1. 空中庭園
《ネタバレ》 終始一貫して不穏な空気が流れていますが、結局のところ何も起きません。要は些細なサイコサスペンスということで。しかしつまらないわけでもなく、世の中の一部を切り取ってデフォルメした感じ。「思い込み」というフレーズは陳腐に思いましたが、「学芸会」はなかなか秀逸。家庭もそうですが、職場やその他の人間関係も、お互いにわかっていながら白々しく〝演技〟している部分が少なからずあるんじゃないかと。おかげで世の中は円滑に回っているわけで、そう思うとけっこう捨てたもんじゃないなという気がしてきます。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2024-06-23 23:46:04) |
2. グレイテスト・ショーマン
《ネタバレ》 とにもかくにも音楽がいい。疲れた心を鼓舞されるような力強さがあります。世間一般にたいていの人はマジョリティのように振る舞っていますが、実は誰しも何らかのマイノリティであるという自覚や自負や負い目を持っているように思います。だからこの作品で展開される〝ショー〟を見て、つい応援したくなるのかなと。 一方、主人公がかならずしも聖人君子ではないところが面白い。純粋にマイノリティに活躍の場を提供しようと思ったわけではなく、それが世間に受ける、カネ儲けができるという冷徹な計算があるわけで。美貌の歌姫でさえ単なるカネズルであり、一線を超えそうになったところで逃げるというのも潔い。まさに天賦の興行師だったということでしょう。 ただし、そういう特異なキャラクターでありながら、人物の描き方としては浅いのが残念。音楽とステージに力を入れすぎたためか、最後は唐突に聖人君子になってしまいました。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-02-27 23:50:18) |
3. クイック&デッド
カウボーイスタイルのシャロン・ストーンが魅力的。こんなに美人だったのかと思うほど。しかし中盤、妙にドレスアップしてジーン・ハックマンと向き合う場面では、どこにでもいそうな女優に見えます。まあガテン系の女性はそれだけでかっこよく映えるということで。 一方、憎まれ役のジーン・ハックマンもいい感じ。とんでもない人非人の役どころながら、案外そうは見えません。人柄がにじみ出るというか、あらためて貴重な役者さんだったと思います。 ストーリーは荒唐無稽で結末も最初から見えています。あまりに非生産的というか、リスクとリターンのバランスが完全に崩れたゲームを展開するわけで、参加者には「アタマ悪すぎるだろ」という感想しかありません。問題はラッセル・クロウとディカプリオをどう処理するか。まあ落ち着くべきころに落ち着いたという感じでしょうか。劇画でも見るような感覚で、そこそこ楽しませてもらいました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-02-17 21:09:30) |
4. クライ・マッチョ
イーストウッド監督・主演でなければ、おそらく石を投げられるような作品。いわゆるロードムービーの部類なんでしょうが、とにかくドラマがなさすぎるというか、ハラハラとかワクワクとかさせてくれる部分がほぼ皆無。プチ出来事をフワッとくぐり抜けて一件落着という感じ。まあ老イーストウッドのイメージビデオのようなものということで。 ただし、感情を制御できなくなるその辺の老人よりはずっとマシ。この作品から流れる終始温厚な雰囲気は、老いてもかくありたいという理想像のような気がします。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-10-28 03:56:56)(良:1票) |
5. グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~
じゃあどうすればよかったのかと問われると困りますが、もし太宰治がこの作品を最後まで書き上げたとしたら、絶対こうはしなかっただろうなとは思います。原作を離れた中盤以降、やたら派手で安っぽい話になって唖然とするばかり。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2023-09-05 01:48:39) |
6. グッバイ、レーニン!
これって要するに「ライフ・イズ・ビューティフル」のモロパクリじゃないですかねぇ。歴史的な出来事を背景に、父親→息子を息子→母親に置き換え、現実を無理やり捻じ曲げて伝えることで笑いを生もうと。プラス、家族や近隣住民など登場人物を適当に増やしてデコレーションして一丁上がりという感じ。 結局、コメディというわりには大して笑えないし、人を騙し続ける緊張感もないし、特に盛り上がる場面もなし。急に西側文化が入ってきて大混乱したはずの東側の描き方も、今ひとつ。なんかダラダラと時間だけ経過した感じです。 ただし唯一笑ったのは、巨大なレーニン像の上半分をわざわざヘリで運ぶシーン。そんなアホなと。 [インターネット(字幕)] 4点(2023-03-29 23:25:27) |
7. クーリエ 最高機密の運び屋
《ネタバレ》 傑作でした。最初は軽い感じで始まりながら、徐々に静かな緊張感が高まって、逃亡のシーンだけ急にアクションが激しくなり、そこから先は落胆と憔悴の日々で、しかし最後に一瞬だけ光が差して終わる。まさにバレエを見ているように(あまり見たことはないが)、いろいろな場面を堪能させてもらいました。ペンコフスキーって本当に立派な人だったんですねえ。今のロシアにもいればいいのに。 そういえば少し前にスピルバーグ監督・トム・ハンクス主演で「ブリッジ・オブ・スパイ」という映画がありまして、時代的にはまったく一緒、主人公の状況もよく似ていました。同一人物かとも思ったのですが、違うようです。個人的には「ブリッジ~」より「クーリエ」のほうがずっと上です。 と思っていたら、ペンコフスキー役の彼は「ブリッジ~」にも出演していて、スパイを拷問にかける尋問官役だったらしい。全然覚えていないけど。どっちの役のほうが楽しいのか、ちょっと聞いてみたい気もします。 [インターネット(字幕)] 9点(2023-02-27 02:14:14) |
8. クロッシング(2009)
たしかに「クロッシング」はしていません。せいぜい袖擦り合う程度。全体として殺伐とした雰囲気はいいのですが、3つの話それぞれに深みがないというか。1+1+1で3になるというより、1×1×1で1のままという感じ。「ブルックリンの警官はそれぞれに悩みながらがんばってますよ」というのが唯一のメッセージでしょうか。あまり見たことのない、枯れすすきのような悲哀を感じさせるリチャード・ギアだけ、ちょっと面白かったかな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-11-05 23:17:37) |
9. クローバーフィールド/HAKAISHA
《ネタバレ》 アイデアがお見事。要するに荒唐無稽なパニック映画なわけですが、視点を登場人物の1人に委ねることで、こうも迫真の映像になるのかと。必然的に見ている側は彼らと同じ目線、同じ情報しか与えられず、パニックを追体験させられます。怪獣の由来も、その後の顛末も明らかにされませんが、かえって潔い感じ。そういう設定上、常識的にあり得ない行動もありましたが、そのあたりはご愛嬌ということで。 ただし映像のブレは目に悪そう。こういう作品が増えてもらっては困る気もします。 [インターネット(字幕)] 8点(2022-10-11 01:30:48) |
10. クリスティーン
《ネタバレ》 ポンコツになっても自動的に新車として蘇生するってのがすごい。生命体であることのメタファーなのでしょうが、生命体であればなおさら絶命は必然のはずで、機械のほうがむしろ油さえ差せば半永久的な稼働が可能なはずで、その人間と機械のいいとこ取りのようなキャラ設定に最後まで馴染めず。せめて、なぜ世の中への恨みつらみを募らせるようなクルマになってしまったのか、また女性になってしまったのか、その生い立ちや素性を知りたかったかなと。 主人公氏のキャラ変も凄まじいですが、聡明なヒロインとどういう経緯でつき合えたかは描かれず。どうにも腑に落ちません。最後もあっさり退場させるのではなく、〝その後〟の人生を見てみたかった気がします。 それからあの不良グループの面々、高校生というよりオッサンにしか見えないんだが。「この作品は全部ジョークだよ」というメタファーなのかな。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-08-10 01:50:40) |
11. グレートウォール(2016)
チャン・イーモウというより、ジョン・ウーな感じ。こういう徹底的に商業主義に徹した映画も作れるんですね。もうストーリーとかはどうでもよくて、奇抜な兵器や輸送手段や迫力だけの戦闘シーンがいろいろ楽しませてくれます。しかし必要十分にデジャブなのは、数々のゾンビ映画と大差がないからでしょう。 マット・デイモンは八面六臂の活躍ぶりでしたが、せっかく思わせぶりに登場したウィレム・デフォーにも、もう少し見せ場を作ってもらいたかったかなと。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-02-20 02:20:43) |
12. 暗くなるまで待って
タイトルとヘップバーンのイメージから、ごくごく薄味のエロを含んだコメディかなと思っていました。こんな緊迫の傑作サスペンスだったと知って驚きです。 ほとんど密室劇で舞台が変わらないのに、次々と話を展開して退屈させないところがすごい。それに、冷蔵庫とか、洗濯機とか、ライトとか、タオルとか、電話とか、ブラインドとか、日常にありふれたものが非日常の犯罪や自己防衛の道具として使われることで、恐怖感がいっそう身近に感じられました。もうお見事としか言いようがありません。 ただし、盲目の女性を大の男3人で寄ってたかって騙し続けるという構図は、フィクションとはいえ気分のいいものではありません。要するにオレオレ詐欺に近いですよね。こんなことを言っては身もフタもありませんが。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-09-07 02:31:11) |
13. グリーンブック
《ネタバレ》 「粗にして野だが卑にあらず」的な主人公が魅力的。対象的に孤独なエリートとして描かれた〝ドクター〟との絡みも、硬軟織り交ぜていい感じ。特に最終盤、演奏キャンセルから帰路、そしてラストの奥さんのセリフに至るまでの展開は、けっこうグッと来ます。 しかし、残念に思う点もいくつか。まず先々で起きるトラブルがいずれも紋切り型というか、黒人差別を扱った映画で何度か見たことのあるシーンの焼き直し感が否めません。どこまで実話ベースなのかはわかりませんが、無理やり創作感が漂います。あるいは実話ベースであるがゆえに、あまりぶっ飛んだエピソードを創作できなかったのかもしれません。 そしてもう1つ、そもそもなぜニューヨークで成功しているピアニストが、わざわざ偏見の坩堝である南部を回ろうと思ったのか。そして回った結果、何か得たものはあったのか。バンドメンバーの口からサラッとは語られましたが、本人は一言も言及しませんでした。この部分を少しスッキリさせてほしかったかなと。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-07-12 02:29:55) |
14. グリーン・デスティニー
人間というのは、ぶら下げるとどんなアクションが可能になるのか。その見本市のような作品でした。特に終盤、白昼に竹藪の〝上〟で剣を交えるシーンはなかなか見事。私の脳内では、「君と出会った奇跡が~」という有名な曲の一節が何度もリフレインされるばかり。いや見事見事。 [CS・衛星(吹替)] 2点(2020-10-29 02:22:35) |
15. グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版
リュック・ベッソンって、息もつかせぬハイテンポな映画の名手だと思っていたのですが、この作品はずいぶん印象が違います。まるで意図的かのようにダラダラ長く、散漫な感じ。ジャン・レノのキャラクターは面白いし、ヒロインの言動にはけっこうグッと来るんですけどね。 要するに、人間として生まれてくるべきではなかった男を愛してしまった、ごくふつうの都会の女性の悲劇、といったところでしょうか。封切り当時は大ヒットしたらしいですが、どのへんがいいのかよくわかりません。 あと、ヨーロッパの海にはイルカしか棲息していないなんて驚きです。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2020-09-21 15:41:26) |
16. グラン・プリ(1966)
《ネタバレ》 ストーリー的にはさほど重要とは思えないレースシーンを大幅カットすれば、2時間程度で終わるふつうの作品になっていたかもしれません。しかしムダなレースシーンがふんだんに盛り込まれていることが、この作品の価値を高めている気がします。当方は別にクルマ好きでもF1のファンでもありませんが、いわゆるオンボードカメラの映像は迫力十分。おそらく今より安全対策は二の次だったと思うので、なおさら恐怖感がリアルに伝わってきます。ちょうど花やしきのジェットコースターに乗っているような。 それにストーリーも明快。4者4様の物語が、なかなか興味をそそります。文字どおり命がけで勝負に挑むドライバーにも、それを見守る奥さん(愛人)にも、敬意を抱かずにはいられません。もっさりした部分もありましたが、そこはご愛嬌ということで。 意外だったのはミフネの扱い。欧米映画によくあるように、悪く言えば噛ませ犬的な役回りかと思っていたのですが、最後に大輪を咲かせてくれました。F1界に彗星のように現れた「世界のホンダ」を無視できなかったということでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-07-14 02:10:52) |
17. クリミナル 2人の記憶を持つ男
《ネタバレ》 ケヴィン・コスナーが凶悪犯として登場する時点で、いつか善人に変身するんだろうなあと容易に予想できます。仕掛けがバレバレの手品を見ている感じ。一方でゲイリー・オールドマンの役柄は「誰にでもできる簡単なお仕事」で役不足な感じ。いっそこの両者が入れ替わったほうが、「何が起きるかわからない」という意味で期待できたかもしれません。 とはいえつまらないわけではなく、けっこう楽しめました。医学の発展で可能になるのかどうかは知りませんが、死者の記憶を何らかの形で保存することはあり得る気がします。 しかし残念なのはラスト。ここまで強引なハッピーエンドになるとは予想外でした。善人化にもほどがある。生命倫理上もどうなのか。奥さんも子供もいつか精神を病んでしまうのではと心配になります。 [インターネット(字幕)] 5点(2020-06-07 03:43:32) |
18. グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札
《ネタバレ》 前半は意外にいい感じ。文化も言葉も生活水準もまるで違うところに嫁いだら、たしかに戸惑いと不安の連続だろうと。そこから健気にがんばって、何らかの自分の居場所を見つけていくのかなと勝手に期待していました。 ところが、中盤以降は大きく裏切られます。チマい陰謀物語が始まり、公妃はいつの間にか国家どころか国際社会も操るスーパーファーストレディになってしまいまいした。最後の演説や、その後のプロモーションビデオのような妙な数分間も含めて、ひたすら安っぽいだけです。 で結局、「公妃の切り札」って何のことでしょう? それを言うなら「公妃が切り札」じゃないですかね。「あんたが大将」のノリで。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2019-08-06 01:40:01) |
19. グランド・イリュージョン
あくまでも好みの問題ですが、ラストのオチを知って、ものすごく時間を損した気分になります。物語の土台を壊すようなことをして、何が楽しいんだろうと。同じマジシャンものなら、日本の名作「トリック」(ただしドラマ版)のほうがずっと奥深いんじゃないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2018-06-18 01:07:11) |
20. グレートレース
《ネタバレ》 場面を壮大に展開しながらも、とにかくナンセンスに徹している点はすばらしい。しかしワンパターンなので飽きます。だいたいニューヨークからパリって、フェリーで大西洋を横断するだけじゃないかと思ったのですが、まさかのユーラシア大陸横断ルートだったんですね。それだけでもゲンナリします。しかも復路も走るそうなので、ご苦労様としか言いようがありません。 それと、乱闘シーンや転落シーンはかなり乱暴でした。リアルに怪我人が続出したんじゃないかと心配になります。ただし、音楽だけはA級でした。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-01-06 10:01:36) |