1. 富士山頂(1970)
《ネタバレ》 1970年といえば、邦画界がTVに押されて凋落を始めた頃、しかしそれでもこのクオリティの高さには恐れ入った。 まずは俳優陣がとてつもなく豪華。 主演の石原裕次郎はもとより、勝新太郎、東野英治郎、宇野重吉、渡哲也、田中邦衛、山崎努、市原悦子と、実力派、重鎮がことごとく出演のオールスターキャストだ。 戦争を体験した昭和の俳優の引き締まった立ち居振る舞いと、1970年当時の風景。演出はスーパースターの裕次郎を主演に据えているからといって軽薄で観客に媚びることがない、重厚で抑制されたもの。 昨今の製作側の政治的な都合だけのミスキャストや場違いなタイアップテーマソングもない。 三菱重工社員の役所である裕次郎は台詞は少なく、表情で語る場面が多い。 僕は俳優としての彼をじっくり観たのは初めてだが、彼の並々ならぬ才能を垣間見た気がした。 安易なセット撮影に逃げることなく、果敢に富士山でのロケ撮影を敢行したことも画面に奥行きと重厚感を加えている。 本作の権利は石原プロモーションが持っているのだろうが、現在に至るまでDVD化されずに人々の目に触れなかったというのがつくづくもったいないことだと思う。 同じく幻の作品「黒部の太陽」もそうだが、ハイビジョンやBDの普及で家庭での視聴環境が整ってきた現在、そろそろソフト化して多くのファンに作品を観てもらう機会を設けるべきではないだろうか。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2010-12-09 13:41:02) |
2. フライボーイズ
トニー・ビル監督の経歴をみたら、「スティング」で製作をつとめていた。 「スティング」を監督したジョージ・ロイ・ヒルといえば飛行機映画の名作「華麗なるヒコーキ野郎」がある。時代設定もほぼ同じ。当然意識していたはず。 ヒルはパイロット出身だったが、ビルも同じくパイロットで複葉機マニアだというだけあって、レプリカで実機を作ってしまうほどメカニカルな面のこだわりはすごい。 しかし本作の一番の売りである複葉機同士の空中戦などではCG頼みになり、カメラワークがダイナミックであるほど「CG臭」が漂って微妙に安っぽさを醸し出してしまう。このあたりは「華麗なる~」での美しい空撮映像には逆にかなわないという皮肉な結果になっている。 ストーリーはいままでの娯楽映画、青春映画に使われてきたどこか既視感のあるシチュエーションが幕の内弁当のよろしくてんこ盛りで、スタジオ関係者はそろばんはじきやすいだろうが、目新しさはない。 まあ監督が本当にやりたかったのは複葉機が宙を舞う空中戦であり、その他の要素は添え物なのかもしれないのだが、上記のように肝心の航空アクションが微妙になってしまったため、飛行機マニアにもドラマを観に来た客にも中途半端な印象を残す作品となってしまった。 [DVD(字幕)] 6点(2008-04-08 19:18:40) |
3. ブレイブ ワン
《ネタバレ》 過酷な運命に翻弄され苦悩しながらも危機を力強く乗り越えていく、という女性を彼女は良く演じるが、そういう役柄は本当にはまり役だと思う。 彼女は笑顔よりも苦悩する表情の方が美しい。 最愛の婚約者を殺され、警察も頼りにならないと悟った彼女が違法に銃を手に入れ、夜な夜な処刑人として無法者達に制裁を加えていく心情の変化が非常に丁寧に脚本に織り込まれており、ジョディ・フォスターの演技力にも助けられ最後まで一気に鑑賞できた。 しかし、あとで振り返ってみればわだかまりが残るのも事実。心情的には理解できても違法な行為である彼女の行動を正当化し、美しく際だたせるためには、悪党を単純化して記号化してしまわなければならないが、引き替えに作品の世界観、奥行きが失われる。この種の作品の限界だろうか。 [DVD(吹替)] 7点(2008-03-17 14:28:49) |
4. ブレードランナー/ファイナル・カット
本作を劇場で鑑賞するのは初代オリジナル版が公開された1982年以来です。 25年を経た今、同じ新宿で「ファイナル・カット」を鑑賞できるとは感慨深いものがあります。 映画の内容については余りに語り尽くされているので申しますまい。 今回何よりの収穫だったのはDLP方式での上映であったことです。 名前は聞いていましたが、実際この方式で映画を観るのは初めてでした。 ひと言で言って驚愕の映像、音響です。 本作のあとに「続・三丁目の夕日」を別の劇場で、通常のフィルム上映方式で観たのですが、こちらが最新作にもかかわらずあまりの品質の差に驚きました。 DLP方式で観るブレードランナーは、画面揺れゼロ、ゴミ、傷がひとつもない、フィルム粒子一粒一粒まで認識できるほどの解像度、暗部の豊かな階調、クリアでダイナミックな音響、これが25年前の作品とは到底思えない品質です。 そうして体験する2019年のロサンゼルス。画面のあちこちに新たな発見をすることになります。「もう何十回も観たよ」という人ほどあらためて劇場で観た方が良いと強くお勧めしておきます。 [映画館(字幕)] 10点(2007-11-29 01:35:14) |
5. プラネット・テラー in グラインドハウス
《ネタバレ》 うーん、高得点目白押しの中気が引けますが、正直言って面白くなかったです。 「デス・プルーフ~」と並んで出来るだけ事前情報を入れずにいたので、トレーラーやポスターだけで色々想像していたのですが、脚がマシンガン化した彼女がなにやらアンドロイドかロボットのように変身するのか、などと勝手に想像していました。 ところがふたを開けてみればB級テイスト満載のゾンビ映画でした。 B級ですから、ディティールや物語の進行に無理があるのはいいのですが、肝心のお話が魅力的でない。 物語のキモは後半で明かされるわけですが、途中まで次々登場してくる人物達が一体誰が何なのかよくわからない。クライマックスで何かカタルシスがあるかというとそれほどでもない。 ただ、生理的嫌悪を狙った血みどろスプラッタ描写と、ガンアクション、派手な爆発。 わざと狙っているのはわかるし、これを期待して行った人は拍手喝采でしょうけど。 それから出たがりタランティーノが途中出演しますが、折角物語に入り込みそうになったときに彼が登場したのでずっこけてしまいました。 彼も一生懸命ノリノリで演技してるのですが、やはりプロの俳優と並んでしまうと浮いてしまう。 目の表情、目力が違うんですよね。 タランティーノの目はまだ素というか、照れが残っている。そこで現実に引き戻されてしまうんです。 今回2作品を観ましたが、これは分けて上映するのではなく、米国版のようにひとつの作品として上映した方が良かったと思います。バラにしてしまうとやはり弱いです。 [映画館(字幕)] 5点(2007-11-09 20:10:58) |
6. フラガール
《ネタバレ》 これ本当にあった話なんですね。最後で紹介されるまで知りませんでした。まあもちろん脚色はあるでしょうけど。導入からのテンポの良い物語の展開は好感が持てますが、途中からちょっとたどたどしさが出ましたね。平山まどかが生徒達とうち解けていく過程が急ぎすぎて唐突だし、逆に中盤の興業の旅の過程、クライマックスの大舞台は間延びに感じました。あの大舞台は製作側にとっても力の入った思い入れのあるシーンだと思いますが、そこに溺れてはいけない、溺れていると悟られてはいけない。昭和40年らしい風俗と炭坑の疲れた感じは良く表現されていて、美術部門の奮闘に拍手した気持ちですが、そんな全体のバランスを唯一ぶち壊していたのが豊川悦司。あの髪型はないでしょう。祖父の代から炭坑で生きてきた男の髪型ではない。なぜなのか。他の作品を掛け持ちしていたから?ギャラ?それとも豊川自身の作品への思い入れの無さなのか?ついでに言えば彼の東北弁も大いに違和感ありでした。邦画でいつも腹立たしいのは一部に見られるスター級役者のそういったぞんざいな役作りですね。作品としては8点でもいいのですが、彼が足を引っ張ったと言うことでー1です。 [DVD(邦画)] 7点(2007-03-29 03:15:11) |
7. 不都合な真実
《ネタバレ》 大統領選で僅差で敗れたゴア氏は、こんなことをやっていたのか。彼は地球温暖化問題、つまりは地球環境問題に長く取り組んできたようで、今は世界中をこの問題の啓蒙のために飛び回っているそうだ。この作品はその講演内容をシンプルに映像化したもの。だから映像的に斬新であるとか目新しいとかいうことはないのだが、今地球に起こっている「不都合」どころではない背筋も凍るような驚愕の真実が、ゴア氏のユーモアを交えた巧みな話術と、豊富なデータによって明らかにされる。皆さん環境問題、地球温暖化と耳タコでしょうけれど、目を背けずにこの現実を見てください。ほんと地球マジヤバイです。しかしこの作品の良いところは、危機を煽るだけ煽って、はいサヨウナラ、ではないところ。アメリカ人らしい、明るさといおうか、前向きさ、といおうか(一番CO2を吐き出しているのは当のアメリカ人なのに・・・)、これだけ絶望的なデータを示しながらもなお「希望を捨てるな、我々は今まで幾多の危機を乗り越えてきたではないか。この人類未曾有の危機も必ず乗り越えられる」と訴える。それは特別なことではない。エアコンの設定温度を上げましょう、公共交通機関を使いましょう、リサイクルしましょう、といったことだ。正直なところ、それも焼け石に水かもしれないと思う。でも、何もしないよりは少なくともましなのだ。 [映画館(字幕)] 9点(2007-01-21 01:51:17)(良:2票) |
8. ブロークン・フラワーズ
だからー、結局何なんだよ!と言いたくなってしまうのだが、ジャームッシュ作品を楽しみたかったら「それを言っちゃおしまいよ」なのだ。それはわかっている。わかってはいるが、僕にはこの作品に限らずジャームッシュ作品を味わうアンテナが貧弱なようだ。わかりやすい起承転結を用意したり、メッセージを主張したり押しつけたりしない。観終わった後に、何かもやもやしたものが残ったりすればそれで良いのかもしれない。 [DVD(字幕)] 6点(2006-12-29 11:16:34) |
9. 武士の一分
《ネタバレ》 原作がそうなのだからといわれればそれまでだが、山田洋次のこの三部作はシチュエーションが皆同じ。この似たような物語をつくった意図は何だったのか、僕にはよくわかりません。今作は愛する妻を手籠めにした上役に対する復讐劇。確かに悲劇なのだが、復讐劇に持って行くためのお膳立てが整いすぎていてどの登場人物もどうも存在感がない。しかも妻の行動も僕には浅はかに見えてしまう。僕は敵役のキャラクターにどれだけ深みを持たせられるかが、このような物語のクオリティを左右すると思うのだが、島田藤弥の悪徳ぶりがいかにも底が浅い。「たそがれ清兵衛」のような敵役の人生を感じさせるような切なさが何もない。また下級武士の暮らしを丁寧に描いたり、城中の官僚的な組織の描写ははそれはそれで興味深いが、もはや三作目になるとそれ程目新しくもない。「たそがれ清兵衛」は名作だったのに、三作目に至ってスケールが小さくなってしまった印象でした。 [映画館(邦画)] 6点(2006-12-23 05:42:14) |
10. ファイナル・カウントダウン
これは映画館まで観に行きました。先日久しぶりにオンエアされていたので観たのですが、やはり今観ると、テーマは面白いのにB級然としていてもったいないですね。捕らえられた日本兵もおそらく日系俳優なのかカタコトの日本語だし。しかしそんな中でテーマ曲だけは映画史に残る名曲だと思いました。是非リメイクしていただきたいと思います。 [映画館(字幕)] 6点(2006-06-17 19:04:21) |
11. フライトプラン
密室である航空機の中で娘が行方不明に・・・。この設定に心惹かれ観たのですが、手に汗握ったのは犯人がわかるまで。この謎解きがこの映画の評価を決める鍵だったのですが、あまりに詰めが足りなかったと言わざるを得ません。後半は伏線もとっ散らかったまま単なるB級アクション映画へと堕してしまいました。映画は大きな嘘はついてもいいが、小さな嘘はついちゃいかんと倉本聰が言っていたそうですが、本当にそのとおりだと思いました。 [DVD(吹替)] 5点(2006-06-01 07:53:38) |
12. フォーガットン
とても評判が悪い本作ですが、そこそこ楽しめました。いきなり彼方へ吹っ飛ばされるという発想はなかなかおもしろい。確かに彼らの動機と行動はちょっと変ですが。ハヤカワ文庫あたりの短編SFを読んでいるような不思議な感覚がありました。 [DVD(吹替)] 6点(2006-05-03 16:35:37) |
13. ブラウン・バニー
ギャロなりの美学があっての愛情表現だろうし映像にも拘っているのだとは思うが、これは失敗してると思う。 4点(2004-12-13 04:59:22) |
14. フェノミナン
おっとこの映画観たのに忘れてた・・・。もうパターン化されたようなストーリーで、それ程印象に残らなかった。トラボルタはこういう役よりクセのある悪役の方が似合ってるかな。ソードフィッシュのような。 6点(2004-08-05 22:55:10) |
15. ブラッド・ワーク
彼の作品らしく淡々と物語が進む演出は良いが、引退した捜査官だとしてもイーストウッドは歳をとりすぎで違和感があるし、依頼主と恋に落ちるのが安易過ぎて作品を安っぽくしている。もっと葛藤があっても良いのではないか。 6点(2004-08-01 12:02:31) |
16. ブルース・オールマイティ
期待してたのに残念。アイデアは面白いのに展開が安易すぎ。製作者の想像力が貧困なのだろうか。神にである苦しみや悩みも底が浅く思えてしまう。ジェニファー・アニストンとの心の絆ももっと深く描いて欲しかった。ジム・キャリーのハイテンションも痛々しかった。 5点(2004-06-10 17:56:18) |
17. フォーン・ブース
シンプルな設定をここまで緊迫感のある物語にした手腕はすごい。80分ほどの短い映画だが丁度良かったと思う。 9点(2004-04-08 08:15:08) |
18. BLACK JACK ブラック・ジャック(1996)
ブラック・ジャックは原作を手垢で汚れるくらいに読みました。名作だと思います。確か実写版でも加山雄三主演でTVドラマ化されましたね(以下自粛)。映像化に当たって一番難しいのは、実はピノコではないかと思うのですが、いまだかつて原作のイメージを壊さないピノコに出会ったことはありません。ピノコ語を嫌味なく言える俳優(声優)さんがなかなかいないのです。本作もその意味では力及ばずといったところでしょうか。 最近も何度か映像化されているようですが・・・なかなか難しいですね。 4点(2004-04-06 06:16:49) |
19. プラトーン
オリバー・ストーンはベトナム戦争従軍経験があるそうなので、きっとかなりの部分、実際の戦場を再現していたのではないかと思う(いや、わからないけど)。残念だったのは低予算ゆえ戦闘機が思いっきりおもちゃだったこと。小さいことだが。 8点(2004-03-17 06:09:26) |
20. ブギーナイツ
あれー・・「マグノリア」を観て、この監督はすごいと思ったんだが、意外と普通だったなあ。もっと衝撃的な結末を想像してたのに肩透かしを食らったです。 6点(2004-02-24 20:11:42) |