1. (秘)色情めす市場
《ネタバレ》 当初予定されたタイトル「受胎告知」のイメージで見るか、 現行の「(秘)色情めす市場」として鑑賞するかで評価が 分かれるのではないか、という感想を持った一本。 モノクロで映し出される大阪・釜ヶ崎の生活感溢れる 情景は「生きる為に性を売る」感が生々しすぎて エロなんて感じる事無く、劇場を出た20代の私。 その時点で田中監督が「受胎告知」というタイトルに こだわりを持ってた事、合わせてこの時期に お子様を亡くされる悲劇中での撮影であった事も知らず。 約10年ぶりのスクリーン鑑賞、上記のポイントを踏まえて 見直すとヒロインは汚れた俗世の中で生きている聖母 みたいなもの。生活の糧として売っていた身体を 愛の奉仕目的で捧げる事で世界に色が付く =真っ赤な夕日が映し出す天王寺や大阪城、通天閣に 連なるイメージの羅列。枯れた今見直すと凄いエネルギー。 何十年経っても変わらないのはヒロイン芹明香の素晴らしさ。 この年19才とは思えない。面白いのは彼女自身は 「(秘)色情めす市場」タイトルの方が好みだった事、 周囲の反応とは逆に「演技には納得して無かった」 とインタビューで述べてる事。 初見に比べて評価が上がったので、 点数甘いかなと思うけど機会が有れば。 ブコウスキーの本・世界観が好きならハマるかも。 [映画館(邦画)] 7点(2024-02-18 08:46:54) |
2. マルメロの陽光
《ネタバレ》 カリン(マルメロ)の樹を20年かけても描ききることの出来ない画家ロペス。彼にとってマルメロの果実=実が生り熟し朽ち果てるその姿は「人生」そのものだったのではないか。対象はあまりにも大きく、キャンバスに描くことは困難な代物なのかもしれない。ただ人間の美を愛する心・夢を描き出すことはまさに自由なのだと若輩者の大学生であった私にとって胸を打った一本。昔の映画ファンは名監督達の作品をリアルタイムで観ることが出来た点、羨ましいとも思うが我々にはまだ「エリセの新作を観ることが出来る」特典があるのだ。なんて幸福な事なのだろう。〔追記:2013年4月末~6月中旬まで東京でアントニオ・ロペス展(その後長崎→岩手と移動予定)が行われ、未完のマルメロの絵も見ることができた。この人の絵に他の作家とは異なる、より「暖かさ」を感じたのは自分だけだろうか。てかさ、こんなタイミングでソフト再発・再映の機会もないとは…無常なり~。〕 [映画館(字幕)] 9点(2009-01-11 14:11:45) |
3. まぼろしの市街戦
《ネタバレ》 【2019年改訂】2018年10月に4Kリマスターが劇場公開されてたので鑑賞。混乱に満ち溢れるこの世界で、この作品がますます存在感を増す様になってしまったのは嬉しい事か悲しい事か。強烈な皮肉に溢れたこの映画、これはおすすめ。 [映画館(字幕)] 9点(2007-07-05 19:40:54) |
4. 祭りの準備
《ネタバレ》 最初この映画を見た時、私は東京近辺から外へ出たことのない大学生でこの映画の登場人物が思いをはせる「田舎の閉塞感・都会への憧れ」という概念はこれっぽっちも感じずただ役者の演技(ある意味江藤潤の最高傑作だろう)にうまいなぁという考えしかなかったのが事実であった。ただ時が経ち外へ出るようになりこの映画を再見し、たまらない気持ちになる。大都会へ出たからといってそこには希望があるかと言われれば実際そうではないだろうがそれでも何かがあるはずだ、何かを成し遂げたいという想いは誰もが皆持っている感情なのではないだろうか。殺人犯となった幼馴染原田芳雄が街を離れる主人公に送る「万歳!」のエール。「青春・旅立ち」を描いた邦画の中でも抜群の出来栄え。 [映画館(邦画)] 7点(2007-01-07 19:31:14)(良:1票) |
5. 魔術師
《ネタバレ》 「ファニーとアレクサンデル」は別格として、面白いベルイマン映画としてはこれを推す。催眠術を売り物としているさえない魔術団がある町に滞在する羽目になり、魔術の存在を信じない町の人々から(知事・医師など)蔑視されてしまう。ここでももちろんベルイマンの「神様への疑問」という視点は健在で、神の「奇跡」で表される行為・言葉が人々の現実的な物の考え方や科学的な根拠にとって見れば意味をなさない、という事を「魔術」を通して表しているのだ。最後シオシオになってしまった劇団に王族からの招きが来て元気百倍、意気揚々と出発するオチはある意味宗教が「流行に流されがちな、軽い存在として」扱われてしまっている皮肉を映し出しているようで厳しい。コメディとしても楽しく特に家に帰れば疲れた中年、団長シドウやその妻で男装の麗人チューリン。「ベルイマンわからん」という人にはぜひ。 [ビデオ(字幕)] 9点(2006-07-29 10:15:38)(良:1票) |
6. 瞼の母
改めて再見するにこの映画、錦之助は語り部のようなものでポイントは彼が出会い分かれた4人の「母親の子供にたいする愛情」それに尽きるのではないでしょうか。実の母親に合うまで知り合った女性3人は皆子供に対する愛情を忘れずに残してくれていた、だからこそ実際に対面となった際世間体を気にする様な発言に終始する母親に対して絶望的になった忠太郎。そして彼を付けねらう者に対し「手前ら親は、子供はいるか」と言って母親への想いを無理に断ち切るように刃を奮います。実母が改心する流れには多少無理があるかな、という気がしますが彼を追いかけ夜の闇に叫ぶ「忠太郎!」の声。その声をバックに涙をこらえる忠太郎。素晴らしい。役者の名演もさることながら、盲目の流しを見つけ気に留める忠太郎のワンショットにまた加藤泰節を感じ、気持ちよくなる一本です。 [映画館(邦画)] 8点(2006-06-11 20:32:59) |
7. マルタの鷹(1941)
この映画の最大の致命傷はファム・ファタールたるメアリー・アスターにその雰囲気が欠けてしまっていること、これに尽きるのではないか。彼女自身は好演しているのだがハードボイルドで魅力的なヒロインの造詣は絶対であるだけにちょっと残念。「これはなんだ」「夢のかたまりさ」かっこいいぜ、ボギー。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-04-16 23:20:55) |
8. 街の灯(1931)
《ネタバレ》 個人的には「犬の生活」「サーカス」といった喜劇群を愛している私もこの話に関しては10点をつけないと仕方がないですね。「キッド」「黄金狂時代」を経たチャップリンはこの映画を撮り人生の悲哀と喜び、切なさをすくい上げ映し出した事で「コメディ王」から本当の「映画作家」になったのではないかと。だからコメディを期待して見た皆様がちょっと波長が違うと感じたのもごもっとも。ボクシングのドタバタも可笑しさ、というよりもそんな目にあわなければならなかった浮浪者チャップリンへの同情を先に感じてしまいます。ラストシーンの感動はもちろんの事、そこに至るまでの細かい表現に感心する名作です。 [地上波(字幕)] 10点(2006-04-16 22:37:26) |
9. マスク(1994)
「突然音楽が鳴り演者が歌を歌い踊りだす」ミュージカル映画の楽しさからいえば「シカゴ」「ムーラン・ルージュ」なんかよりよっぽど王道をいっていて好感がもてる。またCGの使い方も「荒唐無稽な表現をさらに誇張させて見せる」という目的で理想的。犬好きとしては、マイロ家に来てぇ~、チキチキブン。 [映画館(字幕)] 6点(2006-04-16 17:15:02) |
10. 真夜中のカーボーイ
《ネタバレ》 私にとっての涙腺直撃のシーンはなんと言ってもラッツォの死ではなく、その前のジョーがアロハシャツに着替える為にカウボーイの衣装をゴミ箱へポィッ。たまんね~。ホフマンよりもそれを受けるボイドの方が上手いと思ったのは私だけ? [映画館(字幕)] 9点(2006-04-14 23:53:16) |