもんのSF作品。作り物が人間よりも人間らしくなった時、ホンモノとニセモノの境界はどこへ行くのか?というSF定番の問いかけを軸に、その境界の真っ只中に立たされるアンドリューの苦悩が感動的かつ哲学的に描かれる…はずの作品だったのですが、SFとしてはあまりに雑な仕上がりのためおいしいところはほとんどスルー、ロボットと人間が結婚して良いおじいちゃんとおばあちゃんになりましたという志の低い作品に終わっています。アンドリューと人間社会のつながりが本作最大のテーマと言えますが、肝心の社会風俗の描写があまりに杜撰なのです。彼らの世界ではロボットはどの程度普及しているのか(マーティン家は金持ちだったが、金持ちしか持てないものなのか?)、何の目的で家庭で使用されているのか(あのドン臭いデザインでは邪魔なだけにしか見えない)という極々基本の部分すらよくわからない状態。中盤より彼は自分で収入を得るようになりますが、どこが評価されて彼の商品が売れたのか、そしてあの世界でロボットが収入を得ることがどれほど例外的なことなのかがわかりません。勝手に進化をはじめたアンドリューに対する人々のリアクションも不自然で、彼が人間とタメ口を聞くようになろうが、マイホームを持ち服を着るようになろうが、金属からロビン・ウィリアムズの顔に変わろうが「あぁそうなんだ」程度で普通に受け入れられてしまうのは、作品のテーマとそぐわないのでは?人間になろうとするアンドリューと、その進化についていけない人間社会との軋轢こそが本作の主題だったはずなのに、200年があまりに順調すぎたと思います。ロボットとの愛情を育むこととなるポーシャにまるで葛藤がないのも不自然。ロボットと愛し合い、おまけにセックスまでするという人類史上誰も経験のないことをやってしまう女性なのに、普通の結婚とさして変わりのない様子。社会もふたりの結婚を素直に認めちゃってるし。どうしてここまでSF要素を切り取ってしまったのかと、不思議で仕方ありません。
[DVD(吹替)] 4点(2008-10-06 01:17:45)(良:3票)
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