1. 丹下左膳 怒涛編
大友柳太朗版「丹下左膳」シリーズの第2弾。前作の続きなんだか、リメイク(?)なんだか、前作と同じような人たちが同じようなことをやってます。前作との関係がわかったようなわからないような、でも正直、そんなことはどうでもよいのです。 今回は、いわくつきの香炉の、争奪戦。百両の価値がある、とか言ってますが、やがて百万両にハネ上がり、要は、コケ猿の壺だろうが香炉だろうが、何でもいいんですね。 冒頭、何やら密談らしきものが行われているのですが、密談を交わす人物たちは次々に切り替わり、どうもあちこちで同時にこれらの会話が交わされているらしい、というのが、大ごとの予感。これは同時に、登場する映画スターたちが次々に顔をみせる、オールスター映画ならではの楽しみでもあります。 で早速、くだんの香炉が奪われる大事件が発生。香炉を抱えて逃げる多々良純と、それを追う追っ手たち。その姿が目まぐるしいカットの切り替えで描かれ、オープンセットとスタジオセットを股にかけての、無類のスピード感。素晴らしい。 ついでに言うと、境内のシーンはスタジオだと思うんですけど、ちゃんと地面にハトがいるんですね。芸が細かい。 で、香炉は無事(?)、松島トモ子経由で丹下左膳の手に渡り、イヤでも騒動が巻き起こる、という展開。大友柳太朗が豪快に演じる丹下左膳、見事なまでの単細胞ぶりで、絶対に近くにはいて欲しくないタイプの人物ですが、それだけに、時に一途、時に必死。時に、やたら頼もしい。クライマックスで、敵に囲まれ一人戦う大川橋蔵と、駆けつける丹下左膳、援軍の姿が、カットバックでスリリングに描かれる。ようやく現れ大活躍の丹下左膳、援軍たちに礼を言いつつも、「まだ暴れたりないから、しばらく見ててくれ」などと、頼もしいのやらバカなのやら、まあ、両方ですね。 この作品、監督名が二人クレジットされていて、左に松村昌治、右に松田定次。どういう事情だったんでしょうか。 [インターネット(邦画)] 8点(2024-09-15 08:04:22) |
2. 太陽は動かない
《ネタバレ》 この原作を映画化するんだったら、最初の方のスタジアム爆破計画のエピソードは丸々カットするしかないんじゃないか、物語の構成としてイビツだし、イデオロギー的なキナ臭さもあって某国への興行展開に対し足枷となる可能性もあるし・・・と思っていたら、まさにその通りで。 後者の件はともかく、前者の「物語のイビツさ」という点で、このやたら登場人物の多い原作小説、ちょっと違和感があります。一種のスパイ小説である以上、それらしく錯綜した物語にしようということなのかどうなのか。一過性のエピソードと後に繋がるエピソードとをわざと混在させて読者の的を絞らせないようにしているのか、どうなのか。ただ、正直、やや散漫な印象を受けるし、まさかとは思うけど、全体の骨格が無いまま小説の連載を始めちゃったんじゃないか、、、とか。 で、この映画。登場人物もバッサリと削ぎ落して、複数の人物の役柄を限られた登場人物へと統合し、原作を徹底的に整理して、いや、実に見事。お陰で、竹内涼真演じる田岡君、大活躍の巻、となりました。しかも、この映画を見ると、主人公の鷹野にとって、田岡君の存在は、幼少時に救えなかった弟の姿と重なっているんですね。これがクライマックスの沈みゆく貨物船からの脱出劇の場面で示唆される。と同時に、水責めのこの場面と、かつての鷹野を火の中から助け出そうとする風間の姿が並行して描かれ、両者がオーバーラップすることで、血の繋がりは無くとも鷹野にとって風間は父であり、この作品が、親が子を、兄が弟を命がけで守ろうとする物語であること、が伝わってきます。 そこにはまた、育児放棄による悲劇への怒りも感じられるし、子供を失った親の悲しみ(鶴見辰吾と宮崎美子)というものも活きてくる。オムライスの役割まで、活きてくる。 原作をすっかり再整理しているとは言え、基本的には原作に沿っている訳で、そう思うと、やや散漫に思えた原作小説も実は、「これだけのポテンシャルを備えていた」という風に捉えるべきなのかも知れませぬ。 映画はアクションも盛り沢山で、海外ロケがまず雰囲気を出してますが、それだけじゃなく、これだけのアクションシーンをよく現地で撮り切ったもの。CGの使い方も巧みで、違和感を感じさせません。また、CGを使ってもなお描写が難しそうなシーンというのもどうしても出てくるのでしょうが、そこはシーンの切り替えなど、演出上の工夫でうまく省略したりして、スムーズに物語を紡いでいきます。 藤原竜也という人は若く見えすぎるところがあり(貫録がない?)、この鷹野の役、合うんだろうか、と心配してたら、うむ、やっぱりちょっと合わないか。でもスタントシーンもしっかりこなして、だんだん違和感が無くなってくる。 満足度の高い映画でしたよ。 ところで原作の中で一番、読んでてひっかかったのが、「新型の太陽電池の性能が従来の100倍くらい」というくだりで、それだと地表に届く太陽光エネルギーよりも発電される電力の方がはるかに高くなっちゃって、もはやオカルトの世界(どうしてこんな荒唐無稽な設定を入れてしまったのか)。細かいことをあげつらってもしょうがないとは言え、さすがに読む手が止まってしまいます。で、映画化の際にはさすがにまずいと思ったのか、「10倍」に値切ってますね。まあ、大差ないですけど。。。 [インターネット(邦画)] 8点(2024-09-01 08:59:32) |
3. ダークグラス
ダリオ・アルジェント監督は1940年生まれとのことで、ウチの両親とほぼ同じというか、少しだけさらに上ですぜ。そんな爺さんが殺人鬼モノの映画撮ってるなんて、想像を絶する話で、もうそれだけで眩暈がしてくる。。。 まあ、一般人と比較してもしょうがないのであって、さすがアルジェント、としか言いようがありません。相も変わらず映画の中で血をぶちまけ、人を殺し、女性を襲わせる。相変わらずエゲツない。正直、特に目新しい点も無いのですが、奇をてらうこともなく、変な色気も出さず(ハダカは出てくるけどそういう意味ではなく)、もはや枯れた味わいとでもいいますか。奇妙な印象を残す要素をしっかり盛り込みつつも、それが過剰にならず適度に抑えられていて、自己主張し過ぎないのがよろしいかと。もはやショック映画を褒めてるのか懐石料理を褒めてるのかよくわからん文章になってきましたが。 冒頭、ヒロインの周りの人たちが皆、空を見上げていて、日蝕が起きる、というシーンですが、日蝕だから別にどうしたという訳ではなく、どうという伏線がある訳でも無く、ただ、何だかイヤな予感がする、という場面。彼女の服も口紅もやたらと紅く、そういうのが妙に印象に残る。日蝕なのでサングラス。ココは何となく、彼女が視力を失うこの後の物語を暗示してます。 で、ラストの空港のシーン。彼女はすっかり地味な出で立ちですが、やっぱり、少年のカバンとか、彼を迎えにきた女性の服とかが、やたらと紅かったりする。やや悪趣味な色彩がやっぱりアルジェントらしさ。 イヌが人間を襲ったりするのも、ああ、そういうのあったよなあ、とか思いつつ。 蛇がウジャウジャ出てくるのも、わけがわからなくって、イイじゃないですか。蛇でもいいし、ウジ虫でもいいし、針金の山だってかまわない。 結局、こういうのを一般には、マンネリとか劣化版とかいうのかもしれないけれど、こんな映画に、爺さんが生涯かけてここまで一生懸命取り組んでるのを、見過ごすわけにいかないですよね! [インターネット(字幕)] 7点(2024-08-14 18:22:46) |
4. 大列車強盗団
《ネタバレ》 実際にイギリスで発生した列車からの大金強奪事件に取材した映画で、事件の経緯をとにかく淡々と描いており、実に愛想の無い作品に仕上がっています。劇伴の音楽も使用は一部シーンにとどめ、静かな緊迫感の中に描かれる、列車強盗。 強盗たちの間に、これといって友情が描かれるでもなし、目だった対立が描かれるでもなし、微妙な空気感の中で行われる犯行、ではありますが、とにかくクール、なんですね。大金の入った袋をワッサワッサと機械的に運び出し、時間がくればアッサリ引き上げる。ある意味、マジメな人たちの集団、に見えなくもないけれど、札束に火をつけてみたりするあたりに、ちょっとしたヤンチャぶりみたいなものが垣間見えたり。 強盗事件と直接は関係しないのですが、冒頭のカーチェイスシーンが、とにかく目を引きます。疾走、というより暴走する自動車、どこまでが演出で、どこまでが「本当に事故寸前」なのか。危うさ全開のゴツゴツしたシーンに仕上がっています。 ラストの「The End」にはクエスチョンマークが重なり、実は知られざる逃亡者がいるのでは、まだ物語は続くのでは、みたいな感じで映画が終わりますが、最後がクエスチョンマークって、『人喰いアメーバの恐怖』じゃあるまいし。このクエスチョンマークを見て、スティーブ・マックィーンはピーター・イェーツを『ブリット』に起用したという・・・ワケではないですよね。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-08-03 07:32:31) |
5. 007/スペクター
《ネタバレ》 バットマンだってちゃんと撮ったらちゃんとした作品になるだろう、というのがノーラン版バットマン映画だとしたら、007だってちゃんと撮ったら・・・というのがこのサム・メンデス版007映画、ってことなんでしょうか。で、その「ちゃんと撮ったら」という部分のベクトルが間違っている気がしてしまうのが、両者に共通するところ。 この作品、メキシコシティの「死者の日」を大規模に再現した長回しっぽい冒頭シーン(何となく、実際はカットが切られている気がする)がやたらカッコよくって。その後に待ち受ける一連のアクションもあの手この手で盛り上げて小気味よく、「全編の中で、結局、タイトル前が一番カッコいい」という点ではこれ、007映画らしい作品と言えなくもなく・・・。 その後も、アクションシーンか否かに関わらず、カッコよく撮ろうとしているのは伝わってくるのだけど、はたまたそれっぽくエピソードも散らしておこうとはするけれど、トータルでは中身が薄い印象のまま、この長尺。ちと、つらい。007映画に中身が無いのは今に始まったことではないからそれ自体はもうどうでもいいんですけどね、中身が無い代わりにしっかりとバカ映画であった007映画から「バカ」を取ったら、何が残るのか。何を残せるのか。 長尺を引っ張り過ぎた挙句、本来なら盛り上がるであろうクライマックスシーンまで、尻すぼみに感じられてしまうのは、いかにも残念。 拷問にあってもそれをタフに乗り切るのが、やはりクレイグ=ボンドの持ち味でしょうか。今回は相当ヤバいところまで追い込まれますが(ってか、手遅れでは。ははは)、その直後には何事も無かったかのように涼しい顔で戦いまくり。タフと言うより、ここまでくると正直、不気味です。 [CS・衛星(吹替)] 5点(2024-06-16 06:10:41) |
6. 007/美しき獲物たち
《ネタバレ》 どういう訳か私にとって妙に印象の薄い、この第14作。何でこんな印象薄いんでしょうね。劇中でいろいろ派手な事やってくれてるんですけれども。「007映画=おバカ映画」という図式を我々にしっかり植え付けてくれたロジャー・ムーアも、今回がボンド役最終作。ということで、ゴジラ同様、実際の元号とズレはあるものの、この作品までが私にとっての、昭和007。 だもんで。どうもこの作品のイメージが『メカゴジラの逆襲』と微妙に重なってしまうんです。すみません。これは私が悪い。こんなイメージ持たれちゃ、ねえ。 実際は、ジョン・グレン監督はこの後のダルトン=ボンド時代も続投するので、そういう意味ではこの第14作と次の第15作に断絶は無いはず、なんだけど、しかし到底、そうは思えません。やはりこの第14作でもって、一時代の終わり。やっぱり、ボンド役が作品のカラーを決定づけますね。そもそも、「007映画の監督と言えば?」と聞かれたら、普通はテレンス・ヤングか、せいぜいガイ・ハミルトン。あるいは最近の人だったら、答えとしてマーティン・キャンベルとかサム・メンデスとかの名を挙げるかもしれない。もしここで、「ルイス・ギルバート」とか「ジョン・グレン」とかを挙げる人がいたら・・・たぶんそれ、悪意があります(笑)。でも、ロジャー・ムーアのおバカ007映画時代を主に支えたのが、この二人。ヒドいことをしてくれたもんだ、などと言うなかれ。全部、ロジャー・ムーアのせいです。多分。 さて、ボンド役最終作と言うだけあって、、、と言うか、「さすがにそりゃ最終作にもなるわなあ」と言うか、ムーアさん、正直、すでに結構なお歳です。しかし飄々としてクールでエロくてコミカルで。まだまだ余裕のエロダンディぶり。アクションシーンはスタントマン多用しているんでしょうが、そりゃ、あんなスキーやらスノボやらが上手かったら、ホントにMI6で秘密諜報部員できちゃいますよね(?)。しかし、潜水シーンなんかでは、本人が実際に潜って演じているように見える場面もあったりしますが、これ、この歳で実際に本人がやってるんだったら大したもの。役者になっていなかったら、本当にスパイになれたのでは(???)。 今回もおバカアクションの見どころ盛り沢山。タイトル前の雪山の死闘に始まり、エッフェル塔から開始される追跡劇ではパリを舞台にしたカーアクション(最近の映画でこそ、名所でのこういうアクション、増えてきましたが)、007映画らしいアクロバットな演出も。これに対し終盤は金門橋が舞台の、飛行船を使ったアホらしくも派手な戦い。だけどやっぱり目を引くのは、中盤の火災シーンですかね。ややシリアスなテイストで、迫力あり。それからもちろん、あの大洪水の修羅場。巨大セットでの撮影がもたらす臨場感に、息を呑みます。 ここまで言っといて、「印象が薄い作品」も何もないだろ、ってなところですが、悪役のクリストファー・ウォーケンが、ちと弱い。ってか、私は昔、このヒトは本当にヤバい人なんじゃないかと思ってた頃があり(もちろんそんなワケ無いと思いつつも、何となく狂気を身に纏っている感じがして)、それを思うとこの作品では、彼にしてはスケールが小さく、小悪党止まりの印象。冷酷極まり無いことを言ったりやったりしてるんだけど、狂気よりセコさが感じられてしまいます。うん。作品の印象の薄さは、これのせいだ。きっと。メカゴジラのせいにしてはいけません。 ボンドガールは今回は結局、何人いたんだっけ? メインとなるタニア・ロバーツは、これまたイマイチ存在感無いですが、ゴージャス感はありますねえ。そういう意味ではいかにもボンドガールらしいボンドガール。昔、『シーナ』とかもよくテレビで放送してたので有名な女優さんかと思ってたんですが、いや、まあ、どうなんでしょ。ははは。一方の敵方のコワモテ用心棒のグレイス・ジョーンズは、これはインパクトあり過ぎ。最後まで見せ場を作りまくりで、確かにイイんだけど、ムーアおバカ路線にはややそぐわない気もしうつつ。昔、『キング・オブ・デストロイヤー/コナンPART2』とかもたまにテレビで放送してたので、有名な方かと思ってたんですが、その理解で合ってますよね? [CS・衛星(吹替)] 7点(2024-05-26 21:35:51) |
7. ダウト・ゲーム
これ、なかなか面白かったです。 裁判の行方なども描く映画にしては、かなりセリフの量を絞ってきているのがまず、いいですね。もちろんセリフが少なけりゃ何でもいい、という訳ではないし、セリフが多いと全部ダメという訳でもないけれど(説明ゼリフが多いのはそれなりにウンザリするにしても、見どころもちゃんと準備されていれば、楽しめるのであって)、とりあえず、意識的にセリフを絞ろうとするのは「見せよう」という意識の表れであるのだから、期待もできようというもの。そしてこの作品でも、それはサスペンスシーンにしっかり活きています。 主人公の検察官がある晩、ひき逃げ事故を起こすが(と、自分で書いておいてナンですが、ひき逃げは事故じゃなくて事件だよな)、別の人物が逮捕されてしまう。主人公はその事件を担当することになり・・・というオハナシ。多少、強引なところのある設定ですが、スネに傷を持つ主人公、という制約、それが新たな力学を加えることになって、物語がどんどん転がっていく。これが面白いんですね。彼の抱えたやましさが次の行動を生み出し、その行動が新たな謎と物語の展開を生み出す。行動を描く、ということは、「見せる」ということであって、それがサスペンスになってりゃ、楽しむには充分でしょ? ちょいと気の利いた佳作、といったところか。 原題は「Reasonable Doubt」。こんな変な邦題つけるより、原題をそのままカタカナ書きしてもよかったのでは、と思うのですが、カタカナで「リーズナブル」と書くと、安っぽいイメージになりかねないので避けたんですかね??? [インターネット(字幕)] 7点(2023-11-12 07:34:11) |
8. 007/ダイ・アナザー・デイ
ピアース・ブロスナンのボンドは、「5代目ボンド」というより「2代目ロジャー・ムーア」のイメージがあって、この真剣みの無さが、いいなあ、と。要は、もしもジョージ・レーゼンビーが1作のみで降板しなければおそらくロジャー・ムーアの出番はなく、ロジャー・ムーアの出番が無ければこんなピアース・ブロスナンのボンドなんて誰も認めなかったんだろう、ということなんですが。幸いにもこうやってボンド役に定着し、記念すべき第20作も彼の主役にて迎えることに。 この映画の007シリーズ、荒唐無稽なアクションを、ホントにスタントでやってしまうのが何と言っても魅力で、これもロジャー・ムーア時代に(良くも悪くも)花開いた感があります。むろん、合成映像やミニチュア撮影も多いですが、そこにしっかり、非常識極まりない無茶なスタントシーンを織り交ぜてくる。しかしこの第20作、時代の流れには逆らえないということか、かなりCG化に走っちゃってて、そこは残念ではあります。まして、あくまで当時のCGですから、単に荒唐無稽なシーンをより荒唐無稽に見せてるだけ、のような。 だけど、ムチャクチャやってて、やっぱり面白い。いや、普通の意味でストーリーが面白いとか言うのは全然無いんですが、そりゃだって007映画だもの。何となくスパイごっこみたいなどうでもいいことをやりつつ、ムチャクチャなアクションを無理矢理織り込んでいく。ホバークラフトでのチェイスなんて、実に痛快。「冒頭が一番、見応えがある」という残念な構成も、007映画ならでは。 いやもちろん、その後も、見どころ色々。プレデターみたいに微妙に姿が見えなくなるアストンマーチン。透明車にボンドが乗ったら、ボンドの姿だけ宙に浮いて見えるのかと思ったが、そうはならない。ってのはどうでもいいんだけど、自動車同士でミサイル戦を繰り広げる不経済な戦い、さらには敵の基地の中まで突っこんで死闘を繰り広げる。この基地、どうやら、いわゆる「かまくら」で出来てるらしく(?)、氷の城を破壊しまくるカーアクション、これまた実に痛快。 宇宙からの光線による攻撃が、イマイチ段取り悪く、言うほど破壊が進んでるように見えないのですが、とにかく38度線付近らしいどこぞが、爆発しまくってる、スケール感があるのか無いのかよくわからんスペクタクル。派手には違いないので、クライマックスを大いに盛り上げます。 ところで、今回のもう一つの売りは、ボンドガールとしてハル・ベリーが登場。ショートヘアの顔立ちがなんとなく、浜美枝を連想してしまったのですが、いや確か「2度死ぬ」では長髪姿のボンドガールだったはず(?)なので、これは妙な連想でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-10-15 15:44:57)(良:1票) |
9. たくましき男たち
邦題は「たくましき男たち」となってますが、見るからに一番たくましそうなのは、ヒロインのジェーン・ラッセルではないか、と。 彼女と、クラーク・ゲーブルと、ロバート・ライアンとの三角関係。と言えなくもないけれど、マトモに三角形をなしていないのが、ミソ。むしろ凸凹トリオといったところ。 彼女が靴下を脱ぐ場面とか、水浴びする場面とかが再三登場して、一種のお色気シーンなのですが、どうも迫力ばかりを感じて色気を感じず、そこがかえってヘンタイ的な色気になってる気がしてしまうのは、私の見方が悪いのでしょうか? 水浴中にイタズラで桶の水にカエルを入れられ、まさに絶対絶命。というような場面でこそ、「登場人物の中で本当に一番強いのは誰か」ということがはっきりします。 それはともかく、物語の軸となるのは、数千頭の牛の大群を引き連れての大移動。これだけの牛を並べ、歩かせては撮影の連続で、さぞかし大変だったんじゃないかと思うんですが、クライマックスではこの群れが洪水のごとき大暴走となって、もはやほとんどディザスター映画のノリです。 ラストもシャレてて、いいじゃないですか。やっぱり皆それぞれに、たくましいんです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-11 12:21:26) |
10. 谷崎潤一郎「痴人の愛」より ナオミ
《ネタバレ》 何だかえらく回りくどいタイトルですが、つまり、谷崎潤一郎の原作に沿いはするけどそのまんまじゃないですよ、ってことですかね。だいぶ、現代風。特に音楽が。こんな音楽でホントにいいんですかねえ。今となっては何だか古臭く、そして安っぽく聞こえてしまうのですが。 「痴人の愛」って、谷﨑が関西に移住した後の作品ですが、路線としては、それまでの諸短編の集大成とでもいいますか。例えば「少年」とか。男が女性に征服されていくんだけど、でもまだわずかに理性が残ってるような(それを思うと、「瘋癲老人日記」なんて、理性が完全に吹き飛んでただの性欲マシーンと化していく、それはそれはエゲツない世界)。 だけどこの作品ではタイトルが『ナオミ』となってて、必ずしも征服される男の側のオハナシ一辺倒ではありません。女性の視点も取り入れられて、「女性解放」みたいな感覚も少し感じられたりも。 それってどうなんでしょ。もうちょっとストレートに、征服されるコワさ、背徳感、そしてそこから来る快感、みたいなものがあってもいいのでは、と思っちゃうんですけど。 水原ゆう紀は盛大に脱ぎまくって、ほとんどポルノですが、いや、それならなおさら、なるべくボカシは回避して欲しいもんです。あまりボカシが多いのは、画面を見苦しくするだけ。 最後はコレ、まさかのハッピーエンドということで、いいんですかね、ははは、、、 [インターネット(邦画)] 5点(2022-05-07 22:59:43) |
11. 太平洋奇跡の作戦 キスカ
アリューシャン戦線についてはアッツ島玉砕ばかりが語られている印象で、私もこの英語が無ければキスカ島なんて、知らなかったかも。 戦争映画とは言え、撤退作戦を描いた作品。爆撃シーンが随所に挟まれるけれど、引き込まれるのはやっぱり、撤退作戦の行方。しかしまず、こんな極寒の地にも日本兵が送られてアメリカ軍と戦ってたんだなあ、という感慨こそ、この作品の映像がもたらす最大のインパクトかも知れません。 もちろん、大がかりなロケ撮影だけでなく、ミニチュアによる特撮もまた見せ場。というか、ミニチュアとの合成映像の巧みさが、とてつもなく効果を上げてます。 タイトルからして、作戦はどうせうまくいったんでしょ、という想像はつくものの、作戦の困難さにはヤキモキさせられて。その中で下される「決断」、これが映画を動かし、我々の心を動かす。 この後も泥沼のような戦局が続くとは言え、いったんは大団円。兵士たちの笑顔。たまにはこういう笑顔で終わる戦争映画があったって、いいじゃないですか。三船敏郎はハッキリとした笑顔を見せないものの、まるで笑みがこぼれるのをこらえるような、イイ表情で映画を締めくくってます。 [インターネット(邦画)] 8点(2022-02-06 12:58:37) |
12. 竹取物語(1987)
ああやっぱり、沢口靖子ってのは、宇宙人だったんだなあ、と、まあそんな作品です。 竹取物語という設定を借りて何を描こうというでもなく、そのまんまお金かけてSF超大作にしてみました、といった感じで。もうちょっと他にいいネタ無かったんですかね。こういう強引な特撮モノなら、カネかけるまでもなく、大林宣彦にでも頼んでおけば、どんな出来になろうと誰も傷つかないで済んだのでは。 しかし敢えてそこに飛び込むのが市川崑のエラいところ。この人にとって、過去の名声とか言ったものはどうでもいいらしい。 などとバカにしたような事を書いてると、セットやら衣装やらが豪華で、気合も感じられ、予想されたこととは言え、ちょっと圧倒されます。 しかし、セットが立派なのはいいけど、部屋の中はやたら、ガランとしてます。妙に、空虚。いやもしかしたら、これが正しい「時代考証」とやらなのかも? そこはちょっとワカランけれど、それにしても、雰囲気を出すのには、小道具ってのも大事な要素だと思うんだけど、およそこれという小道具が登場せず、この作品がどこか大雑把で薄味に感じてしまう理由の一つは、そういうところにあるのでは? クライマックスに向けた盛り上がりにも乏しく、ただただ、「『未知との遭遇』ってやっぱりスゴかったな」と感じてしまうのが、悲しいところ。 [インターネット(邦画)] 4点(2022-01-22 09:42:39) |
13. 第四の核
《ネタバレ》 ピアース・ブロスナン演じるソ連のスパイが英国内に小型原子爆弾を持ち込み、テロを企む。 一方、それを察知し、阻止しようとするMI-5のスゴ腕(というほどでも無いか)が、マイケル・ケイン。このヒト、作品冒頭では上司にも楯突いたりして、やる気満々の一匹狼、と思いきや、その後はさほど活躍せず、むしろ子供の相手をする「良いパパぶり」の方が目につきます。 そういう日常があって、しかしそこに核爆弾が持ち込まれ、テロの脅威が迫り来る、という事なのかもしれませんが、もしそうであるなら、もう少し巧みに、その「かけがえのない日常」というものを物語に織り込めなかったのかな、と。もしそうでないなら・・・マイケル・ケインはもう少し働けよ。 いや、あの駅のシーンは、この作品の中では珍しくカッコ良かったですけどね。クルマが駅に進入するところから、発車した列車に主人公が飛びつくまでを、ワンカット。 ピアース・ブロスナンは、このヒトがソ連のスパイに見えるかどうかはともかく(まあ、そう見えない方がスパイとしては優秀なんでしょう)、冷徹なスパイを演じており、それなりの印象は残します。ただ、女性を殺害する場面なども、彼の冷酷さから来るものでは無く、あくまで指令に基づくものであるのが、ちょっと迫力に欠けるところ。まあ、多分、「このあたりで暗号を読み解くシーンを一発入れたかった」というところかも知れませんが(映画ってのは、それだけの理由で人が死んだりするもんです)。 いずれにしても、先にあの『ジャッカルの日』という作品があると、どうしたって比べられてしまいますわなあ。 [インターネット(字幕)] 6点(2021-09-05 13:50:53) |
14. ダーティー・コップ(2016)
これ、かなりユニークな作品だとは思うんですけどね~、だけどなんか、印象が弱い。 イライジャ・ウッドが冒頭から、女性にされるがままのやる気のない性交をしていて、やはりというか、この後の展開も、ニコラス・ケイジに引きずられ流されるがままに金庫破りに手を染める。 中盤はこの金庫破りのシーンが延々と続いて、その描写における細かいディテールが、本作の面白さでもあるのですが。 ただ、彼を引っ張っていくニコラス・ケイジのキャラクターが、どうも焦点が定まり切らず、もちろんその得体の知れなさを狙ってのことだろうけれど、そのせいで最後まで加速することなく、ズルズルと終わりを迎えてしまう。 多少コミカルで、多少ブラックで、たいぶ地味な、サスペンスの小品。悪くは無いですが、このままひっそりと消えていきそうな。 何と、最晩年のジェリー・ルイスが出演してる! ってのも、言われなきゃ気づかんわな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-27 13:26:03) |
15. ダーティファイター/燃えよ鉄拳
前作でいったん映画が終わったというのが信じられないくらい、フツーに前作の世界が続いてます。オランウータンと人間の相棒1名ずつ、肝っ玉母ちゃん、バイク軍団、そしてソンドラ・ロック。 とは言え前作とちょっと異なる雰囲気もあって、だいぶギャグ映画の要素が強くなってます。ややとりとめが無かった前作に比べると、一つ一つちゃんとオチがついて、笑いの点ではこちらの方が上、かな。 他にも、クライマックスの試合に向けて物語を盛り上げていくなど、作品のまとまりは確かにあるのですが、そこで気づくのは、内容がまとまっている分、印象としては映画がちょっと小さくなっちゃった、ってことなんですね。前作の方がより、大らかな味わいがあって。 しかし、「映画が小さくなる」のも、いつもそれが悪いことだという訳でもなく、本作はあれよあれよという間に楽しい時間が過ぎて、ラストのクレジットが出てきたら、ああもう終わっちゃうんだな、という一抹の寂しさを感じたり。 これはこれで、魅力的な作品だと思います。 しかしそれにしても、オランウータン君のこれほど見事な演技、どうやって演出したんでしょうかね。頑張って脚本通りに演じさせたのか、それとも彼の奔放な振る舞いに合わせて脚本の方を修正したのか? [インターネット(字幕)] 8点(2021-06-13 13:53:32) |
16. ダーク・スター
確かに、中盤のビーチボール星人(?)との追いかけあいは、唸らされるものがあるんですけどね。ストーリーそっちのけの異常なまでのしつこさ。予算が無い中、撮影用のセットをわざわざ作った(作ることができた)とも思えないし、と言って本物のエレベーターシャフトとも思えないのだけど、一体これはどこで撮影したのか?背景の一部は書き割りなのか?どこにどうやってカメラを置いたのか? などと言ってる自分は、「唸らされる」と言いながら、どこか醒めていて。カーペンター作品を楽しみつつも何となく相性の悪さみたいなものを感じる、その正体がコレなんじゃないかと。 ラストは、これも確かにイイんだけど、ゴメン、このチープさ、やっぱりカート・ラッセルが演じて初めて許されるネタのような気が。 [インターネット(字幕)] 5点(2021-06-12 11:50:24) |
17. ダイヤルMを廻せ!
《ネタバレ》 そもそも、レイ・ミランドごときがグレース・ケリーの夫だなんて、おかしいだろ、と言いたくなるのですが、心配ご無用、ちゃんと、夫婦の間はギクシャクしてます。って、何に安心してんだか。 と言う訳で、夫が代理殺人により妻を亡き者にしようとするも、事件は意外な方向へ、ってなオハナシで、だから犯人と犯行の模様は我々に明らかにされている、いわゆる倒叙モノですが、ミステリ色が濃く、その点が制約となったのかどうか。特に最初の30分くらいは会話シーンが続き、この部分がどうも説明めいた印象を与えてしまいます。 この場面では、犯行現場となる部屋の間取りや調度をじっくり描いておきたいところですが、後の展開で重要な役割を果たすアイテム(ドア、カーテン、電話など)の提示は意外に控えめ。もうちょっと印象づける描写があってもいいような気がするけど。その代わり、犯行に関与しない白手袋だのステッキだのを、レイ・ミランドは妙に強調し、これがイマイチぴんと来なくって。おそらく、彼がステッキを手放すのは、「実はステッキ無しで歩ける事を相手に示す=ここから密談が始まる」という合図、なんでしょうけど、あまり効果的な描写であるように思えません。 一方、いよいよ犯行の描写となると、これはもうお手のもの。しっかりと我々の視線を引きつけ、振り回してみせます。電話を掛ける場面ではわざわざ交換器の映像まで挿入して視覚化してみせる。一種の稚気だろうけど、見せ場の時間を引き延ばす、サスペンス上の効果も。 ミステリとして凝っている分、終盤の「謎解き」の部分はまた、少々、理屈っぽくなってしまいますが、暗い部屋で犯人を待ち構えるクライマックスなどは、スリリングに盛り上がります。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-06-06 10:30:09)(良:1票) |
18. 台風クラブ
こんなワケワカラン系の映画も昔はゴールデン洋画劇場とかで放送してて、うわっ、この映画、キライだなあ、なんて思ってました。意味ありげな思わせぶり、そういうのに当時はなんか、イライラしてしまう。しまいにゃ「これが死だ!」なんてブチあげられちゃうと、「いやいや、そんなのは『死』じゃないんじゃないの?」とイジワルの一つも言いたくなったり。 結局は、この登場人物たちと年代が近く距離感が近かったからこその違和感であり、反発・反感だったんでしょう。 そのくせ、そういや自分もまた、高校の時に真夜中にこっそり学校のプールで泳いだことがあったんだよなあ。 今では自分も親の世代になり、この作品を貫く不安定な危うさを、ある距離感をもって眺めるようになって。そう、自分が思春期の頃には、思春期が危ういなどと思わないもの。距離感があってこそ感じられる危うさ、ってのもある訳で。しかし一方では、やっぱり記憶の底をチクチク刺されるような感覚もあって、イライラしないと言えば嘘になる。 だから、大人だから正しく鑑賞できるなんてことは金輪際、言いたくない。あの当時の「そうじゃないんだ」という気持ちは否定したくない。 今では、「キライだけど、面白いんだから、仕方ない」ってなところ、でしょうか。 [インターネット(邦画)] 8点(2021-05-30 17:23:48) |
19. ダーティファイター(1978)
コレ、監督は一応、別のヒトがやってることになってるけど、これは名目だけなんじゃないか。やっぱり「イーストウッド映画」と言っていいでしょう。そんな雰囲気。 とは言え、トラックの運ちゃん(なのか?イマイチ本職不明)が暴れたり惚れたりするだけの内容で、まとまった筋立てもなく、行き当たりばったりに短いエピソードが連なっていくけれど、全体を通してみれば、何となくオハナシが繋がっている、という構成。 イーストウッドが演じるもんで主人公のキャラはどうしてもマッチョ系になるのだけど、彼が事前に「トラック野郎」を見てたとしか思えない、そんな映画です。 ってことは、あのオランウータンの正体は愛川キンキンだったんだなあ。 どこまでもあっけらかんと開放的・・・と言いたいけど、人生うまくいかんこともあるわけで、でもまあ、いいじゃないか、と。 そして我々も一緒になってビールを飲む訳ですが。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-05-22 07:51:32) |
20. 誰かさんと誰かさんが全員集合!!
いかりや長さんが武道の師範で、注ブー工茶のドリフメンバーがその弟子、というのが何だか、いかにも8時だョ的な世界観で取っつきやすい、ってのもありますが、内容的にもよくまとまっていると思います。まとまってるけど、ハジけてる。 岩下志麻が保育園の美人先生で、長さんがゾッコン。それを、日頃の仕返しとばかり、メンバーがからかう。一方で岩下志麻にも謎めいたところがあって、なぜか副業で芸者さんをやってたり。ここ、もうちょっと謎を引っ張ってくれてもよかったのでは、と思わんでもないけれど、そこはそれ、岩下志麻。裏も無ければ表もなく、アッケラカンとした空気読めない感が、彼女のいいところです。 と思わせて実は・・・あとは見てのお楽しみ。 ドリフの4人組、長さんをからかいまくった挙句に逃亡を図り、逃走用にクルマを準備するのだけど、これが、その辺のクルマからパーツを盗んできて無理やり組み上げた超オンボロ車。こういうのがやっぱり楽しいですね。はたしてこんなポンコツが無事、走るのか? もちろん最後はこのクルマが大活躍。走りながら壊れていき、壊れながら走っていく、そのバカバカしさ。もう、たまりません。 ヤクザ映画ではコワモテ演じている俳優陣の面々も、ここでは楽しそうに敵役を演じてます。 あ、そうそう、中盤には、ショッキングな残酷シーン(?)がありますので、心臓の弱い方は、ご注意を。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-04-30 15:55:51) |