1. JAWS/ジョーズ
《ネタバレ》 久しぶりに鑑賞。やっぱりスピルバーグは上手い人だなぁ、というのが素直な感想。例えば海中から初めて頭部を現したホオジロザメの巨体を目の当たりにしたロイ・シャイダーが後ずさりしながら「(この船では)小さすぎる」とつぶやくシーンや、反目していたリチャード・ドレイファスとロバート・ショウが樽を3つ打ち込まれたまま潜水するホオジロザメに「信じられない」と口を揃えるシーン。ストーリーの展開に併せて、強調すべきことを印象付ける手法が上手い。だから「ヒト対サメ」という単純構造が説得力を持った大捕り物に変身する。単純なものに変化を付けて面白く見せるという意味では「激突!」もこの類いだ。サメ退治に赴く3人の個性も見事に描き分ける。とりわけ、ロバート・ショウの変人ぶりは輝いている。注目を集めるために黒板を爪で引っ掻く奴(笑)。若くして亡くなったこの名優は「ロシアより愛をこめて」「スティング」、そして本作の3作品で私の映画史に強く刻まれています。 [地上波(吹替)] 9点(2012-01-02 15:55:01)(良:1票) |
2. 新幹線大爆破(1975)
《ネタバレ》 初見は公開後のテレビ放送で、もう30年以上前だと思う。この野暮ったいタイトルを馬鹿にしつつ見始めたらどんどんと引き込まれて行ったことを記憶している。後の「スピード」の設定ってこれのパクリですね。今回、久しぶりに観てとても気になったのが警察の捜査方針。犯人検挙に躍起になって用意した身代金が渡せずに人質を危険にさらす。今、こんなことをやったら袋叩きだけど、当時は今ほど違和感を感じる選択でもなかったと思います。でも宇津井健が毅然とした態度でそのあたりをしっかり指摘していて、救われる気分です。犯人側の描写に垣間見える体制対反体制という図式や、喫茶店の全焼といったストーリーの詰め方に時の流れを感じますが、クライムサスペンスとしては一級品だ思います。 [地上波(邦画)] 8点(2009-02-21 03:19:40)(良:1票) |
3. 幸福の黄色いハンカチ
《ネタバレ》 大量に連なる黄色いハンカチが力強く風に棚引くインパクト。妊娠を報せた時の1枚のハンカチが伏線になり、それが再び掲げられるだろうかとドキドキする視線を仰天する方向へ裏切る素晴らしい演出でした。大声で「あなたと一緒に暮らしたい」と言ってます。 初めて観た時の衝撃的な感動に比べると、再見以降はどうしても「慣れ」が入ってしまうのが残念だけど、それ以外にも見どころが多い作品。苦労人の健さんが、若く未熟な二人に人生の厚みを教えているようなロードムービーで、キャストが見事に嵌っています。特に無様でみっともない武田鉄矢が秀逸です。 その武田鉄矢は映画初出演。以前、テレビのインタビュー番組で披露された逸話が印象に残っています。北海道のロケ中につい羽目を外して飲み過ぎてしまい、顔をむくませて翌日の現場へ行ったら、本編中の説教シーンのように健さんからこっぴどく叱られたらしいです。「それでも役者か!」と。それが、その後の俳優人生の財産になったと仰っていました。 [地上波(邦画)] 7点(2014-02-07 02:02:55) |
4. 仁義なき戦い
有名なシリーズですが、今更ながらの初見。目的を共有している間は仲間でも、ちょっと状況が変わると殺し合う間柄に早変わり。信頼や人情と無縁の世界は気分が悪くなる。菅原文太が清涼剤に見えるから不思議だ。映画としては面白いと思いませんが、そのドキュメントには意義を感じます。奴らは自分たちの欲望に素直で純粋だ。後悔もしない。確か<エイリアン>がそんな形容をされていた(笑)。でも、殺人を除けば企業の出世競争だってたいした違いはないような気がする。派閥政治の世界はさらにこの映画に近い。自分のことしか考えていない奴らが理屈を捏ねたら政治家で、チャカやドスを振り回したらヤクザってことでしょう。我欲に忠実な生き方は清々しい側面もありますが、やっぱりヤクザ屋さんは著しく社会性が欠如していることを解り易く見せてくれます。タイトル(飯干晃一の原作)は健さんや鶴田浩二の任侠映画とのコントラストを意識して付けたのでしょうね。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2012-09-15 02:09:36) |
5. 実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン
《ネタバレ》 テレビシリーズ「ウルトラマン」の中から実相寺昭雄氏が演出したタイトルだけを集めて繋ぎ合わせた映画です。氏の創る絵は作り過ぎという意見があるかもしれないが、映像演出とは何たるかのひとつの回答でもあると思います。ダイナミックな遠近感や思い切った陰影の付け方。特に逆光の使い方が印象的で、光をフィルムに定着させると云う意味ではアニメなどでは出来ない演出の分かりやすい見本です。今作にはシリーズのタイトル順に5体の怪獣が登場します。ガヴァドン、テレスドン、ジャミラ、スカイドン、シーボーズ。回を追うごとに、この監督の個性が強く出ているのが分かります。スカイドンのエピソードは「ウルトラマン」シリーズの中で唯一コメディタッチで描かれているタイトルで、ハヤタ隊員がカレーを食べていたスプーンをビームフラッシュと勘違いして変身しようとするシーンには腹を抱えます。そして、特筆すべきはジャミラとシーボーズ。シリーズのほとんどの怪獣たちはウルトラマンのスペシウム光線にやられますが、ジャミラは水を浴びせられ続け、泥にまみれて苦しみながら息絶える。この切なく哀れな死様には、子供だった自分の心もキュッと絞られたことを覚えています。このタイトルでは、いつも三枚目のイデ隊員が実はナイーブな奴で、疑問を抱えながら怪獣と戦っていたことが明かされます。シーボーズはウルトラマンに殺されなかった唯一の怪獣です(たぶん)。いかつい外骨格のいでたちで膝を抱えて背を丸めるギャップや、まるで駄々っ子のような描写は怪獣に確かな人格を与えていました。この2タイトルの徹底的に怪獣の側に立ったストーリー作りは「ウルトラマン」シリーズに厚みを与えていたと思います。自分はこの監督が大好きですが、こんな映画があるとは最近まで知らなかった。ちょっと得した気分でした。各タイトルだけなら軒並み高評価ですが、1本の映画として観ると、自分の基準ではこの点数。余談ですが、ウルトラシリーズにおける実相寺演出の最高峰は「ウルトラセブン」のメトロン星人のタイトル「狙われた街」だと思います。畳に胡坐をかいて、ちゃぶ台を挟んで宇宙人同士が会話するシーンには形容したがい味わいがあり、それに続く夕映えの戦いには実相寺氏の絵作りの真骨頂が見られます。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2009-12-28 03:49:24)(良:2票) |
6. 修羅雪姫(1973)
《ネタバレ》 控えめな色気が惜しい。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2011-02-28 22:29:59) |
7. 潮騒(1975)
《ネタバレ》 先日「伊豆の踊子」も観たけど、山口百恵は今作の方が可愛かったです。公開当時「その火を飛び越して来い」のシーンが話題になった(というか、プロモーションに有効に使われていた)作品。自分は初見だったけど、想像していたよりも露出してましたね。あの時代の売り出し中のアイドルとしては頑張った方じゃないかな。家長制度や島の慣習が重たい意味をもっていた時代に、個として魅かれ合った百恵&友和が周囲に純愛を認めさせるという内容だけど、今となっては至って平板なストーリー。とって付けたような音楽にマイナス1点。山口百恵以外に見るところは無いかな。三浦友和のふんどしヌードもありました。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2009-02-24 03:31:14) |
8. 真剣勝負
《ネタバレ》 東映5部作の監督・主演コンビを迎えて東宝が製作した吉川英治「武蔵」の番外編。原作では柳生の後で吉岡との再戦の前だから、5部作で云うと3作目と4作目に挟まるエピソードになる。で、なんだか破綻して終わっている印象である。確かに「真剣勝負」なのだろうけど…。 序盤は丁寧に人物を描いていて悪くはなかったが、闘いが始まってからがグダグダ。騙し討ちを仕掛ける梅軒もどうかと思うが、子供を人質にとる武蔵にギョッとする。「子供を人質」ですよ。彼らの闘いは剣技の勝負という枠を超えていて、心理戦と云う見方もあるのだろうけど、スッキリしません。エンディングで「剣は畢竟暴力」「殺人剣は活人剣」と、正反対に近い内容が赤いテロップで立ち上がります。5部作を観終わった時に、武蔵は都合の良い時に自分に言い訳できる言葉をいくつも用意していた人だったと思ったのだけど、本作でその感慨が強まりました。 内田監督、実は武蔵の人物像に好感を持っていなかったのではないでしょうか…。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2014-02-22 00:49:09) |
9. 新・男はつらいよ
《ネタバレ》 とても割り切れないものが残る作品でした。ここまでの3作、寅次郎がしでかす「バカ」は最初から思い込みが激しく破綻することが見えているような「バカ」でした。だから、周囲が迷惑し呆れても、観ている側には寅次郎の純情が伝わって来るし、時間が経てば元の鞘に収まるような「バカ」だったと思います。ハワイ旅行の一件に関して、寅次郎は「バカ」なことを一切していないと思います。普通に叔父夫婦を喜ばせたかっただけです。敢えて言うなら、旅行会社の資金持ち逃げが発覚した時の判断とその後にとらやに戻って隠れるという選択肢が少し「バカ」でしたが、それは寅次郎の「激しい思い込み」で起こったことではありません。小市民的な判断でしょう。そこに泥棒を入れて計画を破綻させるシナリオがとても残酷で、叔父の口からは「悪銭身につかず」とまで言わせてしまう。寅次郎が怒るのは当たり前でしょう。リアルに気の毒な気分になり、笑って観ていられなかったです。栗原小巻との失恋もいつものパターンに近いように見えますが、落ち込んでいる彼女を元気付ける演出や印刷工場の若者の視線から彼女を守る行為はとても常識的で、やはりいつもの「バカ」があまり見当たりません。結果として、失恋した寅次郎に周囲が気を遣い過ぎているように見えました。全体として、寅次郎をただ「笑い者」にしているだけ、という意見です。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2012-05-16 21:10:31) |
10. 十八歳、海へ
学生時代から気になっていた映画を約30年越しに観賞。なぜ気になっていたかというと、平凡パンチかWPBのグラビアに載っていた森下愛子が奇麗だったから。でも、それだけで映画館へ足を運ぶ年齢でもなかった。で、結果から言うと期待はずれ。出演者たちの行動の動機がよく分からない。分からないところが良いんだよ、としたり顔で言われている気もするが、分からないものは面白くない。この種の映画は、何歳の時に見るかによって受け取るものが違うんだろうけど、この作品に関しては自分が若くても共感したと思えない。森下愛子も期待したほどの露出はなし。その方面の目で見るなら「サード」がお勧め。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2009-08-15 04:08:41) |