1. この世界の片隅に(2016)
《ネタバレ》 日本人なら皆知ってる1945年の8月6日と8月9日、そして8月15日。 変な視点かもしれませんが、そこに生きる人々は、環境が違い、環境からくる行動が違い、環境からくる感情が違い、表現の仕方が違う。それでも根っこにあるものは今生きる人と変わらない。そんな印象を受けました。 本作のすずさんの日常的な感覚が当時の日常を生きた人の感覚と捉えれば、今の日常を生きる人の感覚と比べて何ら違いは無い。自分の信じた選択をしてガンガン前へ向かっていく人もいれば、ぼや~っとしてて周囲に流されるままの人もいる。頭ではゴチャゴチャ考えながらも、結局周囲に流されるままの人もいる。昔本当は好きだった人がいても、結局その想いは心に残したまま、全然別の人と結婚する。毎日毎日同じ作業の繰り返し。その中で自分とは折り合いがつかない人もいる。 歳と経験につれて死は日常になりつつも、自分の家族の死にはやはり涙する。 自分の選択を後悔する。しかし後悔しても何も変わらないという事にも気づく。 死んだ人が自分の息子だとは気づかなかった。遠くで突然光った光は「ん?何?」程度に思う。玉音放送に怒りを覚える。 なんというか、すごい「日常的なリアルな感覚」が詰まっていて、当時の人は現代の自分とは違う、と心のどこかで思っていた自分が凄く恥ずかしくなりましたね。違うわけないのに。 日本の戦争映画というジャンルにはまるで詳しくありませんが、見て良かった。 今は日曜日。自分はどうせきっと2日後にはそんな感覚も忘れて仕事してる。自分の日常に埋没する。でも、この映画を見るという選択をした自分を、少なくとも今この瞬間は褒めてやりたいね。 [地上波(邦画)] 9点(2019-08-04 18:48:11) |
2. GODZILLA 星を喰う者
《ネタバレ》 面白かった。他のゴジラ作品の知識、いわゆる「思い出補正」が一切無かったのが逆に良かったのかも。 本作は「観る小説」と「現代宇宙ものSF」の融合体。派手なバトルアクションがメインに据えられた映画ではない。故に、派手な破壊シーンや戦闘シーン、映像的な動きやシンプルなストーリーを求めて観ると後悔するかも。ゴジラやギドラはあくまでも象徴や概念として描かれ、個体としての強さを主張するようには作られていない。本作の面白さは会話劇とそのテーマ自体にあり、それらが向かない、あるいは何言ってるか理解できない場合は置いてきぼりをくらう可能性が高い。作品のあり方としては、アクション映画よりもむしろ「2001年宇宙の旅」や「インターステラー」に近い。大分類はそちら側で、方向性として「人類とは」「人類の進化の帰結とは」「人類の本質とは」「仮に帰結が○○だとしたらどうするか」といったベクトルに振った印象。 ▸ゴジラ:人類が進化・発展していく上で必然的に生まれる存在であり、人類の上位種。 ▸エクシフ:超長期の宇宙漂流、超高度な演算能力、および高次元体であるギドラ(エクシフのいう神)に接触することに成功した種族であり、人類が発展しゴジラが出現したさらにその後の論理的・必然的結末(滅び)を知るものであり、それがわかっているんだから「せめて幸福な死を」と考える種族。 ▸メトフィエス:滅ぼされたエクシフの星の生き残りであり、ギドラが星を食うまでの事務員、窓口として星に干渉するもの。 ▸ギドラ:高次元体の存在であり、時空間を超越していることからおそらく四次元以上の存在であり、当然、三次元に生きる人類やゴジラにとっては干渉不能なもの。 ▸ビルサルド:高度な文明を持ち、感情という要素を廃し論理のみに生き、その科学力を持ってしてより高度な進化を遂げようとするもの。 ▸設定:人類が進化発展する→ゴジラが生まれる→星自体がゴジラと一体化しているレベルになる→高次元体(=神=ギドラ)の事務員であるメトフィエスが高次元体を召喚する条件を満たす→高次元体がおいしく星をいただいてめでたしめでたし 第3部である本作で言えば、要するに「いやうちらは高次元体先輩(神)を知ってるし、演算の結果人類は100%滅ぶことを知ってるんすよ。苦しんでどうこうしようとした結果、結局滅びるってことを知ってるんすよ。だったら無駄に苦しまずに受け入れて、神への供え物としてああ生きてる価値あった~と思って死んでいった方がまだ良くない?」というのがエクシフの主張。それに納得できないのがハルオ。 ここで面白いのが、より未来を知り、人類の結末を知っているエクシフの方が、現代に生きる我々にとってはより精神的な主張をするということ。知識量、科学力の多寡で言えば「エクシフ>ビルサルド>地球人」となるわけだけれども、より知れば知るほど、科学が発展すればするほど「論理的」ではなく「宗教的」になっていくということ。というより、「論理的帰結として最終的に行きつく先は宗教(=どうせ滅びる前提での、ささやかな精神的拠り所、ないし幸福)」ということ。宗教といえば「うわぁ・・・ないわぁ・・・」っていうまあ偏見オンリーな感覚しかなかったけど、そいういう見方もあるのかと思わされた。新たな考え方が1つ増えた感じ。もちろんハマりはしない。 ハルオはハルオできっちり主人公らしい役を与えられ、主人公らしい立ち回りをしている。第3部まで騙され続け、全てを知った上での最終シーン。解釈がわかれそうだが、メトフィエスらエクシフが主張するのが要は「自らを供え物として受け入れた上での幸せな死」であるところ、ハルオは最後までその死に方に抗った、という解釈。死んでるのかどうかは描かれてないけども。 設定について、ギドラとは高次元の存在で、三次元に生きる我々からすれば干渉不能な存在。時空間や既存の物理法則に捕らわれない存在。二次元から見た時の三次元と同じ。・・・にもかかわらず、三次元と高次元の連絡役であり事務員(窓口、ビーコン)としてなんで脆弱なメトフィエスを選んだ?と思うし、エクシフがいなければ今宇宙に干渉不能ならなんでエクシフ側はそれを受け入れた?と思うし、そもそも星を喰うことに何か意味あんの?wと思うし、そこらへんの練り込みがあるならば知りたいと思った。 1~3部を見たけれど、ビルサルドの考え方にもエクシフの考え方にも非常に共感できる。だからこそ考えさせられる。だからこそ面白い。 次元という概念についてニワカ程度の知識はあり、他の洋画SF作品が好きであり、かつゴジラ作品への思い出補正が無かった私にとって、非常に面白い作品でした。 [DVD(邦画)] 8点(2019-03-18 04:56:37)(良:1票) |
3. GODZILLA 決戦機動増殖都市
《ネタバレ》 面白い。が、面白いと感じる部分は映像の美麗さと「理屈vs感情」という本作のテーマの2点。単純な対ゴジラの戦闘シーン、圧倒的なゴジラの力の描写、という点ではない。 ビルサルドの言う論理的帰結とエクシフの言う知性・感情・本質。この間に揺れ動くのが主人公ハルオ。この構図は他の映画でもまあよくあるものなんだけれども、やはりそれは永遠のテーマとも言うべきもので、故にそれを上手く描けている作品は私が面白いと思ってしまう作品なのです。 ビルサルドの言う「え、ゴジラが人類の上位互換なら、それを模してさらにその上を行く道を選べば良いじゃない。その個体にしか存在しない肉体だの感情などに捕らわれる意味ってなんかあるの?」という主張は、非常に理解できる。合理的ではあるが、合理的でしかない。人が人たる故に感情が存在し、その葛藤こそ知性であるとエクシフは言う(含みはあるけど)。エクシフの主張は、非常に主観的ではあるが共感はでき、そして傲慢でもある。本作では薄ーく隠し気味に主張される「傲慢」。これこそが現時点で寿命というものが存在する人間の本質であり「感情による理屈」の根源だと思うんだよね。 ・・・と、いったことを考えさせてくれる作品が、私は好みなのです。 作中の進行に視点を当てると、やや雑な点が目立つ。孤立無援かつ母船と連絡が付く状況で独断先行する意味は無く、まずは連絡して状況を完全に伝えるべきだし、相手に索敵されない上に圧倒的なリソースがあるのであれば索敵されない状況を維持しつつ完璧な準備を整えるべきだし、「皆の結束を」という理由のみで3機しかないヴァルチャーのうち1機に乗り込むべきではない(機体性能をフルに活かせる人物を優先するべき)等、おいおい、という点がある。 また、ゴジラはやはり圧倒的な存在感とその火力で人類を圧倒する、という点に魅力があるのも事実で、その描写が本作は薄かったようにも思う。あくまで人間ドラマ、テーマを提示するSFとして観るか否か、そのあたりで評価が分かれそうな本作です。 [DVD(邦画)] 8点(2019-03-13 02:17:34) |
4. コロラド
《ネタバレ》 面白いですね。感情vsシステムという構図は大好物。ただ本作の場合それはあくまで表面で、問題の真の原因は人間の中身そのもの。「戦争によって性格が変えられた」よりもむしろ「戦争はその人の本質を剥き出しにする」の方がしっくりきます。戦争によって皆が皆デヴァローのような殺人に快感を覚えるような人間なるわけはないですからね。むしろデヴァローの場合戦争を言い訳にしてる感さえある。デヴァローとデルは友人であり、戦友であり、恋のライバルでもある・・・その辺の描きと鉱山の所有権を巡る強権力と法vs民衆と感情の構図の絡め方が見事。最後のまとめは結局主要人物が死んで大団円かよってつっこみを入れたいのは山々ですが、なんかもうその辺はパターンですね。過程良ければ全て良し? あと見終わってから気づきましたが、アクションがほとんどなかった。それほど中身にのめり込めたということだし、人間ドラマで魅せるこういう作品こそ西部劇!ということで、全く問題なしですね。 [DVD(字幕)] 8点(2014-07-09 07:26:02) |
5. 荒野の一つ星
本作に登場する賭博師の台詞を一部借りれば、法と社会に追われながらも正義のために戦う男の話。原題「Wanted」の通り、正しいことをしているのに町の裏ボスグループに目を付けられ町を追われ遂にはお尋ね者にまでなってしまうライアン。逆境ながらも証拠を掴み自らの無実と悪党の罪を証明できるか!?・・・というストーリーで、早い話が、ありがち系西部劇です(笑)ただ烙印のくだりは「あ、なるほど」と思ってしまった。現代じゃ通じなさそうですが。 本作は基本的にジュリアーノ・ジェンマ(ライアン)の一人舞台。仲間もヒロインでさえも置き去り感があります。比較的アクションに力が入れられているようで1人vs多数の構図が多いため、ジュリアーノ・ジェンマのカッコ良さを楽しみたい方にはお勧めです。 [DVD(字幕)] 6点(2014-05-28 00:18:28) |
6. 荒野のガンマン
《ネタバレ》 真夜中に観たのがいけなかったか、退屈な感が否めず。言葉少なめな渋い男と拒絶しまくる女・・・こうなるのもむしろ必然?それにしても息子を殺したあんたが言うな!って箇所がチラホラ(笑)てっきり影から見守ってピンチに颯爽と現れ女の気持ちが180度変わって最終的にくっつく、という展開かと思ったらああもゴリゴリいくとは・・・感覚の違いというか、なんか腑に落ちませんね。 [DVD(字幕)] 4点(2014-05-26 04:54:39) |
7. 腰抜け二挺拳銃の息子
《ネタバレ》 まず、ストレスが溜まっていない時に頭カラッポにして観ることをお勧めします。次に、冷静につっこんだら負けです。 続編ですがやってることは前作とほぼ同じ。主人公だけが天然ボケで周りは真面目。挿入歌が多く若干のミュージカル調。ストーリーはあって無いようなもんですが全体がポップなのでそこまで退屈はしない。 あとはコメディ要素が合うか合わないかですが、如何せん今見ると演出が古い!特製ドリンクを飲んでばたんきゅーやバナナの皮踏んで転倒など、日本でいうところの「昭和の香り」というやつでしょうか。ただあれだけボケが散りばめられているとどれかはヒットするもので、私的にはドアと一緒に吹っ飛ぶ主人公と帽子に矢がささりまくってんのに平然と運転を続ける主人公の画にやられました。ちなみに基本的に物理法則を無視しまくっているので大らかな心で見ることが必要です。 あと本作の名優は明らかにトリッガー(馬)でしょう!馬にあんな動きができるのかといった軽快なステップや主人公とのコンビ芸、ベッドに横たわり自らにシーツをかけるシュールさ、そしていざ荒野を駆ければ自動車と並走するかっこ良さ!トリッガー、あんたがナンバーワンです。 [DVD(字幕)] 6点(2014-04-05 15:23:54) |
8. 腰抜け二挺拳銃
《ネタバレ》 く、くだらん(笑)もちろん良い意味で。何も考えず頭カラッポにして見て良い系西部劇でしょう。最初の数分こそシリアスですが、ペインレスが登場してからはコメディ全開。というよりペインレス以外の皆さんは真面目でペインレスのみがふざけている。いや、本人としては真面目にやってるのか・・・w 笑ったのは指輪を神父にはめるとこと馬車を出発させようとして吹っ飛ぶところの2点。ただ吹っ飛ぶところは2回目以降は蛇足な気がしますね~。1回で良かった。それにしてもセルフ引きまわしになるあの画は面白すぎた。 全体的にテンポは良かったのですが、冒頭の歯医者のくだりと最後のインディアンのくだりが若干テンポ殺しだったような気がします。 [DVD(字幕)] 6点(2014-03-10 19:36:50) |
9. コマンチェロ
《ネタバレ》 面白かったです。観る前は「コマンチェロ」とは何ぞや?って感じでしたが、コマンチェロとはコマンチ族と仲良くする(武器を密売する)白人のことで、本作はこのコマンチェロを摘発しようとする警備隊のカッター大尉(ジョン・ウェイン)が主人公の娯楽作品となっています。以下、良かった点を3点。 ①ジョン・ウェインとスチュアート・ホイットマン・・・二人のコンビとキャラが良いですね。観てるうちにだんだん二人が好きになってきます。劇中のさりげないお互いの気遣いや不意打ちで椅子で殴ったにも関わらずケロッとしているゴードを見た時の一瞬のウェインの表情など、なんというか細かいやりとりや仕草が良いです。 ②恋愛描写・・・この作品もお馴染みの初っ端一目惚れパターンですが、その後の描写が通常より奥行きがある。一目惚れした瞬間からお互いの愛は変わらないが、ポールとピラーはどちらも頭が良く冷静であり、それが故自身の気持ちに反した今で言うところの「駆け引き」の態度をとってしまう、という描写。また、それが作品の前面に出すぎずストーリーに調和しているのも良かった。 ③細かい気の効き方・・・少数対大勢力という構図はありがちですが、それに至った理由が成り行きではなく潜入捜査のためという理屈付け、都会で育ったポールに対する「どういう教育を受けたんだ」という台詞、ポールに気を回してさりげなく「こんばんは」と言ってアメランの注意を自分に向けるウェイン等、細かいところが良かった。 [DVD(字幕)] 7点(2014-01-17 03:51:33) |
10. 荒野の決闘
《ネタバレ》 2周目鑑賞。やっぱ素晴らしいですね!邦題が「荒野の決闘」だけにガンマン要素がメインな気がしてしまいますが、実際は全く違う。原題「愛しのクレメンタイン」が示す通り、弟が殺される→証拠探し→決闘という流れの中で描かれる人間ドラマこそがこの作品の見どころなのです!特にアープ・ドク・チワワ・クレメンタインの関係とそれぞれの気持ちの表現が秀逸。「女のプライド」とやらに従ってあっさり引き下がろうとするクレメンタインと命を張ってでもドクへの愛を貫くチワワの対比、クレメンタインに惹かれてはいるが無理にドクから引き剥がそうとしないアープなど・・・ 個人的に一番好きなキャラはドク。ビクター・マチュアが良い味だしてるな~。重い病を患い、半ばヤケ気味に大量の酒を飲み、事あるごとに銃を抜こうとし、死にたいとさえ思うが死ねない。その理由こそドクが助け舟で詠んだ詩の通り、「死後の不安ゆえ」なんでしょうね。ドクも臆病だったと。そしてチワワの死により死後の不安はなくなった(チワワがいるから)と。アープがドクの私事に干渉したようにドクもアープの私事に干渉し、OK牧場の決闘のシーンにつながると。う~ん見事。 [DVD(字幕)] 8点(2013-12-14 23:32:32) |