1. メリーに首ったけ
《ネタバレ》 破天荒なラブコメ作品。 この頃のファレリー兄弟作が好きな人にとっては、後の作品は「良い子ぶってる」と思えるだろうし「これぞファレリー兄弟の真骨頂」と本作を賛美する人の気持ちも、分かるような気はしますが…… 自分としては「後の飛躍を感じさせる、粗削りな初期作品」って印象でしたね。 決して嫌いではないけど、完成度は低かった気がします。 主人公のテッドが小説家志望とか、冒頭に出てきたルイーズの存在とか、色んな設定やキャラを活かしきれていない気がするし、あれもこれもと面白そうな要素を詰め込んだ結果、粗が目立つ形になってるのが、良くも悪くもアマチュア的。 序盤の「ナニをチャックに挟んでしまった」展開も痛々し過ぎて笑えないし、最後の終わり方も唐突過ぎて(雑だなぁ)と感じちゃいます。 自分は本作を何度か観返してるんだけど、その度に序盤で(うわ、痛そう)と引いちゃうし、最後には(すっごい雑な終わり方)と呆れてるんだから、これはもう筋金入りというか、この二点に関してだけは、とことん自分に合わないポイントなんでしょうね。 でもまぁ、やっぱり嫌いじゃないというか……むしろ好きな映画なんです、これ。 そもそも監督がファレリー兄弟で、主演がキャメロン・ディアスとベン・スティラーという自分好みな布陣なんだから、嫌いになれという方が無理な話。 メリーに言い寄る男共を多数用意して、群像劇として描いてるにも関わらず、主人公のテッド以外が酷い奴揃いで「誰がメリーと結ばれるか」みたいなドキドキ感が無い(ブレット・ファーヴは例外的に聖人として描かれてるけど、実在人物である彼がメリーと結ばれるはず無いと観客は分かっちゃう)辺りとか、映画としては致命的な欠点だと思うけど…… ベン・スティラーという名優がテッドを演じ(こいつとメリーが結ばれなきゃ駄目だ)と思わせてくれるお陰で、その辺も気にならなかったです。 あと、一番大事なポイントとして「作中で色んな男に言い寄られるくらいに、メリーは良い女である」って事に、しっかり説得力があったのも素晴らしいですね。 これはもう脚本とか演出以上に、キャメロン・ディアスという存在ありきの、力業みたいなもんだと思います。 「ヘアジェル」で髪が逆立ったメリーの姿を、下品にし過ぎず、可哀想にもし過ぎずに(この子、可愛いな)と笑える形で演じられるのって、彼女だけじゃなかろうかって思えたくらい。 それから、本作って下品なギャグが目立つけど、実は凄く道徳的な話でもあると思うんですよね。 メリーの弟のウォーレンに関しても、知的障碍者である以上、映画としては「天使のように良い子」として描かれるのがお約束なのに、本作では全然そんな事無いんです。 テッドの顔に釣り針を引っかけても「僕じゃない、テッドが悪いんだ」と言ったりして、むしろ嫌な奴というか、悪い子として描いてる。 でも、最終的にはテッドに心を開いて、耳に触れられても怒らない場面を見せたりして、可愛いとこあるじゃないかって思わせたりもする。 つまり「基本的には悪い子だけど、それなりに可愛気もある」という、非常にリアルなバランスなんですね。 その辺り「障碍者だからといって、特別扱いはしない」「障碍者は皆して善人だなんて、そんなの馬鹿げてる」っていう作り手のスタンスが窺えて、自分としては好ましく思えました。 誠実なテッドがメリーと結ばれ、嘘ついて彼女に言い寄ってたパット達は振られちゃうのも、如何にも道徳的というか、童話的。 「好きな映画が一緒」って事に浪漫を感じる身としては、本当は好きな映画でもないのに騙してメリーに言い寄るパットって場面が一番抵抗あったし、その後の顛末にも大満足。 やっぱり、映画オタクとしては、映画の好き嫌いでは嘘ついて欲しくないです。 最後は人が撃たれて、悲劇的な幕切れのはずなのに、エンドロールでは皆で唄って賑やかに終わるのも、何だかアンバランスな魅力があって良い。 ファレリー兄弟の映画って、観た後は大体明るく楽しい気持ちになれるんだけど…… それは本作に関しても、例外ではなかったです。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2023-12-20 10:49:39)(良:2票) |
2. メイズ・ランナー 最期の迷宮
《ネタバレ》 やっぱりゾンビ映画。 2の時点で分かってた事ではあるんだけど、3では更にゾンビ濃度が高まってるんですよね。 それも、ただ単に「ゾンビ好きに媚びる為にゾンビを出しました」って訳でもなく、その要素を劇中で活かし「主人公の親友ニュートがゾンビ化してしまい、殺してくれと訴えてくる」って展開になるんだから、お見事です。 物語としては本作が一番盛り上がるし、最終章に相応しい内容だったと思います。 冒頭から「走行中の列車を襲撃し、仲間を救出しようとする主人公達」って見せ場が用意されているのも、嬉しい限り。 他にも「高所からプールにダイブ」とか「バスをクレーンで釣り上げる」とか、要所要所で見せ場があるし、作り手の誠意を感じます。 これに関しては、単純に観ていて面白いっていうよりは(あぁ、ちゃんと観客を楽しませようとしてるんだな……)と思えてきて、安心させられるって類の長所ですね。 「そんなのは、娯楽映画として当たり前の事だ」って考える人もいるでしょうけど、それが出来ていない映画だって沢山ある訳だし、自分としては評価したいです。 そんな訳で、1→2→3と順当に成長してきた、シリーズ最高傑作と称えたい気持ちもあるんですが…… 素直に褒めきれない部分も多かったりして、そこは残念。 まず、上述のニュートに関しても、3単体では「主人公の相棒であり、大切な親友」として描かれてるけど、1と2では全然そんな事は無くて「仲間その1」でしかなかった訳だから、ちょっと唐突なんですよね。 3で急に仲良くなったような形ではなく、1から親友として描いていたら、その劇的な死も更に盛り上がったはずなので、実に惜しい。 これに関しては「1のチャックに比べたら、3のニュートの方が退場のさせ方は上手くなってる」と褒める事も出来そうだし、判断が難しいです。 あとは「実は生きていたギャリー」って展開で、これはもう、申し訳無いけど失敗してると思います。 そりゃあギャリーのファンなら嬉しいかも知れないけど、どう考えても「死んだと思ってたキャラが、実は生きていた」というサプライズ展開やりたかっただけって感じであり、必然性も無いし、ギャリーという存在を活かしきれてもいないんですよね。 宿敵だった主人公のトーマスにも「頑張れ」と声かけたりして、いつのまにか普通に信頼出来る仲間みたいになってるし、劇的な和解イベントも無し。 ギャリーを串刺しにした張本人のミンホに対しても「誰にでも間違いはある」で済ませちゃうんだから、大いに拍子抜け。 これならギャリーではなく、本作から登場した新キャラって事にしても、充分成立したと思います。 他にも「ヒロインのテレサまで、ニュートのおまけみたいに死んじゃうのが可哀想」とか「結局、世界がウイルスから救われたかどうかも分からない」っていう曖昧さとか、欠点を論えばキリが無いんだけど…… 「友達でいてくれて、ありがとう」という最後のニュートの手紙は、中々グッと来るものがあったし、三部作を完走して良かったと、そう思えましたね。 またトーマスやニュート達に会いたくなったら、1から3まで観返したくなる。 なんだかんだで愛着が湧いちゃう、憎めない友達のような映画でした。 [DVD(吹替)] 5点(2023-11-28 18:55:38)(良:1票) |
3. メイズ・ランナー2 砂漠の迷宮
《ネタバレ》 まさかのゾンビ映画。 一本の映画の中で「実はホラー映画でした」と中盤で判明する例なら、これまでにも何度か体験済みですが「三部作の2からゾンビ映画になる」ってパターンは、流石に初体験です。 これ、前作のファンにとっては辛いというか「ゾンビなんて良いから、迷路で探検して欲しい」って気持ちになって、失望しちゃったかも知れませんね。 でも、自分みたいに「ゾンビ映画が好き」「そもそも1の時点で、迷路が主体の映画ではなかったと思う」ってタイプにとっては、このサプライズ展開、かなり良かったです。 「近未来が舞台の、ティーンズゾンビ映画」って時点で貴重だと思うし、そういうものだと割り切って観れば、中々目新しい魅力があるんですよね。 序盤にて、主人公達が収容施設から逃げ出す展開になるのも、脱獄物としての面白さがあって、これまた自分好み。 廃墟と化した都市の描写なども、低予算映画では中々拝めないような絵面で良かったです。 三部作を一気見して気付いた事なんですが、このシリーズって「全体の完成度はイマイチだけど、ちゃんと観客を喜ばせるような見せ場は用意してある」って特徴があり、本作も例外ではなかったって辺りも、嬉しいポイント。 特に「ゾンビと争ってる最中に、ガラスの床を割って高所から落として倒す」って場面は、かなりお気に入りですね。 これまで色んなゾンビ映画を観てきたけど、こういう倒し方もあるんだなぁって感心しちゃいました。 仲間内で最も強くて頼もしい存在だったミンホが、最後に連れ去られ「囚われのお姫様」ポジションになってしまう事。 そして、影の薄いヒロインのテレサが敵組織の内通者となる事も、程好いサプライズ展開って感じであり、良かったと思います。 序盤にて(施設内に監視カメラとか無いの?)と思っていたら、脱走した後に各所に監視カメラがあると発覚し(いや、主人公達の部屋にも設置しとけよ)とツッコまされたりとか、作り込みの甘さは否めないけど…… そういった諸々込みで、割と楽しめちゃいましたね。 シリーズ中でも異端の品であり、真っ当なファンなら反発しちゃうかも知れない、本作品。 だけど、天邪鬼な自分としては、こういう映画って結構好きです。 [DVD(吹替)] 6点(2023-11-28 18:50:40)(良:2票) |
4. メイズ・ランナー
《ネタバレ》 三部作を完走した上で、再鑑賞。 2以降の展開に「迷路、関係無いじゃん」とツッコまされた訳ですが、実は1の途中から既に関係無くなってるんですよね、これ。 そもそも主人公のトーマスが「ランナー」になった時には、既に迷路は全体図を把握されており、閉じ込められた皆に希望を持たせる為に、リーダー達が「まだ踏破していない」と他の面々を騙してただけと判明するんだから、もう吃驚です。 若者達が迷路に閉じ込められた理由も、結局は「実験の為」という在来な代物だったし、新薬開発の為に本当にこんな大仕掛けが必要だったのかと、甚だ疑問が残るし…… 正直、あまり褒められた出来栄えの映画ではないと思います。 ただ、原作小説は人気シリーズとの事で、言われてみれば本作って「人気のある原作を映画化した結果、微妙な出来栄えになってしまった」っていう典型のような品なんですよね。 登場人物も、それぞれにファンが生まれていそうな魅力は感じられたのですが、いかんせん映画の尺の中では描写が足りず、中途半端に終わってしまったという印象。 例えば、金髪のニュートなんかは如何にも良い奴っぽくて、これは主人公の相棒になって活躍するんだろうなと思わせる存在感があったのに、目立った活躍なんか全くしないで「仲間その1」っていうポジションのまま終わってしまうんです。 ヒロインのテレサも、典型的な「紅一点が必要だから用意してみました」というだけの存在であり、見せ場なんて皆無。 ニュートにせよテレサにせよ、2以降では役目が与えられているキャラだけに、この1での扱いの悪さは勿体無かったです。 ラストにて、憎まれ役のギャリーが涙ながらに「迷路はオレの家だ、皆の家だ」と訴えても、そんな愛着を抱くに至る経緯が描かれてないから、心に響かないし…… 最年少のチャックの死をクライマックスに据えるなら、事前に主人公とチャックの交流を濃い目に描いておくべきだったと思うしで、やはり全体的に拙いというか、未熟な印象が強いです。 一応、良かった点も挙げておくなら「狭い迷路の中で、化け物に襲われる恐ろしさ」というホラー映画な魅力は、しっかり描けている事。 「迷路の道が閉じるって特性を活かして、化け物を倒す」「手近な位置から順番に仕舞っていく扉に追いつくように走り、窮地を脱する」などの、迷路という舞台設定を活かしたアクションが描かれていた事は、評価に値すると思います。 後は、病に犯され正気を失った仲間を迷路に押し込む件なんかは「蠅の王」的な狂気を感じさせて、中々良かったんじゃないかと。 個人的には、ヒロインのテレサをもっと活かし「男だけの園に女の子が送られてきた事により、奪い合いになる」っていう「アナタハンの女王」的な展開にしても良かったんじゃないかって、初見の際には、そう思えたんですが…… そんな道は選ばず、健全な雰囲気で纏めた辺りも、今となっては長所に感じられますね。 適度な怖さ、適度なエグさを楽しめるという意味では、ティーンズ向け映画として成功してるのかも知れません。 [DVD(吹替)] 5点(2023-11-28 18:42:40)(良:1票) |
5. MEG ザ・モンスター
《ネタバレ》 毎年恒例、夏のサメ映画鑑賞。 ジェイソン・ステイサム主演という看板に偽り無しであり、冒頭から最後まで彼が出てくるし、サメの出番も多いしで、勿体ぶった感じが無いのが良いですね。 予算に恵まれた大作に相応しいクオリティだなって、嬉しくなっちゃいます。 この辺り、普通の映画好きなら(何故、そんな当たり前の事が加点対象に?)と戸惑うかも知れませんが…… 色んなサメ映画を観てきた身としては「大物俳優の名前で釣ってるけど、実はメインじゃなくゲスト出演程度」「拙い造形なのを誤魔化す為、サメの出番は極力減らしてる」って例に当てはまらないだけでも、凄い事だって思えちゃうんです。 特に終盤、サメがビーチを襲撃する場面は圧巻であり、ここまでエキストラの多いサメ映画って、本当に珍しい。 カラフルな浮き輪の群れが、巨大ザメから逃げ惑うのを上空から捉えたカットなど、ちゃんと「予算が有るからこそ撮れる場面」を見せてくれてるんですよね。 サメ映画といえば低予算な品が多いですし、本作は「きちんと金を掛けて、面白いサメ映画を撮ってる」という、それだけでも評価に値すると思います。 勿論、欠点も多いというか…… 前半と後半で、まるで違った趣の映画である事には、正直(んっ?)と戸惑いましたね。 「深海に取り残された人々を救出するという、真面目でシリアスな映画」から「お馬鹿なサメ映画」に変わったという形であり、自分としては後者が好きだから受け入れられたけど、前者が好きで観ていた人は「何だコレ」と、茫然としちゃうかも。 中盤、嫌味な金持ちキャラが間一髪助かったと思いきや、やっぱり食べられちゃう場面なんて「これぞサメ映画」って感じだし、あそこをキッカケに映画の雰囲気が一変するので、その変化を受け入れられるかどうかで、評価も変わってくると思います。 映画の完成度、作風の統一感という意味では、決して褒められない出来なのは確かです。 でもまぁ、自分としては「サメ映画っぽくないと思ってたら、ちゃんとサメ映画だった」という形なので、全然OKでしたね。 ヒロインの「少しだけ」を示すジェスチャーは真似したくなる魅力があったし、慎重派の味方キャラが「今日は海釣り日和だ」という言い方で協力を申し出る場面もグッと来たしで、主人公以外の人物が、ちゃんと魅力的だった点も良い。 ヒロインの娘であるメイインも可愛らしく、主人公との交流には、大いに和むものがありました。 ラストシーンにて「ママも誘っちゃう?」とメイインに言われた際に、主人公が目を見開いて笑う場面なんてもう、愛嬌たっぷり。 強面なステイサムだからこそ出せる、ギャップの魅力が素晴らしかったです。 黄色い潜水艇も恰好良かったので、それに乗って巨大ザメと一騎打ちするってクライマックスにも、大いに興奮。 最後は、その潜水艇も乗り捨て「主人公が単身、巨大ザメと戦う」というデタラメな展開になるんだけど(ステイサムなら、それも有り)って思えるんだから、本当に凄いですよね。 主演俳優の偉大さというか、役者としてのパワーを感じます。 そういった諸々を踏まえて考えると、本作は「サメ映画」ではなく「ステイサム映画」に分類すべきなのかも知れませんが…… いずれにせよ、しっかり楽しめる映画であった事は、間違い無いです。 サメ映画好きにも、ジェイソン・ステイサム好きにも、安心してオススメ出来る一本だと思います。 [DVD(吹替)] 7点(2023-07-06 20:09:22)(良:2票) |
6. メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス<OV>
《ネタバレ》 良くあるサメ映画の一つなんですが、何故かシリーズ化して第四弾まで続いてるんですよね、これ。 続編で戦う相手は「巨大ワニ」「メカゴジラならぬメカ・シャーク」「進撃の巨人そっくりな巨大ロボ」とバラエティに富んでおり、シリーズ化した理由は「色んな相手と戦わせる事が出来て、話を作り易いから」だと推測出来るんですが…… 肝心の第一弾である本作が、とてもシリーズ化出来るほどのクオリティに思えないんだから、困っちゃいます。 そもそも巨大ダコって海外では人気が高いけど、日本人の自分からすると、どうもピンと来ないんですよね。 「タコ」=「食材」ってイメージが強いし、いくら巨大化されてもワニやヘビなどに比べると「怪獣」って感じがしないから、本作の対戦カードに関しても(サメとタコが戦ったら、タコが食べられて終わりでしょ)と思えて、盛り上がれないんです。 実際は相打ちに終わった為、予想が外れた形ではあるんですが…… 何か、それに対しても特段の驚きは無かったし、最後までテンションが上がる事無く、映画が終わっちゃいました。 一応、良かった所も述べておくなら、巨大ザメと巨大ダコの出番は適度に確保されており、期待外れって感じはしなかった事。 この手のモンスター映画では、危険な怪物を殺そうとする主人公達に対し、お偉いさんが「殺さずに捕まえる事」を要求して足を引っ張るのがお約束なんだけど、本作は主人公達が「生け捕り」を主張する側だった為、中々新鮮な感覚を味わえた事。 主人公カップルが性交渉を行った後「フェロモンで二大怪獣を誘き寄せる」って作戦を思い付く形なので、お約束でしかないはずの濡れ場にも、ちゃんと意味があった事。 そして、海中からメガ・シャークがジャンプし、ジャンボ旅客機に噛み付いて墜落させちゃう場面は馬鹿々々しくて良かったとか、そのくらいになりそうですね。 特に最後の件に関しては、続編の「メガ・シャークvsグレート・タイタン」(2015年)では宇宙まで飛んで、人工衛星を破壊する場面もあったりするので、事前に本作を観ておくと、より楽しめると思います。 (今度は宇宙かよ!)とツッコみたくなる事、請け合いです。 [DVD(吹替)] 4点(2023-03-16 02:42:16)(良:2票) |
7. めぐり逢えたら
《ネタバレ》 さて、今年のクリスマスは何を観ようかと本棚を眺めていたところ (そういえば、これも一応クリスマス物だったな……) と思い出した為、本作を観賞。 結果的には殆ど「クリスマス要素」が無くてズッコけた訳ですが…… 観た後に幸せな気持ちになれるという意味では、非常にクリスマスらしい映画だったと思います。 なんといっても、恋のキューピット役となってくれる主人公の息子が良かったですね。 可愛らしい子供キャラを配し、ファミリー映画的な側面を備えているのは、元ネタである「めぐり逢い」(1957年)には無かった魅力。 なんせ本作の主人公カップルときたら、出会って話すと同時に映画が終了しちゃうくらいなんだし、作り手としても意図的に「二人を結び付けようとする子供が主軸の映画」として完成させたんじゃないかな、って気がします。 そんな息子くんには、同世代の彼女もいたりして、ちょっぴり憎たらしい感じだったのに…… エンパイアステートビルに一人ぼっちになった時は、心細げな顔を見せたり、パパと再会出来た時には、喜んで抱き付いたりと(なんだかんだ言っても、まだ子供なんだな)と思わせてくれた辺りが、実に可愛かったです。 個人的には、ここの「父子の再会」の場面が、映画の白眉だった気がしますね。 「めぐり逢い」(1957年)同様、やはり主人公カップルは約束の場所で会えない運命なのかなと思わせておいて、息子が置き忘れたリュックのお蔭で会う事が出来たという脚本も、非常に凝っていて素敵でした。 翻って、悪かった点はというと……これが結構多かったりもして、困っちゃいます。 まず、メグ・ライアン演じるヒロインに共感を抱けない。 主人公の住所を調べて会いに行く件とか、どう考えてもストーカーそのものだし、彼女の恋路を応援しようって気になれなかったのですよね。 作中にて彼女が昔の映画を鑑賞し「この頃は、みんな本当の愛し方を知っていたのよね」なんてウットリする場面がありましたが、二十年以上前の映画を観ている最中な自分からすると(この頃は、まだストーカー的な愛し方が肯定されていたんだなぁ……)と、皮肉気に考えちゃいました。 そもそも婚約者がいるのに「運命の出会いに憧れ、恋に恋している女性」って時点で、どうしても拒否感が出ちゃうんですよね。 彼女も浮気な自分を悔いて「許せない裏切りだと思うわ」と嘆く事になるんですが、観ているこちらとしても(ホンマやで)とツッコむしか無かったです。 トム・ハンクス演じる主人公も、ヒロインが強烈に恋い焦がれるほど魅力的には思えなかったという辺りも、辛いところ。 「ラジオ番組で話した時の声が素敵」「話す内容が素敵」というくらいで、手紙が殺到するほどの人気者になるというのも、ちょっと無理があった気がしますね。 二人とも好きな役者さんであるだけに、その辺は観ていて辛かったです。 結局「僕は君が妥協して仕方無く選んだ男には、なりたくない」と告げ、ヒロインを約束の場所へと送り出してくれた婚約者のウォルターこそが、作中で一番「いい男」だったんじゃないかと思えちゃうし、どうもスッキリしませんでした。 そんなウォルターと、主人公の恋人候補であったヴィクトリアが完全に「恋の当て馬」ポジションに収まっており、救いが描かれていなかった辺りも、残念なポイント。 上述の通り「観賞後は幸せな気持ちになれる映画」だったのですが、当て馬組にも優しい描写がもっと盛り込まれていたら、より好きになれた気がします。 ちなみに、この映画を基にしたとんねるずのコント「めぐり逢えたら スペシャル版」では、主人公の息子がラジオ番組に再び電話を掛け「パパが結婚する事になったんだ!」と嬉しそうに報告して終わるという形になっており、元ネタ以上に爽やかなハッピーエンドだったりするんですよね。 個人的には、そちらの方が好みな終わり方でした。 [DVD(吹替)] 6点(2019-12-25 22:25:51)(良:1票) |
8. メッセンジャー(1999)
《ネタバレ》 これは好きな映画です。 バブル期の若者を主役に、オシャレな青春映画を撮り続けてきた馬場監督が「バブル崩壊後、肉体労働で生計を立てる主人公」を描いてみせたという、その舞台背景も面白いし、そんな予備知識無しで、シンプルに作品を観賞するだけでも面白い。 初見の際には、主人公の尚実に感情移入出来ず「何だ、この女は」と呆れる思いもあったんですが、今となっては彼女の存在ひっくるめて好きな映画になったんだから、本当に不思議ですね。 理由としては、もう一人の主人公である鈴木が尚実に反発しつつも、少しずつ認め、惹かれていく過程が、観客である自分の心境と、上手くシンクロしてくれたのが大きいかと。 とにかく最初の印象は最悪で、車で人を轢いておきながら相手よりも先に車の傷を心配する場面なんてもう、正直ドン引き。 それでも「携帯電話を届ける依頼」をやり遂げてみせた辺りから、徐々に見方が変わってくるんです。 ここの演出が上手くて、それまで日焼けを気にして着込んでいた上着を「邪魔」と言って脱ぎ捨てるシーンを挟むなど、視覚的にも分かり易く「彼女は生まれ変わった」事を示しているんですよね。 また「ありがとうの一つも言われないような最低の仕事」という台詞が伏線になっており「ありがとう」と言われる事で、初めて彼女がメッセンジャーとしての喜びに目覚める形でもある。 これまた凄く分かり易くて、その分かり易さが心地良い。 「ビール」と「シャンペン」を巡る一連のやり取りも面白かったですね。 汗水垂らして働いた後はビールに限るという鈴木と、高級なシャンペンが一番という尚実。 中盤にて、尚実の方が労働後のビールの美味しさを認め、それによって彼女が正式にメッセンジャーの仲間入りを果たす訳ですが、この映画はそれだけで済まさないんです。 鈴木もこっそりシャンペンを注文してみせたり、ラストにて皆でシャンペンで乾杯したりするという、素敵なオマケを付け足しているんですよね。 それによって、単なる肉体労働賛歌だけに終始せず、高級品の魅力もキチンと認めてるのだという、作り手のバランスの良さが伝わってきました。 バランスと言えば、尚実が一方的に「汗水垂らして働く喜びに目覚める」という受け身な立場に終始せず、元キャリアウーマンの経験を活かし、メッセンジャー業の改革に貢献していく流れも気持ち良いんですよね。 その他にも、憎まれ役と思われた尚実の元恋人や、取引先の太田さんなども「実は良い奴」オチが付くものだから、非常に後味爽やか。 そんな中、最後まで悪役の座を貫いたバイク便の「セルート」は実在の会社との事で、イメージダウンを覚悟で悪役を演じ切ってみせた、その懐の深さにも拍手を送りたいところです。 ラストの競争にて、チーム内で封筒の受け渡しを行う際の演出も、逐一恰好良い。 「何も言ってないだろ」「自転車よりバイクの方が速い」「楽勝」という台詞の使い方も上手いし、鉛筆や無線機などの小道具の使い方も上手い。 演者さんの棒読み率が高い事、エンディングでのアマチュア感漂うラップなども、普通なら減点対象となったかも知れないけど、本作に関しては「愛嬌」に思えてくるんですよね。 最初はメッセンジャー業を恥じらい、元同僚に対し「別の仕事をしている」と見得を張っていた尚実が、誇らしげに働く姿を見せるようになる様も良いし、鈴木が尚実を後ろに乗せて、自転車に二人乗りして帰るシーンなんかも、凄く好き。 全体的に「分かり易い面白さ」に溢れている中で、唯一つだけ「尚実は鈴木に何を言ったのか」という謎掛けが残されているのも良かったですね。 自分としては、凄ぉ~くベタだけど「アンタが好きだから」が正解だったんじゃないかな……と思いたいところです。 [DVD(邦画)] 9点(2017-09-27 08:18:55)(良:4票) |
9. 免許がない!
《ネタバレ》 「あの舘ひろしが、実は運転免許を持っていない」という、出オチのようなアイディアだけで撮られたとしか思えない映画。 こういうネタである以上、やはりクライマックスでは主人公が実際の事件か何かに遭遇し、映画的なカーチェイスを繰り広げるのでは……と期待してしまうのですが、そこを外してくる惚けっぷりが、如何にも森田脚本らしく思えましたね。 全体的にユル~い空気が漂っており、退屈さも感じる一方で、何処か心地良さもあるという、不思議な作風。 作中で飛び出す駄洒落「クリープ現象。ミルクじゃないよ」も、最初はツマンなかったはずなのに、二度言われると少しクスッとしたりするんですよね。 映画全体もこんなノリであり、観賞中は(面白くないなぁ……あっ、でもここの場面は、ちょっと良いな)という反応を繰り返す事になりました。 大前提として、主演が舘ひろしでなければ成立しない話なのですが、序盤に変装して教習所に通う姿が、本当に「冴えない中年のおじさん」にしか見えない事には、驚きましたね。 それが正体を現すと、ちゃんと恰好良くなって、映画スターのオーラをビンビンに感じさせる立ち居振る舞いになるのだから、やっぱり凄い人なんだなぁ……と、感嘆。 ちょっぴり気障で、嫌味っぽいところもあるんだけど、フッと渋い笑みを浮かべるだけで色気と愛嬌が漂うもんだから、憎めないんですよね。 作中で観衆にキャーキャー言われているのも当然だなと、自然に納得出来ちゃいます。 踏切の前では窓を開けて音を確認するようにと教官に注意され「一般車で、そんな事やってるの見た事ねぇ」と反発するも「教習所では、そうすんだよ」と諭される件も皮肉が効いていて面白かったし、ミスを犯した後、教官に減点されちゃう嫌ぁ~な雰囲気なんかも、上手く表現されていたように思えますね。 特に、仲の悪かった教官が妻と復縁出来るようにと、主人公が手伝ってあげる場面なんかは、本作でも一番のお気に入り。 ……でも、その後の展開にて「純粋に合格した訳ではなく、借りを返す為に教官がハンコを押してあげた」と思える形になっているのは、それこそ大幅減点です。 そりゃあ教官だって感謝はするだろうけど、仕事に私情を挟んだような描き方をしているのは、ちょっと違うんじゃないかと。 あれだけ真面目に努力する主人公を描いておいたくせに、最終的には「映画スタッフが色々と助力して、反則まがいの方法で免許を取らせた」というのも、何とも納得し難い結末。 そこはやはり、実力で合格出来たんだと、スッキリ納得させて欲しかったところです。 中盤にて、やたらとお色気シーンが多くてウンザリさせられた事も含め、どうにも「好きな映画」とは言えそうにない本作。 とはいえ、憎み切れない愛嬌も備えているし「ここの場面は、結構好き」と言えるような部分も幾つかはあった為、何だかんだで観ておいて良かったと思えるような……そんな一品でありました。 [DVD(邦画)] 4点(2017-08-23 07:05:20)(良:1票) |
10. 名探偵コナン 時計じかけの摩天楼
《ネタバレ》 冒頭にて、十分近くも掛けて「このシリーズのお約束である『眠りの小五郎』の場面」「あらすじ」「コナンが装備しているメカの説明」まで披露してくれるという、実に親切設計な一品。 予備知識が無くとも楽しめるように……という、作り手側の配慮が感じられました。 「ボク、子供だから分かんないよ。何かヒント教えて」という甘え声での台詞など、コナン(=新一)が自らのハンディキャップを逆手に取って、犯人から情報を引き出す件も面白かったです。 蘭とのロマンスも含め、ちゃんと「子供になってしまった高校生探偵」だからこそ出来るストーリー展開にしているのですよね。 作中には「新幹線大爆破」や「ジャガーノート」など、過去の名作映画から拝借したネタも多いのですが、こういったコナンならではの魅力も忘れずに盛り込んである為、観客としても抵抗無く楽しめる感じです。 モリアーティ教授をモデルにした怪し過ぎる建築家が、そのまま犯人だったのには笑っちゃいましたけど、作劇として「犯人は誰か?」より「どうやって爆発を食い止めるか?」に重きを置いた結果なのだろうなと、納得出来る範囲内。 記念すべき映画第一作だから、犯人にはビッグネームが元ネタの人物を配したいという考えもあったのかなぁ、と推測する次第です。 電車ではなく、線路の方に爆弾が仕掛けられていると見抜く件や、爆弾解体のシーンにてモノクロ画面にし、赤と青の配線のどちらを切ったのか分かり難くする演出なんかも良かったですね。 特に後者に関しては、初見の際にかなり感心させられたのを憶えています。 難点としては、立て続けに事件が起きる構造上、テレビの数話分を繋げてみせた「総集編」めいた色合いが濃い事が挙げられるでしょうか。 それと「赤い糸が無い」「コナンのままじゃ駄目」という独白で終わる形なのも、ギャグ描写とはいえ、少し後味が悪かったです。 この作品の特性上「たとえ見た目が変わっても中身が同じだから蘭とも愛し合える」あるいは「歩美ちゃん達と一緒に過ごすコナンとしての人生も悪くない」なんて結論にはならず「何時かは新一に戻りたい」という願いをコナンが抱き続けるのは当然なのでしょうが、ハッピーエンドの後にそれをやられちゃうと、やっぱり寂しい。 後は……コナンの仲間である少年探偵団の活躍が無かったとか、気になるのは精々そのくらいですね。 娯楽作品として、バランス良く纏まっている映画だと思います。 [DVD(邦画)] 6点(2017-05-28 16:45:12)(良:2票) |
11. 名探偵登場
こういったコメディ映画は、元ネタに対する愛情があってこそだと思っていた自分にとって、むしろ元ネタのミステリー小説群を否定するような内容であった事は、非常に驚きでした。 ラストの主張に全く説得力が無かった、とは言いません。 けれど、そこにはユーモアという以上に悪意を感じてしまって、とても賛同する気持ちにはなれませんでした。 ピーター・フォークが出演している事もあり、観賞前は期待していただけに、それを裏切られたという思いもあります。 豪華な出演者陣は、ただ画面を見ているだけでも楽しい気分にさせられるし、作中のギャグシーンで笑いを誘うものがあったのも確か。 そういった「好き」な部分も簡単に見つけられるだけに、残念な気持ちになる映画でした。 [DVD(字幕)] 3点(2016-04-08 11:45:52)(良:1票) |