1. 追跡(1962)
《ネタバレ》 沢山の後続作に影響を与えたサスペンス映画の第一人者的作品であるとの町山氏の解説はとても興味深かった。リー・レミックの美貌をはじめ、映像が美しいことに驚く。夥しいマネキンが林立する殺人現場、というシチュエーションもこれがハシリかしら?鏡に映す後景といったカメラテクニック等、印象的なシーンが多いです。マネキンの後ろにカメラを据えてのショットなどは一級のサスペンス感。クリアなモノクロ映像も怖さに拍車をかけます。 ただ、ストーリーは今観ると突っ込まずにいられない不適格描写や強引さが多々気になって、映像力ほどは感心できず。姉妹の私的情報がなぜアイツにこと細かく知られているのか。通報中の室内になぜ犯人がいるのか。あいつはガレージで脅迫してきただろう。後をついてきたのか。で最大に?だったのはランチの店のトイレで犯人登場場面。なんであそこで大声出してすぐそこで張ってるFBIに知らせないのよー。アイツふつうに歩いて出てったじゃないか。サスペンス見てるはずなのに、ここは「志村うしろうしろ」みたくなっちゃった、私。なんだかな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-06-09 23:54:21) |
2. 椿三十郎(1962)
《ネタバレ》 時代劇という枠を取っ払っても、痛快娯楽作ジャンルにおいて上位に君臨するだろう名作。 言うに及ばぬ三船の圧倒的な存在感。明快、爽快なストーリー。良い者、悪い奴、切れ者、おっとり役と揃いに揃ったキャラクター。お気に入りは押入れに出たり入ったりのとぼけっぷりが絶品の小林桂樹。 ああ椿三十郎(もう少しで四十郎)。粗くて深くて、おかしみも醸す愛すべき浪士。若侍たちの青臭い行動の浅はかさに苦虫を噛み潰し、御内儀の扱いにはほとほと手を余す。椿は赤だ白だと口を出す女衆に辟易し、ふすまの仮名を指でなぞる三十郎。笑える。でもそんな愛嬌とは別の顔を持つのが殺陣のシーン。全身殺気をはらんだ身体の動き、刀の返しのキレには息を呑む。有名なラストシーンは、それこそ呼吸が止まった。 私ごとですが、映画といえば洋画ばかり観ていて、日本映画のクオリティの高さを知ったのはだいぶ後になってから。黒澤作品はどれも震えるほど感動したものです。これもそんな一本。 [DVD(邦画)] 10点(2017-10-21 00:57:18)(良:1票) |
3. 追想(1956)
《ネタバレ》 I・バーグマンとユル・ブリンナー、20世紀を代表する大スターの二人。さすがというか、凄い存在感ですな。ハンパないバーグマンの美貌と、ハンパないユル・ブリンナーの精悍さ。他の出演者は一切かすんでいます。 二人の心が惹かれあう描写にもう少しふくらみが欲しいところではありますが、お互い分をわきまえての距離感が節度があって清潔なのでした。 結局物語としてはアンナが本物の皇女なのかどうかは上手いことぼかして(というか皇太后に丸投げして)終わりました。 バーグマンがあまりに気品に満ちていて、ローブ・デコルテ姿もこれ以上無いほどの皇女っぷりでしたので、「もうこの人でいいじゃん」と限りなく平民のワタシは思いましたが。 [DVD(字幕)] 6点(2017-10-15 00:32:25) |
4. 追跡者(1998)
「逃亡者」のトミー・リー捜査官人気を当て込んで作ったスピンオフであります。二匹目のどじょう狙いという水準を超えた”ちゃんとした”作りです。ジョーンズ捜査官とそのお仲間のキャラクターが生きている分、会話が小気味良いので物語は凡庸だけどそこそこ楽しめます。出オチの着ぐるみにも笑ってしまったし。違う見方をすると、手垢つきまくりなストーリーにこれだけの脚本を書けるというのは米国エンターテイメント界の底力をも感じさせます。 引っかかるとすれば、イレーヌがきれいで品がありすぎなので、とてもスタバでパートやってる部類に見えないということ。サンドラ・ブロックあたりならぴったりだとは思う。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-07-22 23:28:50) |
5. つぐない
《ネタバレ》 いやあ・・、こんな話聞かされても困るなあ。なんて言えば良いんだよう。「ドンマイ」か。 後悔は理解できるし、実際 冤罪での刑務所暮らしは苛酷だろう。でも戦争が始まったのはこの人の悔恨とは別次元の出来事だし。もっと言うと、他人の人生を自分が狂わせたとか思うのはやや傲慢かもよ。密告が無かったとしても、軍医として戦場に赴いてキーラに一度も会えずに戦死していたかもよ?人の人生など、操作できるのは神のみ。前線で、阿鼻叫喚の現場で同胞がばたばた死んでゆく中で昔13の女の子に濡れ衣着せられたことなど、彼の思考の何%を占めていただろうか。 小説の中で二人を会わせて、自分で贖罪だと納得したのなら、まあそれでもいいんじゃない。ただ、観てるこちらはがっつりと疲れた。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-01-15 23:42:37) |
6. 追憶(1973)
《ネタバレ》 魅かれあってるんだけど、上手くいかない。男女の仲の微妙な機微をレッドフォードとB・ストライサンドが完璧に、繊細に演じていますよね。特に、それほど多彩な役はできそうにないクセのある顔立ちのバーブラ・ストライサンドにとってはケイティ以上の当たり役はないでしょう。ケイティ、ああいるよなあこういう人。良く言えば一途で純粋、でも柔らかさ、安らぎに欠ける。そんなハリネズミみたいな女を大きな懐で受け止めるハベルにレッドフォード、これもベストなキャスティング。温厚な表情を曇らせてケイティのヒステリーに付き合いつつも限界に。ところが未練だらだらのケイティにやり直しを切り出された時には、一瞬呆気にとられた後、笑い出してしまう。この場面のハベルがとても魅力的でした。告白すると、惚れました。 過去、特に青春というものは誰にでも郷愁を伴った、甘くて苦い思い出でありましょう。音楽、タイトル、そしてベストキャストの二人が見事なまでに青く切ない“若い頃”を甦らせ、中年期にさしかかろうとする層ほど、心かき乱されてしまうのでは。 [ビデオ(字幕)] 8点(2014-05-02 00:24:56) |
7. ツォツィ
《ネタバレ》 ツィツィはもちろんスラムの激しい貧困が生み出した犠牲者であるとは思うんだけど、その問題を論じる以前に物語として語り足りないような気がする。まず、千枚通しで人の心臓を貫くことができるような奴が世界一手のかかる新生児を相手に情愛を持てるものかどうか。子供の頃、犬を飼っていたエピソードがあったけれど子犬と人間の赤子は全くわがままの度合いが違うでしょうに。 被害者夫婦も随分とツォツィに寛大な印象を受ける。何故だろう。二度も襲われて眼前で殺人まで行われたのに?三者に心の交流など無かった気がするけども。どうもこの“社会の被害者”ツォツィに肩入れさせようと誘導するような脚本が引っかかった。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2014-02-02 18:04:11) |
8. ツリー・オブ・ライフ
《ネタバレ》 こんなんだとは夢にも。こうも観念がかると宣伝打ちづらいのは分かるけど、TVの予告、アレはないでしょう。人という生命体は宇宙の営みのひとつ、愛も喜びも苦しみも天地創造のこの世の始まりから、悠久の流れに乗ってさらさらと溶けてゆく。何億光年も先の星雲や星の爆発等、ほとんど宗教と見まごう映像が家族の軋み話に突如としてはさまってくる。親父とソリの合わない息子のファミリー話がこうも深遠な解釈になるとは。感動するよりオラびっくらこいただよ。 ごく普通に、息子が父親を乗り越えてゆく成長の物語を見たかった。これさ、例えば家族の話のかわりにホロコーストを持ってきてごらんよ。人間の営みの愚かな部分を宇宙だ神だとすり替えるんじゃないよとハッキリ怒りを買うだろう。人間がしたことは人間が落とし前をつけるべき、となるだろう。ちと論点がずれちゃったけど、要は人の心の問題を神に丸投げしているカンジが嫌だな、わかんないなと思ったのでした。 [DVD(字幕)] 4点(2013-12-06 23:20:06) |
9. ツーリスト
観終わって印象に残ったものはといえばやたら身体の線を強調するアンジーと、ジョニー・Dのポカン顔とベネチアの街並みばかり。大甘のシナリオにげんなり、最後の役人の台詞にとどめ刺されて激怒。ウルセー。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2012-09-30 02:03:01) |
10. 月のひつじ
《ネタバレ》 月面着陸中継を、オーストラリアでキャッチしていたとは知らなかったー。いかにもオージーなのどかさ、茫洋と広がる牧草地と羊羊羊の真ん中に忽然と佇むでっかいアンテナ。科学技術の粋を集めた施設と、牧歌的環境のアンバランス。冒頭から掴まれます。現地所員3名と、ほぼこの部署いらないんじゃないの的な警備員1名にNASAからの派遣員1名が前線で頑張るんだけど、一生懸命な割りにすったもんだな展開になっちゃって可笑しいのなんの。外野の田舎町の皆さんも首相や大使を迎えてわあわあ楽しそうに大騒ぎ。合衆国国歌を悪意無く間違える・・ありなのか。笑ったけど。困難あり、恋バナありでサービス満点。全編に漂うほのぼの感が心地良く、あざとさが無くてそれでいてお客に楽しんでもらおうという制作姿勢の気持ちの良い映画。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-09-26 00:34:17) |
11. 翼よ!あれが巴里の灯だ
《ネタバレ》 さあ、単独飛行スタートだ、の時点でまだ半分も時間残ってる・・えー、33時間ものフライトをどうもたすんだよう、と思ったら過去話を挿めてリンドバーグの人となりを紹介する手に出た。この昔話が、ひとつひとつ面白い。初めてのmy飛行機でぐだぐだの離陸ぶりを見せられて慌てる売主、営業での口上。操縦のへったくそな、でも神に近づいた!と喜んでる生徒の牧師さん。「汚れた飛行機は認めん!」と怒鳴っている教官の真横にぼろぼろの飛行機で着陸しちまうリンドバーグ。どれもが温かく、心がほっこりする。こんな笑いを提供できるのは、ああさすがにB・ワイルダー。 [ビデオ(字幕)] 7点(2012-07-26 00:39:31) |
12. 月の輝く夜に
《ネタバレ》 特濃な主人公二人の顔に慣れるのにちょっと時間かかったけど、それはそれとしてお話はけっこう面白い。コメディーの段取りをきちんと踏襲しているし、笑いの質がほのぼのと丸っこいのが良い。意外や上手いこといってる展開なのに、婚約不履行を相手から言われるとそれはそれでムカッときちゃう女心、いやあわかりますよ。成就するもしないも色々あれど、ちょこっと恋に落ちちゃう皆さん。まあこれは満月のせいということで。アカデミー受賞の大看板はこの作品には無い方がいいかも。そっと名画座あたりで上映されるべきテイスト。あ、シェールのくるぶしまであるロングコートがこの時代っぽくてとても懐かしかった。 [ビデオ(字幕)] 7点(2012-05-09 11:03:23) |
13. 月はどっちに出ている
描かれる東京の匂いが猥雑で、いろんな民族がごちゃごちゃしていてアジア的なのがバブルもトレンディも崩壊した当時は新鮮に映ったものでした。愛する男を束縛するのでなく、あきらめにも似た感情で離れ行くルビー・モレノの女っぷりの良いこと。彼女元気かな。 [映画館(邦画)] 8点(2012-01-21 00:56:16) |
14. 冷たい月を抱く女
《ネタバレ》 大事件がてんこ盛り。冒頭の連続レイプ殺人だけでお話一つ作れるだろうに B・プルマンが無精子症だという事実の伏線だったりするのだった。すごい伏線。N・キッドマン、素性がばれてからのほうがハマってる。腰まである金髪巻き毛がやけに頭に残る・・のとA・ボールドウィンの髪型と髪の毛みたいな胸毛がやだなあ とか医療ミスだと20億なのか 勉強になった。・・とかこう書くとどうでもいいことばかり印象に残る映画だなあ。 [地上波(字幕)] 5点(2011-07-27 00:34:55) |