1. ソー:ラブ&サンダー
《ネタバレ》 なんだか眠たいデキの映画だったわ。 『ソー』って元々MCUの中でも特に絵空事感つよ~いシリーズだったけれど(神様のハナシだしね)、今回はその傾向が相当強くて。この世界とは違うどっか遠くで起きてる出来事って印象で(実際に現実空間を示すような画が殆ど存在してないし)、ソーのキャラがひたすら浮いてる(浮世離れしてる、上滑りしてる)ので鬱陶しさ醸してるし。ほぼ全編そんな彼がメインなので色々山あり谷ありな物語のハズなのだけどどうにも単調に感じてしまって。 冒頭、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々と共闘してる、ハズなのだけれどソーが場を荒らしてるのをただ眺めてる程度の軽い扱いでガッカリな感じだし(マンティスの顔がかなり変わっちゃったのだけど、どうして? 黒目がちな前の方が良かったわ)、せっかくのクリスチャン・ベールの悪役なのに出番少なくて前作のケイト・ブランシェット同様勿体ないとしか言いようのない扱いだし。子供をさらって以降、ソーたちを描くのに忙しくてその間殆ど動いてませんでした、って感じ。冒頭とラストにしかキャラが描かれてないのでナカミがすっぽり抜けてる感じなのよね。 せめてソーとジェーンのラブストーリーに酔わせて貰いたいところだったけれど、そういうキャラじゃなかったわね。ジェーンのマイティ・ソーっぷりは良かったけれど、これにて終了って幕引きしちゃったのが残念。 端役を意外な人たちが演じてたりするのだけど、そういう小ネタというかウケ狙いよりも、もっと本筋を面白くしてくれないかしら?って思ったわ。 良かったのはちょろっとだけどダーシーが出てきたこと。誰?今回ダーシーは出ないとか言ってたの。彼女の麗しい顔が見られて嬉しかったわ。 [映画館(字幕)] 4点(2022-07-08 21:34:00) |
2. ソニック・ザ・ムービー
《ネタバレ》 最初にハッキリ言っちゃうと往年のセガオタクなアタシにコレはヌルいわ。ヌルゲーよ。なんなの?ソニックのあのガキっぽい淋しがり屋のエイリアンって設定は。ソニックっていったらもっと尖っててクールでカッコいいハリネズミでしょ? ってアタシの中のソニックはメガドラの『1』『2』『3』とメガ-CDの『ソニックCD』、サターンは飛び越して(何しろ『ソニック』、サターンじゃ格闘ゲーくらいしか出てない)、ドリキャスの『アドベンチャー』『2』くらいまでなのよね。それ以降の、敵だったハズの京都のヒゲ親父と慣れ合うようになってからのソニックはもうどうでもいいので知らないのよね。って、つまりこのソニックってお子ちゃまに媚びまくり出してからのそっちに寄ってるのかしら? 大体ソニックはスピード命ではあるのだけど、この映画じゃそれ通り越して超高速、DCコミックのフラッシュかマーベルのクイックシルバー状態だわよ。つまりその能力の見せ方自体も何番煎じか、ってカンジよね。 そのクセ、弱いわ。具合悪くなっちゃうソニックって、なんなんでしょ? せめてファンサービスでゲーム版の音楽を流してくれてもいいのに、そこもほんのちょっとだけ。ちなみにアタシが好きなのは『1』のスターライトゾーンの曲ね。あそこ、前の面の水中でさんざん窒息しそうになった後での高速面で一気に解放感、星空の多重スクロールがキモチいいの。ってどうでもいいわね。 全体的にB級、ジム・キャリーもなんだかB級役者みたいに見えて可哀想ねぇ、ってカンジなのよね。 ただ、つまんなくはないの。娯楽映画としてはそれなりよ。コレがソニックでござい、って言われると「はぁああ?」ってカンジではあるのだけど、元気な青いETです、みたいな視点で見れば悪くないわ。安っぽいなりに色々とアクションの形を見せてくれるし。カーチェイスシーンなんか頑張ってます、みたいなカンジよね。大変さが見えちゃうのもどうかとは思うけど。 リングの扱いはもう少しなんとかして欲しかったケド(アレ、機能としては面クリ後のボーナスステージ行きのリングだわね)。もっといっぱい出してハデにばら撒いてよ!みたいな。 ラストに至ってエッグマン誕生、テイルス登場で、ああここからが『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の世界?ってカンジで実は前日譚?みたいな、でもじゃあここから尖ってクールでカッコいいハリネズミになってくれるのかしらねぇ? [映画館(吹替)] 6点(2021-04-08 21:41:05)(良:1票) |
3. 空飛ぶタイヤ
《ネタバレ》 面白いのは面白いんだけど、でも、キャラはみんなステレオタイプってカンジで、あーんまり新しい何かを見てるって感覚は得られなかったわね。 深キョンなんか、この手の「苦境に遭遇して奮闘する旦那を支える、やたら物分かりのいい奥さん」のパターンをそのままなぞっているような感じで、ドラマの足を引っ張らないのはいいけれど、印象に残る個性を発揮できてなくて可哀想、みたいな。あれじゃ都合の良すぎるキャラだわよね。 それから、ディーン・フジオカが流れ全体の中での推移の問題で、かなりニブい、トロいキャラに見えちゃう。彼がもし頭のキレるキャラだったとしたら、さっさと映画が終わっちゃうでしょうけど。 それでも、巨大な組織の悪に立ち向かう人々の物語は見応えがあったわ。 大きな組織、小さな組織、それぞれの中にあって、人として正しいことに向き合い、間違ったことには間違っていると声を上げる、その難しさ、大変さが描かれ、見ているこちらは共感し、身につまされて。 長瀬くん、ずーっと若いお兄ちゃんってイメージがあったけど、こういう役が演じられるような渋みが出てきたんだねぇ。 今の社会に斬り込むような社会派ドラマを期待してしまうと、その娯楽映画っぷりにちょっと肩透かしを食っちゃうかもしれないけど、うまくバランスを取って見やすく出来ている映画だったかな。 サザンの主題歌はなんだかおふざけ気味で映画本編のイメージとちょっと違う感じがしたわ・・・ [映画館(邦画)] 6点(2018-07-25 21:22:00) |
4. ソング・オブ・ザ・シー 海のうた
《ネタバレ》 東京アニメアワードフェスティバル2015で鑑賞。 可愛らしい絵柄で幻想的な世界、とても素晴らしい世界観、なのだけれども演出と脚本が大変にダルい出来。美しいけれど、話としてはちっとも面白くないんです。 さらわれてしまった妹を救いにゆく兄の物語、なのですが、この少年が魅力の薄いキャラで、物語をちっとも引っ張っていってくれません。 妹はとても可愛らしくデザインされていて、海の世界に魅かれてゆく、その幻想的な映像は最高なのですが(『夜明け告げるルーのうた』や『モアナと伝説の海』に先んじていて)、でも、映画の面白さには繋がらない、映画としてはひたすらダルいっていう。 実直に作ればきっと伝わる、ってモンでもないんじゃないかなぁ。『ブレンダンとケルズの秘密』のレビューでも書いたように、この監督とは徹底的に波長が合わない訳ですが、この人、作画専門になって、演出や物語は他の人に任せた方がいいんじゃない?って思います。これも30分くらいにまとまっていたらねぇ。 [試写会(字幕)] 5点(2017-08-31 23:15:40) |
5. ゾンビーバー
《ネタバレ》 この映画で面白かったのはオッパイポロリなお色気要員の、本来は最初の犠牲者になるポジションのお姐さんが唯一最後まで健闘するところ。CGとも無縁ならアニマトロニクスなんてレベルのモノでもない安っぽい、でも可愛らしいゾンビーバー。エンドロールでワンコがゾンビーバーと仲良く泳いでるオフショット。それくらいでしょうか。 物語はおバカな若者たちが小屋に立てこもってギャーギャー言って、助けを呼びに出てギャーギャー言って、って、なんのヒネリもなくこのテの映画のパターンをただなぞるだけなので退屈。短尺ながらネタとして見るのもちょっとシンドいかな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-03-02 22:17:50) |
6. ソロモンの偽証 後篇・裁判
《ネタバレ》 結局、前後編に分けた意味は(商売上の理由以外には)感じられなかったなぁ、と。分けた事で生じた弊害ばかりが目立つ状態で。 2時間半近くに及ぶ後篇、だけど間延びして密度が無くダラけた印象。表情をアップで捉え「泣くまで待とうホトトギス」とばかりに観客を巻き込んでその時を待つみたいな、そんなショットが何度も何度も。 前作のホラータッチは今回登場しません。つまり、前篇でバケモノのように描いた生徒を今回はドラマティックに描く事で、そのギャップで感動させようという安い手。だけどそれも流れがあって初めて有効になる訳で、前後篇で分断されてしまっていては、雰囲気が違うという印象を与えるばかりで無効です。 柏木が死の当日に受けた電話、ああいうのは前篇から描いておくべきだと思います。一本の作品の流れの中でならば位置として正しいとしても、二本に分けた後篇で唐突に出てきてそれが話の主軸になるというのではミステリーとしてフェアではありません。 中学生、そして親たちそれぞれが抱えた痛みや罪の意識、それを役者さん達は上手く表現していたと思います。でも、他人を批判しながら自らはあくまで傍観者を気取り、常に自分を外側に置く、ネット上に沢山いる中二病の代表のような柏木は、あくまで魂を与えられていないんですよね。そこに罪の意識を抱く他のキャラと明確に線を引く事でテーマを強調している訳ですが、それが結局は人間ではなく化け物となっていた柏木という存在のせいで生まれた悲劇のように見えてしまって。それではいけない筈ですよね?【追記:思ったんですが、最初から柏木を象徴的に描いていればそれは回避できたのかもしれません。柏木のビジュアルは死体のみで、あとは会話だけに登場する形にして】 これだけの尺を費やしながら、各人の心の流れが散漫に感じられたのは、エピソードが整理されていなかったため、そして前後編に分けてイメージが分断されたためではないかと思います。前後編ひとまとめに見せるイベントならともかく、観客が間にどれだけ他のものに触れるのか、その点について考慮されていない印象が強い映画ではありました。 [映画館(邦画)] 5点(2015-04-12 22:12:57)(良:1票) |
7. ソロモンの偽証 前篇・事件
《ネタバレ》 んー、これ、一本にできませんでしたか~? 前篇って、本当に前側部分だけ。起承転結の起承部分だけ。なので何も解決せず、とっ散らかったまんま終了。一本の映画として語れるモノになってません。とにかく後篇を見ないと話にならない状態で、このサイトの禁止事項「途中で寝た」ってのとあんまり変わんないレベル。コレだけにフルプライス払うのはどうなんだろう?と。まあ、試写でタダ見しておいてアレですが。 まず、なかなか気持ちが乗ってゆかないんですよね。中学生達にしろ大人達にしろ存在が自然とは程遠くて作られたキャラという印象で。正直、かなりヘンなキャラいっぱい。森田芳光監督の『模倣犯』も同じような印象を抱きましたが、宮部みゆき作品って大体こんな? それに、演出にホラーっぽい箇所が結構あって、中学生をバケモノみたいに描いていたりして、そういう描き方は違うんじゃない?と思うのですが、それは後篇のための何らかの意味ある表現だって事なんでしょうかねぇ。これ一作でそれを判断できるレベルにないって時点で一本の映画として満足のいく状態に到達できていないわけですが。 役者さん達はいいです。特に生徒役のコ達は個性的で。ただ前記の通り、ヘンな味付けがされている役が多いために、勿体ないなぁ、って感じがして。妙なテンションやホラー演技が過剰に加味される事でこことは違うどこかの人々を見ているような感覚になります。 学校や警察、マスコミに不信感を抱き、傷ついた中学生達が自分を納得させるために裁判で真実を追求しようとするあたりから映画はやっと面白味を見せ始めますが、そう、『後篇・裁判』とあるようにここからが本題というところで終わりますね。 どうも狙いどころがハッキリとしない、思わせぶりなばかりの2時間、後篇が前提となり過ぎていて、単純にシナリオを真ん中で切っただけなんじゃ?みたいな印象を持ちました。続編で「なるほど!」と膝を打つ事になればいいのですが。 [試写会(邦画)] 5点(2015-02-24 00:23:09)(良:1票) |
8. それでも夜は明ける
《ネタバレ》 意外にも感動とか無しで。 「なんかいじめられる人にも原因があるのです、みたいな事を描いてないか?いや、そう思わせてしまうくらいに迫害が酷かったって事か」とか「どうしてそこまであからさまな悪人になれたのかな、あそこまで悪人だとなんか実感薄いわ」とか「アメリカ人ひでー、でも日本人は別だって訳じゃないよね」とか「アメリカ人はこの惨たらしい歴史を抱えながら今という現実を一体どう生きてるんだろう?やっぱり無かった事にしたいかな?」とか「ネットで酷い差別発言をしているような人間がこの映画をもっともらしく語っちゃったりするんだろうか?そういう人は自己のダブルスタンダードっぷりをいかに消化できるんだろうか?」とか、見ている間に考えた事はいっぱい。だけど感じた事は特になくて。 「考えるんじゃない、感じろ」とリー師匠はおっしゃっておられましたが、真逆ですね。 作品の空気としては『シンドラーのリスト』とか『プラトーン』とかを連想させるんですが、ああいう「見ろ!感じろ!」ってゴリゴリとオシてくる感じはあまり無くて。ゆえにドラマチックな感動の涙!とかいうのもなくて、見終わってワリと肩透かしな感じがしたのが正直なところで。 アカデミー作品賞は「アメリカ映画はこうやって陰惨であまりに愚かな歴史からちゃんと目を逸らさずに向き合う事ができる健全さを持っているんですよ」ってアピールするため?とかちょっと意地悪く勘繰っちゃったりして。 でも、日本でこういうの作ったら大騒ぎする人達がいっぱいいるよね、むしろ今の時代、絶対この国じゃ作るの無理だよね、って考えたらアメリカ映画はまだマシなのかなぁ。 [映画館(字幕)] 6点(2014-03-07 20:29:31) |
9. そして父になる
《ネタバレ》 つまりは福山にしろリリーにしろ「一体子供とどこが違うのか?」という存在なのです。 子供と共に遊び、はしゃぎ、妻から他の子供と同様の存在として扱われるリリーは明らかに子供っぽい人間なわけですが、福山にしても物事を自分の思いのままにコントロールできなければならないと決めつけ、スタイルばかりに囚われて実を見ようとはしない未成熟な人間なわけで、正反対のように見えながら実のところ同類の二人なわけです。 そして、取り違えという難題を通して親としての(法的ではなく人間としての)責任を求められた時に、何が「親の条件」を満たすのかに苦悩し苦闘し、「そして父になる」と。 象徴的に頻繁に登場するのは乗り物とオモチャ。乗り物は家と家族の向かう世界を示し(福山不在の電車の中で子供に向かって「二人だけで遠くに行っちゃおうか」ってつぶやく母が印象的です)、オモチャは親と子の絆を示しているように思えます。 紆余曲折の末、自分の中での結論ではなく子供という名の他者の存在を認める事で父の役割を認識してゆく、それは親の成長の物語。盛り上がりに感動したり意外な展開に衝撃を受けたりとかいう感じではなくて、淡々とした語り口からその過程を共有して納得してゆくって感じの映画でした。 個人的にはその客観的で冷静に状況を見つめるようなタッチゆえ是枝監督作品としては『空気人形』や『奇跡』ほどに愛着を持てる映画ではありませんでしたが。 [映画館(邦画)] 7点(2013-09-27 21:06:59)(良:2票) |
10. その夜の侍
《ネタバレ》 この映画の影の主役。 中から包丁が突き出す事によって異常な事態を示すもの、中身が飛び出しひき逃げ犯の車に轢かれるもの、アパートに居座る男に毎日怯えながら届けられる弁当が入ったもの、繰り広げられる殺人未遂行為を前にもう用が無くなったのにトモロヲの手の中にすがるようにずっとあるもの、妹を失った男がその命を奪った男の仲間に投げつけるもの、家にプリンを運んでくるもの。 スーパーやコンビニのビニールの手提げ袋。 日常がビニールの手提げ袋に象徴され、その扱いが登場人物達の壊れやすい日常とそれに必死にすがらなければならない悲しい姿を表しているように思いました。 だけど、それゆえにちょっと上から目線で人間を俯瞰しているような映画に思え、冷たい映画だな、って印象を持ったのも事実で。 交通整理のバイトをしていた谷村美月が山田孝之の判りやすい脅しに乗ってゆく、それを制止しようとするトモロヲをコミカルに描く、あの一連の流れなどから感じるのは人のどうしようもない愚かしさ。 どうしようもないクズとして描かれる山田と執拗に復讐への道を歩む堺、必死に事を収めようと奮闘する義弟、クズから離れられない人々。 それぞれがビニールの手提げ袋みたいに脆弱でペラペラな日常にすがる弱い人々のように思え、なんでこの映画はこんなに偉そうなんだろうねぇ、とちょっと反感を抱いて映画を見終わったのでした。 それはそれで正しい反応なのかもしれませんが、決して好きにはなれませんね。 [映画館(邦画)] 6点(2013-06-09 08:28:14) |
11. ソウル・サーファー
《ネタバレ》 なんだか騒がしい映画。もう少し「静かな映画」を見たかったのですが、それはデカい音=いい音だと思っているかのような新宿バルト9の再生環境のせいばかりでは無くて。私としてはベタな感動物語を期待していたんですけど、基本はサーフィン映画なんですよね。音楽ガンガン聴かせてカッコつけた編集でカッコいいサーフィン映像を見せてナンボっていう。で、一方で冒頭から病院に運ばれるまではB級ホラー。若者達の姿を点描して海の中の「何か」を少々引っ張った上で鮫に襲われて、って。ホラー的音楽だけでなく、明らかに『ジョーズ』から手法を引用していて。そしてヒロインがサーフィンをしている部分のアップはデジタル合成+CGI丸出しの、そこだけイメージショットの如き世界になる、と。なんだかバラバラの要素をそのまま繋げた映画って感じ。なのでこの映画の大切な要素の1つ、海に自由を奪われたけれどそれでも海を愛するって部分が他の様々なノイジーな要素にジャマされ続けるという。この映画、ほぼ全編波の音が聴こえているのですが、その波の音をヒロインと海との対話に対して重要なソースとしてあまり使ってないんですよ。何しろその上にガンガンと音楽乗せまくりですから。もう1つの大切な要素、家族愛はそれぞれのキモチや立場を描いていて良かったと思います。アナソフィア・ロブはこれまでの象徴的ヒロイン演技より進んで喜怒哀楽全てをぶつける演技で存在感を示してましたけれど、中盤以降ひたすら映像にデジタル処理が入り続けるという特殊性からか、片腕を失ったゆえのぎこちなさとは別のぎこちなさが生まれてしまっていた気がします。ラストの実在する人々の映像は、実話であった事を映像で実感するがゆえの感動で、映画そのものの感動とは全く違うモノですしね。落ち着いた感動系を期待するよりもアメリカ的なポジティブスポ根映画として見るのが吉って映画でした。 [映画館(字幕)] 5点(2012-06-17 07:59:22)(良:1票) |
12. ソーシャル・ネットワーク
《ネタバレ》 コミュニケーション能力が極端に欠如した人間がコミュニケーションツールを構築するという皮肉、これはネット社会を痛烈に批判した映画なのか?と言うと、そんなに単純なものでもなさそうで。mixiのフレやtwitterのフォロワーとの繋がりにしろ、2chで名無しで人を中傷するお馬鹿さんにしろ、希薄化する関係性に対するネットを介しての自己の存在確認作業っていう意識が働いているように思えるのですね。ほら、ひと昔前、女子高生が友達のまた友達の・・・ってプリクラを沢山集めていたように、それはこの世界で自分って存在が他者と繋がっているという証明を得る事でもたらされる安心、みたいな。でも、そこに重きを置く事でリアルでは更なる希薄化を生み出したり、どんどんと複雑で肥大化したシステムとなり、大量の情報が溢れる事でネットの内側でも結局は繋がりが希薄になっていったり。この映画に登場する人々は極端な味付けをされていると思います。主人公の、他者と視線を合わせない、会話が噛み合わないっぷりったら、もうハナから絶望的な存在としてシンボライズされていたりして。でも、嫌悪感すら抱かせるあの姿は実際のところ、まるで別の次元の人間と言えるのか?って。新米弁護士が語った法廷での証言の中身(誇張85%、残りの15%は嘘)は、そのまま日々ネットで表現される個人にあてはまりそう。そんな今の時代のコミュニケーションのあり方を問うてみせた映画として認識させて頂きました。結局はリアルにしろネットにしろ、コミュニケーションの本質って変わらないんじゃない?って。 [映画館(字幕)] 8点(2011-01-19 16:15:55)(良:3票) |
13. ソルト
《ネタバレ》 見せ場が連なっていて、退屈してしまうようなスキなんて一切ありません。ラストまであっという間に駆け抜ける娯楽性の高い映画。でも、伏線ですよ、って映像は判り易く、何か意味があるのかな?って思える微妙なショットや流れは単に脚本、演出上のアラだったりして、大味な映画ではあります。アンジーが簡単に発見されるような行動を取る事が後々まるで意味を成しませんし(あれでは単に逃げるのが下手なだけ)、逃亡の過程も意外と行き当たりばったり。どっか途中で死んでもおかしくない状態を運で押しきるような感じ。もっとプロとしての余裕があっていいと思いますし、そして、どうせウソっぽいハナシなのだから、もっとアンジーをキレイに、カッコよく撮ればいいのに、と思いました。傷だらけ、血まみれな男勝りな肉弾戦型ヒロイン像でなくて、シャープでクールな女スパイの方が良かったな。正直アンジーには『エイリアン2』のシガニー・ウィーバー、『G.Iジェーン』のデミ・ムーアみたいな「ヒーロー姐さん」の系譜に収まらないで欲しいのよ。 [映画館(字幕)] 6点(2010-08-01 13:59:38)(良:1票) |
14. ゾンビランド
《ネタバレ》 楽しい映画でした。大筋でも細かいネタでもゾンビもののお決まりパターンを踏襲しつつ、全てがあくまでポジティブ。ゾンビとの戦いも、人間同士の諍いも、ひとつひとつキッチリ笑いに変換されてゆきます。ゾンビ映画お馴染みの、悲劇的な展開を逆手に取ったネタに、しっかり見てるこちらまで騙されたりして。いやしかし、ゾンビがウロウロしている中で、姉妹はあのネタを仕込んだの? 練習とかしてたのかなぁ? 他に生存者がいるという前提に立ってた訳だし・・・まあいいや。遊園地ネタなんかは無理矢理です。別になんの必然性もありません。絵的に面白いだろうなぁ、ってノリで作られたようなもんで。でも、それがイイ。ゾンビとキラキラした遊園地のコントラストがステキ。もはや人類お終い、って世界であくまでマイペースを貫く人々の、実はちょっとハートウォーミングなお話し。メチャクチャなキャラ達(このゾンビワールドだからこそ、生きてゆけるような不器用な人々)に、だけどなんだか愛着が湧いてきて、見終わって心がほっこりしてくるゾンビ映画です。いや、マジで。限りなく前向きな、愉快な終末映画ではありました。ちょっとツッコミを入れておくと、彼的には『ガーフィールド』ではなく『チャーリーズ・エンジェル』が正解だと思うのですが。ソニー・ピクチャーズ的に自社作品の名前は出せなかったのかな? [映画館(字幕)] 7点(2010-07-26 16:41:13) |
15. ソフィーの復讐
アイドルとしてのチャン・ツィイーを前面に押し出した韓国コメディで、あれこれとちょっと無理がある感じがなきにしもあらずです。これまで色々と演じてきているチャン・ツィイーが、今更なんでこんなベタベタな韓国コメディ映画の演技をしてるの?って疑問が湧きますし、セリフや設定は中国なのにどう見ても韓国映画っていう状態もヘンです(もっとも『僕の彼女はサイボーグ』も全員日本人キャストなのにどう見ても韓国映画でしたけど)。だけど、スピード感溢れる笑いを繰り出す感じとか、美術や視覚効果にお金をかけた作りは韓国ラブコメディのいいところがきちんと出ていて、そしてなんと言ってもちゃんとチャン・ツィイーが可愛く見えるところがいい、と。『初恋のきた道』以来の可愛いチャン・ツィイー映画って感じです(いや、あの頃の可愛さを期待してしまうと全然違うんですけど・・・)。その分、韓流で大人気の男優さんはあんまりいい扱いをされてなくてワリを食ってる感じがしないでもないですか。ラストの唐突な物語の飛躍はどうなんだろ?って思ったりもしましたが、見ている間はずっと楽しい時間が続く映画でした。そして、見終わった後に何かが残るってワケではないのも韓国コメディらしくて、それはそれでいいんでないかと。 [映画館(字幕)] 7点(2010-06-05 06:29:48)(良:1票) |
16. ソラニン
《ネタバレ》 映画に行くたびに『ソラニン』の予告編見て泣くのもいい加減にしましょう、という感じでしたが、本編見てこれでケリ付けられました。若い頃の将来に対する大きな不安と儚い希望、そんな等身大の物語を繊細なタッチで描いた名作でした。信じれば夢はかなう!みたいな過大に夢を見させる甘ちゃんな映画なのかな?とも思っていたのですが、無限の可能性を信じていたハズが、気が付けば未来への道はどんどん狭いものになっていってしまう、そこで戸惑い悩む姿がマジメに描かれています。普遍的で誰もが共感できる感覚でしょう(何ら根拠のない自信の下に平然と人を傷つけるようなタイプはともかく)。一方で現実感とファンタジーの狭間で描かれたようなタッチはコミック起源であるが故だとしても、サラリサラリと心地良い時間を運んでくれます。いや、むしろコミック起源である多くの邦画がそのタッチをポロポロと取りこぼしてしまっている中、これは美しく映画化できているな、と。彼女、彼らが紡ぎ出す「音」が結局のところ、最後までハッキリと完全なカタチでは聴こえてこないのがどうなの?という感じではあるのですが、その「音」が未完成であるがゆえに逆に見えない未来へと続く道を感じる事ができたかもしれません。青春映画としてとても真っ当な作品でした。 [映画館(邦画)] 9点(2010-04-03 15:30:07)(良:1票) |
17. 宇宙(そら)へ。
《ネタバレ》 映像は有名なものばかり。特にこれと言って目新しい映像があるワケではありません。NASAの映像ばかりなので冷戦時代の宇宙開発の背景などもナレーションでさらっとしか描かれません。宇宙開発初期のドラマに関しては『ライトスタッフ』を見た方がいいカンジ。音楽は過剰でうるさいですし、歴史順に追っているのですが、どんどんと次に進んでゆくので情感もあまりなくて。既に知っている事を再確認するばかりの映画。でも、映画としてではなくて、映像としてつくづく凄いなぁって。それを見て何が凄いって、アメリカ人のイケイケ(死語)なノリ。あのフロンティア精神はアメリカ人独自のものですわ。自力で未知の宇宙に乗り出してゆくなんての、日本人にゃ絶対ムリ。奴ら、マジで不可能を可能にしちまいやがるぜ、って世界で、宇宙開発の是非とか、科学と人類の進歩とか、実は彼らにとってはそーんなに重要ではなくって、とりあえずやっちまおうぜ、ってノリじゃないの?みたいな。奴ら相手にマトモにケンカしたらヤバいってコトをまざまざと思い知らされるような、アメリカ人って生き物のパワーをガンガンと見せつけてくる映画でした。その精神に対しての点数を。歴史順ゆえ、最後にスペースシャトルの2つの悲劇が描かれる事になるのですが、それが映画としてのドラマティックな要素になってしまっているのは、ちょっと皮肉な感じかな。 [映画館(字幕)] 8点(2009-08-24 01:37:29) |
18. そんな彼なら捨てちゃえば?
《ネタバレ》 空席ゼロな六本木のシネコン、その9割以上がお嬢様方なのでは?って凄い状況で見させて頂きましたが(男衆は宣伝文句の「男子禁制」を守ってるの?)、彼女達が映画を見つめる空気の臨場感っていうのがリアルに伝わってきて、なかなか貴重な体験をさせて頂きました。男女の間の「類型的パターン」と「例外」とを描いた映画、オンナは自分こそがその「例外」である事を望むけれど、実はみんな類型的にして普遍的な恋愛のパターンを繰り返すばかりなんじゃ?って物語、席を埋め尽くした女性達の「判る判る」ってタメイキのような共感の笑いのさざ波を、なるほどって感じて学びつつ、男から見てもまた共感するところが色々あって、と。幾つものパターンの中には苦い結末を迎えるものも幾つかあります。でも、その中で甘い甘い「例外」へと至るパターンに酔えてしまえるのは、私も、そしてこの映画を見に集まったお嬢様方もまた同じじゃないかな? でも、類型的に見えても結局はひとりひとり、一組一組違った出会い、違った恋愛、きっとみんなが「例外」。私はもうどん詰まりだけれど、お嬢様方の未来の「例外」1つ1つがステキに花開きますように。 [映画館(字幕)] 7点(2009-08-01 22:27:49)(良:1票) |
19. 卒業(1967)
なんてこったい。映画史に残る名画を見ようとしたつもりが、ただの親子丼映画。アメリカブルジョア団塊バカ息子の軽薄な苦悩なんて、どーでもいいです。超有名なラスト4分間にだけ価値があって、残りは団塊の世代がいつまでもダラダラ青春引きずって懐かしんでればそれでいいんじゃねーの、って程度のモノ。これに関しては今の時代に作られた新しい映画を見た方がマシですなぁ。時間の無駄。 [DVD(字幕)] 2点(2009-04-09 23:32:19)(良:2票) |
20. 早春(1956)
他の小津作品と違って、登場人物ひとりひとりの繋がりが希薄で、それぞれが個として孤立していて、お互いの摩擦の中で生きているような感じがしました。愛で繋がっている、というような夢物語はなくて、打算的なものの中から価値を見出してゆくような、結構厳しい物語。ちょいとした笑いもありますが、ひとつひとつが重たい映画でした。達観した世代、そこに近付きつつある、行く末が見え始めている世代、そしてこれからまだまだ未来が見えない世代、未来が閉ざされてしまった人。先人達や周囲から距離を置きながら学び、あくまで個として自分を見つめてゆく。それを描く視点は至極客観的で冷静。不倫はいけないと、みんなが金魚に人の道を糾そうとした事に対しても、それが嫉妬心から来る、褒められたものではない行為だとハッキリ言わせてますしね。正直なところ、見ていて息が詰まりそうな苦しい映画ではありました。そんな中、これまで見てきた小津作品の中にあって、トラックの荷台から捉えたショットのスピード感とコミカルさは、ちょっと意外でした。 [DVD(邦画)] 6点(2006-07-20 00:55:06)(良:2票) |