1. ハッピーフライト(2008)
面白かったです。肩の力を抜いて楽しめる群像劇ですね。様々なトラブルが発生しうるので小ネタが満載なんですね。俳優陣の好演も作品の雰囲気やテンポに収まっていて監督が巧いのでしょう。管制官の人たちが味がありました。 [DVD(邦画)] 8点(2011-02-08 12:11:37) |
2. 白痴(1951)
《ネタバレ》 「黒澤明生誕100年」ということですが、「七人の侍」「用心棒」などはもう充分に評価されているのだから、こういう松竹・大映で撮った作品にも評価・批評が欲しいと感じます。作品はかなり原作を踏襲されていると思います。特に、台詞なんて「劇?」と思うほど、役者の演技が脚本設定どおりに制限されているかに感じます。ただ、それは主役4人を除いての話。原節子・森雅之・三船敏郎と久我美子の演技が凄いんです。他の役者さんには申し訳ないが、四人の引き立て役です。 冷静に観ると、札幌の冬の中であんな日本人同士の恋愛・嫉妬劇がある分けないじゃないかと思うのですが、それが、それが、那須ターシャこと原節子と森雅之のすざましい演技を観るにつけて、もはやどうでもよくなる。上手く書けないのですが凄い。「赤ひげ」「生きる」「七人の侍」などの名作たる所以に、人や社会との関連を訴える必然があるのですが、この作品は、青年の純真無垢なオーラに回りの人間が 己の良心とエゴが衝突し、波紋を拡げる。その緊張感が凄くて、森雅之と原節子、久我美子、三船敏郎の素晴らしい演技でもって描ききってしまう強い力があった。そもそも、激しい嫉妬や憎悪というのはなかなか日本人として表現できない印象があるのですが、原節子と久我美子の終盤のやり時なんか、凄いですよ。皆、良心は持っているのに。。。黒澤作品の名作の殆どは「脚本の妙」というものが必ずありますが、この作品は『日本人・侍・日本社会』を描くという次元ではなく、『人間』(核心的なもの)を描いている崇高な作品。傑作であると思いました。やはり、原作を読んでから観るべき作品なんでしょう(原作をきちんと理解していない私が言うのも変ですが)。 フィルムセンターで近々上映があるので必ず見に行く。あと、完全版!出てこいや(笑) [試写会(邦画)] 10点(2010-11-02 21:38:05) |
3. 箱根山
《ネタバレ》 箱根が資本競争に飲み込まれてしまう。その模様を描いており、シリアスなテーマでありながらも青春劇をミックスしていて、もう「製作者の意図」どおりに作ったと解ってしまいます。それでも、しっかりと楽しめる作品に仕上げる辺りは流石。 箱根も現在では「富裕層」「一般庶民層」に棲み分けされた感があるのですが、当時は、道路・レジャー施設の開発競争が盛んだったという雰囲気が映像でも良く解る。その、箱根開発競争を説明するナレーション(活弁士のような、中島そのみの声が◎)と、ライバル社のバスのチキンレース(箱根ターンバイクを二台のバスが並び競って上っていく)には爆笑。加山雄三の「さわやか出来る男」ぶり、忠義も重んじて気持ちの良いほどの好感振りが憎らしい(笑)そして、星由里子の清楚な印象。この二人は開発競争で汚れていく箱根の、本来の清々しさを象徴。脇を固める俳優陣が豪華で、森繁久弥と小沢栄太郎とのやり取り、旅館での東山千栄子と藤原釜足のやり取りはもう職人芸の域で、観ていて楽しい。森繁さんは何かやらないと気がすまないのでしょうね。 [映画館(邦画)] 6点(2007-10-23 17:14:24) |
4. 幕末太陽傳
《ネタバレ》 DVDで何度か鑑賞していたが、NFCの特集でスクリーンで観ることができたが、圧倒的に面白かったなあ。 冒頭からの相模屋の喧騒であり、また、居残った佐平次が「へいへい、何でげしょう」と大活躍する様は、やはり観ていてすっきりする。古典落語の抱腹絶倒のエピソードを早台詞と小気味良いテンポで、多くの人間が駆け回る。 日本でコメディといった類はハリウッドを模したものが多いのだけど、古典落語を映像としてこんなにテンポが良いのだから当時の日本映画としては革新的ではないかな。 殿川=フランキーの技上手をみせた「三枚起請」がお気に入り。 左幸子と南田洋子の二階まで動かすバトルは凄かった。 石原裕次郎扮する高杉晋作とフランキーが対峙する品川沖の場面では、庶民を代弁した名台詞がポンと飛び出す。 ただ、フランキー堺とは別に撮った高杉一派の行動には、(落語のネタでもないことからも)もう少し面白く絡むことを想定していたのだろうか? やや違和感があったのだけど、マイナスではない。 日活のスタア俳優さんは川島色とは少し違う感じはありますね。 [映画館(邦画)] 10点(2007-08-14 16:59:03) |
5. 初春狸御殿
市川雷蔵が、姫御殿で幾人もの姫様と連続して(多分7人までは数えた、若尾のシーンを入れて9人かな)踊り戯れるシーンは、大映名物の特大スタジオを奥行と横をフル活用した豪華絢爛のシーンですね。凄くお金がかかっているんじゃないかと思いました。 若尾文子と市川雷蔵のドアップに流石にうっとり。中村雁治郎の狸姿には笑いつつ、唖然、脚の長い水谷良重。若さがとにかく目立った中村玉緒、勝新太郎。あと、河童ギャルのアレには、昨年の紅白歌合戦の物議を呼んだウェアを想い出しましたよ。とまぁ、新春のかくし芸大会みたいなお祭りモノで、当時は年始に映画館でこういうのを観て楽しんだんですね。 力を抜いて楽しむ映画です。(1月、NFC「ミュージカル映画特集」) [映画館(邦画)] 5点(2007-08-01 13:32:33) |