1. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦
妻投稿。前作は先の見えない21世紀において「家族のために未来を生きる」という力強いメッセージが込められた作品で、だからこそ多くの人を感動させることができたわけですが、監督が本当にすごいところはこうした大感動作も決して万能ではないと理解し、今作品では前作のメッセージに諸刃を突き付けかねない難題に挑んでいるというところだと思います。というのも前作のメッセージが届くところは自分も家族も殺されたり死んでしまう可能性がほとんどない「未来のある」世界。でも世界には、いいえ日本にだってオトナ帝国に惑わされた大人たちが感じていた絶望とは別の「暴力」「死」という名前の絶望に苦しんでいる人がいて、この映画はその人たちに捧げられたのだと思います。死や暴力が日常的な世界の住人を「生きることに必死で何かを考えたりはしない」と決めつける心理学者も多いみたいですが、彼らだって恋をするし、笑ったり子供に嫌われて焦ったりもします。そして「自分がどうあるべきか」に対してとても真摯です。この作品はラストサムライ的武士道や戦争や平和よりも、人間はどんな状況下でも美しく生きられるのだという事を力強く訴えているのだと思います。 [DVD(邦画)] 10点(2009-03-10 21:21:03)(良:2票) |
2. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
《ネタバレ》 昭和ノスタルジーとは何かよく分からないが、僕の子供時代は先生、子供、地域社会からの暴力、いじめ、吊るしあげなんかでズタズタの地獄だった。はっきりいってあの時代には戻りたくないし、思いだすだけで吐き気がする。そういう奴らが子供時代に戻りたい、あのころは良かったなんて言い出しているのかと思うと鳥肌が立つし、中盤の「子供狩り」という名の幼稚でグロテスクなエゴをむき出しにする大人達、しんのすけを置いてきぼりにしてトラックに乗ってどっかいっちゃう連中に、僕は他のレビュワーさんとはおそらく違うテーマを感じ取っていた。しかしそうした仕打ちを受けたしんのすけ、春日部防衛隊のその後のバスカーチェイス、そして家族がいる事、1人じゃないということは素晴らしい事・・・それを堂々と相手にぶつける誇り高き態度は、確かに「感動」というものを僕に与えてくれた。「しんのすけ、お前すげーよ」・・・奥さんが出来たばかりの僕は、そして僕の奥さんも、しんのすけにそう言ってやりたい。お前は大人たちのエゴに勝ったんだ。「空が青いぞ」といいながら。 [地上波(邦画)] 10点(2008-04-29 23:42:23)(良:1票) |
3. グラディエーター
妻投稿■西暦180年のローマといえば歴史学者のエドワード・ギボンが曰く「人類史上もっとも幸福な時代」であるパックス・ロマーナ=ローマの平和が終わりに差し掛かった時代だ。殺し合いゲームで市民の支持を得るコモドゥスの最期は、今のパックス・アメリカーナの主役であるアメリカ合衆国が戦争という娯楽で国民の支持を得て衰退するのに似ている。■リドリー・スコットは「ブラック・レイン」にしろ「ブレード・ランナー」にしろ「ブラックホーク・ダウン」にしろ、人々が無邪気に信じている「当たり前」の崩壊を予言するような大仕掛けな映画を撮ることがうまい。彼にとってローマの崩壊は、「既存事実である世界基準の当たり前の崩壊」という点で、一番脂の乗った食材だったと思う。■絶対的主人に「貴様らの母親が生んだせいで始まったどうしようもない人生を俺が終わらせてやる」と言われるシーンや、扉の向こうで鉄球がブンブン回っているのが光で表現されるシーンは、前半の圧倒的強さを持つローマ軍と合わせて、「超大国の衰退は外からではなく内部の悲鳴と失禁から始まる」というメッセージ性を表現しているし、ラストはアンデルセン童話のバッドエンドみたいなニヒニズムを感じる。英雄の物語と見せかけてラストは世界が救われたわけでもないという、エメリッヒ作品とは対照的なリドリーの歴史観の集大成じゃないかと私は思うのです。■コロッセオ・・・綺麗ですね。2000年後にブルース・リーとチャック・ノリスが戦うのですね。 [地上波(吹替)] 9点(2008-08-12 23:01:54) |
4. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル
《ネタバレ》 妻投稿■■ラスト野原ひろしはしんのすけに「アクション仮面みたいに強くて優しい大人になれよ」という。そう、ヒーローというものはテレビの画面の中で感傷やお涙頂戴のためにあるわけではない。子供および大人が「僕も私もこんな強い人間になりたい」「こんな格好いい人間になりたい」と思う為に登場するのだ。最近のヒーローものはギャグセンスや「萌え要素」ばかりに傾向して、本来の目的を忘れている作品が多くみられるが、劇中のしんのすけが決死の思いでパラダイスキングに喚くシーンは、こうした最近のヒーローに対するアンチテーゼではないかと思う。■■この作品の際物さは、「このようなヒーローになりたい」という指標だけではなく、「こんな悪党になりたい」という悪の魅力まで提示しているところだ。だが、パラダイスキングのかっちょよさ、魅力も「本物のヒーロー」を描ける映画制作陣だからこそ描けるものなのだと思う。 [地上波(邦画)] 9点(2008-02-03 21:08:13) |
5. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!栄光のヤキニクロード
《ネタバレ》 妻投稿■変更■実は、これは統合失調症の世界を描いた映画なんじゃないかと思う。もちろん野原一家が統合失調症という訳ではないが、世界観が統合失調症の世界をモチーフにしている事は間違いない。会社や近所が自分たちの悪口を言い、テレビのニュースでは自分たちの悪口が放送され、さらに自分と言う存在が劇画的で自分じゃないように映る様子。ラストの崩壊した世界観(ぶりぶりざえもんが大量に出てくるシーン)とかがその証拠だと思う。■そしてそれがロープウェイの上で器械をつけて、「もうおしまい。みんな元通りになるんだぞ。じゃ、そういう事で」というシーンと、その後現実世界の熱海商店街をひろしが眺める場面で、男色おにいさんが土産物屋さんで土産物を探すシーン(あれはひろしを探している雰囲気ではなかった)、現実世界の電車で家に帰ると、今まで自分を苦しめていたものが何もかも存在しなかった事になっているシーン、そして「人生、参る時もある♪ そんな時こそ焼き肉がある」というBGMに「安心感」という優しさが隠れている気がするのは気のせいだろうか。 [DVD(邦画)] 8点(2009-09-27 03:42:11) |
6. グアンタナモ、僕達が見た真実
《ネタバレ》 妻投稿■物凄く素朴な疑問として、こういう拷問で手に入れた情報って価値があるんだろうか…と思う。こういう取り調べてあげられた証言って、ここから出たいばかりに尋問兵士の「納得する答え」をそのとおりに言ってしまうものなんだから、こんなんでテロリストのアジトやメンバーなんてわからないような気がするんですけれど。■でもこれを見ていると、囚人たちの極限状態はもちろん、看守側の米兵たちの、強いては米国社会の声が聞こえてくるような気がする。「お前たちは悪い奴なんだから、楽な姿勢でいる権利はない」「隣の人に話しかける権利もない」。なんというか、アメリカとそれに追随する国や社会…そうじゃない社会もそうなんだけど、憎む相手を必要としているんですよね。そうして作り出した「悪い奴」の人間としてのおしゃべりや食事、排泄、宗教、運動を全部支配下においてしまう。看守の「テロリストの名前を言え」というのも「お前たちは俺たちが必要としている悪役なんだ」という言葉の倒錯なんじゃないかと思えてきちゃいます。■ただ冒頭のアフガンで捕まる場面は、無謀。危険地帯を行き当たりばったりで移動するのは、一番やってはいけない事です。 [DVD(字幕)] 7点(2010-08-10 01:35:38) |
7. グエムル/漢江の怪物
旦那に代わって妻投稿。この映画はモンスターパニック映画につきものの、大勢の犠牲者と怪獣の屍の上で感傷に浸る主人公とヒロイン連中に対するアンチテーゼではないかと思う。ガメラ、仮面ライダー何でもいい。夜道を家に帰る端役女性が突然その命を通り魔的に奪われる。次の瞬間には主人公の図々しい日常が描かれ、被害女性の今までの人生や、彼女の帰りを待っていた彼氏が変わり果てた恋人を前に嘆き悲しんだり、家族が蒸発した娘を必死で探すであろう事実はなかったことにされるような展開に、きっと制作者は違和感を感じていたのではないか。それが、この映画における葬式のシーンやラストの唖然とする結末など、頑張って努力した主人公の家族が悲惨な運命を背負う描写へとつながったんだと思う。あの女の子の遺形はモンスターを際立たせるために殺された映画やテレビの中の無名の人々の墓標ではないかと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2009-01-02 03:12:21)(良:1票) |
8. クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ金矛の勇者
《ネタバレ》 わーい、本郷みつるバージョンが帰ってきた・・・と、思わず暗闇の街でしんのすけと一緒に飛び跳ねてしまいました。クレヨンしんちゃんの面白さはサイクロン幼稚園児しんのすけが現実非現実にかかわらず大人の構築した世界観をかき乱すことにあると思います。それをМ16やハマーではなく、魔法のアイテムとシュールな異次元暴走で見せてくれる本郷監督は個人的には原監督より好きです(悪党を殺しちゃう所は除く)。しかしやはり10年以上のブランクは大きく、話的にだれてしまっている部分は中盤なんか特にそうです。それに「夜襲い来る不思議な空間」という面白いシチュエーションにもう少し「不思議なりの臨場感」が欲しかったかなあ。それでも子供のころに見た不思議で怖い夢のような、本郷しんちゃんの独特な世界観に懐かしさを感じたので、今後の期待を込めて・・・。あと、一緒に見た奥さんはマタが女の子だったことに最初に気付いたみたいです。さすが・・。 [映画館(邦画)] 7点(2008-04-19 23:26:46)(良:1票) |
9. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ歌うケツだけ爆弾!
《ネタバレ》 ロケットの中で、「シロ君ありがとう」というリボンと一緒に開かない缶詰が置いてあるのを見て、宇宙に飛ばされるというよりも「地球から追い出される」悲劇を感じました。あー、シロ君かわいそうだよ(涙)。でも野原ひろしがきっちり蹴りをつけてくれました。あと、宇宙人がさり気なく謝りに来てくれたので良かったです。ムトウ・ユージ監督は話の流れはイマイチだが、こういう配慮をしてくれるのがいい。 [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2008-02-09 01:02:29) |
10. クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ踊れ!アミーゴ
《ネタバレ》 ある時点までは完璧だった。そう、こんにゃく人間が水中からガオーと出てきて、機械に入って、ちびっ子三人組に変身する場面までは・・・。だが、その後笛が鳴った瞬間から狂い始めた。原監督作品になかった「恐怖」と「侵略」という2つのセオリーは、クレヨンしんちゃんみたいな普通の住宅街を舞台にしたガキ物語において、最強のスリルと興奮を僕に与えてくれた。そしてそんな作品は、『押し入れの冒険』という絵本以来、すべての媒体において数作品しか僕は出会ってこなかった(パラサイトとか無駄にグロテスクなのはあったけど)。そして今回、僕は久々に懐かしささえ感じる恐怖と興奮に再会できたのだ。しかし、あの笛がなった瞬間、何かがガラガラと崩れ落ちた。べたでもどこかでみたような結末でもいいし、教育的でも高尚である必要もない。でも、笛が鳴った後の展開は恐怖と興奮の後に一抹の何かが残るようなものであってほしかった。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2008-01-21 00:34:34) |
11. クレヨンしんちゃん オタケベ!カスカベ野生王国
《ネタバレ》 とりあえず、オトナ帝国や戦国大合戦みたいな感動作やヘンダーランドやヤキニクロードみたいな冒険作品を期待すると馬鹿を見ます。環境をテーマにした「ドラえもん雲の王国」に対するアンチテーゼを期待しても馬鹿を見ます。あと、どう考えても四膳守より味方サイドのビクトリアの方が人を殺しまくっています。あと、ビクトリアと四膳守の登場の仕方、車で逃げて捕まって悪党の基地に連行されてという流れは、もはやアミーゴスズキの出てくるあれと全く同じです。最後に映画版ならではの野原ひろしのかっこいいシーンを期待する方は、ニワトリひろしがコケコッコーと鳴いている姿に怒り心頭するはずです。映画として冒険することを忘れた作品やシリーズなんて未練はないが東武50000系に1点。 [映画館(邦画)] 1点(2009-04-20 23:06:33) |