1. ザ・ガードマン 東京用心棒
昭和40年にさっそうとテレビスタートした「ザ・ガードマン」。シブくシリアスな雰囲気を漂わし、大人向けのドラマとしては子供のクセに生まれて初めてハマった作品です。ひとくちにガードマンといってもピンからキリまであるわけで、ここに登場するのは誰しもイメージする制服姿で警備するというものではなく、むしろ矢面に立ちクライアントの命と財産を死守するスペシャリスト集団といった方が良いかもしれない。しかもこのシリーズの良いところは後々刑事モノ特有に表われるアクションや銃撃戦がウリではなく、スリリングな演出が見どころのサスペンスドラマであること。毎回、宇津井健演じる高倉キャップを軸に、清水隊員(藤巻潤)や荒木隊員(川津祐介)たちが抜群のチームワークを発揮して見事功を収めるわけですが、犯人側にも個性的な面々が登場したりでドラマを大きく盛り上げてくれる。けっこう前置きが長くなりましたが、本作は劇場公開用として作られたもの。テレビ版と違い予算も多めでゴージャス感を醸し出しているのはうれしい限り。しかし本来売りであるはずの、ザ・ガードマンたちと犯人側とを対峙したサスペンスフルな演出を期待していたんですが、大味で平坦なままストーリーが進んでしまう。重要な位置にある、外国人俳優ポール・シューマン演じるネルソンの人物描写も雑でなんかヘン。つまり脚本や監督が毎回入れ替わるので、作品の出来不出来にけっこう差が出るんですよねこのシリーズ。 5点(2004-12-23 14:46:29) |
2. さくや妖怪伝
人並みはずれた能力をもつ若者が妖怪退治の旅に出る。いわゆる鬼退治モノで、手塚治虫の傑作漫画「どろろ」の実写版を彷彿させる雰囲気描写がところどころ見られる。にわか怪談ブームということもあり眼の付けどころは良かったわけなんですが、いかんせん演出にしろ展開にしろお世辞にも上手いとはいえません。監督の腕次第では主人公を演じる少女の演技力のなさを十分カバー出来るはずなんですが、ほとんど無防備状態で露見。それより一番マズいのは、子供向けなのか青少年向け(オタクが喜びそうなシーンもあったゾ)なのか方向性がはっきりしないこと。(監督は子供向けに作ったといっているが…) それがもし子供向けに作られたのなら、演技力うんぬんは本作に於いて大きなマイナスにはならないわけだが。その一方、クライマックスに登場する松坂慶子演じる土蜘蛛の女王がなかなか魅力的に描かれており、また大映作品「妖怪百物語」にオマージュを捧げた善玉の妖怪たちが踊りを披露するシーンなどは心を和ませてくれる。このように部分部分を取り上げると良いシーンがあるだけに、ある意味不完全なまま出されてしまった残念な作品。題材としてはオモシロく、しかもシリーズ化の予定もあったようなので作り手はもっと完成度を高めてから次回作を出すとか、あるいはもう少し力量のある監督(金子修介か平山秀幸あたりか)でぜひとも作り直して欲しい。次回作に期待を込めプラス1点で6点。 6点(2004-12-10 15:27:25) |
3. サルバドル/遥かなる日々
戦争映画の名作である同監督による「プラトーン」は、ベトナム戦争終結後10年余りも経ち何で今さらという感じもしなくはなかった。しかし本作は、サルバドルに米国が軍事介入している真っさ中であり、しかも様々なメッセージを見る者に投げかける真正面から切り込んだ作風となっている。オリバー・ストーン監督のこの心意気、この姿勢を高く評価したい。本作でもやはりオリバー・ストーンらしさが発揮されており、充分過ぎるほどの緊張感を放ちドラマチックに展開させる手腕はさすがだ。またジャーナリスト魂ここにあり、という主人公を好演したジェームズ・ウッズ。機転が利きエネルギッシュで恋多き男というイメージは、どことなくロバート・キャパを彷彿させる。(生前のキャパはこんな感じの人だったのではないだろうか) 緊迫するラスト、余韻たっぷりのエンディングも印象的だった。 8点(2004-09-14 15:37:28)(良:1票) |
4. ザ・デイ・アフター
東西緊張の悪化により核戦争が勃発するわけだが、それまでの経緯がいまひとつ分かりかねる。さらにドラマ主体の映画であるにしても、米本土にソ連から300発?もの核ミサイルが撃ち込まれたというわりには、核爆発のシーンや被爆後の描写は凄惨さに欠ける。(人体がレントゲン写真のようになるシーンもあったゾ) そうか、これはもともとTVムービーだったわけか。限られた予算のせいもあり、これが限界だったのかもしれない。核戦争や核爆発の恐怖はもちろんのこと、放射能汚染のオソロシサとその後の世界を取り上げた姿勢だけは評価したく思います。 7点(2004-06-14 11:20:13) |
5. 座頭市海を渡る
監督池広一夫らしいダイナミックな描写が冴える、シリーズ第14作。勝新演じる座頭市と、斬り捨てた男の妹(安田道代)との切ない恋模様を中心に、静と動のメリハリのある演出で一気に見せてくれる。ところで今作でも、工夫を凝らした迫力ある殺陣が繰り広げられるわけなんですが、実際に弓矢を射ったり真剣を突き刺したりで、役者陣は生キズが絶えなかったのではないだろうか。 7点(2004-02-22 23:12:09) |
6. 座頭市関所破り
監督安田公義の演出によるシリーズ第9作。勝新演じる座頭市と、父親の面影を残す老人(伊井友三郎)との切ないドラマを縦糸に、複数の人間ドラマが丁寧に描かれている。しかもシリアスに展開される中にも、中田ダイマル・ラケットによる座頭市のモノマネ、ひょうきんな用心棒の登場、市を慕う健気な子供達をも絡めたりで見どころの多い作品となっている。このような仕上げ方は大いに好感が持てる。ラスト、除夜の鐘と共に繰り広げられる殺陣は圧巻で、切り捨てた遺体に市がそっと上衣をかぶせるなど切ない余韻を残してくれた。シリーズ中、お気に入りの一本です。 8点(2004-02-18 15:55:58) |
7. 座頭市千両首
監督池広一夫が、このシリーズ初のメガホンを取る第6作。勝新演じる座頭市の、緊張感溢れる居合いや殺陣のシーンはもちろんの事、国定忠司を絡めたりで見せ場の多い展開となっている。城健三朗を凄みある用心棒で再度登場させるなど、作り手のこの作品にかける意気込みも充分に感じさせてくれた。ただ全体的に、暗く陰うつなトーンに包まれており、個人的に苦手なんですよね、こういう作風って。 7点(2004-02-08 15:56:50) |
8. ザ・フライ2/二世誕生
監督がクローネンバーグじゃあないので、たいして期待はしていなかったんだが…。演出、展開、SFXもまずまずの出来で、“蝿男”というB級ネタをB級の域を出ないモンスタームービーに終らせてしまった感じ。蝿男の武器が消化液ってのはエグかった。B級ネタをSFホラーの名作にまで押し上げた、クローネンバーグの偉才振りを実感させてくれた映画でもありました。 5点(2004-01-19 11:50:06) |
9. 座頭市兇状旅
シリーズ第4作。監督は痛快活劇で定評のある田中徳三。勝新演じる座頭市が奉納相撲に飛び入りしたり、ひょいとおどけてみせたりとユーモラスな一面を今作では見せてくれます。物語りはといえば、座頭市を軸にして二つのドラマを絡めながら展開させるなど工夫を凝らしており、居合いのシーンでは徳利を真っ二つにしたりで見どころの多い仕上がりとなっている。本作から座頭市は勧善懲悪、弱者の味方という位置付けが色濃く出てきます。 7点(2004-01-06 17:24:44) |
10. 座頭市逆手斬り
シリーズ第11作となる本作は、芸達者、藤山寛美演じるニセ座頭市がおもしろ過ぎる! ! クライマックスの勝新演じる座頭市と浪人衆との殺陣もまずまず。まぁ今回は、寛美にすっかり場面をさらわれてしまった勝新でした。 7点(2003-12-25 13:25:21) |
11. 座頭市の歌が聞える
シリーズ第13作。本作は勝新演じる座頭市の殺陣のシーンはもちろんのこと、市に憧れる少年や不思議な琵琶法師を絡ませるなど工夫を凝らした作品になっています。とくに宿場の女郎を演じた、小川真由美の見るものに哀れみを誘う演技が絶品。この当時の“身売り”という哀しい時代背景をそこはかとなく漂わせており、しかもお役御免となった武士を夫に持つ妻の悲哀をも見事演じ切っていた。ラスト、人間ドラマに裏打ちされた座頭市と不遇の浪人(天知茂)との殺陣は圧巻で、市の我が身を守る剣の虚しさをもしみじみと感じ取ることが出来た。 8点(2003-12-25 13:24:30) |
12. 座頭市血煙り街道
シリーズ第17作。監督三隅研次と座頭市演じる勝新太郎ががっぷり四つで進む中、朝丘雪路、高田美和、坪内ミキ子など彩りのある豪華キャストがうれしい本作品。ラストに用意された、座頭市と隠密剣士(近衛十四郎)とのお互い一歩も譲らない太刀さばきが圧巻で、そりゃもう鳥肌もの。殺陣と人間ドラマが渾然一体となっており、三隅演出の妙味には舌を巻く。その他にも見所は多く、とりわけ暗闇の中、駕篭(カゴ)が閃光と共に真っ二つに割れるシーンは、初見から30年以上経った今でも鮮明に脳裡に焼き付いています。 8点(2003-12-19 17:05:08)(良:1票) |
13. 座頭市物語
勝新太郎のハマり役、座頭市。以後、シリーズ化される記念すべき第1作。監督の三隅研次を筆頭に、主役を張る勝新太郎、相手役の天知茂等、この作品にかける意気込みが画面からヒシヒシと伝わってくる。三隅研次の描写が冴えるクライマックスの殺陣のシーンはもちろんのこと、ゾクゾクする見せ場をあちらこちらにちりばめており、見応え十分の時代劇に仕上がっている。また本作は、裏社会という掃き溜めの世界でしか生きてゆかざるを得ない、哀しい男どうしの“友情”を描いた人間ドラマとしても秀逸。勝新太郎の圧倒的な存在感、それに対峙するかの様な死期を察知した天知茂の哀感溢れる演技。伊福部昭の荘厳な音楽も貢献度大。《ネタバレ! ! 》ラスト、座頭市に支えられ息絶える平手造酒。剣に生きる者にしてみれば、至福の幕切れだったに違いない。傑作です。 9点(2003-11-23 16:24:40)(良:1票) |
14. ザ・リング
呪いのビデオを見ると一週間後に死ぬという発想自体がバカバカしいので、手段はどうであれコワがらせてくれれば良いわけ。日本版を見た者としては、展開が全く同じだと先が読めてしまい、両作品の違いを確認するだけに終ってしまった。ただ日本版を見ていなければ、監督の演出力とナオミ・ワッツの妙にハマっている演技のせいもあり、けっこうコワがらせてくれるだろう。新鮮味のあるコワいシーンといえば、フェリーの船上で突然馬が暴れ出すくだりと、ビデオに映された気味の悪いイメージ映像ぐらいなものかナァ~。 5点(2003-10-05 22:50:00) |
15. サンダーバード(1967)
サンダーバードのテーマ曲が流れるオープニング・シーンからして、子供心に胸がワクワクしたものです。子供向けの人形劇にしてはアイデア、デザイン、設定とも申し分なく、とくに凝りに凝ったミニチュア・ワークと特撮は大人顔負けの出来映え。この映画のラストでは、お気に入りの2号機が活躍しますが、コンテナから毎回どんな救助メカが出てくるのかゾクゾクしたものでした。もちろん、手に汗握る場面もしっかりと用意されており、ゼロ・エックス号の地上激突シーンなんかは、さすが劇場版という感じでした。ところで1960年代といえば、アポロ11号の月面着陸に象徴されるように、人類が科学に対して果てしない夢とロマンを抱いていた古き良き時代でもありましたね。 9点(2003-09-15 23:47:58) |
16. サイン
奇怪な現象が起こる中、家族愛を絡めながらも、一人の牧師(メル・ギブソン)が信仰心を取り戻すまでを描いているのはわかる。ストーリーの展開としては、中盤あたりまで緊迫感溢れる演出でゾクゾクさせてはくれるが、ラストに近づくにつれ陳腐な展開になっていく。あげくの果てには、つまらんモノまで出してしまい凡作以下の幕引きで、ジ・エンド。オイオイ、これじゃ~B級以下の宇宙人侵略ものじゃ~ないか! ! …と、ほとんどの方がこんな感想をお持ちでしょう。ところが、エンディング間際で少年はこう言っている。「(僕は)誰かに助けられたんだね」と。このひと言に、ピ~ンとこなかったであろうか。実は私は、ここにきて“ハッ”と身震いさせられた。最後の最後になって“どんでん返し”に気付いたわけです。《以下ネタバレ》つまり地球人は奇怪な現象と疑心暗鬼にかられ、ハナから宇宙人を侵略者扱いにしてはいないだろうか? …ということです。宇宙人は円盤や姿を人前に現しても、地球人に危害を加えたり攻撃を開始したという事実はないはずだ。ラストで家族の前に現われた宇宙人は、本当に毒ガスを少年に吸引させようとしていたのであろうか? それは地球人側の一方的な思い込みで、瀕死状態の少年を蘇生させる薬だったかも知れない。息を吹き返した少年は「誰かに助けられたんだね」と言っている。この誰かとは、先程の宇宙人だとすると、作品に張りめぐらされた仕掛け(サイン)が一気に解けてしまう。何ともオーソドックスな宇宙人の姿。しかも水に弱いという設定。人体の70%は水で出来ている人間を捕食するという(人間側の思い込み)。あれだけの科学力と跳躍力を持ちながら、無抵抗のまま撲殺されてしまう…等々。これらのバカバカしさはすべて計算済みで、シャマラン監督は裏をかいたヒントを観客に与え続けているとも言えよう。つまり宇宙人は、余程さし迫った事情があり、危険を顧みず地球人に友好と支援を求めに来たとは考えられないであろうか…。こう考えると、この作品の不可解な部分がスルスルと説明できるではないか。シャマラン監督は「未知との遭遇」「E.T.」を世に出したスピルバーグを大変尊敬しているという。もう一度、じっくりと各シーンを思い出してほしい。当の米国はもちろんのこと、キリスト圏に対し皮肉とも警鐘とも受け取れる痛烈なメッセージが込められていることが、きっとわかるはずです。 8点(2003-09-14 20:55:08)(良:6票) |
17. サブウェイ・パニック
この映画、監督の日本人への偏見、蔑視がありありでイヤーな感じのオープニングだった。それが尾を引いてしまい、今一つ楽しめず。しかし、パニックものとしてはユニークなアイデアだし、シナリオもしっかり練り上げられているわで上出来の部類では? それにしても男クサ過ぎる映画でした。 6点(2003-09-07 16:09:00) |
18. 13ゴースト(2001)
ドタバタ調のモンスター・ムービーみたいなもので、しっかりB級(C級?)ホラーしている、って感じ。ところで、内要とは不釣り合いな位にセットの美術が素晴らしい! ! 特撮とCGの見事な調和。全面ガラス張りの迷宮に、アナログ感溢れる機械じかけのギミック。セットの美術のみに…5点。 5点(2003-08-16 13:27:21) |
19. ザ・フライ
B級SFホラー映画の名作「蝿男の恐怖」のリメイク版なんですが、前作以上にエグさ炸裂で見る側に強烈な印象を残した映画でした。ところが、エグいグロいだけには終らせておらず「こんな醜い姿になってもオレを愛してくれるか」という悲劇的なテーマ性をも持ち合わせており、ジーンと胸を打たせてくれた。この当時、エイズ患者とダブらせているとかいないとかで、話題になった記憶もある。悲し過ぎる凄絶なラストは、前作同様に切ない余韻を残してくれた。一見、エグさグロさが“売り”の様な映画なんだが、実は「どこまで人を愛せるか」という奥深いテーマ性が用意されており、見る者をいい意味で裏切ってくれた。こういう手法の映画には許してしまうし、評価を高くもしたくなります。クローネンバーグの代表作のひとつにして、悲しいSFホラー映画の名作です。 9点(2003-06-22 20:12:13)(良:1票) |
20. サイコ(1960)
初見は随分前なんですが、やっぱりメチャクチャ怖かった!! ヒッチコック作品の中では「鳥」と同様に異色作で、ストレートな怖さといえば断然この作品でしょうね。おおよそ犯人像は分かるんですが、まさに“サイコ”という言葉がふさわしい衝撃的なラスト。本当に鳥肌ものでした…。これ以降のホラー、サスペンス物に多大な影響を及ぼしたのは言うまでもなく、カメラワーク、演出の妙、効果音…等々、すごく良いお勉強にもなるしネ。 8点(2003-05-31 13:10:59) |