1. この世界の片隅に(2016)
《ネタバレ》 あの時あの人と結婚していれば、繋いだ手が反対だったら、8月6日もう少し早く広島に帰っていれば...。 問題の大きさや深さは比べ物にはならない。 でもそれは現代の日本に生きる自分と何も変わらない、尽きる事のない後悔と良かったの連続。そしてそのどちらとも割り切れない感情。 あの時違う学校に入っていれば、告白していれば、あの会社に就職していれば。 それが「自分で選んだ道の結果=径子」であるか、「流されて辿りついた場所=すず」であるかは分からない。 結果がどうであるにしろ、2017年私は今いる場所で今ある現実を生きていく。 人生に対する普遍的なメッセージもさることながら、それを語る語り口も鋭くスマート。 同一アングルのショットを経時的に映すことで、街並みの変化を捉え、食事の内容や食卓を囲む人々の変化を通して、戦況、社会情勢を語る。 そしてその食事を摂るという行為が、そのままどんな状況であっても「生きる」という強烈なメッセージをも提示している。それは、他の日常生活動作を通じても伝えられる。荷物を持ち上げ運ぶ、歩く、走る、話す、洗濯をする。そして自然である草、木、空、水、虫、鳥。 それら全てが細やかに身体性を伴い実在感を持って描かれる為、生の尊さがより際立つ。 そして主人公すずの魅力。すずにとっての絵を書くという辛い現実を和らげる行為、生きていく術。それは周り(周作や晴美や水原)をも動かし癒していく。それを為す右手は失くしても、頭の中で自由に絵を描いていくその姿はあまりにも強くたくましく、優しかった。 [映画館(邦画)] 10点(2017-01-15 22:45:13)(良:2票) |
2. 小人の饗宴
《ネタバレ》 自分は24時間テレビなどのチャリティー番組を観る事が出来ない。 直向きに何かに挑戦する障害者をどういう気持ちで観ていいか分からないから。 観たらきっと感動するであろう、差別と偏見に満ちた醜い自分を直視したくないから。 この映画では自分より弱い立場の物や動物、人間をひたすらいたぶる小人の姿があった。 心底醜く、不快な存在。視覚的にも、聴覚的にもただただ生理的に不快な描写の数々。 しかし皮肉にもそんな彼らを、偏見も差別もない健常者を観るのと変わらない平等な視点でそれぞれの個の人間として判断している、自分がいることに気づいた。 非難されるであろう、切り込んだテーマと内容を扱った作品を撮った監督には気概を感じた。 [DVD(字幕)] 7点(2017-01-07 04:26:34) |
3. 恋人たち(2015)
《ネタバレ》 問題が解決したわけではない。状況が好転したわけでもない。 世間には相変わらず偏見も差別もあり、不条理な出来事が溢れている。 でもふと顔を上げた時に空が青く綺麗だったり、今まで理解し合えなかった厳しかった人の人間らしさ、優しさを垣間見たり。 誰かの何げない一言が何故か心に響いたり。 食べ物が美味しかったり、心に残る良い映画を観たり。 多くの悪い出来事の中に少しだけある悪くない出来事に心を動かされながら、今日も何とか生きていく。 [DVD(邦画)] 8点(2017-01-04 19:46:00)(良:2票) |
4. ゴーン・ガール
《ネタバレ》 普遍的なものである男女関係、もっといえば他者との関係に深く切り込んだ作品。社会、他者からみられている自分(テレビを通してのエイミー像)とあるがままを出した自分(ニックの前での姿)。たいていの人間は虚像に苦しみ苦悩するものであるが、エイミーはそれすら逆手に取りニックに対するそれと同じように世論を支配し手玉にとってしまう。そのすがすがしいまでの本能をむき出しにした姿、人間の業すら支配下においていしまう様には神々しさすら感じてしまう。それと同時に女性に対する畏怖を抱かずにはいられない。 人間の恐ろしさ、異常さと同時に崇高さをも感じさせる傑作だった。 [DVD(字幕)] 9点(2015-07-13 18:06:32)(良:2票) |
5. 絞殺魔
《ネタバレ》 鏡を見るという行為は鏡の中の自分に見られているという事。この映画では、自分でもまだ気付いていない自分自身に気付かされるという恐怖を鏡という否応なしに現実を突きつける残酷な物の中で表現していた。 またラストの尋問シーンでは、二人の対峙する男の視線を1カットで捉えることで見ることは見られることと同義であるという、考えれば考えるほど恐ろしい事実を感じた。 [DVD(字幕)] 8点(2014-12-28 20:19:40) |
6. コーラス
音痴という理由で楽譜台にされてしまった彼とモンダンの行く末に少し不安が残りました。マチューのような先生は生徒に光を与えるが、他方では影も与えやすい存在。この校長は少し行き過ぎかもしれませんが、ある程度生徒と距離が離れたところにいるような人も必要。だからきっとこんな先生ばかりでもうまくはいかないんでしょうね。 でもいなくてはならない、いて欲しい先生だと思いました。 [DVD(字幕)] 6点(2009-11-07 01:26:32)(良:1票) |
7. コレクター(1965)
意外な終わり方でした。セリフよりも表情で何かを語る映画でした。 [DVD(字幕)] 5点(2009-10-24 00:35:46)(良:1票) |
8. 恋空
《ネタバレ》 毎年、毎年ご丁寧に「12月24日」という字幕を出すところに、この映画のすべてが詰まっているような気がしました。そうでもしないと観客が状況を把握できないんじゃないか、とでも考えていそうな製作陣。そういう所を丁寧にしてるわりに登場人物の心情の変化や行動に対する理由づけがあまりにも唐突で傲慢になっている気がしました。レイプされた後のヒロと美嘉の言動。「赤ちゃんができた」と告白されて、まるで前から知っていたと言わんばかりのヒロの行動や反応の速さ。妊娠を告白された時のお互いの両親の反応。ついさっきまで元気だったのに突然死んでしまうヒロ。殆どの言動が話の展開を進めるためだけの物にしか見えませんでした。二時間ですべて収めるのが難しい内容なのかもしれませんが、それなら話しを端折ったり、前編・後編に分けるなりした方がよかったのでは?と思ってしまいました。ただ、エピソードや表現が原作よりソフトな形でまとめられていて、見やすくなってはいました。 [映画館(邦画)] 2点(2008-01-27 22:49:32) |
9. コラテラル
《ネタバレ》 まず設定が面白いです。殺し屋とタクシードライバー、そんな二人が主役。マックスはホントに巻き添えですね。あそこでヴィンセントを乗せなければ何もなかったわけですから..。シカトしてればよかったのに。話の方はテンポが良かったです。二時間というのもちょうどいい長さですね。退屈と感じませんでした。あっという間に、ラストでのトム・クルーズのターミネーターへの変身。「首打たれてすぐ立ち上がるって...」と思ってる間に、ラストシーン。静かに終わっていく感じは好感が持てました。伏線もいい感じでいきてましたし。 [DVD(字幕)] 6点(2007-03-07 18:18:15) |