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1.  ドライビング Miss デイジー
何となく「ありがちなヒューマンドラマなんだろうな」と思ってしまって、今まで敬遠していて損した。とにかく「上手いなぁ~」という感想。主演の二人の演技はもちろんだが、細かい設定や小道具などの使い方が秀逸。ユダヤ人も黒人もWASPから見れば差別される側だが、経済的・社会的立場は大きく違う。警官に職質されるシーンは象徴的で、二人の関係はアメリカ社会における二つの人種の立場そのもの。その二人が、クルマというアメリカの成長と発展の象徴に一緒に乗り込んで、時代の変遷を見ながら走っていく(老いていく)という趣向が見事。黒人運転手は文盲だけれど、雇い主との賃上げ交渉ではしたたかだったりと、細かいリアリティの描き込みもしっかりしていて安心できる。100分という時間も丁度いい。  【おまけ】麻雀するシーンではクリスティーの小説を思い出すなぁ。
7点(2004-02-22 20:27:18)
2.  東京暮色
暗いとか異色とか言われているので覚悟して(?)見たが、確かに、まさか次女がああなるとは思わなかった。しかし、小津らしくないのはストーリー展開であって、作品全体のトーンマナーはあくまで小津調。おなじみの俳優陣による安心の演技が心地よい。父の、母の、姉の、男の、誰の気持ちであっても痛いほどに分かる。主役と言うべき個人はなく、家族が主役。小津最後のモノクロ作品にふさわしい趣きがある傑作。
8点(2004-02-06 01:18:07)
3.  泥棒成金
レポーターにグレース・ケリーを起用して、優雅な上流階級を描いたモナコやニースのプロモーションビデオ、まで言うと言い過ぎだが、そんな感じは否めない。サスペンスとは言えないが、ライトにミステリーのツボを押さえた作りで、充分楽しめるのは確か。 ヒッチコック自身、肩の力を抜いて撮った作品という気がする。粋な小品。
5点(2004-02-01 17:57:00)
4.  鳥(1963) 《ネタバレ》 
「息子の恋人に対する母親の嫉妬心が鳥の攻撃に象徴されている」という解釈をよく聞くが、それだけではなく、“鳥”とはヒッチコックにとって耐え難かった“負の女性性”とでも言うべきものの象徴ではないだろうか。一見かわいらしくても攻撃的で、群れて行動し、うるさく囀る。そして何を考えているか読み取れない鳥たち・・・。そんな“負の女性性”は、女優の上にも色濃く投影されている。ティッピ・ヘドレンは人形のようにかわいらしいが、実はかなりわがままで「感じワル~」な女。一方、息子を溺愛する母親(ジェシカ・タンディ)の表情や言動もかなり不気味。二人とも観客が全く感情移入できないキャラクターとして描かれていて、男から見ると、どうしても生理的嫌悪を感じてしまう。ブロンド美女の女優がお好みながら、女性性を嫌悪するヒッチコックの内面は、この作品で最もサディスティックな形で噴出したのではないだろうか。ガソリンスタンド爆発時に一瞬だけ挿入される、空から見下ろす鳥の視点の映像が印象的。
7点(2004-02-01 16:13:58)(良:2票)
5.  時計じかけのオレンジ
溢れ出る音楽、溢れ出る色彩、溢れ出る造語新語の数々、そして溢れ出る暴力。目をそむけながらも、目を離せなくなる。「これが人間だろ?」と語り掛けられ、「違う!」とは否定しきれない。映像と音楽のマジックが、見るものに鋭く突き刺さるキューブリックの独壇場。道徳心や宗教心、そこまで大げさでなくても、いわゆる公共心というものは、人間の社会をスムーズに機能させる潤滑油。だからアレックスが受けた治療は、潤滑油が足りなくて軋みをあげる部品に"油を差す"ということ。そしてそれは、実は我々が幼い頃から受けてきた「教育」をデフォルメしたものでもある。一体、我々とアレックスの間にどんな違いがあるというのか? 盗んではならない、殴ってはならない、レイプしてはならない・・・その感情はどこから来たのか? 生れ落ちてから日々、油を差されてきたからではないのか? アレックスだけではない、我々こそが「時計じかけのオレンジ」なのだ。観客としての高みにいることを許さない、極上かつ破格の映画。
9点(2004-01-27 18:03:53)
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