1. バーティカル・リミット
《ネタバレ》 手に汗握るスリルが満載の映画。登場人物たちのトラウマとなるような惨劇を冒頭で描くあたりは『クリフハンガー』をなぞっているようだが、今回の真の敵は雪山そのものである点で、『クリフ~』以上に抗いようのない自然の猛威をこれでもかと描いてみせている。ただ、この作品において『クリフ~』以上に気になる映画が『恐怖の報酬』だ。危険なルートを経て目的地までニトロを運んでゆく点、複数のグループに分かれて危険を分散する点、そして、主人公が組みとなっているグループだけが最後に目的地に辿り着く点など、実は『恐怖~』の雪山バージョンを作りたかったのではと勘ぐりたくなるほど、この二つの映画に共通項は多い。しかし、『恐怖~』が、その道中で遭遇する様々な困難とその度に繰り広げられるグループ内の葛藤が人間模様をまざまざと浮きぼりにさせたのとは対照的に、本作で描かれるのはあくまでアクションのためのアクションであり、人物描写に関してはずっと表面的なまま横滑り状態なのだ(スコット・グレンが氷漬けの妻の亡骸と対面するシーンなんて実に感動的なのだが、それ以上の描写がまったくないあたりもそう)。だから、スリルはあるが感動が生まれて来ないのは至極当然のことだろう。 5点(2003-01-03 07:48:41) |
2. パブリック・アクセス
「パブリック・アクセス」とは、ケーブルテレビなどのメディアを利用して、地域社会の問題点を提起し解決することを目的に、一般市民が制作した番組を放送する制度のことで、アメリカなどで広く普及しているそうだ。本作を見れば、そのシステムがよく理解できる。大規模なテレビメディア網の一方通行かつ膨大な情報の流れは権力的と揶揄されたりするが、その情報伝達手段の一部を市民に開放しようという、実に民主的な発想に基づいているものだ…が、本作は、この草の根民主主義を媒介に、平和な町をあっという間に蝕んでしまう一匹な悪性ウイルスの恐怖を描いている。この映画についてのいくつかの批評を見ると、主人公はあちこちの町を渡り歩いては同じようなことを繰り返している愉快犯ではないかとの意見があって、ナルホド、それはそれでかなり怖いなぁと思ったが、私の意見は、主人公の正体は市長(の面を被った金の亡者)に雇われた監視人(というか殺し屋?)ではないか、と。市長の裏計画を妨害する人物を割り出し始末するための「パブリック・アクセス」だったのではないだろうか。そう考えると、市民主体の平和的活動が巨大組織の非情な情報収集活動に転化してゆく恐ろしさが浮かび上がってくる。番組の最終回(?)に出演した市長の「彼は信用できるから…」というセリフがけっこう怪しい…。ともあれ、この作品のテーマを凝縮しているのが、ラストで主人公が自転車に乗った子供に語りかける、「知らない人に声をかけられてもついていっちゃダメだよ」というセリフ…知らない男の呼び掛けに反応してしまった町が荒廃していった様をここでフラッシュバックせずにはいられないだろう。作品の評価としては、主人公の性格の意図された曖昧さと、これに対比される町の人々の輪郭がこれまた曖昧なため、全体的にぼやけてしまった印象がぬぐえない。それにしても、トンネルの殺人現場のシーンは何の伏線だったのか、分からないのだが…? 5点(2002-12-15 05:34:31) |
3. バウンド(1996)
スタイリッシュな映像美が印象的な映画。なんとなくコーエン兄弟の映画を連想させたりもするが、それほどアクの強い作品というわけではなく、かと言ってデビッド・フィンチャーの映画のように映像技巧のみで先走ってしまうこともなく、エンターテイメントとしてふつうに楽しめました。ただ、私も後半のサスペンス部分の粗さが気にはなりましたが…。 5点(2002-11-03 04:22:37) |
4. バックドラフト
ロン・ハワードは監督として力量のある方ではあり、娯楽作品としてなかなかの出来になっている。ただ、感動作という側面での盛り上げ方にはやや無理矢理なところがあり、ちょっとひいてしまった部分も…。今回のデ・ニーロは客寄せパンダ的存在。 6点(2002-02-25 10:37:26) |
5. パピヨン(1973)
スティーブ・マックィーンの強烈な個性とフランクリン・J・シャフナー監督の力強い演出力で、長尺とも思える2時間半を、観客を飽きさせることなく描ききっている。殺人的な独房のシーンは、収監されているマックィーンの圧迫され追いつめられた心理をうまく描写していて秀逸。ダスティン・ホフマンのザビエルはげは無理矢理だったけど…。 7点(2002-02-25 08:41:54) |
6. ハンバーガー・ヒル
戦争の悲惨さを訴えるのに少し感傷的に描き過ぎてる気がした。戦闘シーンだってそれなりの迫力はあるのだが、なんだかごちゃごちゃした感じで、狙い以上のインパクトを与えられてはいないだろう。『プラトーン』にも同じことが言えなくもないが、あちらは人間ドラマとして非常にうまく描かれている。まぁ、戦争映画としての観点から言えば、どっちもどっちなんだが…。 4点(2002-01-28 08:02:48) |
7. ハドソン・ホーク
この映画、公開当時は散々な批評を浴びせられてましたね。前評判を聞いてから観に行ったせいか、さほどつまらなくもなかったような…。あーいう悪趣味な演出もアリかと。イタリアの美術館の警備員がステンレスの容器からパスタを皿に取り出して食べてたのが印象的。 4点(2002-01-28 07:47:58) |
8. バトルランナー
刹那的快楽を追求するメディアへの批判をこめた映画のようだが、シュワルツェネッガー主演を売りにしただけのB級アクションという印象しかない。 3点(2002-01-28 07:36:30) |
9. パトリオット・ゲーム
1作目と明らかに異質な雰囲気の映画に仕上がった原因は、主演俳優の交代の影響も大きいが、それ以上に監督の力量の差が大きいことだろう。主役の座を、印象の薄いアレック・ボールドウィンから濃ぃいハリソン・フォードへとバトンタッチさせたことで、大海原を舞台にした迫力あるマスゲームから主演俳優の個性に寄りかかった普通のアクション映画へとスケールダウンさせてしまった。 5点(2002-01-28 07:23:19) |
10. バグジー
キャストがみなハマリ役で、バリー・レビンソン監督の堅実な演出手腕も手伝って、全体としてきれいにまとまっている…が、きれいすぎる。とくにどうといった印象が残らない。いや、出来としてはすごくいいのだが…。 5点(2002-01-28 04:40:09) |
11. ハートブルー
観客もスリルジャンキーたちといっしょにサーフィンしたり、スカイダイビングしたり…強盗したり…する気分が味わえますね。潜入捜査官を描く映画はいつもハラハラさせてくれます。スクリーンから暖かい風が吹いてきそうな映画。出来としては…まぁ、普通かな? 5点(2002-01-28 04:30:14) |